田畑たはた)” の例文
ぱう小高こだか土手どてると、いまゝでいてかぜむだ。もやかすみもないのに、田畑たはたは一めんにぼうとして、日中ひなかはるおぼろである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かしましき田畑たはた人聲ひとごゑと(あいちやんのつてる)へんじました、——遠方ゑんぱうきこゆる家畜かちくうなごゑは、海龜うみがめ重々おも/\しき歔欷すゝりなきであつたのです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
進みて私し江戸に在りし時は全盛ぜんせい土地柄とちがら故主人のひかりにて百五十兩の金子に有り附き古郷へ歸りもと田畑たはた受戻うけもどし家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
花を仕入れるため、多摩川たまがわの向岸まで行く用があったのである。まだ陽が出たばかりで、田畑たはたにさえ人影がなかった。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふたりは、こういましめあって、さとほうかけてゆきました。田畑たはたは、どこをてもきれいにたがやされていました。
ふるさと (新字新仮名) / 小川未明(著)
大変おっかねえまだ早ぐ来たで。——どんな風だ大崎の方は? 仕事の早い処だぢ、田畑たはたの仕事は片付いてしまったがあ。」
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そして、變化へんくわのない街道かいだう相變あいかはらず小川をがは沿うて、たひら田畑たはたあひだをまつぐにはしつてゐた。きりほとんあがつて、そらには星影ほしかげがキラキラとした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
勘次かんじ田畑たはた晩秋ばんしう收穫しうくわくがみじめなものであつた。それは氣候きこうわるいのでもなく、また土地とちわるいのでもない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その上いつらされるとなく田畑たはたらされて、そのとしれをふいにしてしまうものですから、しかたなしに毎年まいねん人身御供ひとみごくうげることにしてあります。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
丁度稲の取入れ時で、附近の田畑たはたには、鳥おどしのから鉄砲があちこちで鳴り響いていた。さっき奥村との対談中、あんなに激している際にも、彼は時々その音を聞いた。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼も郷里の九州には父から譲られた少しばかりの田畑たはたを有って居たが、其土は銭に化けて追々おいおい消えてしまい、日露戦争終る頃は、最早一撮ひとつまみの土も彼の手には残って居なかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なぜって、水の少ない地方では、田畑たはたが、かわききった荒れ地のようなありさまで、ほんのちょっとでも、風が吹こうものなら、たちまち土や砂が、もうもうとまきあがってしまうんだもの。
一千二百五十人いつせんにひやくごじゆうにん死人しにん二千四百五十人にせんしひやくごじゆうにん負傷者ふしようしやしたほかに、ふね流失りゆうしつ三千六百八十隻さんぜんろつぴやくはちじつせきいへながれたり、こはれたりしたのが七十二萬九千六百餘棟しちじゆうにまんくせんろつぴやくよむね田畑たはたあらされたこと七十八萬五千餘町しちじゆうはちまんごせんよちようのぼ
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
田畑たはた表面ひようめん石器せつき土器どき散亂さんらんしてゐるところがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
田畑たはたがいちめんにつながつてゐる。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
田畑たはた地味ちみのお調しらべですか。)
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
輕便鐵道けいべんてつだう線路せんろ蜿々うね/\とほした左右さいう田畑たはたには、ほのじろ日中ひなかかへるが、こと/\、くつ/\、と忍笑しのびわらひをするやうにいた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かげろうののぼる、かがやかしい田畑たはたや、若草わかくさぐむ往来おうらいや、隣家りんか垣根かきねももはなや、いろいろの景色けしきかんで、なつかしいおもにふけると
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ねえ区長さん。田畑たはた果樹園かじゅえんはどうなっているのですか。地上を攻撃されるおそれがあるんなら、地上でおちおち畑をつくってもいられないでしょう」
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さうするうち世間せけんまたはるうつつてあめいそがしく田畑たはたみづ供給きようきふした。勘次かんじ自分じぶんうしろ刈株かりかぶかへしてはたがやした。おつぎも萬能まんのうつて勘次かんじあといた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見せず惡事あくじ腰押こしおし或ひは賭博かけごと宿やどなどして食客ゐさふらふの五六人はたえす追々田畑たはた賣拂うりはらひ水呑同樣の困窮こんきうとなり凡十四五年居る中女房にようばう死亡みまかり今では娘とたゞ兩人差向ひてに漸々其の日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ねえ区長さん。田畑たはた果樹園かじゅえんはどうなっているのですか。地上を攻撃されるおそれがあるんなら、地上でおちおち畑をつくってもいられないでしょう」
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たゞちひさな銅貨どうくわつてはしつて村落むらちつゝさそひつゝあるくのである。をんな何處どこからてどうくといふこともせはしくたゞ田畑たはた勞働らうどうして百姓ひやくしやうあひだにはられなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
扨て又傳吉は倩々つら/\思ふに我が家世々村長成しが父の代よりいへおとろ田畑たはたも失ひあまつさへ從弟いとこ上臺憑司かみだいひようじ村長役むらをさやくうばはれ今では人々にまで見落さるゝ口惜くちをしさ是も世の有樣と思ひ十六七の時より何卒なにとぞ再び家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふもとのまちは、田畑たはたとなり、やまうえ鐘楼しょうろうは、むかし形見かたみとして、半分はんぶんこわれたままながあいだのこり、そこには、あおさびのかねが、雨風あめかぜにさらされてかかっていたけれど、だれも、それをらすものがない。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)