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踵
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くびす
ふりがな文庫
“
踵
(
くびす
)” の例文
陳亢
(
ちんこう
)
も伯魚も、夢中になって孔子の言葉に聞き入った。二人の足は、ややともすると、孔子の
踵
(
くびす
)
をふみそうにさえなることがあった。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
エミリウス・フロルスは同じ
赤光
(
あかびかり
)
のする向側の石垣まで行くと、きつと
踵
(
くびす
)
を
旋
(
めぐ
)
らして、蒼くなつてゐる顔を
劇
(
はげ
)
しくこちらへ振り向ける。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
すなわち三四台の週期で、著しい満員車が繰り返され、それに次ぐ二三台はこれに
踵
(
くびす
)
を接して、だんだんに空席の多いものになる。
電車の混雑について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
やがてするりと
踵
(
くびす
)
を
回
(
めぐ
)
らして、女の前に、白き手を執りて、発熱かと怪しまるるほどのあつき唇を、冷やかに柔らかき甲の上につけた。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其父
(
そのちち
)
、
戰
(
たたか
)
ひて
(七三)
踵
(
くびす
)
を
旋
(
めぐら
)
さずして、
遂
(
つひ
)
に
敵
(
てき
)
に
死
(
し
)
せり。
呉公
(
ごこう
)
、
今
(
いま
)
又
(
また
)
其子
(
そのこ
)
を
吮
(
す
)
ふ。
妾
(
せふ
)
、
(七四)
其死所
(
そのししよ
)
を
知
(
し
)
らず。
是
(
ここ
)
を
以
(
もつ
)
て
之
(
これ
)
を
哭
(
こく
)
するなり
国訳史記列伝:05 孫子呉起列伝第五
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
▼ もっと見る
而して駒ヶ嶽登臨の客は多くこの地よりするを以て、
夏時
(
かじ
)
は
白衣
(
はくい
)
の
行者
(
ぎやうじや
)
陸續として
踵
(
くびす
)
を接し、旅亭は人を以て
填
(
うづ
)
めらるゝと聞く。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
やがて、三足、四足と、急速に
踵
(
くびす
)
を返すと、まっしぐらに、身をねじ向けた娘、そのまま真一文字に、もと来た道へ
馳
(
は
)
せ下ってしまいます。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
油ひきたる物燃ゆれば炎はたゞその
表面
(
おもて
)
をのみ駛するを常とす、かの
踵
(
くびす
)
より
尖
(
さき
)
にいたるまでまた斯くの如くなりき 二八—三〇
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
ソロドフニコフは
踵
(
くびす
)
を
旋
(
めぐら
)
して、忽然大股にあとへ駈け戻つた。ぬかるみに踏み込んで、ずぼんのよごれるのも構はなかつた。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
お高はふと、この弟もいまの屋敷よりはこの貧しい家のほうに心ひかれているのではないか、そんなことを考えながら間もなく
踵
(
くびす
)
をかえした。
日本婦道記:糸車
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これを羨みこれを慕う凡俗の群は、
踵
(
くびす
)
を揃えてこれに学びこれに倣って、万古に尽きせぬ濁流を人類文化の裡面に逆流させるからであります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ザロメはその結果に満足して、あたかも後悔してる人民どもを許してやる女王のような様子で、
踵
(
くびす
)
をめぐらして出て行った。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
敵の宿屋七左衛門も、自己の一突きで
赤母衣
(
あかほろ
)
の小武者は死したものと思い、
踵
(
くびす
)
を
回
(
かえ
)
して、十四、五間も先へ歩を移していた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
着物の袖と袖の間に顔を突っ込み、がっくりとして声を発していたが、やがて
踵
(
くびす
)
をかえし、すたすたと門口へ消えて行く。
一老人
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
馬の背に立つ
巌
(
いわお
)
、狭く鋭く、
踵
(
くびす
)
から、
爪先
(
つまさき
)
から、ずかり
中窪
(
なかくぼ
)
に削った
断崖
(
がけ
)
の、見下ろす
麓
(
ふもと
)
の白浪に、
揺落
(
ゆりおと
)
さるる
思
(
おもい
)
がある。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
相川父子に
踵
(
くびす
)
を接して、警視庁の蓑浦捜査係長が再び訪れて来た。異様な会議室の人数は段々
殖
(
ふ
)
えて行くばかりであった。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼の三尺帯三本を竿に懸けて孔雀だと云つて見せた類で、極て原始的な詐偽であつた。そしてそれに銭を捨てて入るものが
踵
(
くびす
)
を接したものである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ふと
踵
(
くびす
)
を
返
(
かえ
)
して、二
足
(
あし
)
三
足
(
あし
)
、
歩
(
ある
)
きかかった
時
(
とき
)
だった。
隅
(
すみ
)
の
障子
(
しょうじ
)
を
静
(
しず
)
かに
開
(
あ
)
けて、
庭
(
にわ
)
に
降
(
お
)
り
立
(
た
)
った
春信
(
はるのぶ
)
は、
蒼白
(
そうはく
)
の
顔
(
かお
)
を、
振袖姿
(
ふりそですがた
)
の
松江
(
しょうこう
)
の
方
(
ほう
)
へ
向
(
む
)
けた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
恐らくこの愉快は、氏の
踵
(
くびす
)
に接して来た我々の時代、或は我々以後の時代の青年のみが、特に痛感した心もちだらう。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、
踵
(
くびす
)
をかへして、柊の木の方へむかひました。百姓はがつかりした様子で川沿ひの村の方へ急いでいきました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
イワン・フョードロヴィッチは黙ったまま、しかし何やら思い惑った様子で、無言のまま耳門のほうへ
踵
(
くびす
)
を転じた。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
けれど、ポズドヌイシェフはそれには耳も貸さず、くるりと
踵
(
くびす
)
を転じると、そのまま自分の席へ帰ってしまった。弁護士と婦人とは、ひそ/\話を始めた。
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
言ふ間もなく
踵
(
くびす
)
を返して、今来た路を
自暴
(
やけ
)
に大跨で帰つて行く。信吾は其後姿を見送り乍ら、愍む様な軽蔑した様な笑ひを浮べた。静子は心持眉を
顰
(
ひそ
)
めて
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
踵
(
くびす
)
に於てする眞人の氣息のことは南華其の他の道經に見えてゐるが、それも氣息の義のみと解しては通じない。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
との忠相の言葉に、栄三郎は、はっと気がついたようにじろりと忠相を見やりながら
踵
(
くびす
)
をめぐらそうとしたが!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それからくるりと
踵
(
くびす
)
を返して、あの曲りくねった露路の中を野犬のようにしょんぼりと帰ってくるのだった。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
お客は
踵
(
くびす
)
を
旋
(
めぐら
)
して逃げた。これで命に別状はない。昼のお客はその跡からぞろぞろ出て、曲馬場をあけた。
防火栓
(新字旧仮名)
/
ゲオルヒ・ヒルシュフェルド
(著)
大叫喚の地鳴りを立てている岩石の上に、赤い湯もじ一つにされ、
突立
(
つった
)
たせられている一人のうら若い女性がある。
丈
(
たけ
)
なす髪はかの女の
踵
(
くびす
)
まで届くかに見える。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
その時、だしぬけにはぎ野らしく、もう、永居してはと、りこうにも
踵
(
くびす
)
をかえそうとした。そしていかにこの場を
遁
(
のが
)
れるために油の説明が効いたか分らなかった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
学士は
暫
(
しばら
)
くの間、プラットフォオムに立ち止まって、見送っていたが、ゆるやかに
踵
(
くびす
)
を
旋
(
めぐ
)
らして帰った。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
陽光眩しい戸外へと
踵
(
くびす
)
を返したが、兵員たちはせっかく再生の喜びを抱いて上陸した陸地が無人の廃墟であり、そこから土人の娘一人飛び出してくるでもなければ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
次には「またその強き
歩履
(
あゆみ
)
は
狭
(
せば
)
まり、その計るところは自分を陥しいる、すなわちその足に
逐
(
お
)
われて網に到り、また
陥阱
(
おとしあな
)
の上を歩むに
索
(
なわ
)
その
踵
(
くびす
)
に
纏
(
まつわ
)
り
罠
(
わな
)
これを
執
(
とら
)
う」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
平地のくぼみ、地勢の変化、好都合な横道、森、低谷なども、軍隊と呼ばるるその巨大の
踵
(
くびす
)
を止め、その退却を抑止することができる。戦場より出る者は敗者である。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「一日の
苟安
(
こうあん
)
は、数百年の大患なり、
今
(
い
)
ま
徒
(
いたずら
)
に
姑息
(
こそく
)
以て処せば、その我を軽侮するもの、
豈
(
あ
)
に独り露人のみならん。四方の
外夷
(
がいい
)
、我に意あるもの、
踵
(
くびす
)
を接して起らん」
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
黙つて兄から顔を視守られてゐると、どう反抗しようもなくなつて来て、丁度先の電車が動き出さうとした
機勢
(
はずみ
)
に、
踵
(
くびす
)
をめぐらして、それに飛び乗つて了つたのである。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
天罰
踵
(
くびす
)
を返さずとはこの事ぢや。その方も舌長なことをほざくと、無事で此處からは
還
(
かへ
)
られぬぞ
銭形平次捕物控:219 鐘の音
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
人々がもしあの少女を見たならば瞳をめぐらして自分を見出さないで欲しい。もしも又前から自分を見てゐたならば、
踵
(
くびす
)
を返してあの少女に目をとめないで欲しいと祈つた。
三十三の死
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
すなわち一八九九年彼カナダにおもむくの途中一たび開戦の報を耳にするや、彼は直ちに
踵
(
くびす
)
をめぐらし、
馳
(
は
)
せてロンドンに帰り、即時に猛烈なる非戦運動を始めたのである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
当時文風
甚
(
はなはだ
)
盛ニシテ、名士
踵
(
くびす
)
ヲ接シテ
壇坫
(
だんてん
)
ニ
出
(
い
)
ヅ。
旗幟
(
きし
)
林立スルコト雲ノ如シ。頼三樹兄弟、
池内陶所
(
いけうちとうしょ
)
、藤本鉄石ノ諸人皆
与
(
とも
)
ニ交ヲ訂ス。詩酒徴逐スルゴトニ
縦
(
ほしいまま
)
ニ古今ヲ談ズ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
われは奇を好む心に驅られて、直に
踵
(
くびす
)
を兵卒に接したれば、先づ足を此山の巓に着けたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ひとたび
主
(
しゅう
)
に放れた浪人は喰うことができない、
何人
(
だれ
)
も抱え手がないという事実に圧迫されて、小平太のほかにも、誓書を頭領にいたして、
新
(
あらた
)
に義盟につくもの前後
踵
(
くびす
)
を接した。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
そこで、また
踵
(
くびす
)
をめぐらして
岩角
(
がんかく
)
と雑草の間の
小径
(
こみち
)
を
香木
(
こうぼく
)
峡の乗船地へと
向
(
むか
)
っておりた。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
フリツツは
踵
(
くびす
)
を
旋
(
めぐ
)
らして、ポツケツトに両手を入れた儘、ぶら/\広場へ戻つて来た。心中非常に満足して、凱歌を奏するやうに、「茶色のジヤケツはどこにも見えない」と思つて見た。
駆落
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
そして
踵
(
くびす
)
をかえすと、弾丸のように、怪塔王の胸もと目がけてとびつきました。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
或
(
ある
)
者は猟銃を撃った。散弾が轟然として
四辺
(
あたり
)
に
迸
(
ほとばし
)
ると、頑強の敵も
流石
(
さすが
)
に
胆
(
きも
)
を
挫
(
ひし
)
がれたらしい、
踵
(
くびす
)
を
旋
(
かえ
)
してばらばらと逃げ出した。巡査等は
勝
(
かつ
)
に乗って追い詰めると、穴は
漸
(
ようや
)
く広くなった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は、あのゲーム取りの娘の、涙にくれる姿を胸に描いて
踵
(
くびす
)
を返した。
撞球室の七人
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
俺
(
お
)
らそれから、
喧嘩
(
けんくわ
)
ぢや
負
(
ま
)
けたこたねえだよ、
野郎
(
やらう
)
何
(
なん
)
だつち
内
(
うち
)
にや
打
(
ぶ
)
つ
張
(
ぱ
)
るか、
掻
(
か
)
つ
轉
(
ころが
)
すかだな、ごろり
轉
(
ころ
)
がつた
處
(
ところ
)
爪先
(
つまさき
)
と
踵
(
くびす
)
持
(
も
)
つてかうぐる/\
引
(
ひ
)
ん
廻
(
まあ
)
すとどうだ
大
(
えけ
)
え
野郎
(
やらう
)
でも
起
(
お
)
きらんねえだよ
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
信一郎は、可なりキツパリと断りながら、急いで
踵
(
くびす
)
を返さうとした。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
おそらく退屈に耐えずして
踵
(
くびす
)
を返すだろう。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
猫のようにぷうとやる、
踵
(
くびす
)
で壁を蹴る。
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
“踵(かかと)”の解説
かかと(踵)は、足の裏の最も後(背中側)の部分である。きびすとも言う。靴ではかかとの下の靴底を厚くするのが普通で、英語の heel からヒールとも言う。靴のこの部分を指してかかとと言うこともある。
(出典:Wikipedia)
踵
漢検1級
部首:⾜
16画
“踵”を含む語句
相踵
接踵
高踵靴
踵鉄
高踵
円踵
前踵部
対踵地
対踵的
後踵
膕踵
赤踵
踵摺
追踵