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砥
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と
ふりがな文庫
“
砥
(
と
)” の例文
正宗を
砥
(
と
)
ぎにやったのをなまくらにして返して、これでも切れると云って平気でいるのは、少しおかしいと云わなければならない。
ラジオ雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
(七九)
閭巷
(
りよかう
)
の
人
(
ひと
)
、
行
(
おこなひ
)
を
砥
(
と
)
ぎ
名
(
な
)
を
立
(
た
)
てんと
欲
(
ほつ
)
する
者
(
もの
)
は、
(八〇)
青雲
(
せいうん
)
の
士
(
し
)
に
附
(
つ
)
くに
非
(
あら
)
ずんば、
惡
(
いづく
)
んぞ
能
(
よ
)
く(名ヲ)
後世
(
こうせい
)
に
施
(
し
)
かん
哉
(
や
)
。
国訳史記列伝:01 伯夷列伝第一
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
細工場はいちだん低い
土間
(
どま
)
になっている。のみを
砥
(
と
)
ぐ砥石やら
木屑
(
きくず
)
やら土器の火入れなど、あたりのさまは、らちゃくちゃない。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これより
宮
(
みや
)
の
越
(
こし
)
驛に至る、
坦々
(
たん/\
)
砥
(
と
)
の如き
大路
(
たいろ
)
にして、木曾川は遠く開けたる左方の山の東麓を流れ、またその髣髴を得べからず。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
けれども、羽に
碧緑
(
あおみどり
)
の
艶
(
つや
)
濃く、赤と黄の
斑
(
ふ
)
を飾って、腹に光のある虫だから、留った土が
砥
(
と
)
になって、磨いたように
燦然
(
さんぜん
)
とする。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
刃
(
は
)
鈍
(
にぶ
)
る時は
貯
(
たくは
)
へたる
砥
(
と
)
をもつて
自
(
みづから
)
研
(
と
)
ぐ。此
道具
(
だうぐ
)
も
獣
(
けもの
)
の
皮
(
かは
)
を以て
鞘
(
さや
)
となす。此者ら春にもかぎらず冬より山に入るをりもあり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
その頃の学校にはボールドはあったが、はじめチョークというものが来なかったので「
砥
(
と
)
の
粉
(
こ
)
」で字や画をかいたが、間もなくチョークが来た。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
昨日の水溜りは、氷の上に雪がつもって、ふちの方は、薄黄いろく滲んでいるのが、氷河から滴たる為か、
砥
(
と
)
の
粉
(
こ
)
を溶かしたように濁っておる。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
砥
(
と
)
の
粉
(
こ
)
を塗つて、
隈
(
くま
)
を入れた顏、尺八を持つて一刀を
手挾
(
たばさ
)
んだ面魂は、五尺五六寸もあらうと思ふ恰幅の、共に如何樣敵役に打つて付けの油屋兼吉です。
銭形平次捕物控:063 花見の仇討
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
南に富士川は
茫々
(
ばう/\
)
たる乾面上に、
錐
(
きり
)
にて刻まれたる
溝
(
みぞ
)
となり、一線の針を
閃
(
ひらめ
)
かして落つるところは駿河の海、
銀
(
しろがね
)
の
砥
(
と
)
平らかに、
浩蕩
(
かうたう
)
として天と
一
(
いつ
)
に
融
(
と
)
く。
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
その
傍
(
そば
)
には一
挺
(
ちょう
)
の斧が
抛
(
な
)
げ出してあるが、風の具合でその白い
刃
(
は
)
がぴかりぴかりと光る事がある。他の一人は腕組をしたまま立って
砥
(
と
)
の
転
(
まわ
)
るのを見ている。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
情けある船長のとりはからいにて、これから一路
平坦
(
へいたん
)
砥
(
と
)
のごとき海上を
談笑指呼
(
だんしょうしこ
)
のあいだにゆくことになった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
坦々
(
たんたん
)
砥
(
と
)
の如き何
間
(
げん
)
幅
(
はば
)
の大通路を行く時も二葉亭は木の根
岩角
(
いわかど
)
の
凸凹
(
でこぼこ
)
した
羊腸折
(
つづらおり
)
や、
刃
(
やいば
)
を仰向けたような山の背を縦走する危険を聯想せずにはいられなかった。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
あるいは道路は
坦
(
たん
)
として
砥
(
と
)
のごとく自在に運搬交通をなし、あるいは水なきの地は
溝渠
(
こうきょ
)
を
穿
(
うが
)
って流水を通じ、あたかも人力をもって天造を圧倒したる景状あり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
坂になった路の土が、
砥
(
と
)
の
粉
(
こ
)
のやうに乾いてゐる。寂しい山間の町だから、路には
石塊
(
いしころ
)
も少くない。
両側
(
りやうがは
)
には古いこけら
葺
(
ぶき
)
の家が、ひつそりと日光を浴びてゐる。
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其の源泉は隠れて深山幽谷の中に有り、之を
索
(
もと
)
むれば更に深く地層の下にあり、
砥
(
と
)
の如き山、之を
穿
(
うが
)
つ可からず、
安
(
いづ
)
くんぞ国民の元気を
攫取
(
くわくしゆ
)
して之を転移することを得んや。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
大千世界を観ること
漸
(
ようや
)
くにして掌上の菓を視るが如くになり、未来は刻々に鮮やかに展じて、億万里程もただ一条の
大路
(
たいろ
)
の
砥
(
と
)
の如く通ずるを信ずるに至ったでもあったろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
誰が
砥
(
と
)
にかけて
磨
(
みが
)
きいだしけん、老女が
化粧
(
けはひ
)
のたとへは凄し、天下一面くもりなき影の、照らすらん
大廈
(
たいか
)
も高楼も、
破屋
(
わらや
)
の板間の犬の
臥床
(
ふしど
)
も、さては
埋
(
う
)
もれ
水
(
みづ
)
人に捨てられて
琴の音
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
初夏の
凪
(
な
)
いだ海は
小波
(
さざなみ
)
も立たず、
砥
(
と
)
のように平らな浅黄色に、空の白い雲がはっきりと映っていた。……釣道具をあけ、遺書を出して、それを餌箱を押えにして舟底へ置いた。
追いついた夢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その春と題したる畫の中に群れ遊べるさまこそ愛でたけれ。童一人大なる
砥
(
と
)
を
運
(
めぐら
)
すあれば、一人はそれにて
鏃
(
やじり
)
を研ぎ、外の二人は上にありて飛行しつゝも、水を砥の上に
灌
(
そゝ
)
げり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
浴衣
(
ゆかた
)
の裾を膝までまくりあげて、だらしなく腰掛けながら、その前に
鉋
(
かんな
)
を
砥
(
と
)
いで居る、若い大工と笑ひながら話して居たのを見たが、もしかしたらその大工ではないかと思ひもした。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
昔の食通には、新しく
砥
(
と
)
いだ庖丁で作った刺身から、砥石の味をいいあてたというような話がある。それほどでなくても、いわゆる食通の人の舌は、恐るべく敏感なものであるらしい。
塩の風趣
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
勝ち誇った華奢な宮子の微笑が、長く続いた青葉のトンネルの下を
潜
(
くぐ
)
っていく。坦々
砥
(
と
)
のように光った道。薔薇の垣根。腹を映して
辷
(
すべ
)
る自動車。イルミネーションの牙城へと迫るアルハベット。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
砥
(
と
)
の如き深夜の大道を、
二筋
(
ふたすじ
)
の白い光が
雁行
(
がんこう
)
して飛んだ。
追駈
(
おっか
)
けである。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
五月雨の降る頃は
凡
(
すべ
)
てものが錆びやすい。
砥
(
と
)
ぎすました剃刀が一夜の間に錆びてしまったというのである。これも五月雨の大景を見出したのではなく、小さい或事実をつかまえて来たのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
白い
埴
(
ねばつち
)
こねまはし、
糊
(
のり
)
で溶かして、
砥
(
と
)
の
粉
(
こ
)
を交ぜて
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
灌木がその個性を
砥
(
と
)
いでゐる
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
暖い
閨
(
ねや
)
も、石のごとく、
砥
(
と
)
のごとく、冷たく堅く代るまで、身を冷して涙で別れて……三たび取って返したのがこの時である。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
砥
(
と
)
にかけて、勉学をし直してこい。そうして、一人前の人間になれたら、師の御房に会わせてやろうし、第一、そのほうも、救われるというものだ
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
砥
(
と
)
の
粉
(
こ
)
を塗って、
隈
(
くま
)
を入れた顔、尺八を持って一刀を
手挟
(
たばさ
)
んだ面魂は、五尺五六寸もあろうと思う
恰幅
(
かっぷく
)
の、共にいかさま敵役に打って付けの油屋兼吉です。
銭形平次捕物控:063 花見の仇討
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
昨夜の風が
砥
(
と
)
ぎ澄まして行った、碧く冴えた虚空の下には、丹沢山脈の大山一帯が、平屋根の家並のように、びったり
凍
(
かじ
)
かんで一と塊に圧しつけられている。
雪中富士登山記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
砥
(
と
)
の如く平らかに矢の如く
直
(
なほ
)
くして、
目地
(
めぢ
)
遙かに人影を見ざる中を、可なりの速力で駛らせると、恰も活動寫眞を觀るが如くに遠くの小さな物が忽ち中位になり、大きくなつて
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
聞く、新道の木曾川に沿へるの邊、奇景百出、岩石の奇、
奔湍
(
ほんたん
)
の妙、旅客必ずこれを過ぎざるべからずと。
况
(
いは
)
んや、其路
坦々
(
たん/\
)
として
砥
(
と
)
の如く、復た舊道の如く嶮峻ならざるに於てをや。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
まことに
砥
(
と
)
のごとき途上であった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
灌木がその個性を
砥
(
と
)
いでゐる
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
廉平は
砥
(
と
)
に似て
蒼
(
あお
)
き
条
(
すじ
)
のある
滑
(
なめら
)
かな一座の岩の上に、海に面して見すぼらしく
踞
(
しゃが
)
んだ、身にただ
襯衣
(
しゃつ
)
を
纏
(
まと
)
えるのみ。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「へい」というと
襖
(
ふすま
)
が
開
(
あ
)
いた。炉べりに
砥
(
と
)
の
粉
(
こ
)
と
紅殻
(
べにがら
)
と
十手
(
じって
)
が置き放してある。暇にあかして磨きをかけていたのだろう、十手が
燦然
(
さんぜん
)
と光ってみえる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「眼尻に紅を差して、顏一面に
煤
(
すゝ
)
と
砥
(
と
)
の
粉
(
こ
)
を塗つて、含み綿をして顏をふくらませて居るに違ひありません」
銭形平次捕物控:306 地中の富
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
近くは西の方木曾山脈の山々の、雪や氷の
砥石
(
といし
)
に、風の歯は
砥
(
と
)
がれて、鋭くなり、冷たさがいや増して、霧を追いまくり、かつ追いかけて、我らの頬に噛みつくのである
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
道の左右は
砥
(
と
)
の如き絶壁だし、彼は坂の上に立って、狭い口を
塞
(
ふさ
)
いでいるので、大兵もついに用をなさない。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
筈
(
はず
)
でさ、来ないも道理。どさくさ紛れに、火の玉の
身上
(
しんしょう
)
をふるった、新しいばりかんを二
挺
(
ちょう
)
、
櫛
(
くし
)
が三枚、得物に持った剃刀をそのまま、おまけに、あわせ
砥
(
と
)
まで
引攫
(
ひっさら
)
って
遁亡
(
フイ
)
なんですって。……
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よく
砥
(
と
)
ぎ澄ましたものらしく、紫色にギラギラと光つて居ります。
銭形平次捕物控:047 どんど焼
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ごし、ごし、ごしっ……と童子の手はまた、
砥石
(
といし
)
のうえに動いているらしい。不敵な今の言葉といい、
砥
(
と
)
を揺する底力といい、武蔵はいぶからずにいられなかった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この時五助はお若の剃刀をぴったりと
砥
(
と
)
にあてたが、
哄然
(
こうぜん
)
として
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
魚の骨みたいに体には肉がないし、しじゅう水ッ
洟
(
ぱな
)
はすすっているし、
無精
(
ぶしょう
)
で、うす汚いこと、仕事場の
漆
(
うるし
)
ベラや、
砥
(
と
)
の土や、漆茶碗などと見分けのつかない程である。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
玄武寺
(
げんむじ
)
の頂なる
砥
(
と
)
のごとき
巌
(
いわお
)
の
面
(
おも
)
へ、月影が
颯
(
さっ
)
とさした。——
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
七之助はうしろ向きになったまま、火薬にあわせるほおの
木炭
(
きずみ
)
を
砥
(
と
)
でおろしていた。
銀河まつり
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小屋のなかには大勢の者が、板を
挽
(
ひ
)
いたり、
木地
(
きじ
)
を轆轤にかけたり、磨きをしたり、仕上げをかけたり、そうして、彫るものは彫りをつけ、塗るものは
砥
(
と
)
の粉をすッて
漆
(
うるし
)
を拭きます。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武士訓などの日常のあらゆる生活のものを
砥
(
と
)
にして「道」として確立しかけてはゐたが、以上の三者は皆それぞれ一國一城の主や、豪族であつて、身をもつて世路の危難や艱苦の中を
折々の記
(旧字旧仮名)
/
吉川英治
(著)
砥
漢検準1級
部首:⽯
10画
“砥”を含む語句
革砥
青砥
青砥藤綱
砥礪
自働革砥
皮砥
砥石
荒砥
砥草
砥部
砥粉
真砥野
砥石森
金剛砥
砥障
手持砥石
草鹿砥宣隆
金剛砂砥
剃刀砥
鋼砥
...