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便
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たより
ふりがな文庫
“
便
(
たより
)” の例文
優しい親切な人で、「恭やん、淋しいことおへんか、田舎へ帰りとうおすやろ、お父つあんから
便
(
たより
)
おすか?
辛
(
つ
)
ろても辛抱おし。」
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
その舌の
縺
(
もつ
)
れたような、
便
(
たより
)
のない声を、蚊の
唸
(
うな
)
る中に聞きながら、私がうとうとしかけました時でした。
密
(
そっ
)
と一人が
揺
(
ゆす
)
ぶり起して
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
高野に汝あること風の
便
(
たより
)
に聞きしゆゑ、汝を頼みて戒を受け、
樣
(
さま
)
を變へ、其上にて心安く都にも入り、妻子にも遇はばやとこそ思ふなれ
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
拙者
主家
(
しゅうか
)
の御領分
越後
(
えちご
)
高田
(
たかた
)
よりの
便
(
たより
)
によれば、大伴蟠龍軒
似寄
(
により
)
の人物が、御城下に
来
(
きた
)
りし由、多分越後新潟辺に
居
(
お
)
るであろうと思われます
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それにつれなきは
方様
(
かたさま
)
の
其後
(
そののち
)
何の
便
(
たより
)
もなく、手紙出そうにも
当所
(
あてどころ
)
分らず、まさかに親子
笈
(
おい
)
づるかけて順礼にも出られねば
逢
(
あ
)
う事は夢に
計
(
ばか
)
り
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
「わたしかい、何ね、少し頭痛がするものだから。——時候のせいだろうよ。——武男さんから
便
(
たより
)
がありましたか、浪さん?」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
とにもかくにも今一目見ずば動かじと始に
念
(
おも
)
ひ、それは
愜
(
かな
)
はずなりてより、せめて
一筆
(
ひとふで
)
の
便
(
たより
)
聞かずばと更に念ひしに、事は心と
渾
(
すべ
)
て
違
(
たが
)
ひて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
九郎右衛門や宇平からは
便
(
たより
)
が
絶々
(
たえだえ
)
になるのに、江戸でも何一つしでかした事がない。
女子
(
おなご
)
達の心細さは言おう様がなかった。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その兄が
逝
(
ゆ
)
いてからの賀古氏は、どれだけお寂しかったでしょう。晩年に主人や私へよくお
便
(
たより
)
を下さいましたのも、以前にはないことでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
彼は平岡夫婦を三年前の夫婦にして、それを
便
(
たより
)
に、自分を三千代から永く振り
放
(
はな
)
さうとする最後の
試
(
こゝろ
)
みを、半ば無意識的に
遣
(
や
)
つた丈であつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
豊雄は元より願うところであるが、「
親兄弟
(
おやはらから
)
に仕うる身の、おのが物とては
爪髪
(
そうはつ
)
の外なし、何を
禄
(
ろく
)
に迎えん
便
(
たより
)
もなければ」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
実にこの胸に眠っているものを、
夜
(
よる
)
吹く風が遠い
便
(
たより
)
を持って来るようにお蔭で感じるといったのう。実に君は風の伝える優しい糸の
音
(
ね
)
だったよ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
此処はただ草のみ生ひて、樹は
稀
(
まれ
)
なれば
月光
(
つきあかり
)
に、路の
便
(
たより
)
もいと
易
(
やす
)
かり。かかる処に
路傍
(
みちのほとり
)
の
叢
(
くさむら
)
より、つと走り出でて、鷲郎が前を横切るものあり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
父の死後
便
(
たより
)
のない母親の辛苦心労を見るに付け聞くに付け、小供心にも心細くもまた悲しく、始めて浮世の塩が身に
浸
(
し
)
みて、夢の覚たような心地。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
源氏が
須磨
(
すま
)
へ引きこもった
噂
(
うわさ
)
も、遠い国で聞いて、悲しく思いやらないのではなかったが、音信をする
便
(
たより
)
すらなくて
源氏物語:16 関屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
平仮名なれば、ごくごく低き所にて、めしやの看板を見分くる
便
(
たより
)
にもなるべきことなれども、片仮名にてはほとんど民間にその用なしというも可なり。
小学教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「上田は家が岐阜だから、
便
(
たより
)
はないが、大方疎開してゐるだらう。疎開のおかげで、
此方
(
こつち
)
もまアかうして居られるわけだ。何一ツ燒きやアしないよ。」
羊羹
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
がなんらの
便
(
たより
)
もない、彼は居ないのであろうかと疑ってみた、しかし確かに居る、今何か
囁
(
ささや
)
いているのを聴いた。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
小畑が熊谷からやって来るという
便
(
たより
)
があったが、運わるく日曜が激しい吹き降りなので、郁治と二人
樋
(
とい
)
から
雨滴
(
あまだ
)
れが滝のように落ちる暗い窓の下で暮らした。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
女ながらも一念力! お照は声を
便
(
たより
)
にしっかと仙太の手を執りて、引揚げんとする時、後より這上らんとする男の、必死ともがく
手頭
(
てさき
)
にむずと袂を掴まれたり。
片男波
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
いよ/\一室をてらさば吾が身上のこらずの
力
(
ちから
)
を
尽
(
つく
)
して
求
(
もと
)
むべし、
媒
(
なかだち
)
して玉はるべしといひしが、そのゝちなにの
便
(
たより
)
もなくてやみぬ、
空言
(
そらごと
)
にてありしと思はる云云。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
たとい一物を買わずとも散策運動の
便
(
たより
)
となり、地方繁栄の外観をも増すが常なるに、わが邦にはかかる無謀の励行で寂寥たる資材をますます貧乏せしむるも怪しむべし。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
だが、母もマリヤもおれがこう
踠死
(
もがきじに
)
に死ぬことを風の
便
(
たより
)
にも知ろうようがない。ああ、母上にも
既
(
も
)
う逢えぬ、いいなずけのマリヤにも
既
(
も
)
う逢えぬ。おれの恋ももう
是限
(
これぎり
)
か。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
一日散歩のついで、吾友の上をおもひつゝ、かの
猶太廓
(
ゲツトオ
)
に入りぬ。若し期せずして其人に逢はゞ、我友の怒を
霽
(
はら
)
す
便
(
たより
)
にもならんとおもひき。されど我は彼翁をだに見ざりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ここより遠からねば、此の
小休
(
をやみ
)
に出で侍らんといふを、
五六
強
(
あながち
)
に此の
傘
(
かさ
)
もていき給へ。
五七
何
(
いつ
)
の
便
(
たより
)
にも求めなん。雨は
五八
更に
休
(
や
)
みたりともなきを。さて御住ひはいづ
方
(
べ
)
ぞ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
三人で甲板へ出て、来る日も来る日も魚の
便
(
たより
)
を待ったが、そうなっては雑魚もかからない。
重吉漂流紀聞
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
出た
限
(
ぎり
)
一
向
(
かう
)
便
(
たより
)
もないゆゑ私しも
兄弟
(
きやうだい
)
の
情
(
じやう
)
にて今頃は
何國
(
いづく
)
に何をして居けるやら行當り
爲撥
(
ばつたり
)
死
(
しに
)
はせぬかなどと案じて見たが其後三年ばかり立と
不※
(
ふと
)
讃岐
(
さぬき
)
の丸龜より
書状
(
しよじやう
)
が屆いたゆゑ夫を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「前野氏にも、知らせとうはござるが、前野氏の麹町の住居までは、よほどの道程でござる。もう、初更も過ぎているほどに、知らすべき
便
(
たより
)
はござらぬ。前野氏には、この次の
機
(
おり
)
もござろう」
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自分で書いたらしい首人形のついた絵葉書に京子からこんな
便
(
たより
)
があった。
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
どんな美しい使者をでも、悪い
便
(
たより
)
は
醜
(
みにく
)
く見せる。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
こゝもとはおもふ
便
(
たより
)
も
須磨
(
すま
)
の浦
猿雖
(
えんすい
)
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
便
(
たより
)
もてきぬ、うれしき
文
(
ふみ
)
を。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「加州は百万石の城下だからまた面白い事もあろう、素晴しい事が始まったら風の
便
(
たより
)
にお聞きなさいよ。それじゃあ、あの随分ねえ。」
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鹽「いや屋敷奉公をすると
便
(
たより
)
が出来ん、殊にお前の為めにならんから、こりゃ多助、此の親は仮の親と心得て、沼田のお
父
(
とっ
)
さんに孝行をしろ」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さて抽斎が弘前にいる間、江戸の
便
(
たより
)
があるごとに、必ず長文の手紙が徳から来た。留守中の出来事を、
殆
(
ほとん
)
ど日記のように
悉
(
くわし
)
く書いたのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼は平岡夫婦を三年前の夫婦にして、それを
便
(
たより
)
に、自分を三千代から永く振り放そうとする最後の試みを、半ば無意識的に遣っただけであった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「上田は家が岐阜だから、
便
(
たより
)
はないが、大方疎開しているだろう。疎開のおかげで、
此方
(
こっち
)
もまアこうして居られるわけだ。何一ツ焼きゃアしないよ。」
羊羹
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
翌日果して熱海より
便
(
たより
)
はありけれど、
僅
(
わづか
)
に一枚の
端書
(
はがき
)
をもて途中の無事と宿とを通知せるに過ぎざりき。宛名は隆三と貫一とを並べて、宮の
手蹟
(
しゆせき
)
なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
何を
便
(
たより
)
に尋ぬべき、
燈
(
ともしび
)
の光を
的
(
あて
)
に、
數
(
かず
)
もなき
在家
(
ざいけ
)
を
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
に
彷徨
(
さまよ
)
ひて問ひけれども、絶えて知るものなきに、愈〻心惑ひて只〻茫然と
野中
(
のなか
)
に
彳
(
たゝず
)
みける。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
今は汽車の
便
(
たより
)
ありて
深谷
(
ふかや
)
より寄居に至る方、熊谷より寄居に至るよりもやや近ければ、深谷まで汽車にて行き越し、そこより馬車の便りを
仮
(
か
)
りて寄居に至り
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
これは手段なのである、自分では手段でありながらも人には知られぬ手段である。彼はこの手段には成功を期したが格子戸の処まで達してもなんらの
便
(
たより
)
もない。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
いよ/\一室をてらさば吾が身上のこらずの
力
(
ちから
)
を
尽
(
つく
)
して
求
(
もと
)
むべし、
媒
(
なかだち
)
して玉はるべしといひしが、そのゝちなにの
便
(
たより
)
もなくてやみぬ、
空言
(
そらごと
)
にてありしと思はる云云。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
又生きてゐるものなら、途中から何等かの
便
(
たより
)
がありさうなものである。しかし金も持つて行つた形跡もなければ、
予
(
あらかじ
)
めさうした予定があつたらしい痕跡も残つてゐない。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
その内に、父が亡くなったから暫く田舎へ行きます、という
便
(
たより
)
がはつからあったので、それもよかろう、あの目の悪い人と東京で暮すのでは骨が折れようからと思いました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
千々岩は早くこの将軍の隠然として天下に重き勢力を見ぬきたれば、いささかの
便
(
たより
)
を求めて次第に近寄り、如才なく奥にも取り入りつ。目は直ちに第一の令嬢浪子をにらみぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「いや知らすべき
便
(
たより
)
がないとは、限り申さぬ。本石町の木戸
際
(
ぎわ
)
には、さだめし辻籠がいることでござろう。手紙を
調
(
しつら
)
え、辻籠の者に置き捨てにいたさすれば、念がとどかぬことはござるまい」
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
体好く書生にされて私は
忌々
(
いまいま
)
しくてならなかったが、しかし其でも
小狐家
(
おぎつねけ
)
を出て了う気にはならなかった。初の
中
(
うち
)
は国元へも折々の
便
(
たより
)
に不平を漏して遣ったが、其も
後
(
のち
)
には
弗
(
ふつ
)
と止めて了った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
草枕はるけき旅路の
労
(
いたはり
)
にもあらで、
一九
観念修行
(
くわんねんしゆぎやう
)
の
便
(
たより
)
せし
庵
(
いほり
)
なりけり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
文明の教育
稍々
(
やや
)
普
(
あま
)
ねしと
雖
(
いえど
)
も、中年以上の
重
(
おも
)
なる人は迚も洋学の佳境に
這入
(
はい
)
ることは出来ず、
何
(
なん
)
か事を
謀
(
はか
)
り事を断ずる時には
余儀
(
よぎ
)
なく漢書を
便
(
たより
)
にして、万事ソレから割出すと云う風潮の中に居て
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
捕
(
とら
)
へ又は
目顏
(
めがほ
)
にて知らせけるに兩親は只一人の娘なれば
惡
(
あし
)
き蟲でも
付
(
つい
)
てはならずと心を
配
(
くば
)
り母は娘の
側
(
そば
)
を
放
(
はな
)
れぬやうにする故
何分
(
なにぶん
)
云寄
(
いひよる
)
に
便
(
たより
)
なく源八は
種々
(
しゆ/″\
)
心を
盡
(
つく
)
しけるが
或時
(
あるとき
)
下男の與八と
云者
(
いふもの
)
に酒を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
便
常用漢字
小4
部首:⼈
9画
“便”を含む語句
小便
便所
便宜
方便
郵便局
大便
便宜上
便乗
郵便配達
音便
郵便船
不便
穏便
郵便
郵便函
便々
軽便鉄道
郵便脚夫
便次
御方便
...