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謙遜
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けんそん
ふりがな文庫
“
謙遜
(
けんそん
)” の例文
先方は
謙遜
(
けんそん
)
して、
蒔岡
(
まきおか
)
さんと私とでは身分違いでもあり、薄給の身の上で、そう云う結構なお嬢様に来て
戴
(
いただ
)
けるものとも思えないし
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
謙遜
(
けんそん
)
か、
傲慢
(
ごうまん
)
か、はた彼の国体論は
妄
(
みだり
)
に仕うるを欲せざりしか。いずれにもせよ彼は依然として饅頭焼豆腐の境涯を離れざりしなり。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
ですがごく質素だということは、
謙遜
(
けんそん
)
深い性質や
淳朴
(
じゅんぼく
)
な趣きを与える原因になります。いわば貧しさの美しさとでも申しましょうか。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そして自分の無能と不心得から、無惨にも離散になっている妻子供をまとめて、
謙遜
(
けんそん
)
な気持で継母の畠仕事の手伝いをして働こう。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
「繁野さんは家庭でもさびしいほど静かな人だし、
謙遜
(
けんそん
)
で温厚な人だということを知らない者はない、これは少しも誇張のない事実だ」
霜柱
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
奈何
(
いかん
)
せん寒微より起りて、智浅く徳
寡
(
すくな
)
し、といえるは、
謙遜
(
けんそん
)
の態度を取り、
反求
(
はんきゅう
)
の工夫に切に、
諱
(
い
)
まず飾らざる、誠に美とすべし。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
『もう
爲
(
し
)
ないから、
萬望
(
どうぞ
)
話
(
はな
)
して
頂戴
(
ちやうだい
)
な』と
愛
(
あい
)
ちやんは
極
(
ご
)
く
謙遜
(
けんそん
)
して、『二
度
(
ど
)
と
喙
(
くち
)
を
容
(
い
)
れないわ。
屹度
(
きつと
)
そんな
井戸
(
ゐど
)
が
一
(
ひと
)
つ
位
(
くらゐ
)
あつてよ』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
思い上がった女性ではあるが、さすがに源氏に主君としての礼を取る態度が
謙遜
(
けんそん
)
であった。この
聡明
(
そうめい
)
さは明石の魅力でもあった。
源氏物語:23 初音
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
謙遜
(
けんそん
)
な、いえばおのずからそれが江戸まえのくろ塀をめぐらしたその表構えが「古い浅草」のみやびと落ちつきとをみせていた。
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
美しいテノルで歌い出すと、今まで
謙遜
(
けんそん
)
であった彼とは別人のように、燃えるような目を輝かせ肩をそびやかして勇ましい一曲を歌った。
旅日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
雪之丞は
謙遜
(
けんそん
)
深く、そんな
相槌
(
あいづち
)
を打ちながら、さしかかったのが、横町を行きつくして、御蔵前通りの、暗く淋しい曲り角——。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それに、僕のほうでも考えるし、悪いところは直しもする。
謙遜
(
けんそん
)
ぶらずにいえば、僕、だんだん人間がましにはなって来たんだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
足らぬ、至らぬという
謙遜
(
けんそん
)
な心があってこそ物事が上達する、上達の道は無限であるによって、謙遜の心も無限でなければならぬ
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
猪木君が「自分の努力のはかなさを感ずる」といった言葉は、あくまでも
謙遜
(
けんそん
)
の言葉としてのみ受取らるべきでありましょう。
青年の思索のために
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
徒刑囚のうちのある者など、徒刑場に名の響き渡ってる者などは、歓呼と
喝采
(
かっさい
)
とを浴びせられて、それを一種のほこらかな
謙遜
(
けんそん
)
さで迎えた。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そしてそれは男が
謙遜
(
けんそん
)
にもできるだけ広い愛を持ち、その愛情を示すことにより、一層、筒井を愛したような迫ったものさえうかがわれた。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「なんですねお二人とも、妙な所で
謙遜
(
けんそん
)
のしっこをなさるのね。岡さんだってそうお弱くはないし、古藤さんときたらそれは意志堅固……」
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ほんとうにその
返事
(
へんじ
)
は
謙遜
(
けんそん
)
な
申
(
もう
)
し
訳
(
わ
)
けのような
調子
(
ちょうし
)
でしたけれども私はまるで立っても
居
(
い
)
てもいられないように思いました。
サガレンと八月
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
謙遜
(
けんそん
)
ではあったが、それは要するに自己批判の過剰から来ているらしく、且つそれは商家の子弟に共通する性質でもあった。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
フリーダはとても
謙遜
(
けんそん
)
だから、あなたがそんなことをたずねようとするならば、きっとそんなことは少しも知らないと主張するだろうけれど。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
そうしてその
眼
(
め
)
には
暖
(
あたたか
)
な
健全
(
けんぜん
)
な
輝
(
かがやき
)
がある、
彼
(
かれ
)
はニキタを
除
(
のぞ
)
くの
外
(
ほか
)
は、
誰
(
たれ
)
に
対
(
たい
)
しても
親切
(
しんせつ
)
で、
同情
(
どうじょう
)
があって、
謙遜
(
けんそん
)
であった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「いやーよ、ばぶ」と大きな声を出す。「おお、よしよし坊ばちゃんからなさい。何と云うの?」と雪江さんは
謙遜
(
けんそん
)
した。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
異才の弟子の能力に高田も
謙遜
(
けんそん
)
した表情で、誇張を避けようと努めている苦心を梶は感じ、
先
(
ま
)
ずそこに信用が置かれた気持良い一日となって来た。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
赤裸々
(
せきらゝ
)
に、
眞面目
(
まじめ
)
に、
謙遜
(
けんそん
)
に
悔
(
く
)
ゐることの、
悲痛
(
ひつう
)
な
悲
(
かな
)
しみと、しかしながらまた
不思議
(
ふしぎ
)
な
安
(
やすら
)
かさとをも
併
(
あは
)
せて
經驗
(
けいけん
)
した。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
そしてたまたま艇のことに及んでもお互いに冷たい好意で敵手のことを
賞
(
ほ
)
め、わざとらしいまでに自分の方を
謙遜
(
けんそん
)
した。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
天稟
(
てんぴん
)
の正直と温和で
謙遜
(
けんそん
)
で
冷静
(
れいせい
)
な点において、なんぴとからも尊敬せられ、とくに富士男とは親しいあいだがらである。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
そしていま迄、
下手
(
したで
)
に
謙遜
(
けんそん
)
に学び取っていた仕方は今度からは、争い食ってかかる
紛擾
(
ふんじょう
)
の間に相手から
捥
(
も
)
ぎ取る仕方に方法を替えたに過ぎなかった。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「そう
謙遜
(
けんそん
)
したものでもなかろう。バルザックやドウデエなぞを読出したのは、君の方が僕より早いぜ——見給え」
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「しかし、わしもまだ、一介の学僧にすぎんのじゃから、果たして、範宴どのの求められるほどの
蘊蓄
(
うんちく
)
がこちらにあるかないかは知らぬ」と
謙遜
(
けんそん
)
した。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、
私
(
わたし
)
は、まだ
未熟
(
みじゅく
)
でございます。あなたの
足
(
あし
)
もとへもまいりません。」と、
乙
(
おつ
)
は、
謙遜
(
けんそん
)
して、
答
(
こた
)
えました。
二人の軽業師
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
あなたの芸術的天稟と盛んな、
謙遜
(
けんそん
)
な、研究心と深い微細な感情とはあなたを大きな器にするに相違ありません。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
が、二葉亭は極めて狷介な負け嫌いであると同時にまた極めて
謙遜
(
けんそん
)
であって、
如何
(
いか
)
なる人に対しても必ず先ず謙虚して
教
(
おしえ
)
を待つの礼を
疎
(
おろそ
)
かにしなかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
余
(
よ
)
の
陳列所
(
ちんれつじよ
)
の
雨垂
(
あまだ
)
れ
落
(
おち
)
に
積重
(
つみかさ
)
ねてある
打製石斧
(
だせいせきふ
)
は、
數
(
かぞ
)
へては
見
(
み
)
ぬが、
先
(
ま
)
づ
謙遜
(
けんそん
)
して六七千
箇
(
こ
)
は
有
(
あ
)
ると
云
(
い
)
はう。
精密
(
せいみつ
)
に
計算
(
けいさん
)
したら、
或
(
あるひ
)
は一
萬
(
まん
)
に
近
(
ちか
)
いかも
知
(
し
)
れぬ。
探検実記 地中の秘密:05 深大寺の打石斧
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
石川氏は既に一流の大家であって、堂々門戸を張っている当時の
流行
(
はやり
)
ッ
児
(
こ
)
ですが、それでいて言葉使い、物腰、いかにも
謙遜
(
けんそん
)
で少しも高ぶったところがない。
幕末維新懐古談:46 石川光明氏と心安くなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
それで最初何か自信のなさから来る
謙遜
(
けんそん
)
めいたものを豹一に見ていた者も、否応なしに
傲慢
(
ごうまん
)
だと思わされた。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
謙遜
(
けんそん
)
する大隅を主座になおして、学者たちは矢追村における異常成長現象について、思うままの質問をした。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そう言うことのあった度に、早合点で
謙遜
(
けんそん
)
なわれわれは、理会に
煉熟
(
れんじゅく
)
していない自分を恥じて来たものだ。
詩語としての日本語
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
かう云ふ不安は、彼の上に、何よりも堪へ難い、落莫たる孤独の情を
齎
(
もたら
)
した。彼は彼の尊敬する和漢の天才の前には、常に
謙遜
(
けんそん
)
である事を忘れるものではない。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「田舎者で一向届きませんが、母がまめに働くので、小泉さんのお世話は好くいたします」と
謙遜
(
けんそん
)
する。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「いや、いまはそんな、つまらぬ
謙遜
(
けんそん
)
なんかしている時代じゃありませんよ。それでは、私は少し質問しますが、記憶に残っているところだけでも答えて下さい。」
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
頸垂
(
うなだ
)
れていた顔を上げ山吹はまたその人を見た。とその人はまた微笑し、さも
謙遜
(
けんそん
)
に
堪
(
た
)
えないように
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
互
(
たがい
)
の世界はちがっていても、
謙遜
(
けんそん
)
しあうのが夫婦の道、だが絶縁状を見たうえは、何とか処置する。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
兵さんは、
謙遜
(
けんそん
)
していた。それにまた二十貫という石は、誰にしても担ぎあげられそうになかった。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
私
(
わたし
)
は
勿論
(
もちろん
)
どつちが
危険
(
きけん
)
だかといふ
明白
(
めいはく
)
な
意識
(
いしき
)
なくして、たゞ
漠然
(
ばくぜん
)
と
半
(
なかば
)
謙遜
(
けんそん
)
の
気持
(
きもち
)
で
言
(
い
)
つたのであつたが、S、H
氏
(
し
)
がまたさう
云
(
い
)
ふ
風
(
ふう
)
の
謙遜
(
けんそん
)
な
意味
(
いみ
)
で
答
(
こた
)
へたのに
出会
(
であ
)
つて
微笑の渦
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
音楽では、
高慢
(
こうまん
)
になって
嘘
(
うそ
)
をつけば、きっと
罰
(
ばち
)
があたる。音楽は
謙遜
(
けんそん
)
で
誠実
(
せいじつ
)
でなくてはならない。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「なるほど。奥様はよくおっしゃるな。ご
謙遜
(
けんそん
)
のつもりで、頭のわるい子ですからとおっしゃる」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
平次の
謙遜
(
けんそん
)
な調子に氣をよくして、淺吉は
先輩
(
せんぱい
)
らしく本堂の奧に頑張りました。其處から居流れて、弟子世話人達十五六人、平次と八五郎はそれを挾んで左右に控へます。
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分を
三下
(
さんした
)
だとしている声だ。
謙遜
(
けんそん
)
や
卑下
(
ひげ
)
ではなく、自分まで冷たく突っ放している声だった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
そうして釈尊の教えられた最も
謙遜
(
けんそん
)
の
行
(
ぎょう
)
すなわち
頭陀乞食
(
ずだこつじき
)
を行うて行かんには何ぞ旅行費なきを
憂
(
うれ
)
えんやというような訳で、これが無銭で大旅行を決心した理由であります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
が、今夜ほど
謙遜
(
けんそん
)
な、そして人間らしい気持ちになってる時は自分でも珍らしいと思えた。
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
謙
常用漢字
中学
部首:⾔
17画
遜
常用漢字
中学
部首:⾡
14画
“謙遜”で始まる語句
謙遜家
謙遜心
謙遜者