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脣
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くちびる
ふりがな文庫
“
脣
(
くちびる
)” の例文
小さい
脣
(
くちびる
)
を締めるように言って、勝気そうな顔をした女は立って玄関へ行った。その人が帰ってしまってから、みんなは話し合った。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
又、成熟した彼女の、目や
脣
(
くちびる
)
や全身の
醸
(
かも
)
し出す魅力を、思い出すまいとしても思い出した。明かに、彼は
猶
(
な
)
お木下芙蓉を恋していた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それからガヴローシュは「ぶるる!」と
脣
(
くちびる
)
でうなって、聖マルティヌス(訳者注 中古の聖者)よりもいっそうひどく震え上がった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
……まア、あたじけない!
皆
(
みん
)
な
飮
(
の
)
んでしまうて、
隨
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
かう
予
(
わたし
)
の
爲
(
ため
)
に
只
(
たゞ
)
一
滴
(
てき
)
をも
殘
(
のこ
)
しておいてはくれぬ。……お
前
(
まへ
)
の
脣
(
くちびる
)
を
吸
(
す
)
はうぞ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
五十人
(
ごじふにん
)
、
八十人
(
はちじふにん
)
、
百何人
(
ひやくなんにん
)
、ひとかたまりの
若
(
わか
)
い
衆
(
しゆ
)
の
顏
(
かほ
)
は、
目
(
め
)
が
据
(
すわ
)
り、
色
(
いろ
)
は
血走
(
ちばし
)
り、
脣
(
くちびる
)
は
青
(
あを
)
く
成
(
な
)
つて、
前向
(
まへむ
)
き、
横向
(
よこむ
)
き、うしろ
向
(
むき
)
。
祭のこと
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
クレヴィンは男の
脣
(
くちびる
)
の泡を見た、倒れた鹿の脣の泡と同じだった。彼は短剣の柄の血をながめた。それは草いちごの汁の泡のようだった。
琴
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
女
(
おんな
)
にもしてみたいほどの
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い
児
(
こ
)
で、
優
(
やさ
)
しい
眉
(
まゆ
)
、すこし
開
(
ひら
)
いた
脣
(
くちびる
)
、
短
(
みじか
)
いうぶ
毛
(
げ
)
のままの
髪
(
かみ
)
、
子供
(
こども
)
らしいおでこ——すべて
愛
(
あい
)
らしかった。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
脣
(
くちびる
)
の上にいつ放すとも知れず自分の脣を押しつけたが、千代子は呼吸をはずませながら、
悶
(
もが
)
きもせずにじっとしていた。
心づくし
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
静かに宿命を迎へた死骸である。もし顔さへ
焦
(
こ
)
げずにゐたら、きつと
蒼
(
あを
)
ざめた
脣
(
くちびる
)
には微笑に似たものが浮んでゐたであらう。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
インドの「愛経」によると、
脣
(
くちびる
)
のキッスのみで八種あるが、少くもウェートレスは、それ位のことを心得ていて貰いたい。
大阪を歩く
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
それから口を閉じ、何かをしようか、しまいか、どっちにしようかと思いまどうように、きりりと
脣
(
くちびる
)
を引きしぼりました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
上
(
かみ
)
さんは薄い
脣
(
くちびる
)
の間から、黄ばんだ歯を出して
微笑
(
ほほえ
)
んだ。「本当に小川さんは、優しい顔はしていても悪党だわねえ。」
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その時自分はどんな顔をしていたか。もちろん自分で見ることは出来ないが、何しろすこぶる息がつまり
脣
(
くちびる
)
が
顫
(
ふる
)
えて、頭を動かしていたに違いない。
端午節
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
と
脣
(
くちびる
)
を結んで自ら堪えた。我を失ったのであった。大努力したのであった。今や満身の勇気を振い起したのであった。勇気は勝った。顔は赤みさした。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ただ、彼女は人の訪問を喜ぶ。額の上ににゅっと角を持ち上げ、
脣
(
くちびる
)
には一筋の
涎
(
よだれ
)
と一本の草を垂らして舌なめずりをしながら、愛想よく迎えるのである。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
我々の右手、かなり離れて、マターファが坐っており、時々彼の
脣
(
くちびる
)
が動き、
手頸
(
てくび
)
の数珠玉の揺れるのが見える。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
脣
(
くちびる
)
だけで軽くくわえようと変なことをしたものですからツルリとすべって、これも下へ落ちてしまいました。
裏切り
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
與吉
(
よきち
)
は
羞
(
はにか
)
んだやうにして五
厘
(
りん
)
の
銅貨
(
どうくわ
)
で
脣
(
くちびる
)
をこすりながら
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
彼
(
かれ
)
の
口
(
くち
)
の
兩端
(
りやうはし
)
には
鴉
(
からす
)
の
灸
(
きう
)
といはれて
居
(
ゐ
)
る
瘡
(
かさ
)
が
出來
(
でき
)
て
泥
(
どろ
)
でもくつゝけたやうになつて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼女
(
かのぢよ
)
はレース
糸
(
いと
)
の
編物
(
あみもの
)
の
中
(
なか
)
に
色
(
いろ
)
の
褪
(
さ
)
めた
夫
(
をつと
)
の
寫眞
(
しやしん
)
を
眺
(
なが
)
めた。
恰
(
あたか
)
もその
脣
(
くちびる
)
が、
感謝
(
かんしや
)
と
劬
(
いた
)
はりの
言葉
(
ことば
)
によつて
開
(
ひら
)
かれるのを
見
(
み
)
まもるやうに、
彼女
(
かのぢよ
)
の
心
(
こゝろ
)
は
驕
(
をご
)
つてゐた。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
彼女はやっと私の温かい存在をそれに感じでもしたかのように、ちらっと謎のような微笑を
脣
(
くちびる
)
に漂わせた。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼女は何んの
屈託気
(
くったくげ
)
もなく、朗らかに笑っていた。そしてその笑うたびに、色鮮やかに濡れた
脣
(
くちびる
)
の間から、並びのよい
皓歯
(
こうし
)
が、夏の陽に、明るく光るのであった。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
少年の
脣
(
くちびる
)
よりも赤く、さうしてやはり薔薇特有の可憐な
風情
(
ふぜい
)
と気品とを具へ、鼻を近づけるとそれが
香
(
かをり
)
さへ帯びて居るのを知つた時彼は言ひ知れぬ感に打たれた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
充血したような赤い顔を仰向け、うすく目を閉ざし腹を波うたせて、喘ぐようにその
脣
(
くちびる
)
が開いている。
愛のごとく
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
女性の尻ばかり見て暮す男にとっても、売笑婦の心理的な
綺羅
(
きら
)
によって飾られた
脣
(
くちびる
)
から、下腹部にかけてのガリッシュな紅色の部分については特殊な魅惑を感じる。
戦争のファンタジイ
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
豊かな娘のその紅い
脣
(
くちびる
)
と心臓の鼓動と、そういうものにも移って行ったが、それは長続せずに消えた。
リギ山上の一夜
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
他の怪物の一つは、鉄の嘴を持ってきて大異の
脣
(
くちびる
)
に当てた。脣はまたそのまま鳥の
喙
(
くちばし
)
のようになった。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
伏し目に半ば閉じられた目は、此時、姫を認めたように、
清
(
すず
)
しく見ひらいた。軽くつぐんだ
脣
(
くちびる
)
は、この
女性
(
にょしょう
)
に向うて、物を告げてでも居るように、ほぐれて見えた。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
何よりも
先
(
ま
)
ず、その石竹色に
湿
(
うる
)
んでいる頬に、微笑の先駆として浮かんで来る、
笑靨
(
えくぼ
)
が現われた。それに続いて、
慎
(
つつ
)
ましい
脣
(
くちびる
)
、高くはないけれども穏やかな品のいゝ鼻。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
腰も曲がっていないし、いまだに背は六尺もあるという、
脣
(
くちびる
)
が大きくて、老人のくせに甚だ
朱
(
あか
)
い。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その間には人指し指を器械的に
脣
(
くちびる
)
の辺まで挙げてまた
卸
(
おろ
)
す。しかし目は始終紙を見詰めている。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
親しめば親しむほど、
側
(
そば
)
を離さないではないか。あの茶人たちは如何に温かさと親しさとを以て、それを
脣
(
くちびる
)
に当てたであろう。器にもまたかかる主を離さじとする風情が見える。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
外に物欲しげな人間が見ているのを、振り返ってもみずに、面白げに飲んだり食ったりしゃあがる。おれは
癲癇
(
てんかん
)
病みもやってみた。口にシャボンを一切入れて、
脣
(
くちびる
)
から泡を吹くのだ。
橋の下
(新字新仮名)
/
フレデリック・ブウテ
(著)
と、ややあつて
訊
(
き
)
く。姫は
巴旦杏
(
はたんきょう
)
のやうに肉づいた丸い
脣
(
くちびる
)
を、物言ひたげに
綻
(
ほころ
)
ばせたが、思ひ返したのかそのままに無言で
点頭
(
うなず
)
いた。アスカムは窓に満ちる
春霞
(
はるがすみ
)
の空へと眼を転ずる。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
にらむとこの子はやや
眇目
(
すがめ
)
になるのだ。弟の方の顔はしだいにくずれて、今にも泣き出しそうな顔になった。しかし泣き出しはしなかった。眼をキラキラさせて、
脣
(
くちびる
)
を噛みしめている。
魚の餌
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
染めたような
豊
(
ゆたか
)
な頬や、読経のために充血した
脣
(
くちびる
)
や、岩間を清水の流れてゆく尼僧の境涯には涙なしには住めまいほどなまめいている。これからどこをまわるのか斑尾の道のほうへいった。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
帆村はそういって、心外でたまらぬという風に大きな
脣
(
くちびる
)
をぐっと曲げた。
暗号数字
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
深い息づかい、
濡
(
ぬ
)
れた
脣
(
くちびる
)
、「自然」はまっ暗闇の中に
這
(
は
)
いつくばって、一心に、秘密の物のけはいを偵察していたのだ。ぽたぽたと、ざわざわと、星の
閃
(
ひらめ
)
きが柔かな、不眠の広野の上に落ち散る。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
お絹は
唾液
(
だえき
)
がにじんだ
脣
(
くちびる
)
の角を手の甲でちょっと押えてこういった。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
押し寄せるたびに
脣
(
くちびる
)
を
噛
(
か
)
み、歯をくいしばり、脚を両手でつかんだ。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
与一も
面喰
(
めんくら
)
ったのだろう、
脣
(
くちびる
)
を引きつらせてピクピクさせていた。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
ひたすら卓上の
罌粟
(
けし
)
の
脣
(
くちびる
)
を見詰めて
居
(
ゐ
)
る。
北原白秋氏の肖像
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
脣
(
くちびる
)
の白くなる夜明け頃まで踊りつゞける。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
我が手なり、
脣
(
くちびる
)
に臭ぞ殘る
宿酔
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その
脣
(
くちびる
)
は
胠
(
ひら
)
ききつて
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
彼女は
脣
(
くちびる
)
をかんだ。何か心のうちで思い惑ってることがあるらしく、
躊躇
(
ちゅうちょ
)
してるようだった。しかしついに決心したように見えた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ムルタはからっぽの蘆を
脣
(
くちびる
)
にあてて吹きはじめた。それは彼が
曾
(
かつ
)
て山地で羊を守っている女から聞かされた寂しいやさしい調子であった。
精
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
この
金之助
(
きんのすけ
)
さんは
正月生
(
しょうがつう
)
まれの二つでも、まだいくらも
人
(
ひと
)
の
言葉
(
ことば
)
を
知
(
し
)
らない。
蕾
(
つぼみ
)
のようなその
脣
(
くちびる
)
からは「うまうま」ぐらいしか
泄
(
も
)
れて
来
(
こ
)
ない。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
眉
(
まゆ
)
は長くこまやかに、
睡
(
ねむ
)
れる
眸子
(
まなじり
)
も
凛如
(
りんじょ
)
として、正しく結びたる
脣
(
くちびる
)
は、夢中も放心せざる渠が意気の
俊爽
(
しゅんそう
)
なるを語れり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
脣
(
くちびる
)
を押し開き、生きた人間では
迚
(
とて
)
も不可能な程大きな口にして了ったという、その
断末魔
(
だんまつま
)
の世にも物凄い情景が、彼の目先にチラついたのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「神よ、我を罰し給え。怒り給うこと
勿
(
なか
)
れ。恐らくは我滅びん」——こう云う
祈祷
(
きとう
)
もこの瞬間にはおのずから僕の
脣
(
くちびる
)
にのぼらない訣には行かなかった。
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“脣(
唇
)”の解説
唇(くちびる、脣)とは、哺乳類の口の回りにある器官である。解剖学的には口唇(こうしん)という。
(出典:Wikipedia)
脣
漢検1級
部首:⾁
11画
“脣”を含む語句
口脣
下脣
上脣
脣辺
丹脣
兎欠脣
兎脣
明眸絳脣
脣吻
脣趾
脣邊
醜脣平鼻