神主かんぬし)” の例文
琵琶湖びわこ土左衛門どざえもんになるところを、ここの神主かんぬしのやつが助けやがったんで……わたしがきたいと思ってきたところじゃありません」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小劍は奈良の生まれであり、小劍の父は攝津の多田神社の神主かんぬしであつた。その父の名は延美といひ、その子の小劍の本名は延貴といふ。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
さうして、このふたつながら、ならんでおこなはれてゐました。そのとなごとが、今日こんにちでも、社々やしろ/\神主かんぬしさんたちのとなへる、祝詞のりとなのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
私の処へ来て神主かんぬしになるがよい、場所はこの家の前のみちを西へ西へと十日ばかり往くと、大きな川がある、その川の土手だからすぐ判る
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たいまつをつけた人がさきつと、長持ながもちのうしろには神主かんぬしがつきって、はたほこてて、山の上のおやしろをさして行きました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひげを濃くはやしている。面長おもながのやせぎすの、どことなく神主かんぬしじみた男であった。ただ鼻筋がまっすぐに通っているところだけが西洋らしい。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あの川下に、山のように見えている青葉は、あれはほんとうの山ではないだろう。神主かんぬしたちが大国主神おおくにぬしのかみのお祭りをする場所ででもあるのか」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
しかしどうしてもあたらぬ時には仕方がないから、神主かんぬしが箭を持っていって、金的に突射つきさすのだという話であった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
はな遊興いうきようは日頃に十ばい仕たりける是に依て神主かんぬし共五百餘人集會あつまりさかきの枝に四手を切かけて種々と義長の惡逆あくぎやくを申立て彼を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
初めから長袖ながそでを志望して、ドウいうわけだか神主かんぬしになるつもりでいたのが兄貴の世話で淡島屋の婿養子となったのだ。
尾州一の宮の神主かんぬし、代々鶏卵を食せず云々、素戔嗚尊すさのおのみことの烏の字を鳥に書きたる本を見しよりなり。熱田にはたけのこを食わず、日本武尊やまとたけるのみことにてまします故となん云々。
どちらがわの親類にも異存がなく、七日ほど前に結納ゆいのうをとりかわしたのですが、ところで、大国魂神社の神主かんぬし猿渡平間さわたりひらまの甥で、桜場清六さくらばせいろくという勤番くずれ。
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
風のあった日で注連縄をわえつけた竹の葉の風に鳴る音が絶えず耳についた。K神社から神主かんぬしが来ていて、ここにいる者の身に神の加護を願う祈りを捧げた。
その人 (新字新仮名) / 小山清(著)
丁度その時広岸こうがん(広峯)ざん神主かんぬし谷口某と云うものが、怪しい非人の事を知らせてくれたので、九郎右衛門が文吉を見せに遣った。非人は石見産いわみうまれだと云っていた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
然し神主かんぬし拍手かしはでを打つて祖先の祭典に捧げる御酒徳利おみきどくりは自分の眼にはもう全く無意義となつた………。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
それもただの剣ではなく、活き剣だそうでございます。物を云ったり歌を唄ったり歩いたりするそうでございます。恐い蛇使いのお婆さんは、神主かんぬしなのでございます
でも、あの半蔵さんのことを敬神の念につよい人だとは皆思うらしいね。そういう熱心で四年も神主かんぬしを勤めたと考えてごらんな、とてもからだが続くもんじゃない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
神主かんぬし宮氏の家に貞和ぢやうわ文明ぶんめいの頃の記録きろく今にそんせり。当主たうしゆ文雅ぶんがこのみ吟詠ぎんえいにもとめり、雅名がめい正樹まさきといふ。同好どうこうを以てまじはりおさむ。幣下へいしたとなふ社家しやけ諸方しよはうにあまたある大社也。
さあ、村長そんちょうさんや、神主かんぬしさんたちが、なんといわれますか、いてみなければわかりませんが、いつかも、そういうはなしがあったとき、たたりをおそれるからといって、だれも、
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きょうも、——きょうは生憎あいにくあの時のように誰もその才能を発揮しない。が、大本教おおもときょう神主かんぬしが一人、彼自身の子供らしいしら肩車かたぐるまにしていたのは今日こんにち思い出しても奇観である。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
昔伊勢の国で冬咲の桜を見て夢庵むあんが、冬咲くは神代も聞かぬ桜かな、と作ったのは、伊勢であったればこそで、かように本歌を取るが本意である、毛利大膳だいぜん神主かんぬしではあるまいし
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこで天皇が非常におよろこびになつて仰せられるには、「天下が平ぎ人民が榮えるであろう」と仰せられて、このオホタタネコを神主かんぬしとしてミモロ山でオホモノヌシの神をお祭り申し上げました。
寿命じゅみょうのないものは、いかにおねがいしてもおききれがございませぬが、矢張やはりこのおんなにはまだ寿命じゅみょうのこってたのでございましょう、産土うぶすな神様かみさま御眷族ごげんぞく丁度ちょうど神主かんぬしのような姿すがたをしてそのあらわれ
ねぎさんというのはこの土地の言葉で神主かんぬしのことを言うのである。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
神主かんぬしさんも笑ひ出す
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
呂宋兵衛の部下なるがゆえに、ことわりなしにまつりをもよおした神主かんぬしをこらしめるとか、かけ合うとか、ほざいていたではないか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひげやしてゐる。面長おもながやせぎすの、どことなく神主かんぬしじみた男であつた。たゞ鼻筋が真直まつすぐに通つてゐる所丈が西洋らしい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
村の人びとは、翌日水神すいじんの告げを知らして来た旅の男を水神のやしろの内に見つけて、それを神主かんぬしとして置くことになり、社の傍にその住居をかまえた。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そんなことまでしてしからなかったのは、正月ばかりは子どもらが神主かんぬしさんだから、というような考えがまだかすかに伝わっている土地が多いためであった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天皇は、さっそくこの大多根子を三輪の社の神主かんぬしにして、大物主神のお祭りをおさせになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
町内氏神うじがみの祭礼も七五三の祝儀も、自由主義を迎える世には遠慮しなくてはならなくなる。心配は参詣さんけいをする氏子うじこよりも御幣ごへいを振る神主かんぬし提灯屋ちょうちんやのふところ都合であろう。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
くみ米をかしぎ村方大半呼寄よびよせての大饗應おほふるまひ故村の鎭守ちんじゆ諏訪すは大明神の神主かんぬし高原備前たかはらびぜん并びに醫師玄伯等げんぱくらを上座に居て料理の種々くさ/″\興津鯛おきつだひ吸物すひものいわし相良布さがらめ奴茹ぬたの大鮃濱燒ひらめはまやきどぜう鼈煑すつぽんになどにて酒宴さかもり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
島田の後妻の親類が芝にあって、其所そこうちは何でも神主かんぬしか坊主だという事を健三は子供心に聞いて覚えているような気もした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すぐ目のまえの南蛮寺なんばんじへ、なんの貢物みつぎもせずにまつりをするとは太い神主かんぬしだ。グズグズぬかしたら拝殿はいでんをけちらかして、あの賽銭箱さいせんばこを引ッかついでゆけ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを統一するためにまわり神主かんぬし、または宮座頭屋みやざとうやというかたい約束がむすばれ、あるいは世襲神職せしゅうしんしょく家筋いえすじというものが定められたのであるが、これがまた二つとも
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すゑる故一同見ても居られず組頭くみがしら周藏佐治右衞門傳兵衞木祖兵衞きそべゑ長百姓喜平次善右衞門神主かんぬし備前びぜん醫師いし玄伯等各自おの/\中に立入たちいりまづ双方さうはう共に預りて此日は皆々引取しがお里は組頭周藏へ預け其夜なほ又周藏方へ惣内始め寄合て心得違ひの趣きにあつかひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつ見ても神主かんぬしのような顔に西洋人の鼻をつけている。きょうもこのあいだの夏服で、べつだん寒そうな様子もない。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、釘勘がそれに身のびをして、金吾の袖を引いた時、折しく、最前の神主かんぬしがうやうやしくふすまを開いて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臨時にこれをまつり、禰宜ねぎ神主かんぬし沙汰さたはない場合が多いが、これを無格社以上の社殿の中にいつくとすれば、すなわち神の名を大山祇命おおやまつみのみこと、もしくは木花開耶姫尊このはなさくやひめのみことといい
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
父の横浜移住はそれからで、その頃でもまだ、食肉を屠殺とさつするには、屠殺場の四方に笹竹を立て、シメ縄を張って、神主かんぬしにのりとを上げて貰ったりしたそうである。
神主かんぬしが装束を着けて、是から祭典でも行はうとする間際まぎはには、かう云ふ気分がするだらうと、三四郎は自分で自分の了見を推定した。実際学問の威厳に打たれたに違ない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ことに目にたつのは正月の十五日前で、これを子どもが持つと、ちょうど神主かんぬしさんのしゃく扇子せんすと同じく、彼らの言葉と行ないに或る威力がある、というふう昔者むかしものは今も感じている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
伊勢の荒木田神主かんぬしから届け物を頼まれて来て、城太郎の方は年暮くれから——お通はつい先頃から。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神主かんぬし装束しょうぞくを着けて、これから祭典でも行なおうとするまぎわには、こういう気分がするだろうと、三四郎は自分で自分の了見を推定した。じっさい学問の威厳に打たれたに違いない。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼が、祈願をこめたことは、後日、子の義満よしみつが当社に納めた願文のうちにも見え、またこのさい、全軍の将士が、神主かんぬしから杉の葉をうけて、それぞれの笠印かさじるしに挿したということでもある。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こりゃ、誰かおらぬか。ここの神主かんぬしはおらぬか」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神主かんぬしさん」
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神主かんぬしさん」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)