“溝板:どぶいた” の例文
“溝板:どぶいた”を含む作品の著者(上位)作品数
永井荷風8
泉鏡花6
樋口一葉6
岡本綺堂5
吉川英治4
“溝板:どぶいた”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.5%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.2%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
びたは、とつ、おいつ、こんなことを言って、自宅にくすぶって気を腐らせていると、溝板どぶいたを荒々しく蹴鳴らして、
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それさえ頼母たのもしい気がするまで、溝板どぶいた辿たどれば斧の柄の朽ちるばかり、そぞろに露地が寂しいのである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もとより、溝板どぶいたふたがあるから、ものの形は見えぬけれども、やさし連弾つれびきはまさしくその中。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思いがけない万歳の声に、靴屋のおじさんは、びっくり仰天したが、ハラハラと涙をこぼし、溝板どぶいたに立ちあがるなり、
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
口々にささやきながら、溝板どぶいたを鳴らして逃げちっていくと、遠のく足音を聞きすました泰軒は、やおら形をあらため、
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なかにはけしからんことを言うやつもある。尺取り横町の連中が、一団になってもみあいヘシ合い、溝板どぶいたを踏みならして行く。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
きはめてせま溝板どぶいたの上を通行の人はたがひに身をなゝめに捻向ねぢむけてちがふ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
どんと、治郎吉の胸にぶつかったはずみに、手に持っていた封金を溝板どぶいたのうえに落した。治郎吉は、拾い取って、
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それほど、このきらびやかな待合まちあいの通りでは彼の着物がみすぼらしく、溝板どぶいたのような下駄をはいているのであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
あれれか買物かひものたのではいか溝板どぶいた足音あしおとがするといへば、おや左樣さう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いも一てて、一寸先すんさきえなかったが、それでも溝板どぶいたうえけだして
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
お庄はやがて、堅くてついた溝板どぶいたに、駒下駄こまげたの歯を鳴らしながら、元気よく路次を出て行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
もし抽斎がわたくしのコンタンポランであったなら、二人のそで横町よこちょう溝板どぶいたの上でれ合ったはずである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
こんな溝板どぶいたのがたつくやう店先みせさきそれこそひとがらがわろくてよこづけにもされないではないか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
路地ろじ溝板どぶいたひと足音あしおときこえはじめたことも、なにもかもらずに、ただひと
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
十二月らしい光線は溝板どぶいたの外の方から射し入つて、汚点しみの着いた白い布の掛つた食卓の上を照して居る。
(新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
赤い腰巻こしまきすそをまくつた小女こをんな草箒くさばうき溝板どぶいたの上をいてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかし、こう答えた時の歌麿は、もはや入口のしきいまたいで、路地の溝板どぶいたんでいた。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
コロッケ屋と花屋の路地を這入はいると、突き当りが叔母の寛子の家で、溝板どぶいたの上に立つと、台所で何を煮ているのか判る程浅い家である。
泣虫小僧 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
丁度そこへ表口の溝板どぶいたの方から犬が二匹ばかり電話口の前を廻つて私の腰掛けて居るそばへ来た。
(新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
魚屋の軒燈けんとうをたよりに半靴はんぐつのどろを砂利じゃり溝板どぶいたへなすりつけている。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
死骸をまたいで、守人は帰雁を青眼に影の円陣に立った。さっと輪が開く。手近の一人にいどみかかると、たじたじとさがって溝板どぶいたをはね返した。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
地廻りのあとについて、その横丁の溝板どぶいたをふみ鳴らして来た浴衣ゆかたがけの人間があります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
返事をきくと、お糸はそれですっかり安心したものの如くすたすた路地の溝板どぶいた吾妻下駄あずまげたに踏みならし振返りもせずに行ってしまった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「大變だぜ、八五郎親分。こいつは出來合ひの大變と大變が違ふよ。溝板どぶいたをハネ返して、野良犬を蹴飛ばして、格子を二枚モロに外すほどの大變さ」
溝板どぶいたの上に育つた僕に自然の美しさを教へたものは何よりも先に「お竹倉」だつたであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その途端に溝板どぶいたを踏むあしおとが近づいて、隣りのおかみさんに挨拶する男の声がきこえた。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
極めて狭い溝板どぶいたの上を通行の人はたがいに身を斜めに捻向ねじむけて行きちがう。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
老人は溝板どぶいたをドタドタと駈出かけだした。鍋がガチャンとぶつかった音がした。台所からも御新造さんが怒鳴りだした。生徒たちもワーッと声をあげた。
女が肩肌抜かたはだぬぎで化粧をしている様やら、狭い勝手口の溝板どぶいたの上で行水ぎょうずいを使っているさままでを、すっかり見下してしまう事がある。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
土筆屋つくしやの明りを後に旅立ってしまった。と一緒に万吉も、裏から草履ぞうりを突ッかけて、溝板どぶいたの多い横丁を鼠走ねずみばしりに駈け抜けている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
利八に教えられて、半七はせまい露路の溝板どぶいたを踏んでゆくと、この二、三日なまあたたかい天気がつづいたので、そこらではもう早い蚊のうなる声がきこえた。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
眼に見えない手がどこからかぬっと現われて、お北の三つ輪のまげをぐいと引っ掴んだので、きゃっと云ってよろける拍子に、彼女は溝板どぶいたを踏みはずして倒れた。
半七捕物帳:06 半鐘の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
手桶を引立ひったてて、お源は腰を切って、出て、溝板どぶいたを下駄で鳴らす。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
子供達は、お涌も時にまじつて、その土蔵の外の溝板どぶいたに忍び寄り、にわかに足音を踏み立てて「ひとりぼつち——土蔵の皆三」と声をそろへてわめく。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
長三郎もあとに付いて、昼でも薄暗いような露路の溝板どぶいたを踏んで行った。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あめかさもさゝれぬ窮屈きうくつさに、あしもととては處々ところ/″\溝板どぶいたおとあなあやふげなるをなかにして
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
飛びこんだはいいが、溝板どぶいたがガタガタと鳴るのに面喰めんくらった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、歌麿はもう二三歩、路地の溝板どぶいたを、力強くんでいた。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
溝板どぶいた密接くっつき合った井戸流しに足音をかすめて、上り口の障子の中程に紙を貼った硝子がらすの隙からそっと覗くに、四十あまりの女が火鉢の前にただひとり居るだけで
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
小泉の家も段々小さく成った。ある狭い路地を入って、溝板どぶいたの上を踏んで行くと、そこには種々な生活を営む人達が一種の陰気な世界を形造っている。お種は薄暗い格子戸の前に立った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかしてすべて此の世界の飽くまで下世話げせわなる感情と生活とは又この世界を構成する格子戸、溝板どぶいた、物干台、木戸口、忍返なぞ云ふ道具立だうぐだてと一致してゐる。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その上体を支えて洗い浄められた溝板どぶいたの上に踏み立っている下肢は薩摩さつまがすりの股引ももひきに、この頃はまだ珍しい長靴を穿いているのが、われながら珍しくて嬉しい。
とと屋禅譚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
やや遠い露路口で、かすかに溝板どぶいたがきしる音がする。
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
界隈かいわいの小待合より溝板どぶいたづたひに女中の呼びに来るを待ち、女ども束髪に黒縮緬くろぢりめん羽織はおり、また丸髷まるまげに大嶋の小袖といふやうな風俗にて座敷へ行く。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
五時過ぎの夕日黄色く、溝板どぶいたに、髪床の硝子障子に、
浅草哀歌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
……あのてつぼうにつかまつて、ぶるツとしながら繋目つなぎめいた踏越ふみこすのは、長屋ながや露地ろぢ溝板どぶいた地震ぢしんおもむきあり。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
姪のお紋——あの陽氣で明けつ放しで、勝氣で滅法綺麗なのが、半裸體に剥がれたまゝ、場所もあらうに、上總屋の店先——下水の溝板どぶいたの上に、大の字なりに引つくり返つて死んでゐたのです。
くだもの屋の溝板どぶいたの上にはほうり出した砲丸ほうがんのように残り西瓜すいかが青黒く積まれ、飾窓かざりまどの中には出初めのなし葡萄ぶどうが得意の席を占めている。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その小路の一筋へ、溝板どぶいたを踏んで冬子は入った。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
源吾は、溝板どぶいたを踏んで、長屋を覗いて行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その外には小さき子供の二三人寄りて細螺きしやごはじきの幼なげな事して遊ぶほどに、美登利ふと耳を立てて、あれれか買物に来たのでは無いか溝板どぶいたを踏む足音がするといへば、おやさうか
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
同じ新開の町はづれに八百屋と髪結床かみゆひどこ庇合ひあはひのやうな細露路、雨が降る日は傘もさされぬ窮屈さに、足もととては処々ところどころ溝板どぶいたの落し穴あやふげなるを中にして
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
溝板どぶいた臭気くさみまじりに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
……その女の案内で、つい向う路地を入ると、どこも吹附けるから、戸をしたが、怪しげな行燈あんどんあおって見える、ごたごたした両側の長屋の中に、溝板どぶいたの広い、格子戸造りで、この一軒だけ二階屋。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明神みょうじん華表とりいから右にはいって、溝板どぶいたみ鳴らす細い小路を通って、駄菓子屋のかどを左に、それから少し行くと、向こうに大きな二階造りの建物と鞦韆ぶらんこや木馬のある運動場が見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
まことにわれわれは、へいぜい目にも耳にもさとく、裏街の抜け裏の一つ一つはいうにおよばず、溝板どぶいたの下に三日前から転がっているねずみ死骸しがいにいたるまで、なに一つとして知らないものはないつもりでいるけれど
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
様子の似たるにつかつかと駆け寄りて顔をのぞけば、やあねえさん、あれ三ちやんで有つたか、さても好いところでと伴なはれて行くに、酒やと芋やの奥深く、溝板どぶいたがたがたと薄くらき裏にれば、三之助は先へ駆けて
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
身のほどにもない考えを持ったが間違い、ああ私が馬鹿でござりました、のっそりはどこまでものっそりで馬鹿にさえなって居ればそれでよいわけ、溝板どぶいたでもたたいて一生を終りましょう、親方様堪忍かにして下されわたしが悪い
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
露地のなかで犬の声がきこえたので、もしや林之助がまた引っ返して来たのではないかと、お君はそっと起って行って雨戸の外に耳を澄ましたが、犬の声はしだいに遠くなって、溝板どぶいたの上には誰も忍んでいるような気配もきこえなかった。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかしてすべてこの世界のあくまで下世話げせわなる感情と生活とはまたこの世界を構成する格子戸こうしど溝板どぶいた物干台ものほしだい木戸口きどぐち忍返しのびがえしなぞいう道具立どうぐだてと一致している。
それがこの時まで、すこしむこうの溝板どぶいたの上にうずくまっていたが、いよいよお藤の姿を確かめ得たとみたものか、急に隠れるように後へ戻って、そっと往来へ走り消えた……のをお藤は、家の中へばかり意を注いでいて、気がつかなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一声……ピシャリ! 格子がしまって、男の姿がちらりと陽ざしをさえぎったと思うまもなく、あがり口に泣き崩れたお艶は、露地の溝板どぶいたを踏んでゆく栄三郎の跫音あしおとがだんだんと遠のくのを、夢のように聞かなければならなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
源さんが聞たらどうだらう気違ひになるかも知れないとて冷評ひやかすもあり、ああ馬車にのつて来る時都合が悪るいから道普請からしてもらいたいね、こんな溝板どぶいたのがたつく様な店先へそれこそ人がらがわろくて横づけにもされないではないか
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
路地の雪はもう大抵両側の溝板どぶいたの上に掻き寄せられていたが人力車じんりきしゃのやっと一台通れるほどの狭さに、雪解のしずくは両側に並んだ同じような二階の軒からその下を通行する人の襟頸えりくび余沫しぶきとばしている。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
汽車きしや龜戸かめゐどぎて——あゝ、このあひだのどてつゞきだ、すぐに新小岩しんこいはちかづくと、まどしたに、小兒こども溝板どぶいたけだす路傍みちばたのあしのなかに、る、る。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから宅へ帰って懐を捜すと無い、定めてこれは反吐の中へ落したんだろうと思いまして、虎ノ門へとって返し、反吐の中を掻廻すと有りましたから悦んで宅へ帰ると、家内の申すには、溝板どぶいたの上へ黄金が落ちてたと申しましたが、大方御前のお出しになった時
梅若七兵衛 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
細い露路を幾つも幾つも曲つたり、危なかしい溝板どぶいたを堀田に手をとられながら踏み越えたりして、凡そ、ものゝ二三町も、ぐる/\と同じような軒合ひばかりを歩いた後に、漸く広い電車通りに出た時には、兵野は酒の酔が次第に高まつて来て何とも危い脚どりであつた。
露路の友 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
投げられた拍子に石ころであばらを打ちやしてね、おまけに溝板どぶいたを蹴上げてあごを叩いたもんでげすから、今見舞いに寄ってみたら、あの気丈なお師匠さんが蒲団をかぶってうんうん唸ってやしたよ。通り魔だか何だか知らねえけど、隠居の前だが、はずみってものあ怖えもんさ。
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
一軒、つちのちとくぼんだ処に、溝板どぶいたから直ぐに竹の欄干てすりになって、毛氈もうせんの端は刎上はねあがり、畳に赤い島が出来て、洋燈ランプは油煙にくすぶったが、真白まっしろに塗った姉さんが一人居る、空気銃、吹矢の店へ、ひょろりとして引掛ひっかかったね。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勝手口は見通しで、二十日に近い路地の月夜、どうしたろう、ここの戸はしまっておらず、右に三軒、左に二軒、両側の長屋はもう夜中で、あかるい屋根あり、暗い軒あり、影は溝板どぶいたの処々、その家もここも寂寞ひっそりして、ただ一つ朗かな蚯蚓みみずの声が月でも聞くと思うのか、鳴いている。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくの如く路地は一種いひがたき生活の悲哀の中に自らまた深刻なる滑稽の情趣を伴はせた小説的世界である。而して凡てこの世界の飽くまで下世話なる感情と生活とは、またこの世界を構成する格子戸、溝板どぶいた、物干台、木戸口、忍返しなぞいふ道具立と一致してゐる。この点よりして路地はまた渾然たる芸術的調和の世界といはねばならぬ。
両国界隈 (新字旧仮名) / 木村荘八(著)
むなしくものをおもふよりはいつそにかゝりしうへにてかくもせんとこゝろこたへて妻戀下つまこひしたとばかり當所あてどなしにこゝの裏屋うらやかしこの裏屋うらやさりとてはくもつかむやうなたづねものもおもこゝろがしるべにや松澤まつざはといふかなにらねど老人としより病人びやうにん二人ふたりありて年若としわか車夫しやふいへならば此裏このうら突當つきあたりから三軒目さんげんめ溝板どぶいたはづれしところがそれなりとまでをしへられぬとき夕暮ゆふぐれうすくらきにまよこゝろもかきくらされてなにいひれんのすきよりさしのぞ家内かないのいたましさよ頭巾づきん肩掛かたかけはつゝめどをもるものはくれなゐなみだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)