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諂
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へつら
ふりがな文庫
“
諂
(
へつら
)” の例文
「お
追従
(
ついしょう
)
は止して下さい。ひとりの姜維を得たとて、街亭の大敗は
補
(
おぎな
)
えません。いわんや失った蜀兵をや。
諂
(
へつら
)
いは軍中の禁物です」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
諂
(
へつら
)
つてもらはなくちやならない——音樂にダンスに交際社界がなくちやならない——でなければがつかりして
滅入
(
めい
)
り込んでしまふ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
さるにても
暢気
(
のんき
)
の
沙汰
(
さた
)
かな。我に
諂
(
へつら
)
い我に
媚
(
こ
)
ぶる
夥多
(
あまた
)
の男女を客として、
貴
(
とうと
)
き身を
戯
(
たわむれ
)
に
謙
(
へりくだ
)
り、商業を
玩弄
(
もてあそ
)
びて、
気随
(
きまま
)
に一日を遊び暮らす。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼我に、わが求むるものはその
反對
(
うら
)
なり、こゝを立去りてまた我に累をなすなかれ、かく
諂
(
へつら
)
ふともこの
窪地
(
くぼち
)
に何の益あらんや 九四—九六
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
最後に「信」の重要性を説いた章と、三代の「礼」の恒久性を説いた章と、「其の
鬼
(
き
)
に非ずして祭るは
諂
(
へつら
)
うなり、義を見て
為
(
せ
)
ざるは勇なきなり」
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
▼ もっと見る
また曰く「田中は選挙民に
諂
(
へつら
)
うために絶叫するだけのことだ。鉱毒運動をやめれば無競争では出られない。選挙運動だ」
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
彼が成功してるからといって
諂
(
へつら
)
ってくる者ども——オービネのいわゆる、「一匹の犬がバタ
壺
(
つぼ
)
に頭をつっ込むと祝賀のためにその
髭
(
ひげ
)
をなめに来る」
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
クサカはまだ人に
諂
(
へつら
)
う事を知らぬ。
余所
(
よそ
)
の犬は後脚で立ったり、膝なぞに体を摩り付けたり、嬉しそうに吠えたりするが、クサカはそれが出来ない。
犬
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
この時私はどこの国でも下の者に対してむやみに威張る奴は必ず上に対して
諂
(
へつら
)
う奴、上に対して非常に諂って居る奴はきっと下に対して威張る奴で
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
そして、モーガンが彼の席へよろめき帰ると、シルヴァーは私に内証話のような囁き声で言ったが、それは非常に
諂
(
へつら
)
うような調子に私には思えた。——
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
きらわれないでしかも恐れられることが肝心なのである。彼はまた政治家はその周囲に優秀な人物を持たねばならぬが、
諂
(
へつら
)
い家はさけねばならぬという。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
第一幕の幕が開くと周旋人のゴローが、ピンカートンに木と紙で出来た二人の愛の家の説明を
諂
(
へつら
)
いながらしてきかせ、女中や下男を呼び出して紹介します。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
多右衛門は別に辞退もせずさりとて
卑
(
いや
)
しく
諂
(
へつら
)
いもせず平気で飲みもし食いもしたがやがてゴロリと横になった。
日置流系図
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そこでホヒの神を
遣
(
つかわ
)
したところ、この神は大國主の命に
諂
(
へつら
)
い
著
(
つ
)
いて三年たつても御返事申し上げませんでした。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
何物かに
媚
(
こ
)
び
諂
(
へつら
)
ふ習癖、自分自身にさへひたすらに媚び諂うた浅間しい虚偽の形にしか過ぎないのであつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
肩をそびやかして
諂
(
へつら
)
い笑い、巧言令色、太鼓持ちの
媚
(
こび
)
を献ずるがごとくするはもとより厭うべしといえども、苦虫を噛み潰して熊の
胆
(
い
)
をすすりたるがごとく
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
なぜかと云ふにセルギウスが目にはどうも、ニコデムスは長老に媚び
諂
(
へつら
)
つてゐるやうに見えてならない。さてそのニコデムスが側へ来て、叮嚀に礼をして云つた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
頻
(
しき
)
りに勧業の事に心を用ひしかば上の好む所下之より
甚
(
はなはだ
)
しき者ありて地方官の如きは往々民間の事業を奪ひて之を県庁の事業とし以て大官に
諂
(
へつら
)
はんとする者あり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
さすがに
可哀
(
かわい
)
そうに思ってそれを彼らの方へ廻してやると、満面に
諂
(
へつら
)
い笑いを浮べて引ったくるようにして取り合い、そういう時には何ほど
嬉
(
うれ
)
しいのであろうか
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
人
(
ひと
)
が
彼
(
かれ
)
を
欺
(
あざむ
)
いたり、
或
(
あるい
)
は
諂
(
へつら
)
ったり、
或
(
あるい
)
は
不正
(
ふせい
)
の
勘定書
(
かんじょうがき
)
に
署名
(
しょめい
)
をすることを
願
(
ねが
)
いでもされると、
彼
(
かれ
)
は
蝦
(
えび
)
のように
真赤
(
まっか
)
になってひたすらに
自分
(
じぶん
)
の
悪
(
わる
)
いことを
感
(
かん
)
じはする。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
山科の
丿観
(
へちかん
)
は、利休と同じ頃の茶人だった。丿観は利休の茶に幾らか
諂
(
へつら
)
い気味があるのを非難して
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
貧しい者の悲しみや、露骨なみにくい競いや、
諂
(
へつら
)
いをこれ事としている人間を見て大きくなった。
海賊と遍路
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
手も
能
(
よ
)
く書く、力も強く、
他
(
ひと
)
は
否
(
いや
)
に
諂
(
へつら
)
うなどと申すが、
然
(
そ
)
うでない、真実愛敬のある人で、
私
(
わたくし
)
が此の間会った時にこれ/\云って、彼は誠の侍でどうも忠義
一途
(
いちず
)
の人であります
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
伏
(
ふ
)
して
以
(
おも
)
う、
混淪
(
こんりん
)
の二気、初めて天地の形を分つや、高下三歳、鬼神の数を列せず。中古より降って始めて多端を
肇
(
はじ
)
む。
幣帛
(
へいはく
)
を焚いて以て神に通じ、経文を誦して以て仏に
諂
(
へつら
)
う。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
役者の
真似事
(
まねごと
)
まで、なにによらず一と通りのところまでやるので、
一廉
(
ひとかど
)
の器量の持主のように買いかぶられるが、内実は我意の強い狭量な気質で、
媚
(
こび
)
るものや
諂
(
へつら
)
うものは大好きだが
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
真の意義に於いての道徳に
愜
(
かな
)
つてゐるでせう。それに人間が皆絶大威力の自然といふ主人の前に媚び
諂
(
へつら
)
つて、軽薄笑ひをして、おとなしく羊のやうに屠所へ引いて行かれるのですね。
笑
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
媚
(
こ
)
び
諂
(
へつら
)
う心から生れた親切や同情やを私自身において経験しなかったといえようか。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
人に使われつけている身が主筋に対して、何ぞの愛嬌に、身うちのことを手柄のように暴露して、
諂
(
へつら
)
い
阿
(
おもね
)
る例は世間によくあり勝ちです。嘉六はいまそれをやっているのでしょうか。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
今は
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
芸人の
片端
(
かたはし
)
ぢや、此頃の乱暴は
何
(
ど
)
うぢや、
姪
(
めひ
)
を売つて権門に
諂
(
へつら
)
ふと世間に言はれては、新俳優の名誉に
関
(
かゝ
)
はるから、
其方
(
そち
)
を取り戻すなどと、イヤ、飛んだ活劇をし居つたわイ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
巡
(
めぐ
)
らしけるしかるに高田役所にても先の奉行并びに下役の者ども替り新役になりければ此時ぞと思ひ役人に
賄賂
(
まいない
)
を遣ひ傳吉のことを
惡樣
(
あしざま
)
に言なしける傳吉は元正直律義の生れ故
諂
(
へつら
)
ふことを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
お上人も房籠りというて
他所
(
よそ
)
へはおいでにならないで、九条殿へだけおいでになるということは、人によっては上人程のお方でも貴顕へは
諂
(
へつら
)
っておいでになると
謗
(
そし
)
る者がないとは限りません。
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼世人に
諂
(
へつら
)
うが故に彼の教会に聴衆多しと、某氏の学校の隆盛を聞けばいわく彼高貴に
媚
(
こぶ
)
るが故に成功したりと、余は思えらく真正の善人にして余と説を同うせざるの理由なしと、天主教徒たり
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
さりとて
諂
(
へつら
)
ひの
草履
(
ざうり
)
とりも
餘
(
あま
)
りほめた
話
(
はな
)
しではなけれど
开處
(
そこ
)
が
工合
(
ぐあい
)
ものにて、
清淨
(
せいじよう
)
なり
無垢
(
むく
)
なり
潔白
(
けつぱく
)
なりのお
前樣
(
まへさま
)
などが、
右
(
みぎ
)
をむくとも
左
(
ひだり
)
を
向
(
む
)
くとも
憎
(
に
)
くむ
人
(
ひと
)
は
無
(
な
)
き
筈
(
はづ
)
なれど
夫
(
そ
)
れでは
世
(
よ
)
が
渡
(
わた
)
られず
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
もしまた当地滞留中いささかも行いを
濫
(
みだ
)
さなんだら、
和女
(
そなた
)
われに五百金銭を持って来なと
賭
(
かけ
)
をした。それからちゅうものは前に倍して
繁
(
しげ
)
く来り媚び
諂
(
へつら
)
うに付けて、商主ますます心を守って傾く事なし。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
人にむかつては心弱く、
諂
(
へつら
)
ひがちに、かくて
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
横著者がずるずると
諂
(
へつら
)
い寄ることもあり
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
諂
(
へつら
)
ふことさへもあり。
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
片田舎
(
かたいなか
)
の荒れ地へ追いやられ、ただ口先の
弁巧
(
べんこう
)
で、ぬらりくらり身を這い上げた
諂
(
へつら
)
い者が、
廟
(
びょう
)
に立ち、政治を私しているのではないか。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これをもって世の人心ますますその風に
靡
(
なび
)
き、官を慕い官を頼み、官を恐れ官に
諂
(
へつら
)
い、
毫
(
ごう
)
も独立の丹心を発露する者なくして、その醜体見るに忍びざることなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
曾
(
か
)
つて主人持ちであったものがことにひどい。犬と猫とでは犬の方がひどい。要するに人間に
諂
(
へつら
)
って暮らすことに慣れて来たものほど落ちぶれ方がみじめなのである。
黒猫
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
しかれどもただ、
業
(
わざ
)
のみ敬いて、誠の心うすければ、君に
諂
(
へつら
)
うに近うして、君を欺くにも至るべし。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
(十五) 子貢曰く、貧しくして
諂
(
へつら
)
うことなく、富みて
驕
(
おご
)
ることなきは
何如
(
いかん
)
。子曰く、可なり、(
然
(
しか
)
れども)未だ貧しくして道を楽しみ、富みて礼を好むものには
若
(
し
)
かざるなり。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
殊に其の方を世話いたした渡邊を
殺害
(
せつがい
)
致したり、もと
何処
(
どこ
)
の者か訳も分らん者を渡邊が格別
取做
(
とりなし
)
を申したから、お抱えになったのじゃ、
上
(
かみ
)
へ
諂
(
へつら
)
い
媚
(
こび
)
を献じて、とうとう寺島主水を説伏せ
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
受取るまでは、
諂
(
へつら
)
うように仕事に精を出す。——平生の見方をかえなかった。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
無論
(
むろん
)
放逐
(
はうちく
)
することなどは
爲
(
な
)
し
得
(
え
)
ぬので。
人
(
ひと
)
が
彼
(
かれ
)
を
欺
(
あざむ
)
いたり、
或
(
あるひ
)
は
諂
(
へつら
)
つたり、
或
(
あるひ
)
は
不正
(
ふせい
)
の
勘定書
(
かんぢやうがき
)
に
署名
(
しよめい
)
をする
事
(
こと
)
を
願
(
ねが
)
ひでもされると、
彼
(
かれ
)
は
蝦
(
えび
)
のやうに
眞赤
(
まつか
)
になつて
只管
(
ひたすら
)
に
自分
(
じぶん
)
の
惡
(
わる
)
いことを
感
(
かん
)
じはする。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それに
諂
(
へつら
)
う末社の
奴原
(
やつばら
)
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
……いや怖かろう、あいつは、日野の
学舎
(
まなびや
)
にいても、
叡山
(
えいざん
)
にいても、師に取り入るのが巧く、長上に
諂
(
へつら
)
っては、出世したやつだ。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
多数読者の嗜好を探り、その嗜好に投じ
乍
(
なが
)
ら、自己の思想を植え付けることは、作家として最も大切では無いか。決して
諂
(
へつら
)
うことでは無い。大衆作家は
夫
(
そ
)
れをしている。
愚言二十七箇条
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
卑しい
諂
(
へつら
)
い
虫
(
むし
)
の仲間が温い寝床と食うものを与えられて、彼のような奴が棄てられたということは人間の不名誉でさえある。しかも彼は落ちぶれても決して卑屈にならない。
黒猫
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
いわんや貧富のごときは、学を好む者の眼中にあってはならない。貧しき者が
諂
(
へつら
)
わないことに努め、富める者が
驕
(
おご
)
らないように用心するのは、まだ貧富に
囚
(
とら
)
われているのである。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
“諂”の解説
諂 (てん)(sa: śāṭhya、シャーティヤ)は、仏教が教える煩悩のひとつ。
心の邪曲。へつらうこと。自分だけの利益や世間の評判(名聞利養)を得るがために、他者をだまして迷わそうとして、私心を隠して人に媚びへつらい等など従順を装い、人の心を操縦する心である。もしくは、このような手段をもって、自分のなした過ちを隠蔽せんとする心である。
説一切有部の五位七十五法のうち、小煩悩地法の一つ。唯識派の『大乗百法明門論』によれば随煩悩位に分類され、そのうち小随煩悩である。
(出典:Wikipedia)
諂
漢検1級
部首:⾔
15画
“諂”を含む語句
諂諛
諂曲
諂佞
諂媚
諂辞
辞色諂佞
阿諛諂佞