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被
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か
ふりがな文庫
“
被
(
か
)” の例文
夜半
(
よなか
)
に
咽喉
(
のど
)
が
煎
(
い
)
りつくような気がして、小平太は眼を覚した。気がついてみると、自分はちゃんと蒲団の上に夜着を
被
(
か
)
けて寝ていた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
浅井は初めてそこへ落ち着いたお増に、酒の
酌
(
しゃく
)
をさせながら笑った。もうセルの上に袷羽織でも引っ
被
(
か
)
けようという時節であった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
其
(
そ
)
の
錦
(
にしき
)
の
淵
(
ふち
)
に、
霧
(
きり
)
を
被
(
か
)
けて
尾花
(
をばな
)
が
縁
(
へり
)
とる、
緋
(
ひ
)
の
毛氈
(
まうせん
)
を
敷
(
し
)
いた
築島
(
つきしま
)
のやうな
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
に、もの
珍
(
めづら
)
しく
一叢
(
ひとむら
)
の
緑
(
みどり
)
の
樹立
(
こだち
)
。
眞黄色
(
まつきいろ
)
な
公孫樹
(
いてふ
)
が
一本
(
ひともと
)
。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
帰る時、誰やらが
後
(
うしろ
)
から外套を
被
(
か
)
けて呉れた様だつたが、賑やかに送り出されて、
戸外
(
そと
)
へ出ると、菊池君が私の
傍
(
そば
)
へ寄つて来た。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
惣治も酔でも廻ってくると、額に
被
(
か
)
ぶさる長い髪を掌で
撫
(
な
)
で上げては、無口な平常に似合わず老人じみた調子でこんなようなことを言った。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
▼ もっと見る
どうもその砂が波を揚げて来るので荷物は砂に
押
(
お
)
っ
被
(
か
)
ぶされてしまうし、バアーッと眼の中へ吹き込むから眼を開いて歩くことが出来ない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
中の君の上に柔らかな地質の美しい夜着を
被
(
か
)
け、まだ暑さもまったく去っているという時候でもないのであるから、少し自身は離れて寝についた。
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そのうち磯が眠そうに
大欠伸
(
おおあくび
)
をしたので、お源は
垢染
(
あかじみ
)
た
煎餅布団
(
せんべいぶとん
)
を一枚敷いて一枚
被
(
か
)
けて二人一緒に
一個身体
(
ひとつからだ
)
のようになって首を縮めて寝て了った。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
また少女の姿は、初めて
逢
(
あ
)
ひし人を動かすに
余
(
あまり
)
あらむ。
前庇
(
まえびさし
)
広く飾なき
帽
(
ぼう
)
を
被
(
か
)
ぶりて、年は十七、八ばかりと見ゆる
顔
(
かん
)
ばせ、ヱヌスの古彫像を
欺
(
あざむ
)
けり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
薄青い紗のきれのようなものを
被
(
か
)
けて置いて、それを通して読者に種々なる相を示して居るのでございます。
馬琴の小説とその当時の実社会
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
歌を半ばにして、細君の
被
(
か
)
けた
蒲団
(
ふとん
)
を着たまま、すっくと立上って、座敷の方へ小山の如く動いて行った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
花は第十六図「イ」に示すが如くその体上に毛を
被
(
か
)
ぶり花穎は図中「ロ」の如き状を成し粰穎は「ハ」の如くしかして下に雌雄両蕊ならびに三片の被鱗を擁せり。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
酒屋男は罰
被
(
か
)
ぶらんが不思議、ヨイヨイ、足で米といで手で流す、ホンニサイバ手で流す。ヨイヨオイ。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
私がそのような世間的の甲羅や着物を
被
(
か
)
むっているという事は、
却
(
かえ
)
っていけない事ではあるまいか。
江戸川乱歩氏に対する私の感想
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それは永い涙の忍従と苦がい/\血とによつて
漸々
(
やう/\
)
皮を
被
(
か
)
ぶせた許りの深い
傷手
(
いたで
)
であつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
薦
(
こも
)
が
被
(
か
)
けて有りましたから、死顔は見えません、濡乱れた黒髪ばかり顕れていたのです。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一人は頭が大きく、額が広くつて、目は豕の様に狭く、外の一人の顔は丸で鼻計りで出来て居る様で、その上から赤い鳥の羽で飾つた、白い棒砂糖形の帽子が
被
(
か
)
ぶさり掛つて居ます。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
この阿呆のど
不具
(
かたわ
)
め。大根やこしお前の口へ入るものじゃねえだぞ。お前なんかに、粟の飯一杯も惜しいけどな、同じ人間の皮
被
(
か
)
ぶってるけにな、毎日一杯ずつ恵んでやっとるんじゃ。
義民甚兵衛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
上の間の唐紙は明放しにして、半ば押し
除
(
の
)
けられた屏風の中には、吉里があちらを向いて寝ているのが見える、風を引きはせぬかと
気遣
(
きづか
)
われるほど意気地のない布団の
被
(
か
)
けざまをして。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
じゃア斯うしましょう、知れないように頭巾でも
被
(
か
)
ぶらせ、
扮装
(
なり
)
を変え、浜町の灯台のところへあの御婦人は待たして置いて、貴方はお一人で御番所を通って、それから岩の処で御婦人を
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
向うから来た
釜形
(
かまがた
)
の
尖
(
とが
)
った帽子を
被
(
か
)
ずいて古ぼけた
外套
(
がいとう
)
を
猫背
(
ねこぜ
)
に着た
爺
(
じい
)
さんがそこへ歩みを
佇
(
とど
)
めて演説者を見る。演説者はぴたりと演説をやめてつかつかとこの
村夫子
(
そんぷうし
)
のたたずめる前に出て来る。
カーライル博物館
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
姉
(
あね
)
の
小袖
(
こそで
)
をそと
被
(
か
)
つぎ
桜さく島:春のかはたれ
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
お増は押入れから自分の着物を出して来て、
背
(
せなか
)
へ
被
(
か
)
けたり、火鉢の
抽斗
(
ひきだし
)
から売薬を捜して飲ませたりしたが、磯野の腹痛は止まなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
薄 なおその上に、
御前様
(
ごぜんさま
)
、お
痩
(
や
)
せ遊ばしておがまれます。柳よりもお優しい、すらすらと雨の
刈萱
(
かるかや
)
を、お
被
(
か
)
け遊ばしたようにござります。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、一段声を低めて「あの
破火鉢
(
やぶれひばち
)
に佐倉が
二片
(
ふたつ
)
ちゃんと
埋
(
いか
)
って灰が
被
(
か
)
けて有るじゃア御座いませんか。 ...
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
奥様から頂いた
華美
(
はで
)
な
縞
(
しま
)
の着古しに
毛繻子
(
けじゅす
)
の
襟
(
えり
)
を掛けて、
半纏
(
はんてん
)
には
襟垢
(
えりあか
)
の附くのを気にし、帯は撫廻し、豆腐買に出るにも小風呂敷を
被
(
か
)
けねば物恥しく、酢の
罎
(
びん
)
は袖に隠し、
酸漿
(
ほおずき
)
鳴して
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その顏がまた、彼の
惘乎
(
ぼう
)
となつた眼の前に、室いつぱいに擴大されて行くやうな變異な相貌となつて、おつ
被
(
か
)
ぶさつて來るやうに見えた。彼はすつかり、窒息的な呼吸遣ひに陥いつてゐた。
奇病患者
(旧字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
此頃着いた許りの、新しい三十二面刷の
印刷機
(
ロール
)
には、白い布が
被
(
か
)
けてあつた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
あゝ、あの
柳
(
やなぎ
)
に、
美
(
うつくし
)
い
虹
(
にじ
)
が
渡
(
わた
)
る、と
見
(
み
)
ると、
薄靄
(
うすもや
)
に、
中
(
なか
)
が
分
(
わか
)
れて、
三
(
みつ
)
つに
切
(
き
)
れて、
友染
(
いうぜん
)
に、
鹿
(
か
)
の
子
(
こ
)
絞
(
しぼり
)
の
菖蒲
(
あやめ
)
を
被
(
か
)
けた、
派手
(
はで
)
に
涼
(
すゞ
)
しい
裝
(
よそほひ
)
の
婦
(
をんな
)
が三
人
(
にん
)
。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
芝居のなかも暗く
時雨
(
しぐら
)
んだようで、底冷えが強く、蒲団を
被
(
か
)
けていても、
膝頭
(
ひざがしら
)
が寒かった。叔父は背筋へ水をかけられるようで、永く見ていられなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
食ふ人も食はぬ人もあつたが、飯が濟むと話がモウ
勢
(
はず
)
んで來ない。歸る時、誰やらが後から外套を
被
(
か
)
けて呉れた樣だつたが、賑やかに送り出されて、
戸外
(
そと
)
へ出ると、菊池君が、私の傍へ寄つて來た。
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と、襟の扇子を
衝
(
つ
)
と抜いて、すらすらと座へ立った。江戸は紫、京は
紅
(
べに
)
、雪の狩衣
被
(
か
)
けながら、
下萌
(
したも
)
ゆる血の、うら若草、
萌黄
(
もえぎ
)
は
難波
(
なにわ
)
の色である。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
先刻
(
さっき
)
出て行ったままに、鏡立てなどが
更紗
(
さらさ
)
の
片
(
きれ
)
を
被
(
か
)
けた芳村の小机の側に置かれて、女の脱棄てが、外から帰るとすぐ暖まれるように
余熱
(
ほとぼり
)
のする土の
安火
(
あんか
)
にかけてあった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
智恵子は白い
布
(
きれ
)
を膝に
被
(
か
)
けて、余念もなく針を動かしてゐた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
蜘蛛
(
くも
)
の糸より弱うても、
私
(
わし
)
が居るから
可
(
よ
)
いわいの、さあ/\立つて取らつしやれ、
被
(
か
)
けるものはの、
他
(
ほか
)
にない、あつても気味が悪からうず、
少
(
わか
)
い人には
丁度
(
ちょうど
)
持つて来い
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それじゃね、晩にお刺身を一人前……いいかえ。」と言って、お国は台所の棚へ何やら
収
(
しま
)
い込んでから、茶の
室
(
ま
)
へ入って来た。
軟
(
やわら
)
かものの羽織を引っ
被
(
か
)
けて、
丸髷
(
まるまげ
)
に桃色の
手絡
(
てがら
)
をかけていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
で、
衣服
(
きもの
)
を
被
(
か
)
け、
彫像
(
てうざう
)
を
抱
(
いだ
)
いたなり、
狐格子
(
きつねがうし
)
を
更
(
あらた
)
めて
開
(
ひら
)
いて
立出
(
たちいで
)
たつる
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お辻は寒さをする
女
(
むすめ
)
で、
夜具
(
やぐ
)
を深く
被
(
か
)
けたのである。
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
被
常用漢字
中学
部首:⾐
10画
“被”を含む語句
被仰
頬被
引被
被衣
被布
上被
被居
法被
被入
被物
頭被
被来
被下
蔽被
面被
外被
押被
被遊
打被
被存候
...