あを)” の例文
空のやうにあをいひろい野原のまんなかに、眼のふちの赤い支那人とたつた二人、荷物を間に置いて向ひあつて立つてゐるのでした。
山男の四月 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
殊に驚くべきは、あを珊瑚礁リーフ魚よりも更に幾倍か碧い・想像し得る限りの最も明るい瑠璃色をした・長さ二寸許りの小魚の群であつた。
リヴァズ氏はやがて本を閉ぢて卓子テエブルに近づくと席に着いて、そのあをい、繪に描いたやうな瞳をまともに私に注いだ。
エイア・ブウルからは美しいあをい海が見えた。行つても行つても海である。掀翻きんぽんし、飛躍し、奔跳ほんてうする海である。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
仰げばかさを張つたやうな樹の翠、うつむけば碧玉をいたやうな水のあを、吾が身も心も緑化するやうに思はれた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あらず、あをしろ東雲しのゝめいろくれなゐえて、眞黒まつくろつばさたゝかふ、とりのとさかにたのであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は無造作むざうさに笑い飛ばして、縁側にうしろ手を突いたまゝ、空のあをさに見入るのでした。七夕たなばたも近く天氣が定まつて、毎日々々クラクラするやうなお天氣續きです。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
それにひきくらべて、玉島は冬も温いところであつた。海はいつも異人の眼のやうに、やさしくあをくたたへられ、は入江や、入江をとりかこむ丘の上にみちあふれた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
机の上には大きなすずりや厚い帳簿や筆立てや算盤がごだ/″\と一杯に置かれてあつた。新聞に蔽はれてゐるあをい藥瓶を搜し出しながら、彼れはふと大谷圓三といふ封筒の文字に目を留めた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
権作老人と立ち別れて篠田は、降り積む雪をギイ/\と鞋下あいかに踏みつゝ、我が伯母のひとり住む粟野あはのの谷へと急ぐ、氷の如き月は海の如きあをき空に浮びて、見渡す限り白銀しろがねを延べたるばかり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
舷下の水はあをくして油の如し。試みに手をもて探れば、手も亦水と共に碧し。舟の影の水に落ちたるは極て濃き青色にして、の影は濃淡の紋理ある青蛇を畫けり。われは聲を放ちて叫びぬ。
白い猫の包は、あをい堀割の水に浮きつ沈みつ、しばらく流れてゐました。
黒猫 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
露天掘ま澄みかあを空際そらぎはを音とどろきてまだ余寒なり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あをい、噴き出す蒸気のやうに。
の腹あをき光をに負ひつつ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
目のあをいのも、黄いろいのも
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此の滴るやうな深いあを
あをきをか寫し留めむ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
金と紅宝石ルビーを組んだやうな美しい花皿をささげて天人たちが一郎たちの頭の上をすぎ大きなあをや黄金のはなびらを落して行きました。
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
時には寒いあをい色をした小さな沼のほとりの路に見えた。時には川添かはぞひの松原のさびしい中に見えた。かと思ふと、ある小さな町の夕日を受けた家並やなみの角に見えた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
かれまへには、一座いちざなめらかな盤石ばんじやくの、いろみどりあをまじへて、あだか千尋せんじんふちそこしづんだたひらかないはを、太陽いろしろいまで、かすみちた、一塵いちぢんにごりもない蒼空あをぞら
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あを單衣ひとへに赤い帶も印象的ですが、それよりもほの白く清らかな頬や、霞む眉や、少し脅えてはゐるが、聰明らしい眼が、咄嗟とつさの間ながら、平次に素晴らしい印象を與へてくれたのです。
雲の色は天と同じくあをかりき。四邊せきとして音響なく、天地皆墓穴の靜けさを現ず。われは寒氣の骨に徹するを覺えたり。われはしづかに頭をもたげたり。我衣は青き火の如く、我手は磨けるしろかねの如し。
マツキンレイはある日のひる過ぎ、いつものやうに友達と散歩に出掛けた。ちやうど秋のなかば頃で、空は女のやうなあをい眼をして笑つてゐた。市街まちを通る人は皆上機嫌で、自分の事を思ふのに忙がしい風であつた。
棟瓦むながはら千石船のしゆあを正目まさめ仰ぎて深き雑草あらくさ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
瑠璃のひかり、あをよどみ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
さうかい。ハッハ。まあいゝよ。あの雲はあしたの朝はもうれてるよ。ヒームカさんがまばゆい新らしいあをいきものを
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大波おほなみたゞよ小舟こぶねは、宙天ちうてん搖上ゆすりあげらるゝときは、たゞなみばかり、しろくろくも一片いつぺんをもず、奈落ならく揉落もみおとさるゝときは、海底かいていいはなるの、あかあをきをさへるとひます。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
家のちうかいは川に臨んで居た。其処そこにこれからたうとする一家族が船の準備の出来る間を集つて待つて居た。七月の暑い日影ひかげは岸の竹藪にかたよつて流るゝあをい瀬にキラキラと照つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
黄なるはねうち、あをき露
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あの眼のあをはちの群は野原ぢゅうをもうあちこちにちらばって一つ一つの小さなぼんぼりのやうな花から火でももらふやうにしてみつを集めて居りました。
洞熊学校を卒業した三人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そらいろふちのやうです、なんつたらいでせう。……あをとも淺黄あさぎともうす納戸なんどとも、……」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たくさんのたくさんの眼のあをはちの仲間が、日光のなかをぶんぶんぶんぶん飛び交ひながら、一つ一つの小さな桃いろの花に挨拶あいさつしてみつや香料をもらったり
洞熊学校を卒業した三人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
……うすき、もみぢのなかを、きりひまを、次第しだいつきひかりつて、くもはるゝがごとく、眞蒼まつさをそらした常磐木ときはぎあをきがあれば、其處そこに、すつと浮立うきたつて、おともなくたまちらす。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はるかの北上のあをい野原は、今泣きやんだやうにまぶしく笑ひ、向ふの栗の木は、青い後光を放ちました。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
このときはもう冬のはじまりであの眼のあをはちの群はもうみんなめいめいのらふでこさへた六角形の巣にはひって次の春の夢を見ながらしづかにねむって居りました。
洞熊学校を卒業した三人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
光ったり陰ったり、幾重にも畳む丘丘の向ふに、北上の野原が夢のやうにあをくまばゆくたたへてゐます。河が、春日かすが大明神の帯のやうに、きらきら銀色に輝いて流れました。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
山男は仰向あふむけになつて、あをいああをい空をながめました。
山男の四月 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)