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胡座
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あぐら
ふりがな文庫
“
胡座
(
あぐら
)” の例文
部屋の奥の方の棚には幾つもの壺が並んで居る。
胡座
(
あぐら
)
を組んで居る呪術師の老女の膝に身を投げかけ、娘はしきりに哀願して居る。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
この人は
自宅
(
うち
)
に居る折は、座敷に
胡座
(
あぐら
)
をかいたまゝ、すぐ手をのばしたら
達
(
とゞ
)
きさうな巻煙草一つ、自分からは手にとらうとしなかつた。
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
この灰の上にこうして新聞紙を敷いて楽々と
胡座
(
あぐら
)
を
掻
(
か
)
いたまま、いつ何時でも煙になる覚悟で、葉巻を吹かし吹かし耳を澄ましていた訳だ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
脂切ったセピア色の皮膚、大きいギラギラする眼、どっしりと
胡座
(
あぐら
)
をかいた鼻、への字に結んだ唇、それはまさに絵に描いた怪物の
相好
(
そうごう
)
です。
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
僕は畳の上に
胡座
(
あぐら
)
をかくと、全く途方に暮れてしまった。何本目かの
莨
(
たばこ
)
を、火鉢の中に突きこんでいるときに、ようやく僕の決心は
定
(
き
)
まった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
こう云いながら岩太郎は囲炉裡の側へ近寄って来たが杉右衛門に向かい合って
胡座
(
あぐら
)
を掻いた。見ると手に
白鳥
(
はくちょう
)
を下げている。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
渡瀬は膳の角でしずくを切って……もう俺の知ったことじゃないぞ……
胡座
(
あぐら
)
から坐りなおって、正面を切って杯を奥さんの方にさしだしかかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
広巳は
上框
(
あがりかまち
)
へ出て婢の出した瓶子と茶碗を引ったくるように執り、いきなりそこへ
胡座
(
あぐら
)
をかき、瓶子の栓を口で
脱
(
ぬ
)
いて、どくどくと
注
(
つ
)
いで飲んだ。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
焚火をめぐって、土の上へ
胡座
(
あぐら
)
をかいてする食事である。本居君と私とは適当な食器を用意することを知らなかった。
烏帽子岳の頂上
(新字新仮名)
/
窪田空穂
(著)
胡座
(
あぐら
)
の膝を交えて博士の怪気焔を拝聴したということだが、幸田節三のこの不敵な思い付きはそのおり博士に暗示されたものらしいというのである。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
坊さんのお勤がすむまでは
胡座
(
あぐら
)
にもならでモジモジしている殊勝さは、その心持ちだけでも買ってやっていいと思う。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
それから素足で寝台の上を歩いて見て、しまひにはその上に
胡座
(
あぐら
)
を掻いた。それから暫く両手で膝頭を抱いて、前の方を見詰めて、物を案じてゐた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
『眞理と美は常に新しい!』と、一度砂を
潜
(
もぐ
)
つた樣にザラザラした聲を少し顫はして、昌作は
倦怠相
(
けだるさう
)
に
胡座
(
あぐら
)
をかく。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
庸三は新調のふかふかしたメリンスの
対
(
つい
)
の
座蒲団
(
ざぶとん
)
の一つに、どかりと
胡座
(
あぐら
)
をかくと、さも
可笑
(
おか
)
しそうに笑っていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
黒板には只一つ
樺太
(
からふと
)
定期ブラゴエ丸の二等料理人の口が出ているだけで、その前の大
卓
(
テーブル
)
の上に車座に
胡座
(
あぐら
)
を
掻
(
か
)
いて、
例
(
いつ
)
もの連中が朝から壷を伏せていた。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
雪枝
(
ゆきえ
)
は
老爺
(
ぢゞい
)
に
此
(
これ
)
を
語
(
かた
)
る
時
(
とき
)
、
濠端
(
ほりばた
)
の
草
(
くさ
)
に
胡座
(
あぐら
)
した
片膝
(
かたひざ
)
に、
握拳
(
にぎりこぶし
)
をぐい、と
支
(
つ
)
いて
腹
(
はら
)
に
波立
(
なみた
)
つまで
気兢
(
きほ
)
つて
言
(
い
)
つた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
山木剛造は今しも
晩餐
(
ばんさん
)
を終りしならん、大きなる熊の毛皮にドツかと
胡座
(
あぐら
)
かきて、仰げる広き額には
微醺
(
びくん
)
の色を帯びて、カンカンと輝ける
洋燈
(
ランプ
)
の光に照れり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「伊東の辰姫か、北條の政子か。」と、伊之助は、正しく坐つてゐたのを
胡座
(
あぐら
)
にして、ニヤリ/\笑つた。
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
炉に懸けた
泥鰌汁
(
どじょうじる
)
の
大鍋
(
おおなべ
)
からは盛に湯気が
起
(
た
)
ちまして、そこに
胡座
(
あぐら
)
をかいた源の顔へ
香
(
にお
)
いかかるのでした。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
囲炉裏に向って、
胡座
(
あぐら
)
の膝に両手をさしちがえて
俯向
(
うつむ
)
き加減になって、つまった鼻をプン/\言わせて居た。酒に酔うと何時でも鼻をつまらせるのが癖であった。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
小舞
(
こまい
)
かきの竹は勝手を知っていますから、
明店
(
あきだな
)
の
上総戸
(
かずさど
)
を明けて中へ
這入
(
はい
)
り、
菰
(
こも
)
を
布
(
し
)
き、
睾丸火鉢
(
きんたまひばち
)
を入れ、
坐蒲団
(
ざぶとん
)
を布きましたから、其の上に清次は
胡座
(
あぐら
)
をかき。
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
勇は国防色のスフの上衣を脱ぎ、上り端へ
胡座
(
あぐら
)
をかいてから、小さい新聞包みを母の方へ押しやった。
米
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
彼は、さっきから小屋の片隅に、そうして
胡座
(
あぐら
)
をかいた儘なのだ。だが、彼の目は、血走っていた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
制服を着、帽子を
胡座
(
あぐら
)
の上にのせ、浮れていた。
地方
(
じかた
)
の唄をすっかり暗誦していて合わせたり
高台寺
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
木華里
(
ムカリ
)
(
札木合
(
ジャムカ
)
の前に
胡座
(
あぐら
)
をかき)これは
札木合
(
ジャムカ
)
王ですか。私は
成吉思汗
(
ジンギスカン
)
の軍使、
木華里
(
ムカリ
)
という者です。長の籠城、想像に絶する
疲弊困憊
(
ひへいこんぱい
)
の有様、お察し申し上げます。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
昨夜おそく仕事から帰ってきて、僕が茶の間の
餉台
(
ちゃぶだい
)
の前へ
胡座
(
あぐら
)
をかいていると、女房が片口を持って玄関の方へ出て行った。すると、ややあって、ゴクという音がするのだ。
濁酒を恋う
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
更紗
(
さらさ
)
の
掻巻
(
かいまき
)
を
撥
(
は
)
ねて、毛布をかけた敷布団の上に
胡座
(
あぐら
)
を掻いたのは主の新造で、年は三十前後、キリリとした目鼻立ちの、どこかイナセには出来ていても、真青な色をして
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
日が
傾
(
かたむ
)
くとソヨ吹きそめた
南風
(
みなみ
)
が、夜に入ると共に水の流るゝ如く吹き入るので、ランプをつけて置くのが骨だった。母屋の縁に
胡座
(
あぐら
)
かいて、身も魂も
空虚
(
から
)
にして
涼風
(
すずかぜ
)
に
浸
(
ひた
)
る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
若い女が頭に
水甕
(
みずがめ
)
を載せて出て来る。地面に
胡座
(
あぐら
)
をかいている青年一が呼び停める。
安重根:――十四の場面――
(新字新仮名)
/
谷譲次
、
林不忘
(著)
軒の名札に、勲八等鷲尾某と書いてある父親は「日露戦争」の生残りだが、不自由に
胡座
(
あぐら
)
をかいている左の足は、弾丸の破片でやられた
痕
(
あと
)
が、二本の指を失くして紫色に光っていた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
見ると、その広間の中には、どれもこれも強そうな男が三十人ばかりお
酒宴
(
さかもり
)
をしていました。そして一番高い所に、身の
丈
(
たけ
)
が六尺もある位な大男が、
胡座
(
あぐら
)
をかいて坐っておりました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
私はチベット風に大王の前に
胡座
(
あぐら
)
をかいて坐りまして中央に居られる方を見ますと
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
すぐ川の見える
欄干
(
てすり
)
の傍へ
胡座
(
あぐら
)
を掻いて、とおもったらまたすぐ立ち上がって
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「君も寂しがる
性
(
たち
)
だね」と云って、大村は
胡座
(
あぐら
)
を掻いて、又紙巻を吸い附けた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
飯を焚くし、ミルクを作るし、夕方の
菜
(
さい
)
から、
悉
(
こと/″\
)
く僕だ。三四月からだつたゞらう。僕が、
胡座
(
あぐら
)
をかいて子供を、脚の間へ入れると、丁度、股が枕になつて、すつぽり、子供の身体が入る。
貧乏一期、二期、三期:わが落魄の記
(新字旧仮名)
/
直木三十五
(著)
西宮は床の間を
背
(
うしろ
)
に
胡座
(
あぐら
)
を組み、平田は窓を
背
(
うしろ
)
にして
膝
(
ひざ
)
も
崩
(
くず
)
さずにいた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
龍子はMの話を聞きながら、Eから聞き知つた此の中でのいろんな挿話を思ひ出すと、今此処の独房の何の一つかに
胡座
(
あぐら
)
をかいて読書をしてゐるEの姿をまざ/\と見るやうな気がするのだつた。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
いつとなく、団九郎も
彫像
(
ちょうぞう
)
の
三昧
(
さんまい
)
を知った。木材をさがしもとめ、和尚の
熟睡
(
じゅくすい
)
をまって庫裏の一隅に
胡座
(
あぐら
)
し、
鑿
(
のみ
)
を
揮
(
ふる
)
いはじめてのちには、雑念を離れ、
屡〻
(
しばしば
)
夜の白むのも忘れていたということである。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
道端の小石を蹴飛ばし勢よくがらりと妾宅の格子戸を明けたが、すると外からも見通される茶の間に洋服を着た見知らない若い男が
胡座
(
あぐら
)
をかいていて、寝ていると思ったお千代は起きて話をしている。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
胡座
(
あぐら
)
をかきつつ
好
(
い
)
い気持になってるのが
中村花痩
(
なかむらかそう
)
であった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼は日の当つてゐる縁側に
胡座
(
あぐら
)
をかいて
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
短躯肥満、童顔豊頬にして眉間に
小豆
(
あずき
)
大の
疣
(
いぼ
)
を
印
(
いん
)
したミナト屋の大将は快然として鉢巻を取りつつ、
魚鱗
(
うろこ
)
の散乱した
糶台
(
ばんだい
)
に
胡座
(
あぐら
)
を掻き直した。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それで次の檻の中を
窺
(
うかが
)
った。そこには、更に巨大なる動物が、金網の中に
胡座
(
あぐら
)
をかいて、ジッと前方を見詰めていた。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
幸田節三は布団の上に
胡座
(
あぐら
)
をかいて酒月の話を聴いていたが、やや暫くののち急にポンと膝を打って
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
暗
(
やみ
)
に
透
(
す
)
かすと、
背
(
せ
)
の
高
(
たか
)
い
大
(
おほき
)
な
坊主
(
ばうず
)
が
居
(
ゐ
)
て、
地
(
ち
)
から
三尺
(
さんじやく
)
ばかり
高
(
たか
)
い
処
(
ところ
)
、
宙
(
ちう
)
で
胡座
(
あぐら
)
掻
(
か
)
いたも
道理
(
だうり
)
、
汀
(
みぎは
)
へ
足代
(
あじろ
)
を
組
(
く
)
んで
板
(
いた
)
を
渡
(
わた
)
した
上
(
うへ
)
に
構込
(
かまへこ
)
んで、
有
(
あ
)
らう
事
(
こと
)
か、
出家
(
しゆつけ
)
の
癖
(
くせ
)
に
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
他ならぬそれは紋十郎で、彼は
上座
(
かみざ
)
に
胡座
(
あぐら
)
を掻き、さっきからいかにも不機嫌そうに、ジロジロ座中を
睨
(
ね
)
め廻わしていたが、とうとうこの時怒鳴り出したのであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は座布団の上に
胡座
(
あぐら
)
を
掻
(
か
)
くと、ビール罎に手をかけ、にこにこしながら壁越しに向っていった。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
お寺の門のところにどっかと
胡座
(
あぐら
)
をかいた、微動だもせぬ、木像の安置せられたような彼——いかなる名匠の鑿をもってしても、かかる座像を彫ることは不可能に相違ない。
沼畔小話集
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
小川家の
離室
(
はなれ
)
には、畫家の吉野と信吾とが相對してゐる。吉野は三十分許り前に盛岡から歸つて來た所で、上衣を脱ぎ、白綾の夏
襯衣
(
ちよつき
)
の、その鈕まで
脱
(
はづ
)
して、
胡座
(
あぐら
)
をかいた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
甚「出たって出したのだ、さア
胡座
(
あぐら
)
をかゝせな、
盥
(
たれえ
)
の上へ、
宜
(
よ
)
し/\そりゃ来た水を、水だよ、湯灌をするのに水が汲んでねえのか、仕様がねえなア、早く水を持って
来
(
き
)
ねえ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
“胡座”の意味
《名詞》
胡 座(こざ、あぐら 別表記:胡坐)
両足を前に組んで座ること。
(出典:Wiktionary)
胡
漢検準1級
部首:⾁
9画
座
常用漢字
小6
部首:⼴
10画
“胡”で始まる語句
胡坐
胡桃
胡瓜
胡散
胡麻
胡粉
胡麻化
胡麻塩
胡蝶
胡弓