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煎
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せん
ふりがな文庫
“
煎
(
せん
)” の例文
「ひょっとしたら私の病気にでもきくというのでだれかが送ってくれたのじゃないかしら、
煎
(
せん
)
じてでも飲めというのじゃないかしら」
球根
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
人は自分のすべきことをさへすれば
可
(
いい
)
、われわれが貴様を責めるのも、勿論のこと、ひまだからだ、と
煎
(
せん
)
じ詰めた処さういふのだな。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
第九
桜飯
(
さくらめし
)
東京辺で茶飯というと桜飯を炊きます。外の地方で茶飯というと前にある茶粥の通りに
煎
(
せん
)
じ出した汁で御飯を炊きます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そしてそれほどまでに科学者以外の人々が科学に無理解であるということは、
煎
(
せん
)
じつめたところ国力の不足に起因するのであろう。
原子爆弾雑話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
お秀は客の帰るちょっと前、少しばかりの隙を見付けて、お万に
葛根湯
(
かっこんとう
)
を
煎
(
せん
)
じさせて、四畳半へ持って来させて飲ませたそうです。
銭形平次捕物控:125 青い帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
かれらは殆ど話しをしなかった、同じ部屋にいるときでも、おいちは縫い物をしたり薬を
煎
(
せん
)
じたりし、三之助は黙ってしんと寝ていた。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
浮橋は黙って暫くその顔を見つめていると、掛橋が薬を
煎
(
せん
)
じて持って来た。そうして、浮橋の袖をそっと曳いて廊下へ連れ出した。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
左に太い幹をもつは
楊柳
(
ようりゅう
)
。下には流るる河、上には浮かぶ雲。水に建つ
庵
(
いおり
)
の中には囲碁を挿む二人の翁。右には
侍童
(
じどう
)
が茶を
煎
(
せん
)
じる。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
同時に優れた文芸批評家であったウエーンライトの話、
小児
(
しょうに
)
の
臀肉
(
でんにく
)
を
煎
(
せん
)
じて義父の癩病を治そうとした野口男三郎の話、さては
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
煎
(
せん
)
じ詰めると、いたずらに先方の真似をしないで、わが特長を伸ばして往く以外に、私たちの進展の途はないということになる。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ギリシア語のアコケー(
尖頂
(
けんさき
)
)、ラテンのアクス(
鍼
(
はり
)
)、アケル(迅速また鋭利また明察)、英語アキュート(鋭利)等から
煎
(
せん
)
じ詰めて
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
ただ矛盾から出る一目的の
消耗
(
しょうこう
)
と解釈していた。これを
煎
(
せん
)
じ詰めると、彼は普通に
所謂
(
いわゆる
)
無目的な行為を目的として活動していたのである。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おゆうは、兄が持薬の
煎
(
せん
)
じぐすりを、机のそばへおいて、相変らず
閑
(
ひま
)
さえあれば、書物に眼を
曝
(
さら
)
している半兵衛へそっと云った。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「髪の薬に成さるとかッて——
煎
(
せん
)
じて附けると、
光沢
(
つや
)
が出るんだそうです——なんでも、伊東の方で聞いてらしったんでしょう」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と、徹頭徹尾こんな書きぶりで、約二十枚ぐらいの長さにわたって書き続けているのだが、
煎
(
せん
)
じ詰めれば上に引用したような言葉に尽きる。
文壇昔ばなし
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
此の前に来た時は
此様
(
こん
)
なに
瘠
(
やせ
)
てはいなかったが、何も食べさせはせず、薬一服
煎
(
せん
)
じて呑ませる了簡もなく、出歩いてばっかり居る奴だから
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
當藥
(
たうやく
)
煎
(
せん
)
じ
出
(
だ
)
して
氣日
(
まいんち
)
俺
(
お
)
れ
片口
(
かたくち
)
で五
杯
(
へえ
)
づゝも
飮
(
の
)
んだな、五
合
(
がふ
)
位
(
ぐれえ
)
へえつけべが、
俺
(
お
)
ら
呼吸
(
えき
)
つかずだ、なあに
呼吸
(
えき
)
ついちや
苦
(
にが
)
くつて
仕
(
し
)
やうねえだよ
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
安い薬草などを
煎
(
せん
)
じてのんで、そのにおいで畳の色がかわっているくらい——もう、わずらってから、永いことになるんだ。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
銀色の竜頭からは夏を
煎
(
せん
)
じつめたようなサイダーの原汁がきらきらと日に輝きながら真黒に
煤
(
すす
)
けた木槽にしたたっていた。
フランセスの顔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
いや人間は賢いものだ、もし
蓬
(
よもぎ
)
と
菖蒲
(
しょうぶ
)
の二種の草を
煎
(
せん
)
じてそれで
行水
(
ぎょうずい
)
を使ったらどうすると、大切な秘密を
洩
(
もら
)
してしまったことにもなっている。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一体青い鳥の幸福という奴は、
煎
(
せん
)
じ詰めて見れば、内に安心立命を得て、外に十分の勢力を施すというより外有るまいね。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
子供
(
こども
)
の
時分
(
じぶん
)
にもはなはだしい
熱
(
ねつ
)
のとき、
親方
(
おやかた
)
が、らんの
実
(
み
)
を
煎
(
せん
)
じて
飲
(
の
)
ましてくれて、なおったことを
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
したのです。
春風の吹く町
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
たいがいの悪がじろりと一
瞥
(
べつ
)
を食っただけで、思わずお白洲の砂をつかむと言われている古今に絶した凄いすごいお奉行さまにも、
煎
(
せん
)
じつめれば
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
病人はいとしや。——母より小包み来る。私が鼻が悪いと云ってやったので、ガラガラに
乾
(
ほ
)
してある
煎
(
せん
)
じ薬と足袋と絞り木綿の腰巻を送って来た。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
煎
(
せん
)
じて
在
(
あり
)
しが夫と見るより
言葉
(
ことば
)
を
改
(
あらた
)
め是は/\
御深切
(
ごしんせつ
)
に
毎々
(
いつも/\
)
御尋
(
おたづ
)
ね今日は何よりも心
能
(
よき
)
樣子にてすや/\
眠
(
ねぶ
)
り居候と云を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それで、医師の合田氏は、これはいけないと非常な丹精をしてくれまして、夜も
帰宅
(
かえ
)
らず、
徹宵
(
てっしょう
)
附き添い、薬も自身
煎
(
せん
)
じて看護してくれられました。
幕末維新懐古談:50 大病をした時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
あるいは実業家になりたいというは、いかなるところより起こった考えかと
煎
(
せん
)
じつめると、実業家は美服を
着
(
つ
)
け茶屋に行ってドンチャンやるにある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
タクシスの説を学んだことがある、孫が可愛いなどといふのは、
煎
(
せん
)
じつめれば、何か知らんあんなものでもあるのかも知れないなどと思ふことがある。
孫
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
しかしそれは何番
煎
(
せん
)
じかの出がらしだ。しかも入れ替えていった模写画というのが、一目でそれと分る拙劣な画だ。
すり替え怪画:烏啼天駆シリーズ・5
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
煎
(
せん
)
じて飲みますと、たいへんに効能のあるせきどめ薬でありましてな、昨年来、世間に悪い風邪が
流行
(
はや
)
り出しましてからはな、よく利く薬だと申して
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
「そんなに家が恋しいんじゃ
迚
(
とて
)
も海外発展どころの沙汰じゃないね。些っと
天草女
(
あまくさおんな
)
の爪の
垢
(
あか
)
でも
煎
(
せん
)
じて飲むと宜い」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そしてそれが
少
(
すこ
)
しも
御本人
(
ごほんにん
)
には
関係
(
かんけい
)
のない
事柄
(
ことがら
)
なのですから、
考
(
かんが
)
えて
見
(
み
)
ればまことに
不思議
(
ふしぎ
)
な
話
(
はなし
)
で、
煎
(
せん
)
じつむれば
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
服従なき自由とか、自由なき服従とか、服従と、自由を訓練なき国民に使い分けをさせようなんぞとは、氷水を
煎
(
せん
)
じて飲ませようというようなものです。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
面壁九年といって、釈迦一代の説法、各宗の精髄どころを
達磨
(
だるま
)
という
蒸溜器
(
ランビキ
)
に
容
(
い
)
れて
煎
(
せん
)
じて、煎じて、煎じ詰める事九年、液体だか気体だかわからない。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
世の文学者なる者、自らは空言に非ずと信じて書くことにても、思想錯雑して前後衝突し論理的に之を
煎
(
せん
)
じ
詰
(
つめ
)
れば結局空論に化して自らも之を驚く者あり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
しかも刀剣が八
口
(
ふり
)
、槍が三本、鎧が二領、それらの中に交って、老人、医道の心得があるらしく、いく袋かの
煎
(
せん
)
じ薬と共に、立派な
薬味箪笥
(
やくみだんす
)
が見えました。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
これは普通に難解という部類には
這入
(
はい
)
らないが、しかし
煎
(
せん
)
じつめればやはりその部類に入るといってよかろう。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ですから下等な修学僧侶は上等僧侶の飲み
滓
(
かす
)
の茶を貰って来て
其滓
(
それ
)
を
煎
(
せん
)
じて飲むんですが、さてその煎じるところの
薪
(
まき
)
即ちヤクの
糞
(
ふん
)
はこれまたただは来ない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
蜂の巣がよいといふことを聞いて、お寺の御堂の軒にあつた大きな巣を貰つて来て
煎
(
せん
)
じて飲ませたりした。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
また
播州
(
ばんしゅう
)
〔兵庫県南部〕ではオコリオトシというそうだが、これもその草を
煎
(
せん
)
じて飲めば味が
苦
(
にが
)
いから、病気のオコリがオチル、すなわち
癒
(
なお
)
るというのであろう。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
でもその祈りの気持といふのは、
煎
(
せん
)
じつめてみると結局、このうへ姉さまに俗世のきづなの苦しみを与へてはならないのだ——といふことに落ちついてしまひます。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
短冊
(
たんざく
)
、
色紙
(
しきし
)
等のはりまぜの二枚屏風の陰に、薬を
煎
(
せん
)
じる
土瓶
(
どびん
)
をかけた
火鉢
(
ひばち
)
。金だらい、水びん等あり。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
花村様のお心持ちに加担している方々で、いざという時には弓を返してかえってお館に向かうも知れぬ……さてこのように
煎
(
せん
)
じ詰めて見れば自然と勝敗の数も知れる
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そう言ってしまっても、いけないでしょうけれど、
煎
(
せん
)
じつめると、そうなるかも知れませんわ。」
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
幾人
(
いくたり
)
もの御夫人、愛姫というものを持っておいでになるというものの、
煎
(
せん
)
じつめれば愛しておいでになる夫人はお一人だけということになる方がおいでになるのだから
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そうじゃあ
無
(
ね
)
えが忘れねえと云うんだい、こう
煎
(
せん
)
じつめた
揚句
(
あげく
)
に
汝
(
てめえ
)
の身の皮を飲んでるのだもの。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
煎
(
せん
)
ずるところ人間享楽の
茶碗
(
ちゃわん
)
は、いかにも狭いものではないか、いかにも早く涙であふれるではないか、無辺を求むる
渇
(
かわき
)
のとまらぬあまり、一息に飲みほされるではないか。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
それでわれわれの今日の実際問題は社会問題であろうと、教会問題であろうと、青年問題であろうと、教育問題であろうとも、それを
煎
(
せん
)
じつめてみれば、やはり金銭問題です。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
烏瓜
(
からすうり
)
を
煎
(
せん
)
じて飲んで見た事もある。鼠の
尿
(
いばり
)
を鼻へなすって見た事もある。しかし何をどうしても、鼻は依然として、五六寸の長さをぶらりと唇の上にぶら下げているではないか。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
魚にあたったら
染藍
(
そめあい
)
を
煎
(
せん
)
じて飲めというくらいのもの。このふたつは精霊船よりも恐い。
顎十郎捕物帳:13 遠島船
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
煎
常用漢字
中学
部首:⽕
13画
“煎”を含む語句
煎餅
香煎
煎汁
胆煎
瓦煎餅
豆煎
揚煎餅
肝煎
煎茶
煎薬
塩煎餅
煎餅布団
油煎
湯煎
煎藥
煎茶茶碗
煎鳥
煎法
鯛煎餅
煎詰
...