“くちびる”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
68.3%
20.3%
口唇8.2%
朱唇0.8%
口脣0.4%
唇頭0.4%
0.4%
唇辺0.4%
紅唇0.2%
下唇0.2%
0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
届く所に果実がなっているけれど、それを手に取ると石になった。くちびるの近くに清水があるけれど、身をかがめると遠のいてしまった。
又、成熟した彼女の、目やくちびるや全身のかもし出す魅力を、思い出すまいとしても思い出した。明かに、彼はお木下芙蓉を恋していた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ほとんどお互いの口唇くちびると口唇とが触れ合うまでになったが、手で眼をこすりながら「わたしは病気ですから」と言って接吻をこばんだ。
黒髪バラリと振り掛かれる、あをおもてに血走る双眼、日の如く輝き、いかりふる朱唇くちびる白くなるまでめたる梅子の、心きはめて見上たる美しさ、たゞすごきばかり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
何事ぞ、眞の武士の唇頭くちびるぼすもいまはしき一女子の色に迷うて、可惜あたら月日つきひ夢現ゆめうつゝの境にすごさんとは。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
神は少女を洗ひ終りて少女の額にくちびるを當てぬ。光も匂も共に下り來れば神は少女をよそほへと命じぬ。
花枕 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
頭巾ずきん黒く、外套がいとう黒く、おもておおい、身体からだを包みて、長靴を穿うがちたるが、わずかにこうべを動かして、きっとその感謝状に眼を注ぎつ。こまやかなる一みゃくの煙はかれ唇辺くちびるを籠めて渦巻きつつ葉巻のかおり高かりけり。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「失礼も何もあるものか——いや美婦の紅唇くちびるにふれた猪口ちょくのふち——これにまさるうれしいものはござるまいて——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
その姿を仰いだとき、さすがの雪之丞の紅唇くちびるから
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
『莫迦野郎!』と、信吾はまたしても唸る様に言つて、下唇くちびるを喰絞り、堅めた両の拳をブル/\顫はせて、恐しい顔をして突立つてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あの夢現ゆめうつつのまどろみの中に現われるのだ——あの素破すばらしい弾々だんだんたる肉体、夢の様な瞳、はなびらのような愛らしいくちびる、むちむちとした円い体の線は、くびれたような四肢を持って僕にせまって来るのだ
蝕眠譜 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)