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濠
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ほり
ふりがな文庫
“
濠
(
ほり
)” の例文
ところが『大清』の南は
濠
(
ほり
)
で建増そうにもひろげようにもどうすることも出来ない。そこで、眼をつけたのが北どなりの京屋の地面。
顎十郎捕物帳:18 永代経
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
こんな民土の
謡
(
うた
)
が
興
(
おこ
)
ったのも、正に明智領になってからである。こよいも
濠
(
ほり
)
をこえ、
狭間
(
はざま
)
をこえて、城下の
謡
(
うた
)
が本丸まで聞えていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上と下と
濠
(
ほり
)
が二つあって、まんなかが水門。上ではない、その下のほうの濠に、いぶかしい品がぶかりぶかりと浮いているのです。
右門捕物帖:31 毒を抱く女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
麹町の元園町時代は、市街の中央だったが、それでもお城のお
濠
(
ほり
)
が近く、番町の大溝が近かったりした関係上、折々その庭に蛙が来た。
解説 趣味を通じての先生
(新字新仮名)
/
額田六福
(著)
と
言
(
い
)
ひかけて、
左右
(
さいう
)
を
見
(
み
)
る、と
野
(
の
)
と
濠
(
ほり
)
と
草
(
くさ
)
ばかりでは
無
(
な
)
く、
黙
(
だま
)
つて
打傾
(
うちかたむ
)
いて
老爺
(
ぢゞい
)
が
居
(
ゐ
)
た。
其
(
それ
)
を、……
雪枝
(
ゆきえ
)
は
確
(
たしか
)
め
得
(
え
)
た
面色
(
おもゝち
)
であつた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
「一刻も早く御帰国なさい。だが
此所
(
ここ
)
で御覧のとおり、事態は極度に悪化しています。
遁
(
のが
)
れる路は唯一つ、お
濠
(
ほり
)
をくぐって、
山下橋
(
やましたばし
)
へ」
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
兵馬はその絵馬をかついで、
舞鶴城
(
ぶかくじょう
)
の
濠
(
ほり
)
の近辺を通ると、どうしたものか、一頭の犬が、兵馬の前路をふさいでさかんに
吠
(
ほ
)
え立てます。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
古い土手の松が大きな根をそこにうねらせていたばかりではなく、淡い緑の枝が形よく
濠
(
ほり
)
の水にその影を落していたからである。
日本橋附近
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ある
日
(
ひ
)
のことでした。三
人
(
にん
)
は、いっしょに、お
濠
(
ほり
)
の
方
(
ほう
)
へ
歩
(
ある
)
いてゆきました。
雪
(
ゆき
)
が
消
(
き
)
えて、
水
(
みず
)
がなみなみと、
午後
(
ごご
)
の
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
に
輝
(
かがや
)
いていました。
春の日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
お勝手口から
庇
(
ひさし
)
續きに五六間行つたところ、隨分不便な場所ですが、お
濠
(
ほり
)
や下水の差し水を嫌つて、わざとこんなところへ掘つたのでせう。
銭形平次捕物控:108 がらツ八手柄話
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お父様は藩の時
徒士
(
かち
)
であったが、それでも
土塀
(
どべい
)
を
繞
(
めぐ
)
らした門構の家にだけは住んでおられた。門の前はお
濠
(
ほり
)
で、向うの岸は
上
(
かみ
)
のお蔵である。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
江戸城の
濠
(
ほり
)
はけだし水の美の冠たるもの。しかしこの事は叙述の筆を以てするよりもむしろ絵画の
技
(
ぎ
)
を以てするに
如
(
し
)
くはない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
午後四時頃、それが済んで、帝劇を出た時は、まだ白くぼやけたやうな日が、快い柔かな光で、お
濠
(
ほり
)
の松の上に
懸
(
かゝ
)
つてゐた。
私の社交ダンス
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
廃兵院の広地の奥、その
濠
(
ほり
)
や高い壁の後ろ、厳粛な
寂寞
(
せきばく
)
さの中には、遠い昔の戦勝の交響曲のように、薄黒い金色の
円
(
まる
)
屋根が浮き出していた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
お
濠
(
ほり
)
の
堤
(
どて
)
の青草や、向う側の堤の松や、大使館前の葉桜の林などには、十日ほど前に来たときなどよりも、もっと激しい夏の色が動いていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「□□さんきっとああいうところが好きだからいってごらんなさい、裏のお
濠
(
ほり
)
のふちにたったひとつ狭い部屋があるから」
妹の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
三方に
築地塀
(
ついじべい
)
を廻らし、南側の
濠
(
ほり
)
に沿った一方だけ黒く塗った
柵
(
さく
)
になっていた。柵の内側は杉の深い林で、その杉林が邸内の半ばを占めている。
日日平安
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
レーテは汝見るをうべし、されどこの
濠
(
ほり
)
の
外
(
そと
)
、罪悔によりて除かれし時魂等己を洗はんとて行く處にあり 一三六—一三八
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
お増は、帰りに日比谷公園などを、ぶらぶら一周りして、お
濠
(
ほり
)
の水に、日影の薄れかかる時分に、そこから電車に乗った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
御城の杉の梢は丁度この絵と同じようなさびた色をして、お
濠
(
ほり
)
の石崖の上には葉をふるうた
椋
(
むく
)
の大木が、
枯菰
(
かれこも
)
の中のつめたい水に影を落している。
森の絵
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
お
濠
(
ほり
)
をぐるっとめぐって、参謀本部のとこから、日比谷へ出て、それから新橋駅へ出て、赤羽は、その裏じゃないか。
二十世紀旗手
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
狭い町へ出たり、例の
蓮
(
はす
)
の咲いている
濠
(
ほり
)
へ出たりまた狭い町へ出たりしたが、いっこうこれぞという所はなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この商人がある晩おそく紀国坂を急いで登って行くと、ただひとり
濠
(
ほり
)
の
縁
(
ふち
)
に
踞
(
かが
)
んで、ひどく泣いている女を見た。
貉
(新字新仮名)
/
小泉八雲
(著)
尾張国
(
おわりのくに
)
の名古屋を中心とするのが愛知県であります。名古屋城は今も昔の姿を変えず、下には
濠
(
ほり
)
を漂わせ、高い石垣の上に
聳
(
そび
)
え立つ様は壮大であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
百舌鳥
(
もず
)
が、けたたましく
濠
(
ほり
)
の向うで鳴いている。四谷見附から、
溜池
(
ためいけ
)
へ出て、溜池の裏の竜光堂という薬屋の前を通って、豊川いなり前の電車道へ出る。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
するとそいつは
濠
(
ほり
)
の方へ向いた窓をあけてね、そこに立ちはだかって、豚の子みたいにわめくんでございます。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
サン・ヴィクトルの
濠
(
ほり
)
や植物園などに沿っている古い狭い街路は、駅馬車や
辻馬車
(
つじばしゃ
)
や乗合い馬車などの群れが毎日三、四回激しく往来するために震え動き
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
案内の若い者につれられて、三人は白鷺城の
濠
(
ほり
)
について、人通りのない雨の道を、旧城下町へ入って行った。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
片端
(
かたは
)
という地名は一方が城の土居もしくは
濠
(
ほり
)
ばたになっていて、片側しか人家のない道路であることを意味し、これも西国にはなくてこの辺から東には多い。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
……だがそれにしてもこの図面、どこの城郭の縄張りなんだろう? ……北の丸、西の丸、西丸下、本丸があって二の丸がある。
濠
(
ほり
)
が三重に取り巻いている。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
町は何等の防備を有せぬのを例としていたが、堺は町を
繞
(
めぐ
)
らして
濠
(
ほり
)
を有し、町の出入口は厳重な木戸木戸を有し、堺全体が支那の城池のような有様を持っていた。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
千代田の
濠
(
ほり
)
はいかに深く、その城壁はどんなに高くとも、この、人間の港の潮を防ぐことはできない。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
昔の
栄華
(
えいが
)
を語る古城のほとり、朽ちかけた天守閣には
蔦
(
つた
)
かずらが
絡
(
から
)
み、崩れかけた石垣にはいっぱい
苔
(
こけ
)
が生え、そのお
濠
(
ほり
)
に睡蓮の花が咲いていたら、私達は知らぬ間に
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
樹木に対して目をふさぐような気持ちで冬を過ごしてしまうと、やがて
濠
(
ほり
)
ばたの柳などが芽をふいてくる。いかにも美しい。やっぱり新緑は東京でも美しいんだなと思う。
京の四季
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
子規居士の「石垣や蛙も鳴かず深き
濠
(
ほり
)
」という句は、蛙が鳴くべくして鳴かぬ、
闃寂
(
げきせき
)
たる深い濠を想像せしめるが、見方によっては夜と限らないでもよさそうな気がする。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
身投げの決心をしても大丈夫なことは細君の保証するところだが、酔っていてお
濠
(
ほり
)
へ落ちたのだから危かった。深い浅いを考える余裕がなければ死んでしまうかも知れない。
一年の計
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そうして
蘆
(
あし
)
と
藺
(
い
)
との茂る
濠
(
ほり
)
を見おろして、かすかな夕日の光にぬらされながら、かいつぶり鳴く水に寂しい白壁の影を落している、あの天主閣の高い屋根がわらがいつまでも
松江印象記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
濠
(
ほり
)
まで見通せる道の両側の青い街では家々は夕飯をすましてまだ
瓦斯
(
ガス
)
燈の瓦斯が来ないままに、人々は店の上り
框
(
かまち
)
に腰かけて雑談したり、往来へ出て背のびをしたりしていた。
美少年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あの
濠
(
ほり
)
の向うにいて宮内は只今
外出
(
そとで
)
しているが、直ぐ戻ってくるから待っていてくれといえ、いいか、濠のところでいうのじゃぞ、あれから内へは、わしがよいといわぬ間は
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
ところがある日、高い塔の上から
濠
(
ほり
)
の中に落ちて死んだ人を見て、彼はこう考えました。
魔法探し
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
土埃で白ちゃけた頭が、橋の
縁
(
ふち
)
から突き出している。一間下は、うすみどりの水草を浮かした
濠
(
ほり
)
である。しかし次郎は、その間にも、相手の着物の裾を握ることを忘れていなかった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
あの江戸城の外のお
濠
(
ほり
)
ばたの柳の
樹
(
き
)
のかげに隠れていたのは正月十五日とあるから、山家のことで言えば
左義長
(
さぎちょう
)
の済むころであるが、それらの壮士が老中安藤対馬の登城を待ち受けて
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その後、或る日、工部学校の前を通り、ふと見ると、お
濠
(
ほり
)
へ白水が流れている。
幕末維新懐古談:36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そしてその武士が
大手
(
おゝて
)
の
濠
(
ほり
)
の
際
(
きわ
)
へ来たときに、一間とは離れぬ迄に近づいて
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
またその外には自然の小川を利用して小さい
濠
(
ほり
)
のようなものを作っていた。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
某
(
ある
)
商人
(
あきんど
)
が
深更
(
よふけ
)
に
赤坂
(
あかさか
)
の
紀
(
き
)
の
国
(
くに
)
坂を通りかかった。左は
紀州邸
(
きしゅうてい
)
の
築地
(
ついじ
)
塀、右は
濠
(
ほり
)
。そして、濠の向うは
彦根
(
ひこね
)
藩邸の
森々
(
しんしん
)
たる木立で、深更と言い自分の影法師が
怖
(
こわ
)
くなるくらいな物淋しさであった。
狢
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何でもおれのきくとこに
依
(
よ
)
ると、あいつらは海岸のふくふくした黒土や、美しい緑いろの野原に行って知らん顔をして
溝
(
みぞ
)
を掘るやら、
濠
(
ほり
)
をこさへるやら、それはどうも実にひどいもんださうだ。
楢ノ木大学士の野宿
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
大殿
(
おほとの
)
の
濠
(
ほり
)
は広らと
水照
(
みで
)
りして内なる池の鴨むらも見ゆ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
深い
濠
(
ほり
)
の中だろうか。兎に角
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
それが映つた
濠
(
ほり
)
の水。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
濠
漢検準1級
部首:⽔
17画
“濠”を含む語句
濠洲
空濠
濠際
濠水
濠橋
濠州
濠側
濠々
濠傍
濠端
外濠
内濠
外濠線
御濠
塁濠
塹濠
濠外
大濠
濠浚
追手濠
...