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無暗
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むやみ
ふりがな文庫
“
無暗
(
むやみ
)” の例文
市中の地下鉄と違って線路が
無暗
(
むやみ
)
に
彎曲
(
わんきょく
)
しているようである。この「上野の山の腹わた」を通り抜けると、ぱっと世界が明るくなる。
猫の穴掘り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「その御心配なら絶対に御無用に願いたいものです。患家の秘密を
無暗
(
むやみ
)
に
他所
(
よそ
)
で
饒舌
(
しゃべ
)
るようでは医師の商売は立ち行きませんからね」
霊感!
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
源氏の縁坐で
斯様
(
かやう
)
の事も出来たのであるから、
無暗
(
むやみ
)
に将門を
悪
(
にく
)
むべくも無い、一族の事であるから
寧
(
むし
)
ろ
和睦
(
わぼく
)
しよう、といふのである。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
然
(
しか
)
し
私
(
わたし
)
は
少
(
すこ
)
しも
身體
(
からだ
)
に
異状
(
いじやう
)
は
無
(
な
)
いです、
壯健
(
さうけん
)
です。
無暗
(
むやみ
)
に
出掛
(
でか
)
ける
事
(
こと
)
は
出來
(
でき
)
ません、
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたし
)
の
友情
(
いうじやう
)
を
他
(
た
)
の
事
(
こと
)
で
何
(
なん
)
とか
證
(
しよう
)
させて
下
(
くだ
)
さい。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ほかに悪口の言いようを知らないのだから仕方がないが、今まで辛棒した人の気も知らないで、
無暗
(
むやみ
)
に馬鹿野郎
呼
(
よば
)
わりは失敬だと思う。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
彼女は「だいなし」という
詞
(
ことば
)
を
無暗
(
むやみ
)
に
遣
(
つか
)
う癖があった。ややもすると「だいなしに
暑
(
あつ
)
い」とか、「だいなしに遅くなった」とかいった。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
汗水たらして激しく山登りをして来た上に、握飯には有付けず、塩からい冷肉を
無暗
(
むやみ
)
にパク付いたので、
迚
(
とて
)
も
堪
(
たま
)
ったものではない。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
電話をかけるように喇叭へ大きな声を吹き込んで尋ねる事は何でも話してやった。年寄の癖に
無暗
(
むやみ
)
に人のいう事を聞きたがるから悪い。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
飼料の用意が十分でなかったところから、
生
(
なま
)
の馬鈴薯を
無暗
(
むやみ
)
と食わしたので、腹に澱粉の溜まったのが原因だった。伝平は
酷
(
ひど
)
く落胆した。
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「話せらあ、話せらあ、こいつあ話せらあ。
無暗
(
むやみ
)
に飲めます。」と愛吉はがぶりがぶり、狼と熊とが親類になったような有様で。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし家庭の一員としての女性ならば、
無暗
(
むやみ
)
に女でもできるという仕事を見つけてやって、男と競争させることは家のためには損である。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「いや、いや、これも小さいながら、命のあるものに違いない。その命を
無暗
(
むやみ
)
にとると云う事は、いくら何でも可哀そうだ。」
蜘蛛の糸
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また精神上の潔癖家として
無暗
(
むやみ
)
に人を
毛嫌
(
けぎら
)
いするものもある。あいつはオベッカ者だからとかあいつはウソ
吐
(
つ
)
きだとかいって、口も
利
(
き
)
かぬ。
良人教育十四種
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
造物が責任を持つからいいと言えば言うようなものの、彼が
無暗
(
むやみ
)
に生命を造り過ぎ、無暗に生命を壊し過ぎるとわたしは思う。
兎と猫
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
但
(
ただ
)
し富岡老人に話されるには
余程
(
よほど
)
よき
機会
(
おり
)
を見て貰いたい、
無暗
(
むやみ
)
に急ぐと却て失敗する、この辺は貴所に
於
(
おい
)
て決して
遺漏
(
ぬかり
)
はないと信ずるが
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「まさか、外國の戰場へ出かけてゐるのではあるまいし」と、渠は思ひ直して見たが、それでも女の言葉が
無暗
(
むやみ
)
になつかしい。
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
もう
暫
(
しばら
)
く
炬燵
(
こたつ
)
にあたつてゐたいと思ふのを、
無暗
(
むやみ
)
と時計ばかり気にする母にせきたてられて
不平
(
ふへい
)
だら/\、
河風
(
かはかぜ
)
の寒い
往来
(
わうらい
)
へ出るのである。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
もう宿の
善悪
(
よしあし
)
は
択
(
えら
)
ぶに
暇
(
いとま
)
なく、
只
(
ただ
)
泊めて呉れさえすれば宜しいと
云
(
い
)
うので
無暗
(
むやみ
)
に
歩行
(
ある
)
いて、
何
(
どう
)
か
斯
(
こう
)
か二晩
泊
(
とま
)
って三日目に小倉に着きました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
流石
(
さすが
)
に、
無暗
(
むやみ
)
に
踏
(
ふ
)
ん
込
(
こ
)
む訳にも行かぬので、一同玄関の土間にためらっていると、奥の方から、幽かに誰かの泣きじゃくる声が漏れて来た。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
無暗
(
むやみ
)
と放棄し来たった過去の無定見を反省し、更に更に研究して、ふぐの存在を十分有意義ならしめたいと私は望んでいる。
河豚のこと
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
無暗
(
むやみ
)
に人を疑つて許りゐる役人のやうに思はれてゐますが、そして又信者達からはさう思はれるのが当然ですが、貴方方に迄そんな疑ひの謎を
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
シカシその理由も説明せずして
唯
(
ただ
)
無暗
(
むやみ
)
に人を侮辱した侮辱したと云うばかりじゃ、ハアそうかとは云ッておられんじゃないか
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
与えられたものを
無暗
(
むやみ
)
に使い尽さぬと云う心がなかったら、多くの禅坊さんは皆
箭
(
や
)
より速かに地獄へ堕つることであろう。
僧堂教育論
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
遅れまい遅れまい、さう思ふのと、
無暗
(
むやみ
)
にこみ上げて来る荒々しい感情とで、幾は青く
捻
(
ねぢ
)
れたやうになつて前にのめつた。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
下で見た時には左程にも思わなかった草丈が人の脊よりも高い。俯向きながら
無暗
(
むやみ
)
に掻き分けて行くと、
礑
(
はた
)
と岩に
撞
(
つ
)
き当って頭がズシンと響く。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
富「どうも、
私
(
わたくし
)
前後忘却致し、酔っておりまして、はっというとお隅さんで、恐入りました、
無暗
(
むやみ
)
に御打擲で血が出ます」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
無暗
(
むやみ
)
と恥かしがりの模倣をする事が、旧い考へで奨励されてゐるのをも同様に馬鹿々々しいと思はずにはゐられません。
内気な娘とお転婆娘
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
後の首筋を蒼くして、
無暗
(
むやみ
)
に御部屋の雑巾掛や御掃除をさせて、物を仰るにも御声が
咽喉
(
のど
)
へ
乾
(
ひから
)
びついたようになります。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
故に新学問の初期即ち明治二十年代位に至るまでは、西洋人の説とさえいえば、
無暗
(
むやみ
)
にこれを有難がったものであった。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
無暗
(
むやみ
)
に法律問題を起して争って、田舎にもって居た僅かな財産も全く使ってしまった揚句、一郎がまだ中学生であった時分に死んでしまったのです。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
ただひとりその中に町はずれの
本屋
(
ほんや
)
の
主人
(
しゅじん
)
が
居
(
い
)
ましたが山男の
無暗
(
むやみ
)
にしか
爪
(
つめ
)
らしいのを見て思わずにやりとしました。
紫紺染について
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
總
(
そう
)
じて
江戸
(
えど
)
は
人間
(
にんげん
)
の
調子
(
てうし
)
が
輕
(
かる
)
うて、
言葉
(
ことば
)
も
下
(
した
)
にござります。
下品
(
げひん
)
な
言葉
(
ことば
)
の
上
(
うへ
)
へ、
無暗
(
むやみ
)
に「お」の
字
(
じ
)
を
附
(
つ
)
けまして、
上品
(
じやうひん
)
に
見
(
み
)
せようと
企
(
たくら
)
んで
居
(
を
)
ります。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
高
(
たか
)
が
大家
(
たいか
)
と云はれて
見
(
み
)
たさに
無暗
(
むやみ
)
に
原稿紙
(
げんかうし
)
を
書
(
か
)
きちらしては
屑屋
(
くづや
)
に
忠義
(
ちうぎ
)
を
尽
(
つく
)
すを
手柄
(
てがら
)
とは
心得
(
こころえ
)
るお
目出
(
めで
)
たき
商売
(
しやうばい
)
なり。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
魚の
腸
(
はらわた
)
が腐ったような異臭が、身の
周
(
まわ
)
りに
漂
(
ただよ
)
っているのだった。胸の中は、
灼鉄
(
やきがね
)
を突込まれたように痛み、それで
咳
(
せき
)
が
無暗
(
むやみ
)
に出て、一層苦しかった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
斯く妻が呼ぶ声に、彼は下駄を突っかけて、植木屋の庭の様に
無暗
(
むやみ
)
に樹木を植え込んだ園内を歩いて、
若木
(
わかき
)
の梅の下に立った。成程咲いた、咲いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
懐胎
(
みもち
)
の様子はなかったが、
取逆上
(
とりのぼせ
)
て少し気が変になったらしく、昼でも行灯を点けておいたり、草履を縁側へブラ下げたり、
無暗
(
むやみ
)
に逃出そうとしたり
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
また少い手当であるから
無暗
(
むやみ
)
に使わせぬようとの意もあって、毎月四回より上は邸外へ出ることは許されなかった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
近来は「
吾子
(
あこ
)
」と言葉を
無暗
(
むやみ
)
に使用する人もあるが、あれはまた「可愛いい子よ」と呼び掛ける言葉であつて
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そんなことを
為
(
す
)
る奴もあるが、俺の方ではチャンと見張りしていて、そんな奴あ
放
(
ほう
)
り出してしまうんだ。それにそう
無暗
(
むやみ
)
に連れて来るって訳でもないんだ。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
みのるは唯
眞驀
(
ましぐら
)
に物を書いて行つた。自分を鞭打つやうな男の眼が多くの時間みのるの机の前に光つてゐた。みのるはそれを恐れながら
無暗
(
むやみ
)
と書いて行つた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
無暗
(
むやみ
)
にあわてた。折りも折、舎内で時計やお
鳥目
(
てうもく
)
の紛失が
頻々
(
ひん/゜\
)
と伝はつた。私は消え入りたい思ひであつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
誰が見ても、その引きつけられた
旅行鞄
(
トランク
)
の方に大切なものが詰まってると思うだろう。なんとか近付きになりたいが、そう
無暗
(
むやみ
)
に話しかけるわけにもならぬ。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
死に際に病人を
無暗
(
むやみ
)
に苦しませないで、注射なり、服薬なり、或はその他の方法を講じて、出来るだけ苦痛を少なくし、安楽に死なせることをいうのであります。
安死術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
人足どもも
無暗
(
むやみ
)
に撲ることは乱暴だが、川越し人足である、これで通ったものを、東海道の人足とは人足ぶりが違うとか、
面
(
つら
)
まで違うとか、山猿がどうしたとか
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私はそんなことで昼間は上機嫌で過したが、やはり日が暮れて来ると、
無暗
(
むやみ
)
にうちへ帰りたくなった。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
忠君愛国を
無暗
(
むやみ
)
に振り廻わして、天下を
闊歩
(
かっぽ
)
している不真面目な人よりは、
寧
(
むし
)
ろ退いて一身を守っている人の方が、いざという時に天下国家のためになりはせぬか。
人格を認知せざる国民
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
僕は最初の日に、手足の驚くほど細い、たゞ
無暗
(
むやみ
)
と泣いてゐる赤ん坊を母親の
傍
(
かたはら
)
に見て、第一にあゝ大変だと思つたからだ。こんなに弱々しくてどんなものだらう。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
かっと逆上
っ
(
ママ
)
たままあるいた。耳に鳴りはためく焔のような物音をききながら
無暗
(
むやみ
)
にあるいていた。
小さき良心:断片
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「馬鹿なことを云うな、解るものか。あんなに
無暗
(
むやみ
)
と啼き立てられては、第一声が通りゃアしない」
岷山の隠士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
泣いている内に、頭が熱して来て、
終
(
しまい
)
には、悲しさも口惜しさもなく、ただ
無暗
(
むやみ
)
と涙が出て来た。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
暗
常用漢字
小3
部首:⽇
13画
“無暗”で始まる語句
無暗矢鱈
無暗滅法