トップ
>
甲斐
>
かい
ふりがな文庫
“
甲斐
(
かい
)” の例文
眼ざといM君がさす方に、深い雪の山、
甲斐
(
かい
)
の
白峰
(
しらね
)
——北岳だそうだ。この国しらす峻嶺は、厳として
群山
(
むれやま
)
の後にそびえているのだ。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
彼女は、おそれおののいている夫の腕のなかに倒れかかろうとし、夫は狂気のようにその一撃を避けようとするが、その
甲斐
(
かい
)
はない。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
私の成功の
緒
(
ちょ
)
に
就
(
つ
)
く処までは是非存命でいてもらいたいと思った
甲斐
(
かい
)
もなく、困難中に
逝
(
ゆ
)
かれたことと、今度また折角苦しい中から
幕末維新懐古談:72 総領の娘を亡くした頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
お袋が馬鹿に喜んで、こうして毎日拝んだ
甲斐
(
かい
)
があると云って不動様の掛物の方へ指ざしをしたのだ。そうすると、兄きは妙な奴さ。
里芋の芽と不動の目
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それに
甲斐
(
かい
)
の国には、昔から轆轤首がおると申すから、まさしくこれは轆轤首、それなる
御僧
(
ごそう
)
の申し立ては、いつわりではござらぬぞ
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
そんなことにならないように、自分ではかなり努力したつもりだったが、その
甲斐
(
かい
)
もなく「御学友」にあげられてしまったのである。
桑の木物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
与十という男は小柄で顔色も青く、何年たっても
齢
(
とし
)
をとらないで、働きも
甲斐
(
かい
)
なそうに見えたが、子供の多い事だけは農場一だった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これは到底ちからで歯向っても
甲斐
(
かい
)
はあるまい、この倉の中味を説き聴かせ、
宥
(
なだ
)
めて帰すほかはあるまいとわたくしは心づきまして
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
クリストフはもう愛すまいとし、恋愛を——しばらくの間——
軽蔑
(
けいべつ
)
しようとしたが、
甲斐
(
かい
)
がなかった。彼は恋愛の
爪痕
(
つめあと
)
を受けていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「有るでしょうでは、あなたもわざわざ○○さんに御頼まれになって、ここまでいらしって下すった
甲斐
(
かい
)
がないではございませんか」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが
相模
(
さがみ
)
と
甲斐
(
かい
)
境の山村に入ればいよいよ数多く、その場処も村はずれの石地蔵の傍などに、一定した送り先があったのである。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
甲斐
(
かい
)
の武田信玄など、もう
姻戚
(
いんせき
)
の
誼
(
よし
)
みなどは顧みていられないように、頻りと策動の気はいが見える。北条家も油断ならない存在である。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これはと大きに驚き
呆
(
あき
)
れて、
推
(
お
)
し
剥
(
は
)
がさんと力を
出
(
いだ
)
せど少しも離るることなければ、人を頼みて
挽却
(
ひきさ
)
らしめしも一向さらにその
甲斐
(
かい
)
なし。
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
待っていてくださるような気がするの。……もしあの方が本当にこの世にいないとすれば、わたしのような
黒鳥
(
くろどり
)
は生きている
甲斐
(
かい
)
はないわ
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
………ほんとうに、今夜じゅうで一番印象の深かったのはあの一刻であった。あれを味わっただけでも蛍狩に来た
甲斐
(
かい
)
はあった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
惟
(
おも
)
うに小児が飼犬を単に白とか赤とか呼ぶごとく、その頃まで
天斑駒
(
あまのぶちごま
)
、
甲斐
(
かい
)
の黒駒など生処と毛色もて呼ぶに過ぎなかったろう。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼が全く架空の人物であってくれればという
空頼
(
そらだの
)
みの
甲斐
(
かい
)
もなく、今は行方不明の平田一郎なる人物があったことを報じて来た。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この夜お登和嬢は
一縷
(
いちる
)
の
望
(
のぞみ
)
を抱いて
寝
(
い
)
ねぬ。小山ぬしの尽力その
甲斐
(
かい
)
あらば大原ぬしは
押付婚礼
(
おしつけこんれい
)
を
免
(
のが
)
れて
忽
(
たちま
)
ち海外へ
赴
(
おもむ
)
き給わん。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そして維新後に生れた女史は、両親の第四子で二女である。
甲斐
(
かい
)
の国東山梨郡大藤村は女史の両親を生んだ
懐
(
なつか
)
しい故郷なので。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
午
(
ひる
)
すこしまえから急に小ぶりになって、まだ雪のある
甲斐
(
かい
)
の山々がそんな雨の中から見えだしたときは、何んともいえずすがすがしかった。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
武蔵
(
むさし
)
、
上野
(
こうずけ
)
、
下野
(
しもつけ
)
、
甲斐
(
かい
)
、
信濃
(
しなの
)
の諸国に領地のある諸大名はもとより、
相模
(
さがみ
)
、
遠江
(
とおとうみ
)
、
駿河
(
するが
)
の諸大名まで皆そのお書付を受けた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
なんでもなん千年というむかし、
甲斐
(
かい
)
と
駿河
(
するが
)
の
境
(
さかい
)
さ、
大山荒
(
おおやまあ
)
れがはじまったが、ごんごんごうごう
暗
(
くら
)
やみの奥で鳴りだしたそうでござります。
河口湖
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
それもほんの
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
のことで、胸のなかは再びがらんとしてしまい、何を
甲斐
(
かい
)
に生きているのやらつくづく分からなくなる。
可愛い女
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
これだけの景色を見ただけでも種々な難儀をして来た
甲斐
(
かい
)
があると思いました。そうなると何か歌を作ってみたくって堪らないが出ないです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
次の日曜には
甲斐
(
かい
)
へ行こう。新緑はそれは美しい。そんな会話が擦れ違う声の中からふと聞えた。そうだ。もう新緑になっていると
梶
(
かじ
)
は思った。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
かの女は水の
浄
(
きよ
)
らかな美しい河の
畔
(
ほとり
)
でをとめとなつた女である。
其
(
そ
)
の川の水源は
甲斐
(
かい
)
か
秩父
(
ちちぶ
)
か、地理に
晦
(
くら
)
いをとめの頃のかの女は知らなかつた。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
やがて、小夜の中山、
宇津
(
うつ
)
の山を越えたとき、遠くに雪を頂いた山が見えた。名を尋ねると
甲斐
(
かい
)
の
白根
(
しらね
)
というのであった。
現代語訳 平家物語:10 第十巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
鎌倉の覇業を永久に維持する
大
(
おおい
)
なる目的の前には、あるに
甲斐
(
かい
)
なき我子を捨殺しにしたものの、さすがに子は可愛いものであったろうと
推量
(
おしはか
)
ると
秋の修善寺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
明日
(
あした
)
からは生きている
甲斐
(
かい
)
が無くなります。
何卒
(
どうぞ
)
、
何卒
(
どうぞ
)
後生ですから妾を助けると思って、その銀杏の葉に書いてある字を読まして下さい。ね。ね
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
甲斐
(
かい
)
の国のことですから、山に不足はありません。多過ぎる山のうちのそのどれを
択
(
えら
)
んでよいかという評議であります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「私しゃ気の毒でたまらない。実に察しる。これで、平田も心残りなく
古郷
(
くに
)
へ帰れる。私も心配した
甲斐
(
かい
)
があるというものだ。実にありがたかッた」
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
その
甲斐
(
かい
)
があって、君が正気に返ったんだから、同じ不思議な現象にしても、これだけはいかにも優しいじゃないか。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いでや公判開廷の日には、
病
(
やまい
)
と称して、出廷を避くべきかなど、種々に心を苦しめしかど、その
甲斐
(
かい
)
遂
(
つい
)
にあらざりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
しかるに一方では、同じ人間が、イエス・キリストを通じての同胞が、民衆としての同胞が、彼のそばに苦しんでいた。
甲斐
(
かい
)
なき苦しみをしていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
物を思うに疲れては、あてもない
散策
(
さまよい
)
に、惜しむも
甲斐
(
かい
)
のない死別の哀愁を、振り捨てようとするのでありました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「私は、はかなくもばかげたこの虚栄の市を愛する。私は生涯、この虚栄の市に住み、死ぬるまでさまざまの
甲斐
(
かい
)
なき努力しつづけて行こうと思う。」
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一生懸命でもう一度声をかけたが、何の
甲斐
(
かい
)
もなかった。子供達の
素振
(
そぶり
)
には、馬鹿にし切っている色が
明
(
あきら
)
かだった。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「うむ。いくら詮議しても
甲斐
(
かい
)
がないから、一応下げたのじゃ。下げておいて、それとなく厳重に眼をつけておる」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ここで中部と名づけるのは便宜上、
美濃
(
みの
)
、
飛騨
(
ひだ
)
、
尾張
(
おわり
)
、
三河
(
みかわ
)
、
遠江
(
とおとうみ
)
、
駿河
(
するが
)
、
伊豆
(
いず
)
、
甲斐
(
かい
)
、
信濃
(
しなの
)
の九ヵ国を指します。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
人を
咒
(
のろ
)
うことについて趣味のある
醤買石
(
しょうかいせき
)
と、彼にうまく
担
(
かつ
)
がれているとは知らぬ
王老師
(
おうろうし
)
とは、医師の
手当
(
てあて
)
の
甲斐
(
かい
)
あって間もなく前後して、目を覚ました。
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
妙源 こんな風に
怯
(
おび
)
えながら。
甲斐
(
かい
)
のない見張りをしているうちには、もうとっくに上って、どこぞ雷にさかれた
巌間
(
いわま
)
にでも潜んでいるか知れぬことだ。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
文武道場の主として民間に覇を称えた者も、水戸長州等東西南北の脱藩士も、地主層出身も、「
甲斐
(
かい
)
の
祐天
(
ゆうてん
)
」事山本仙之助一党のごとき無職渡世流も——。
新撰組
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
お母さまは御自分では何の
甲斐
(
かい
)
がなくてもお父さまの捜索を決して怠られなかったのに、あなたには、お父さまが牢獄の中でまもなく死なれたのだろうか
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
今日
(
こんにち
)
のごとく功利的思想のさかんなる時代においては、人となりは一人前ならなくとも、仕事の
効果
(
こうか
)
さえ
挙
(
あ
)
ぐるを得ば人として生まれ来た
甲斐
(
かい
)
ありと信じ
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
広茫
(
こうぼう
)
とした穂蓼の草原が、遠く海のように続いた向うには、
甲斐
(
かい
)
の山脈が日に輝き、うねうねと連なっている。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「俺あ、お
前
(
めえ
)
さんの鼻をひつぱたいて
相済
(
あひす
)
まんだ。俺の鼻をぶつ叩いて気を晴らしてくだせェ。ぺちやんこ鼻だで、叩いても
甲斐
(
かい
)
のねェことだらうけど。」
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
互いに
睦
(
むつ
)
み合うは
愚
(
おろ
)
かの事、かえって
交互
(
たがい
)
に傷つけ合い、
甲斐
(
かい
)
の武田は
越後
(
えちご
)
の上杉、
尾張
(
おわり
)
の織田、
駿河
(
するが
)
の今川
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
自動車の
響
(
おと
)
が青山街道にしたかと思うと、東京のN君外三名が
甲斐
(
かい
)
の山の写真を
撮
(
と
)
りに来たのだ。時刻が
晩
(
おそ
)
くて駄目だったが、無理に二枚程撮って帰った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
太子
(
たいし
)
のお
徳
(
とく
)
がだんだん
高
(
たか
)
くなるにつれて、いろいろ
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
がありました。ある
時
(
とき
)
甲斐
(
かい
)
の
国
(
くに
)
から四
足
(
そく
)
の
白
(
しろ
)
い、
真
(
ま
)
っ
黒
(
くろ
)
な
小馬
(
こうま
)
を一
匹
(
ぴき
)
朝廷
(
ちょうてい
)
に
献上
(
けんじょう
)
いたしました。
夢殿
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
もっともそれだけ苦労する
甲斐
(
かい
)
はあるので、ここで見られる日の出前の空の色の変化と、高層雲の消長とは、ちょっと類例の少ない特殊の美しさをもっている。
黒い月の世界
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
“甲斐”の意味
《固有名詞》
甲斐(かい)
旧国名。東海道に位置する。甲斐国。ほぼ現在の山梨県に一致。
(地名)山梨県甲斐市。
(出典:Wiktionary)
甲
常用漢字
中学
部首:⽥
5画
斐
漢検準1級
部首:⽂
12画
“甲斐”で始まる語句
甲斐性
甲斐甲斐
甲斐絹
甲斐々々
甲斐国
甲斐守
甲斐源氏
甲斐絹屋
甲斐駒
甲斐〻〻