車輪しやりん)” の例文
とき流行りうかうといへば、べつして婦人ふじん見得みえ憧憬しようけいまとにする……まととなれば、金銀きんぎんあひかゞやく。ゆみまなぶものの、三年さんねん凝視ぎようしひとみにはまとしらみおほきさ車輪しやりんである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれども勞働者の唄はふたゝきこえなかツた。たゞきしめ車輪しやりん鐵槌てつつゐの響とがごツちやになツてきこえるばかりだ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
すな喰止くひとまること出來でき齒輪車はぐるまは、一尺いつしやくすゝんではズル/″\、二三じやく掻上かきあがつてはズル/″\。其内そのうち車輪しやりん次第しだい々々にすなもれて、最早もはや一寸いつすんうごかなくなつた。
斯くする事數回におよべば、各の紐夫々に延びて、全体の形、あたか車輪しやりんの如くにりて勢好く廻轉す。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
いだくるま一散いつさん、さりながらつもゆき車輪しやりんにねばりてか車上しやじやう動搖どうえうするわりあはせてみちのはかはかず萬世橋よろづよばしころには鐵道馬車てつだうばしや喇叭らつぱこゑはやくえて京屋きやうや時計とけい十時じふじはうずるひゞきそらたか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれども、おとひゞきもない車輪しやりんが美くしくうごいて、意識に乏しい自分を、半睡の状態でちうはこんで行く有様が愉快であつた。青山あをやまうちへ着く時分には、きた頃とはちがつて、気色きしよくが余程晴々してた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
愚かや乗れるその車輪しやりんふるへつつちぢまりてゆく。
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
車輪しやりんめぐるあはれさよ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
鐵車てつしやは、險山けんざん深林しんりん何處いづくでも活動くわつどう自在じざいだが、このすなすべりのたにだけでは如何どうすること出來できぬのである、萬一まんいちして、非常ひじやうちからで、幾度いくたび車輪しやりん廻轉くわいてんしてたがまつた無效むだだ。
なに製造せいぞうするのか、間断かんだんなしきしむでゐる車輪しやりんひびきは、戸外こぐわいに立つひとみみろうせんばかりだ。工場こうば天井てんじよう八重やえわたした調革てうかくは、あみとおしてのたつ大蛇のはらのやうに見えた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
しづかにつてゐるのでは火事くわじとほいよ。」「まあ、さうね。」といふ言葉ことばも、てないのに、「中六なかろく」「中六なかろく」と、ひしめきかはす人々ひと/″\こゑが、その、銀杏いてふしたから車輪しやりんごときしつてた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かるいほこりうす車輪しやりんをめぐる……
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
非常ひじやう強烈きようれつになつて、ほとんど四百四十馬力ばりき蒸滊機關じようききくわん匹敵ひつてきよしこの猛烈まうれつなる動力どうりよくが、接合桿せつがふかんをもつて車外しやぐわい十二車輪しやりんうごかし、つひこの堅固けんごなる鐵檻てつおりくるま進行しんかうはじめるのである。
………ザヾツ、ぐわうとつて、川波かはなみ山颪やまおろしとともにいてると、ぐる/\と𢌞まは車輪しやりんごとくろずんだゆきうづに、くる/\とひながら、ふは/\とまアしてうちかへつた——ゆめではない。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ほとん形容けいよう出來できないおとひゞいて、ほのほすぢうねらした可恐おそろし黒雲くろくもが、さらけむりなかなみがしらのごとく、烈風れつぷう駈𢌞かけまはる!……あゝ迦具土かぐつちかみ鐵車てつしやつて大都會だいとくわい燒亡やきほろぼ車輪しやりんとゞろくかとうたがはれた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)