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聴
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きこ
ふりがな文庫
“
聴
(
きこ
)” の例文
旧字:
聽
わたしの部屋は朝だと云うのに暗くて、天井の低い部屋だった。裏は四条の電車の駅とかで、拡声機の声がひっきりなしに
聴
(
きこ
)
えて来る。
田舎がえり
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
今朝
埋
(
い
)
けた
佐倉炭
(
さくらずみ
)
は白くなって、
薩摩五徳
(
さつまごとく
)
に
懸
(
か
)
けた
鉄瓶
(
てつびん
)
がほとんど
冷
(
さ
)
めている。炭取は
空
(
から
)
だ。手を
敲
(
たた
)
いたがちょっと台所まで
聴
(
きこ
)
えない。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
現世
(
げんせ
)
の
方
(
かた
)
から
見
(
み
)
れば一
片
(
ぺん
)
の
夢物語
(
ゆめものがたり
)
のように
聴
(
きこ
)
えるでございましょうが、そこが
現世
(
げんせ
)
と
幽界
(
ゆうかい
)
との
相違
(
そうい
)
なのだから
何
(
なん
)
とも
致方
(
いたしかた
)
がございませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
しかも根本に於ては音楽の原理に適っている——でなければ美しく
聴
(
きこ
)
える筈がない——ところの、真の自由律の形式である。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
へなへなした私も、へこまされまいとして自分の所信だけは曲げなかった。暁の鶏の声が
聴
(
きこ
)
えるまで春の夜の寒さに
顫
(
ふる
)
えながら、互いに論じ語った。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
夫
(
それ
)
では
聴
(
きこ
)
えないから
解
(
わか
)
らない
筈
(
はづ
)
です、
夫
(
それ
)
から
又
(
また
)
蓄音器
(
ちくおんき
)
といふものが始めて
舶来
(
はくらい
)
になりました時は、
吾人共
(
われひととも
)
に
西洋人
(
せいやうじん
)
の
機械学
(
きかいがく
)
の
長
(
た
)
けたる事には
驚
(
おどろ
)
きました。
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「旦那、しゃぼん」という声が
聴
(
きこ
)
えると、てッきり吉弥の声であった。男はいつも女湯の方によって洗っていた。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
暫く、靴音が遠くなってから、とても若々しいハミングが、フウフウフフン、ウフフフフンとか
聴
(
きこ
)
えて来ました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
今夜も、寒い北風か? 古寺の戸障子をゆする冷たげな音が、この窖までも淋しく
聴
(
きこ
)
えて来るのであった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「是非一つ先生に助けて戴きたい」と、私が先生になったんですが、「実は、先生がこの前お書きなった電波病というのに
罹
(
かか
)
りまして、電波が
聴
(
きこ
)
えて仕様がない。 ...
あの世から便りをする話:――座談会から――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
もしか狐だの、狸だのいふ言葉が、栖鳳氏の耳に
聴
(
きこ
)
えようものなら、
画家
(
ゑかき
)
は折角
巧
(
うま
)
く出来た絵を塗りくつてしまふかも知れない。それにしては金屏風が勿体なかつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
隣の北安曇郡でもずっと北へ寄って、同じ理由で
大角豆
(
ささげ
)
畠へ入らせぬ村があり、また夕顔棚の下へ行くと、七夕様の天の川のお渡りなさる音が
聴
(
きこ
)
えるという村もある。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「この上に落付く必要はないです。眼が見えます。耳が
聴
(
きこ
)
えます。どんな御相談ですか」
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
たとえ
生命
(
いのち
)
を取られても
其
(
その
)
約束を果さねばならぬと思い、森林の
側
(
そば
)
まで来た時は
夜
(
よ
)
もかれこれ十二時に近く、林中には相変らず
梟
(
ふくろう
)
の鳴声も
聴
(
きこ
)
えて、其
物凄
(
ものすご
)
い事は限りもなかったが
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
「紐育のお天気はどうです? こちらはひどい吹雪ですよ——話が
聴
(
きこ
)
えますか」
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
何処
(
どこ
)
からともなく
聴
(
きこ
)
えて来る、クラヴサンやヴィオラ・ダ・ガンバや——今の世の生活には縁の遠い古代の楽器から発するほのかな音楽や、沈香や白檀を
炷
(
た
)
くらしい幽雅な香の匂いなどは
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「もう結構です皆様、どうぞ入ってきて下さい」そういうのが
聴
(
きこ
)
えた。
幽霊屋敷の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ぶらんこが光り、オルガンが
愉
(
たの
)
しげに
聴
(
きこ
)
えていた。……
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
やっとの事で、下女の足音が廊下の曲り角に
聴
(
きこ
)
えた時に、わざと取り
繕
(
つくろ
)
った余裕を外側へ示したくなるほど、彼の心はそわそわしていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
開店広告の赤い旗が、店々の前にひるがえり、チンドン楽隊の鳴らす響が、秋空に高く
聴
(
きこ
)
えているのである。
秋と漫歩
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
汝達
(
そちたち
)
の
談話
(
はなし
)
はよう
俺
(
わし
)
にも
聴
(
きこ
)
えて
居
(
い
)
ました。
人間
(
にんげん
)
の
母子
(
おやこ
)
の
情愛
(
じょうあい
)
と
申
(
もう
)
すものは、
大
(
たい
)
てい
皆
(
みな
)
ああしたものらしく、
俺達
(
わしたち
)
の
世界
(
せかい
)
のようになかなかあっさりはして
居
(
お
)
らんな。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「六万MC、するとこの間も、ちょっと
聴
(
きこ
)
えた怪放送だね。——録音器は、廻っているだろうね」
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
テダが穴などという語は
吾々
(
われわれ
)
には俗に
聴
(
きこ
)
えるけれども、ちょうど
昇
(
のぼ
)
る日の直下だけが、
鮮
(
あざや
)
かに光り輝いているのを見て、そこを特殊に尊くもまた慕わしい神の島と感じて
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
何
(
ど
)
うも
是
(
これ
)
は耳へ
附
(
つ
)
けて
聴
(
き
)
くのに、ギン/\と
微
(
かす
)
かに
聴
(
きこ
)
えて
判然
(
はつきり
)
解
(
わか
)
らぬやうだが、
何
(
ど
)
うか
斯
(
か
)
う耳へ
当
(
あて
)
ずに
器械
(
きかい
)
をギユーと
捩
(
ねぢ
)
ると、
判然
(
はつきり
)
音色
(
おんしよく
)
が
席中
(
せきぢう
)
一
抔
(
ぱい
)
に
大音
(
だいおん
)
に
聴
(
きこ
)
えるやうに
仕
(
し
)
たいものだ。
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
或時
珈琲店
(
カフエー
)
で落合つた
悪戯
(
いたづら
)
な友達の一人が、打明けなければかうすると言つて、首を
縊
(
し
)
めにかゝると、
件
(
くだん
)
の日本画家は川向ふの天主教の尼さんに
聴
(
きこ
)
えないやうに
低声
(
こごゑ
)
で
加之
(
おまけ
)
に京都
訛
(
なまり
)
で
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
梟
(
ふくろう
)
の鳴く声も
聴
(
きこ
)
え、実に
物凄
(
ものすご
)
い程静かな有様である。
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
会話はちょっと
途切
(
とぎ
)
れる。帳面をあけて
先刻
(
さっき
)
の鶏を静かに写生していると、落ちついた耳の底へじゃらんじゃらんと云う馬の鈴が
聴
(
きこ
)
え出した。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこには情熱の
渇
(
かわき
)
があり、遠く音楽のように
聴
(
きこ
)
えてくる、或る倫理感への陶酔がある。
然
(
しか
)
り、詩は人間性の命令者で、情慾の底に燃えているヒューマニチイだ。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
又
(
また
)
道中
(
どうちゅう
)
どこへ
参
(
まい
)
りましても
例
(
れい
)
の
甲高
(
かんだか
)
い
霊鳥
(
れいちよう
)
の
鳴声
(
なきごえ
)
が
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さゆう
)
の
樹間
(
このま
)
から
雨
(
あめ
)
の
降
(
ふ
)
るように
聴
(
きこ
)
えました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
しかし
聴取不能
(
ちょうしゅふのう
)
の時間は、わずか三十秒で終り、それから先は、またはっきり
聴
(
きこ
)
えだした。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そのうちで大よそ
判
(
わか
)
るのは、佐賀県
藤津
(
ふじつ
)
郡でトテッポッポという名などで、ちょっと鳩のことのようにも
聴
(
きこ
)
えるが、伊予の周桑地方でケケコウロウともいい、この方は一名ニワトリ草ともいうから
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「うん、
何時
(
いつ
)
迄もさう云ふ世界に住んでゐられゝば結構さ」と云つた。其
重
(
おも
)
い言葉の
足
(
あし
)
が、
富
(
とみ
)
に対する一種の呪咀を
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
つてゐる様に
聴
(
きこ
)
えた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
戦争の気配もないのに、大砲の音が遠くで
聴
(
きこ
)
え、城壁の
周囲
(
まわり
)
に立てた支那の旗が、青や赤の
総
(
ふさ
)
をびらびらさせて、青竜刀の列と一所に、無限に沢山連なっていた。
日清戦争異聞:(原田重吉の夢)
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
裏座敷で琴が
聴
(
きこ
)
えて——もっとも兄と一さんじゃ駄目ね。小野さんなら、きっと御気に入るでしょう。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
春の
暮方
(
くれがた
)
の物音が、遠くの空から
聴
(
きこ
)
えて来るような感じがする。古来日本の詩歌には、鶯を歌ったものが非常に多いが、
殆
(
ほと
)
んど皆退屈な凡歌凡句であり、独り蕪村だけが卓越している。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
すぐ崖の
傍
(
そば
)
へ来て急に鳴き出したらしい
鵯
(
ひよどり
)
も、声が
聴
(
きこ
)
えるだけで姿の見えないのが物足りなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
娼家
(
しょうか
)
らしい家が並んで、中庭のある奥の方から、閑雅な音楽の音が
聴
(
きこ
)
えて来た。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
けれども人の足音はどこにも
聴
(
きこ
)
えなかった。用事で
往来
(
ゆきき
)
をする下女の姿も見えなかった。手拭と
石鹸
(
シャボン
)
をそこへ置いた津田は、
宅
(
うち
)
の書斎でお延を呼ぶ時のように手を鳴らして見た。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「年々烈しくなるんじゃないかしら。今日なんぞは全く風はないね」と
廂
(
ひさし
)
の外を下から
覗
(
のぞ
)
いて見る。空は曇る心持ちを
透
(
す
)
かして春の日があやふやに流れている。琴の
音
(
ね
)
がまだ
聴
(
きこ
)
える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのうち
雨
(
あめ
)
は
益
(
ます/\
)
深
(
ふか
)
くなつた。
家
(
いへ
)
を
包
(
つゝ
)
んで遠い
音
(
おと
)
が
聴
(
きこ
)
えた。
門野
(
かどの
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
少
(
すこ
)
し
寒
(
さむ
)
い様ですな、
硝子戸
(
がらすど
)
を
閉
(
し
)
めませうかと
聞
(
き
)
いた。
硝子戸
(
がらすど
)
を
引
(
ひ
)
く
間
(
あひだ
)
、
二人
(
ふたり
)
は
顔
(
かほ
)
を
揃
(
そろ
)
えて
庭
(
には
)
の方を
見
(
み
)
てゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「何を考えてるんだ。いくら呼んでも
聴
(
きこ
)
えない」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
聴
常用漢字
中学
部首:⽿
17画
“聴”を含む語句
聴聞
聴衆
聴許
聴取
吹聴
聴耳
立聴
聴者
聴診器
聴入
聴手
傾聴
傍聴
謹聴
聴牌
道聴途説
盗聴
拝聴
聴納
聴知
...