邪魔じゃま)” の例文
はらっぱには、がなかったから、がよくたって、そのうえ、邪魔じゃまになるものもないので、すこしのかぜでもたこはよくがりました。
西洋だこと六角だこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「はい、あの、私もそれを承りましたので、お帰りになりませんさきと存じまして、お宿へ、とんだお邪魔じゃまをいたしましてございますの。」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼎造のいわゆるよその雄で鼎造から好意を受けている青年が三人はたしかにいて、金ボタンの制服で出入りするのが、復一の眼の邪魔じゃまになった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
私はその間ここにいては邪魔じゃまになるから、例の小説の資料を採訪すべく、五六日の予定でさらに深く吉野川の源流地方をきわめて来る。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
実にこの歌の通り大小となく仕事するものは、必ず何人なんぴとかにうらみを受けるものである。いわゆる人から邪魔じゃまに思われるものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それ等のものはしかし、私にとってはその村の風景のなかに完全にまじり込んで見えるので、少しも私のそういう思い出を邪魔じゃましなかった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
おせい様をたぶらかしつづけて、もっと金を吐き出させることができたのに、途中から邪魔じゃまがはいって計画がこわれたのが残念であった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
采女という邪魔じゃま外道げどうをなんとか片付けてしまわなければ、姫と山名との縁談がなめらかに進行しないのは判り切っているので
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ホホホホホ、大きな声をお出しでない、隣家おとなりが起きると内儀おかみさんの内職の邪魔じゃまになるわネ。そんならいいよ買って来るから。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「いや、いつも余り長く邪魔じゃましてもすまないから……、それに今日は少し用もあるので、九時ので帰ろうかと思っている。」
愚かな一日 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「もう大丈夫だいじょうぶですね。邪魔じゃまものは追っ払ったから」まさしく野だの声である。「強がるばかりで策がないから、仕様がない」これは赤シャツだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雲は大へんきれいだったし邪魔じゃまもあんまりなかったけれどもほんとうにさびしかったねえ、朝鮮から僕は又東の方へ西風に送られて行ったんだ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
うながし「玉江や、モー十二時だよ」玉江「オヤマア、大変にお邪魔じゃまをしましたね」と遂に両人ともいとまを告げて辞し去りぬ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかるにかれ毎晩まいばんねむらずして、我儘わがままってはほか患者等かんじゃら邪魔じゃまをするので、院長いんちょうのアンドレイ、エヒミチはかれを六号室ごうしつ別室べっしつうつしたのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
マシュウ・パッカアという男が細君さいくん相手に小さく経営している。狭い土間に果実が山のように積んであるので、店へ客がはいってくると邪魔じゃまになる。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そのほかの仕事というたら、夫の仕事の助けをするのか邪魔じゃまをするのか知らんが、やかましく言立てるのが仕事なんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「みなさん、お食事中ですが、至急おしらせして置かなければならないことがありますので、お邪魔じゃまに伺いました」
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お敏さんは神を下された時に、君たち二人の恋の邪魔じゃまをすれば、あの婆の命に関ると、繰返し繰返し云ったそうだ。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あなたのことはかねてたき竜神りゅうじんさんからうかがってります……。ではお言葉ことばしたがってこれからお邪魔じゃまいたそうか……。雛子ひなこ、このおばさまに御挨拶ごあいさつをなさい。
どうかしておっと財産ざいさんのこらず自分じぶんむすめにやりたいものだが、それには、このおとこ邪魔じゃまになる、というようなかんがえが、始終しじゅうおんなこころをはなれませんでした。
こうしてこの太子たいしのおちからで、いろいろの邪魔じゃまはらって、ほとけさまのおおしえがずんずんひろまるようになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
負けないまでも裁判事件のために半年位の時間はそのために邪魔じゃまをされる。フローベルのボワリイ夫人が仏蘭西フランスで裁判になった時は半年位かかって解決した。
国民性の問題 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「水泳の達人たつじんは、自由に水の中を泳ぎまわる。水はその人にとって決して邪魔じゃまではない。それどころか……」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その時、あの短刀は、ふとんのえり邪魔じゃまになって、見えなかったけれど、あたしはもう無我夢中だった。
断崖 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もとより、ほんの小城にすぎないが、清洲と長島との脈絡みゃくらくを中断するには、いかにも邪魔じゃまな地点にある。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まあ、邪魔じゃましないでちょうだい。とにかく、すばらしい舞踏会なの。お客も大勢おおぜいいて、それがみんな若くて、立派で、勇敢ゆうかんで、みんな夢中むちゅうで女王様にこいしているの
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
壁の石が湿気しっけを帯びて光っている。にんじんの髪の毛は、天井てんじょうをこするのだ。彼はそこにいると自分のうちにいる気がし、そこでは邪魔じゃまっけな玩具おもちゃなんかいらない。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「わたしも伯母さんに御相談していただきたいことがありますから、お差支さしつかえなければ、お邪魔じゃまにあがりましょう。ねえ与八さん、この方はわたしの伯母さんなの」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしてまもなく、およいだり、くぐったり出来できようみずあたりにましたが、そのみにく顔容かおかたちのために相変あいからず、ほか者達ものたちから邪魔じゃまにされ、はねつけられてしまいました。
「松風が邪魔じゃまをしそうな所で、よくそんなにお稽古けいこができたものですね、うらやましいことですよ」
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「そのような椋鳥むくどりが飛び込んで参ったとすれば、ほかの女共がいては邪魔じゃまじゃ。下げい。下げい。残らずいつものあの部屋へ閉じこめて、早うその小娘これへ連れい」
「そんな事もあるだろうが、本当のところは、あの祝言の邪魔じゃまをしている人間があるんだ」
作ってある麦は、墓の向うの所謂いわゆる賭博とばくの宿の麦であった。彼は其一部を買って、邪魔じゃまになる部分はドシ/\青麦をぬいてしまい、果物好きだけに何よりも先ず水蜜桃を植えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「いくら今夜が闇の夜でも、誰かその辺に立ち聞きでもしてせっかくの工夫たくらみ邪魔じゃまされては骨折り損でございますゆえ、きたないけれど私の住居すまいでお話しようではございませんか」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で主人は、このお客はきっと、自分の稼業かぎょう邪魔じゃましようとしてこんなことを言うのだろうと思いました。で、やっぱり前夜と同じように腹を立てて、大きな声で言い返しました。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
一男がもう一度、板張の上に帰って来て、「お邪魔じゃましました」と挨拶してからまるで平地へいちを歩くような様子で急な段階を下りて行く姿を、監督は残り惜しそうな眼で見送っていた。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
……なよたけ! もう、僕達の幸福を邪魔じゃまするものは何ひとつありはしないんだよ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
邪魔じゃましよっとじゃなか! よウおッ母さんのところへ、いんじょれ!」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「ようござんしょう。お邪魔じゃまするのも、心ない仕業しわざだ。またお前さんの折角の保養を、妨げても気の毒だ。伝七は明日のうしの刻頃までは、伺いませんから、どうぞゆっくりしておくんなさい」
「おしつまってお邪魔じゃまでございましょうが、ほんのしばらく」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ほこりせるばかりでは、かえっ邪魔じゃまにしかならぬ
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「でもお邪魔じゃまですかしら?」
華やかな罪過 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
にわのすみにえてやろう。そうはやおおきくなりはしないだろうから、邪魔じゃまになりはしない。」といって、にわのすみにえました。
いちじゅくの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いいえ、まだ出して上げません。……お話を聞かなくツちや……でないと袖をくわへたり、乗つたり、悪戯いたずらをして邪魔じゃまなんですもの。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私が下生えに邪魔じゃまをされてなかなか其処まで行くことが出来ずにいると、大きい方の子がその実を少しばかり私のために持って来てくれた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
感情を有することの望ましきをふくましてある積りだが、ただ感情の入って邪魔じゃまになるところに、感情をるるべからずというに過ぎぬので
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これは御覧のように生物一ついないのですから邪魔じゃまもはいらぬだろう、と考えて、まあ月の方をえらんだわけです。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(そしてお家はまだたなかったんですね、いやお食事しょくじのところをお邪魔じゃましました。ありがとうございました。)
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それではお邪魔じゃまいたしましょうとようやくおれの云う事を聞いてくれた。世の中には野だみたように生意気な、出ないで済む所へ必ず顔を出す奴もいる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
てめえ未来このさきに持っている果報の邪魔じゃまはおれはしねえ、つらいと汝てめえがおもうなら辛いつきあいはさせたくねえから。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)