)” の例文
のつそりハッと俯伏せしまゝ五体をなみゆるがして、十兵衞めが生命はさ、さ、さし出しまする、と云ひしのどふさがりて言語絶え
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
うして君と是部屋に寝るのも、最早もう今夜りだ。』と銀之助は思出したやうに嘆息した。『僕に取つてはこれが最終の宿直だ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
悪戯いたづら好加減いゝかげんすかな」と云ひながら立ちがつて、縁側へ据付すゑつけの、の安楽椅子いすに腰を掛けた。夫れりぽかんと何か考へ込んでゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
甚兵衛は今日りだと思った。今日を逸して泰平の世になったら、命を助けてもらったほどの恩を返す機会は、絶対に来ないことを知ったからである。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しかして三年この池のほとりに二人は安楽に暮した。しかるに一日夫は狩猟かりに出かけたり家に帰えらなかった。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
甲「さア何時までべん/\と棄置くのだ、二階へ折助おりすけあがったり下りて来んが、さ、これを何う致すのだ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いいえ、これりです。申すだけ申します。世上のやかましい取沙汰を、妻なればこそ、聞いてはおられませぬ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
急所をひどく打ったと見えて、おまきさんは声も出さないで土間へ転げ落ちて、もうそれりになってしまったようですから、わたくしは又びっくりしました。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
維新いしんへんれは靜岡しづをかのおとも、これは東臺とうだい五月雨さみだれにながす血汐ちしほあかこヽろ首尾しゆびよくあらはしてつゆとやえし、みづさかづきしてわかれしりのつま形見かたみ此美人このびじんなり
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みのるは其れり何も云はずにゐた。默つてゐる男が今どんな夢の中にその心のすべてをほどかしてゐるのだらうかと云ふ事を考へながら、みのるはいつまでも默つて歩いてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
此所へ落ちたらそれりだ。藻やひしが手足にからんで、どうにも斯うにも動きが取れなく成るんだぞ。へへ、鯉でさえ、ふなでさえ、大きく成ると藻に搦まれて、往生するという魔所だ。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
何故なぜさうなのでせう。玉川の方でもちゝは一年りでして居たのだつたのにね。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
山治左(『万葉集』)を一切斉墩樹のチサノキ(今名)、すなわちエゴノキりの一種とした時、果してそれが上の二首の万葉歌とピッタリ合ってあえて不都合な事は無いかというと
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
お光さん、どうか悪く思わねえでね、これはこの場り水に流しておくんなよ
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
これりの話だよ、たれにもしらしてはなりませんよ。私がだ若い時分、お里の父上おとうさまえんづかない前にある男に言い寄られて執着しゅうねく追いまわされたのだよ。けれども私は如何どうしても其男の心に従わなかったの。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
其日りに水が落ちて了うのをつねに残念に思うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
道も知らぬ、術も知らぬ、身柄家柄も無い、頼むは腕一本りの者に取っては、気に食わぬ奴は容赦無くたたきって、時節到来の時は、つんのめって海に入る。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夫人と、美しい客間で二人り、何の邪魔もなしに、日曜の午後を愉快に語り暮すことが出来る。さうした楽しい予感で、信一郎の心は、はち切れさうに一杯だつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
彼の顔を抱いて、そういう武蔵の言には、どこか、名残もこれりのような、切実なものがあった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新「どうもしからん鍼医だ、鍼を打ってその穴から水が出るなんという事は無い訳で、堀抜井戸ほりぬきいどじゃア有るまいし、痴呆たわけた話だ、全体う云うものかあれり来ませんナ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
唯亂暴一途に品川へも足は向くれど騷ぎは其座り、夜中に車を飛ばして車町くるまちやう破落戸ごろがもとをたゝき起し、それ酒かへ肴と、紙入れの底をはたき無理を徹すが道樂なりけり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは冤罪えんざいです、全く冤罪です。昨日も云う通り、僕はった一度彼家あすこへ行ったりで、あの女と何等の関係も無いんです。先方むこうではう思っているか知らんが、此方こっち清浄しょうじょう潔白です。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
露西亞式發掘ろしあしきはつくつしかことではい。それり余等は行はぬ。
「あいつさ、あいつはあれりもう来ねえのか?」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
とうとうそれりで散会しました
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夫人と、美しい客間で二人り、何の邪魔もなしに、日曜の午後を愉快に語り暮すことが出来る。そうした楽しい予感で、信一郎の心は、はち切れそうに一杯だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なぜあんな高価なものを持って歩く? すぐ、犯人がつかまったからよいけれど、もし宝石いしをバラバラにしてこかされたら、それりじゃないか。金庫へでもしまッとけ。ばか!
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴方なら貰いたいと云って、江戸屋の半治さんという人を掛合におんなすったら、もう此方こなたへ御縁組になってお引越ひっこしになったと聞き、仕方がないと云ってそれりになって
たゞ亂暴らんぼう品川しながはへもあしくれどさわぎは其座そのざり、夜中よなかくるまばして車町くるまゝち破落戸ごろがもとをたゝきおこし、それさけかへさかなと、紙入かみいれのそこをはたきて無理むりとほすが道樂だうらくなりけり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其証は孔子の御子は伯魚一人りで、幵官氏のしゅつただ一人いちにん、其他に伯魚の弟、妹というものは無かったのでござる、又孔子が継室を迎えられた、それは何氏であったということも
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「何故、あれり来ないんだろう。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「それりだ。何故なぜ
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「もう、いくさも今日りじゃ。城方は兵糧がない上に、山田右衛門作えもさくと申す者が、有馬勢に内応の矢文やぶみを射た」という噂が人々の心を引き立たせた。功名も今日りじゃ。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
内儀ないぎもまだ若いし、あんな小娘と二人りで、よくこんな山里に住んでいられるな」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
面倒なりよきに計らへと皺枯れたる御声にて云ひたまはんは知れてあれど、恐る/\圓道或時、思さるゝ用途みちもやと伺ひしに、塔を建てよと唯一言云はれしり振り向きも為たまはず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
奪られちゃア大変と争うはずみに引裂ひっさかれたから、屋敷へ帰ることも出来ず、貴方の跡をけて此方こちらへ入ったり影も形も見えず、だん/\聞けば、あのお小姓のおうちだとの事ですから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
振向ふりむひててくれねば此方こちらひかけてそでらへるにおよばず、それならせとてりにりまする、相手あいてはいくらもあれども一せうたのひといのでござんすとてなげなる風情ふぜい
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それりかい」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、あれりでございますよ。縹緻きりょうが踏めるので、万一、旅籠代や立て替えが取れなくても、住み込ませる口はあると安心していたところ、先手を打たれてしまいましたわい」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人りで三千円ばかりの資本ではじめたというのですが、この頃なんぞ兄の方は金廻りがよくて、競馬などに行ってるという話……食物くいもの商売は確かにうまく行きさえすればいいんですよ。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
若「でございますが、好い花魁になりますとお初会の処は大概お座敷りで」
と唯一言我知らず云ひ出したるり挨拶さへどぎまぎして急には二の句の出ざる中、煤けし紙に針の孔、油染みなんど多き行燈の小蔭に悄然しよんぼりと坐り込める十兵衞を見かけて源太にずつと通られ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「あれりです」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
喜「もう是れり飲まねえから、よういからもう一本けなよ」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)