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際
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ぎわ
ふりがな文庫
“
際
(
ぎわ
)” の例文
暫
(
しばら
)
くしてから清岡はこれも三越で自分が買ってやった真珠入の
櫛
(
くし
)
を、一緒に自動車に乗った時、その降り
際
(
ぎわ
)
にそっと抜き取って見た。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
山中組はジャンボーの通った石垣の間を抜けて、だらだら坂の降り
際
(
ぎわ
)
を、右へ
上
(
のぼ
)
ると
斜
(
はす
)
に頭の上に
被
(
かぶ
)
さっている大きな
槐
(
えんじゅ
)
の奥にある。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
と云っても額の真中か耳のうしろかどこかにちょっぴり
痕
(
あと
)
が附いたぐらいを根に持って一生
相好
(
そうごう
)
が変るほどの
凄
(
すさま
)
じい危害を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
遉
(
さすが
)
に、大理石の柱が、並んでいる車寄せに立ったとき、胸があやしく動揺するのを感じた。が、夫人が別れ
際
(
ぎわ
)
に、再び繰り返して
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
夕方から
零
(
お
)
ち出した雪が暖地には
稀
(
めず
)
らしくしんしんと降って、もう宵の口では無い今もまだ
断
(
き
)
れ
際
(
ぎわ
)
にはなりながらはらはらと降っている。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
帯の間の手拭をぬき取り、口を
歪
(
ゆが
)
めながら、
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
の汗を拭いている顔を
覗
(
のぞ
)
いたが、お米にも宅助にも、どうも覚えのない男だ。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
睡りからさめる時も速やかに
醒
(
さ
)
め切って、エーテルやクロロホルムのようにさめ
際
(
ぎわ
)
の悪いようなことがなかったそうである。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と呼ぶような別れ
際
(
ぎわ
)
の正太のことを胸に浮べながら、三吉は自分の妻子の方へ帰って行った。それは最早六月の初であった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その上、景岡秀三郎は、少年としては珍しく、
毛深
(
けぶ
)
かかったのです。腕や脚には、もう
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
の金色な
毳毛
(
うぶげ
)
が、霞のように、生えていたのです。
足の裏
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
長い睫毛の間を左右の
眥
(
めじり
)
へ……ほのかに白いコメカミへ……そうして青々とした
両鬢
(
りょうびん
)
の、すきとおるような
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
へ消え込んで行くのであった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
うっかり垣根
際
(
ぎわ
)
に寄る事も遠慮しなけりゃあならないしするから、裏が明いて居た内は家中の者がのうのうとして居た。
二十三番地
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
兄妹が、波うち
際
(
ぎわ
)
で、貝がらをひろって遊んでいますと、うしろでざくりざくりと砂を踏む音がするではありませんか。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その室には水野外記がいて、敷居
際
(
ぎわ
)
に手をついた都留を進藤主計にひきあわせた、「この者がお手まわりの御用を勤めます、名は都留と申します」
晩秋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
人々は
縁下
(
えんした
)
より、ばらばらとその行く
方
(
ほう
)
を取巻く。お沢。遁げつつ
引返
(
ひきかえ
)
すを、神職、
追状
(
おいざま
)
に
引違
(
ひきちが
)
え、帯
際
(
ぎわ
)
をむずと取る。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
落着きもなく
手擦
(
てす
)
り
際
(
ぎわ
)
へ出て庭を眺めたり、額や掛け物を見つめたりしていたが、
階下
(
した
)
に飼ってある
小禽
(
ことり
)
の
幽
(
かす
)
かな啼き声が、
侘
(
わび
)
しげに聞えて来た。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
常盤橋
(
ときわばし
)
際
(
ぎわ
)
から、朱引き外の本所松阪町へ移った吉良家門内の長屋で、一角はいま、小林の許を辞して、この、じぶんの住いへかえってきたところだ。
口笛を吹く武士
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
玻璃窓の郡上平八としては、ここが名誉と不名誉との、別れ
際
(
ぎわ
)
ともいうべきであった。赤格子が殺されてしまったら、せっかくの密書が役に立たぬ。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
どうも此の頃の夕立は降るまえが
忌
(
いや
)
に
蒸
(
む
)
して、あがり
際
(
ぎわ
)
がはっきりしないから、降っても一向に涼しくなりません。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
呼ばれてやって来た山田という社員は、さい
前
(
ぜん
)
警部の前にお茶を運んで、立去り
際
(
ぎわ
)
に妙な咳をした男であった。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一席申し上げます、是は寛政十一年に、
深川元町
(
ふかがわもとまち
)
猿子橋
(
さるこばし
)
際
(
ぎわ
)
で、巡礼が
仇
(
あた
)
を討ちましたお話で、年十八になります
繊弱
(
かよわ
)
い巡礼の娘が、立派な侍を
打留
(
うちと
)
めまする。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そのジレッタサもどかしさ、モジモジしながらトウトウ二時間ばかりというもの
無間断
(
のべつ
)
に受けさせられた。その受賃という訳でも有るまいが帰り
際
(
ぎわ
)
になって
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
さて、山から
麓
(
ふもと
)
までは、どうやら辷り落としたが、
其所
(
そこ
)
から往来まで持ち出すのがまた大変……山
際
(
ぎわ
)
には百姓家の畠があって、四、五月から物を植え附けてある。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
夢の
醒
(
さ
)
め
際
(
ぎわ
)
に少し身を
顫
(
ふる
)
わしていたが、暫くしてから気が附いたらしく、口中で低声に何か
唱
(
とな
)
え
言
(
ごと
)
をしているように見えた。それは「南無」というように聞える。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
部屋へと二人は別れ
際
(
ぎわ
)
に、どうぞチトお遊びにおいで下され。退屈で困りまする。と布袋殿は言葉を残しぬ。ぜひ私の方へも、と辰弥も挨拶に後れず軽く腰を
屈
(
かが
)
めつ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
「これはまた滅相な。成程御姫様の御美しさは、
伎芸天女
(
ぎげいてんにょ
)
も及ばぬほどではございますが、恋は恋、釈教は釈教、まして好物の
御酒
(
ごしゅ
)
などと、一つ
際
(
ぎわ
)
には申せませぬ。」
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
アラブの馬は、皆去勢せねど性悪しきもの少なく、また耳も尾も
截
(
き
)
らず、臨終
際
(
ぎわ
)
までも活溌猛勢だ。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
遊びに疲れた別れ
際
(
ぎわ
)
に「
明日
(
あした
)
もきっとおいで」と言われるままに日ごとにその群れに加わった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
憐
(
あわ
)
れな彼女を愛しようとしても、皮肉な悪戯な悪魔がいて、愛することを妨げられているような、何ともいえない
辛
(
つら
)
い思いに胸を
拉
(
ひし
)
がれながら、やっと終い
際
(
ぎわ
)
の電車に乗って
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そうして
頭
(
あたま
)
を
冷
(
ひや
)
す
薬
(
くすり
)
と、
桂梅水
(
けいばいすい
)
とを
服用
(
ふくよう
)
するようにと
云
(
い
)
って、いやそうに
頭
(
かしら
)
を
振
(
ふ
)
って、
立帰
(
たちかえ
)
り
際
(
ぎわ
)
に、もう二
度
(
ど
)
とは
来
(
こ
)
ぬ、
人
(
ひと
)
の
気
(
き
)
の
狂
(
くる
)
う
邪魔
(
じゃま
)
をするにも
当
(
あた
)
らないからとそう
云
(
い
)
った。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ジェイムズ・ミリガン
氏
(
し
)
はわたしにとびかかって、しめ
殺
(
ころ
)
してでもやりたいような顔をしたが、やがてくるりとかかとをふり向けた。そしてしきい
際
(
ぎわ
)
でかれはふり返って言った。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
禿
(
は
)
げ上がった額の生え
際
(
ぎわ
)
まで充血して、手あたりしだいに巻煙草を
摘
(
つま
)
み上げて
囲炉裡
(
いろり
)
の火に持ってゆくその手は激しく震えていた。彼は父がこれほど怒ったのを見たことがなかった。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
門前に立ってみると、北東風がうす寒く、すぐにも降ってきそうな空
際
(
ぎわ
)
だ。日清紡績の
大煙突
(
だいえんとつ
)
からは、いまさらのごとくみなぎり出した黒煙が、深川の空をおおうて一文字にたなびく。
去年
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
可哀想に、華族様だけは長いきさせてあげても善いのだが、死に神は
賄賂
(
わいろ
)
も何も取らないから仕方がない。華族様なんぞは平生苦労を知らない代りに死に
際
(
ぎわ
)
なんて来たらうろたえた事であろう。
墓
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
源氏節のかかっている野毛の山
際
(
ぎわ
)
の色川亭では
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
自分は帰り
際
(
ぎわ
)
に、母をちょっと次の間へ呼んで、兄の近況を聞いて見た。母はこの頃兄の神経がだいぶ落ちついたと云って喜んでいた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
子飼からその道の飯をくって、
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
の
禿
(
は
)
げ上がりかけている彼らとしては、当然、そういう
嘲笑
(
ちょうしょう
)
にくすぐられるのも、むりはなかった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
畠は
熊笹
(
くまざさ
)
茂る垣根
際
(
ぎわ
)
まで一面の
烈
(
はげ
)
しい日の光に照らされ、屋根よりも高いコスモスが様々の色に咲き乱れている。
葉鶏頭
(
はげいとう
)
の紅が燃え立つよう。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
街道と波打ち
際
(
ぎわ
)
との間には、雪のように真白な砂地が、多分凸凹に起伏しているのであろうけれど、月の光があんまり
隈
(
くま
)
なく照っているために
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「お母さん、そんなにぶらぶらしていらっしゃらないで、ほんとうにお医者さまに
診
(
み
)
て貰ったらどうです」と別れ
際
(
ぎわ
)
に慰めてくれたのもあの娵だった。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と、姿が水へうつって、小
鬢
(
びん
)
の
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
や額のあたりに、めっきりと増えた白い髪がのぞき込んだ嘉門の眼に映った。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その眼は情熱に輝きみちみち、その唇は何とも形容の出来ない
恨
(
うら
)
みに固く
鎖
(
とざ
)
されて、その撫で上げた前髪の
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
には汗の玉が
鈴生
(
すずな
)
りに並んで光っていた。
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
睡眠剤
(
すいみんざい
)
の
覚
(
さ
)
め
際
(
ぎわ
)
は、
縁側
(
えんがわ
)
から足をすとんと踏み
外
(
はず
)
すが如く、
極
(
きわ
)
めてすとん的なるものであって、金博士は
鼾
(
いびき
)
を途中でぴたりと停めたかと思うと、もう次の瞬間には
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今別れ
際
(
ぎわ
)
に声を懸けられたので、
先方
(
むこう
)
は道中の商売人と見ただけに、まさかと思っても
気迷
(
きまよい
)
がするので、
今朝
(
けさ
)
も立ちぎわによく見て来た、前にも申す、その図面をな
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お国の目の縁が少し紅味をさして、
猪口
(
ちょく
)
をなめる唇にも綺麗な
湿
(
うるお
)
いを持って来た。
睫毛
(
まつげ
)
の長い目や、
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
の綺麗な額の
辺
(
あたり
)
が、うつむいていると、
莫迦
(
ばか
)
によく見える。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
広小路から雷門
際
(
ぎわ
)
までは荷物の山で重なっているのですが、それが焼け焼けして雷門へ切迫する。
幕末維新懐古談:13 浅草の大火のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼は、こうして妻と並んでいると、身も心も溶けてしまうような陶酔を感じた。そうした陶酔の
醒
(
さ
)
め
際
(
ぎわ
)
に、彼の
烈
(
はげ
)
しい情火が、ムラ/\と彼の
身体
(
からだ
)
全体を、
嵐
(
あらし
)
のように包むのだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
又「それは
訳
(
わきゃ
)
アねえ、僕が鍋焼饂飩を売ってる場所は、毎晩
高橋
(
たかばし
)
際
(
ぎわ
)
へ荷を
降
(
おろ
)
して、鍋焼饂飩と
怒鳴
(
どな
)
って居るから、君が饂飩を喰う客の
積
(
つも
)
りで、そっと話をすれば知れる
気遣
(
きづかい
)
はあるめえ」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
他人
(
ひと
)
を細々と
観
(
み
)
るのがすきな人だとじきに知った千世子は始終自分のわきに眼が働いて居る様な気がして肇と相対して居るときには例え其の手
際
(
ぎわ
)
は良くなくってもあんまり見すかされないだけの用心を
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
抜け上った
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
から前髪が堤防工事のように高く
聳
(
そび
)
えて、少なくとも顔の長さの二分の一だけ天に向ってせり出している。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「あ、そうだ。左様でございました。道場から帰り
際
(
ぎわ
)
に、渋沢栄一殿が、落とすといかぬと注意してくれましたので——」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
際
常用漢字
小5
部首:⾩
14画
“際”を含む語句
交際
水際
際涯
際限
実際
額際
水際立
間際
際立
生際
空際
出際
人交際
手際
壁際
死際
分際
瀬戸際
山際
溝際
...