)” の例文
正宗をぎにやったのをなまくらにして返して、これでも切れると云って平気でいるのは、少しおかしいと云わなければならない。
ラジオ雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
(七九)閭巷りよかうひとおこなひてんとほつするものは、(八〇)青雲せいうんくにあらずんば、いづくんぞく(名ヲ)後世こうせいかん
細工場はいちだん低い土間どまになっている。のみをぐ砥石やら木屑きくずやら土器の火入れなど、あたりのさまは、らちゃくちゃない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これよりみやこし驛に至る、坦々たん/\の如き大路たいろにして、木曾川は遠く開けたる左方の山の東麓を流れ、またその髣髴を得べからず。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
けれども、羽に碧緑あおみどりつや濃く、赤と黄のを飾って、腹に光のある虫だから、留った土がになって、磨いたように燦然さんぜんとする。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にぶる時はたくはへたるをもつてみづからぐ。此道具だうぐけものかはを以てさやとなす。此者ら春にもかぎらず冬より山に入るをりもあり。
その頃の学校にはボールドはあったが、はじめチョークというものが来なかったので「」で字や画をかいたが、間もなくチョークが来た。
昨日の水溜りは、氷の上に雪がつもって、ふちの方は、薄黄いろく滲んでいるのが、氷河から滴たる為か、を溶かしたように濁っておる。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
を塗つて、くまを入れた顏、尺八を持つて一刀を手挾たばさんだ面魂は、五尺五六寸もあらうと思ふ恰幅の、共に如何樣敵役に打つて付けの油屋兼吉です。
南に富士川は茫々ばう/\たる乾面上に、きりにて刻まれたるみぞとなり、一線の針をひらめかして落つるところは駿河の海、しろがね平らかに、浩蕩かうたうとして天といつく。
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
そのそばには一ちょうの斧がげ出してあるが、風の具合でその白いがぴかりぴかりと光る事がある。他の一人は腕組をしたまま立ってまわるのを見ている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
情けある船長のとりはからいにて、これから一路平坦へいたんのごとき海上を談笑指呼だんしょうしこのあいだにゆくことになった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
坦々たんたんの如き何げんはばの大通路を行く時も二葉亭は木の根岩角いわかど凸凹でこぼこした羊腸折つづらおりや、やいばを仰向けたような山の背を縦走する危険を聯想せずにはいられなかった。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あるいは道路はたんとしてのごとく自在に運搬交通をなし、あるいは水なきの地は溝渠こうきょ穿うがって流水を通じ、あたかも人力をもって天造を圧倒したる景状あり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
坂になった路の土が、のやうに乾いてゐる。寂しい山間の町だから、路には石塊いしころも少くない。両側りやうがはには古いこけらぶきの家が、ひつそりと日光を浴びてゐる。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其の源泉は隠れて深山幽谷の中に有り、之をもとむれば更に深く地層の下にあり、の如き山、之を穿うがつ可からず、いづくんぞ国民の元気を攫取くわくしゆして之を転移することを得んや。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
大千世界を観ることようやくにして掌上の菓を視るが如くになり、未来は刻々に鮮やかに展じて、億万里程もただ一条の大路たいろの如く通ずるを信ずるに至ったでもあったろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
誰がにかけてみがきいだしけん、老女が化粧けはひのたとへは凄し、天下一面くもりなき影の、照らすらん大廈たいかも高楼も、破屋わらやの板間の犬の臥床ふしども、さてはもれみづ人に捨てられて
琴の音 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
初夏のいだ海は小波さざなみも立たず、のように平らな浅黄色に、空の白い雲がはっきりと映っていた。……釣道具をあけ、遺書を出して、それを餌箱を押えにして舟底へ置いた。
追いついた夢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その春と題したる畫の中に群れ遊べるさまこそ愛でたけれ。童一人大なるめぐらすあれば、一人はそれにてやじりを研ぎ、外の二人は上にありて飛行しつゝも、水を砥の上にそゝげり。
浴衣ゆかたの裾を膝までまくりあげて、だらしなく腰掛けながら、その前にかんないで居る、若い大工と笑ひながら話して居たのを見たが、もしかしたらその大工ではないかと思ひもした。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
昔の食通には、新しくいだ庖丁で作った刺身から、砥石の味をいいあてたというような話がある。それほどでなくても、いわゆる食通の人の舌は、恐るべく敏感なものであるらしい。
塩の風趣 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
勝ち誇った華奢な宮子の微笑が、長く続いた青葉のトンネルの下をくぐっていく。坦々のように光った道。薔薇の垣根。腹を映してすべる自動車。イルミネーションの牙城へと迫るアルハベット。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
の如き深夜の大道を、二筋ふたすじの白い光が雁行がんこうして飛んだ。追駈おっかけである。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
五月雨の降る頃はすべてものが錆びやすい。ぎすました剃刀が一夜の間に錆びてしまったというのである。これも五月雨の大景を見出したのではなく、小さい或事実をつかまえて来たのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
白いねばつちこねまはし、のりで溶かして、を交ぜて
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
灌木がその個性をいでゐる
暖いねやも、石のごとく、のごとく、冷たく堅く代るまで、身を冷して涙で別れて……三たび取って返したのがこの時である。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にかけて、勉学をし直してこい。そうして、一人前の人間になれたら、師の御房に会わせてやろうし、第一、そのほうも、救われるというものだ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
を塗って、くまを入れた顔、尺八を持って一刀を手挟たばさんだ面魂は、五尺五六寸もあろうと思う恰幅かっぷくの、共にいかさま敵役に打って付けの油屋兼吉です。
昨夜の風がぎ澄まして行った、碧く冴えた虚空の下には、丹沢山脈の大山一帯が、平屋根の家並のように、びったりかじかんで一と塊に圧しつけられている。
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
の如く平らかに矢の如くなほくして、目地めぢ遙かに人影を見ざる中を、可なりの速力で駛らせると、恰も活動寫眞を觀るが如くに遠くの小さな物が忽ち中位になり、大きくなつて
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
聞く、新道の木曾川に沿へるの邊、奇景百出、岩石の奇、奔湍ほんたんの妙、旅客必ずこれを過ぎざるべからずと。いはんや、其路坦々たん/\としての如く、復た舊道の如く嶮峻ならざるに於てをや。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
まことにのごとき途上であった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
灌木がその個性をいでゐる
廉平はに似てあおすじのあるなめらかな一座の岩の上に、海に面して見すぼらしくしゃがんだ、身にただ襯衣しゃつまとえるのみ。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へい」というとふすまいた。炉べりに紅殻べにがら十手じってが置き放してある。暇にあかして磨きをかけていたのだろう、十手が燦然さんぜんと光ってみえる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「眼尻に紅を差して、顏一面にすゝを塗つて、含み綿をして顏をふくらませて居るに違ひありません」
近くは西の方木曾山脈の山々の、雪や氷の砥石といしに、風の歯はがれて、鋭くなり、冷たさがいや増して、霧を追いまくり、かつ追いかけて、我らの頬に噛みつくのである
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
道の左右はの如き絶壁だし、彼は坂の上に立って、狭い口をふさいでいるので、大兵もついに用をなさない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのはずでさ、来ないも道理。どさくさ紛れに、火の玉の身上しんしょうをふるった、新しいばりかんを二ちょうくしが三枚、得物に持った剃刀をそのまま、おまけに、あわせまで引攫ひっさらって遁亡フイなんですって。……
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よくぎ澄ましたものらしく、紫色にギラギラと光つて居ります。
ごし、ごし、ごしっ……と童子の手はまた、砥石といしのうえに動いているらしい。不敵な今の言葉といい、を揺する底力といい、武蔵はいぶからずにいられなかった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時五助はお若の剃刀をぴったりとにあてたが、哄然こうぜんとして
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
魚の骨みたいに体には肉がないし、しじゅう水ッぱなはすすっているし、無精ぶしょうで、うす汚いこと、仕事場のうるしベラや、の土や、漆茶碗などと見分けのつかない程である。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄武寺げんむじの頂なるのごときいわおおもへ、月影がさっとさした。——
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
七之助はうしろ向きになったまま、火薬にあわせるほおの木炭きずみでおろしていた。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小屋のなかには大勢の者が、板をいたり、木地きじを轆轤にかけたり、磨きをしたり、仕上げをかけたり、そうして、彫るものは彫りをつけ、塗るものはの粉をすッてうるしを拭きます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武士訓などの日常のあらゆる生活のものをにして「道」として確立しかけてはゐたが、以上の三者は皆それぞれ一國一城の主や、豪族であつて、身をもつて世路の危難や艱苦の中を
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)