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湿
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しめ
ふりがな文庫
“
湿
(
しめ
)” の例文
旧字:
濕
「灰が
湿
(
しめ
)
っているのか知らん」と女が蚊遣筒を引き寄せて
蓋
(
ふた
)
をとると、赤い絹糸で
括
(
くく
)
りつけた蚊遣灰が
燻
(
いぶ
)
りながらふらふらと揺れる。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
乳母は夜露にしっとりと
湿
(
しめ
)
って重くなっている娘の袂に触ってみて、追い/\冷えて来るのに、
風邪
(
かぜ
)
を引かせてはならないと思った。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
まるで、
泰西
(
たいせい
)
名画のみごとな版画をみているように、
湿
(
しめ
)
り気のない空気が、
全
(
すべ
)
てのものを明るく、
浮立
(
うきた
)
たせてみせてくれるのでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「ああ結構です」と臼井は
香
(
か
)
のない茶に
咽喉
(
のど
)
を
湿
(
しめ
)
し、「早く分って頂くために、そうですなあ、ああそうだ、
仔猫
(
こねこ
)
のお話をしましょう」
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
井戸端に流れた血潮は洗い清めたところで、土が少し
湿
(
しめ
)
っておりますが、そんなのは平次の探索に何の役にも立たなかったのです。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
吐息に蒸されて
滴
(
しずく
)
を結んだ羽根毛がつめたく鼻のあたりを
湿
(
しめ
)
した。それが情感の
遣
(
や
)
り場のない涙の感触に
肖
(
に
)
てゐたのかも知れない。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
それは、少女はお乳をふくらすため、又、男の子は香水を
湿
(
しめ
)
して入れておくためと思っていたら大違いだと、一人の不良少年が笑った。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
乃公はハンケチに水を
湿
(
しめ
)
して、父と子と
聖霊
(
せいれい
)
の名に依って、三度頭から水を掛けてやった。すると忠公は何処まで悪い奴だか知れない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
藁箒
(
わらぼうき
)
を取って、
櫓臍
(
ろべそ
)
へ
湿
(
しめ
)
りをくれた宅助、ツーウと半町ほど流れにまかした所から、向う
河岸
(
がし
)
春日出
(
かすがで
)
の、宏大な
館
(
やかた
)
の
甍
(
いらか
)
をグッと睨んで
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うすく
湿
(
しめ
)
った、
地面
(
じめん
)
に
落
(
お
)
ちたとんぼは、もう
話
(
はな
)
しかけることすらできなければ、その
身
(
み
)
を
運命
(
うんめい
)
にまかせるより、ほかになかったのでした。
寒い日のこと
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
もし、ほんの表面の薄い層だけ
湿
(
しめ
)
るようなやり方をしていると、芝の根がついつい欺されて甘やかされて、浅い上層だけに発達して来る。
鑢屑
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と
眦
(
まなじり
)
の切れたのを伏目になって、お蔦は襟に
頤
(
おとがい
)
をつけたが、慎ましく、しおらしく、且つ
湿
(
しめ
)
やかに見えたので、め組もおとなしく
頷
(
うなず
)
いた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こういう露路の奥の習いで、そこらの土はじくじくと
湿
(
しめ
)
っているのを、半七は嗅ぐように覗いてあるいた。家へ帰ると庄太はささやいた。
半七捕物帳:23 鬼娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
丘窪の冬の
棚田
(
たなだ
)
はねもごろにうれしき棚田。寂び寂びて明るき棚田。たまさかに鶸茶の刈田、小豆いろ、温かきいろ、うち
湿
(
しめ
)
る珈琲の
土
(
つち
)
。
観想の時:――長歌体詩篇二十一――
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「好いお
湿
(
しめ
)
りだ、と言いてえが、これじゃあ
道路
(
みち
)
が
泥
(
ぬか
)
るんでやりきれねえ。いや、降りやがる、ふりやがる——豪気なもんだ。」
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
旅に乾いた唇を田舎酒に
湿
(
しめ
)
しつつ、少し
善
(
よ
)
い心地になって、
低声
(
ていせい
)
に詩をうたっているスグ二階の下で、寂しい哀しい
按摩笛
(
あんまぶえ
)
が吹かれている。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
少焉
(
しばし
)
泣きたりし女の声は
漸
(
やうや
)
く鎮りて、又
湿
(
しめ
)
り
勝
(
がち
)
にも語り
初
(
そ
)
めしが、一たび
情
(
じよう
)
の為に激せし声音は、
自
(
おのづ
)
から始よりは高く響けり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
今でも僕は、あの両手を突っ込んだときの感じは、まるで
湿
(
しめ
)
った穴蔵へ手を突っ込んだように冷やりとしたのを覚えている。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
薪
(
たきぎ
)
を
湿
(
しめ
)
してこれを燃やさんとするがごときもの、経世の策としてはすなわち一方に偏するのそしりを免れざるものである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
盲人
(
めくら
)
は
不安気
(
ふあんげ
)
である。足が
湿
(
しめ
)
り
気
(
け
)
を感じ、片一方ずつ上へあがる。泥のまじった雪を押しのけ、そいつを遠くへ散らかす。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
霧も深く降っていて空気の
湿
(
しめ
)
っぽいのに車の
簾
(
すだれ
)
を上げさせてあったから源氏の
袖
(
そで
)
もそのうちべったりと
濡
(
ぬ
)
れてしまった。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
馬車の黴臭い内部は、その
湿
(
しめ
)
っぽい
汚
(
よご
)
れた藁と、不愉快な臭気と、薄暗さとで、幾らか、大きな犬小屋のようであった。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
要するにまあ、
甘
(
あま
)
やかされ放題の
純血種
(
ピュール・サン
)
らしく
振舞
(
ふるま
)
ったわけである。父はなかなか
戻
(
もど
)
って来なかった。川からは、いやに
湿
(
しめ
)
っぽい風が
吹
(
ふ
)
いてきた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
それに夜露とか
湿
(
しめ
)
っぽい草とか空気などのちがいが気候に敏感なきりぎりすには生きている力を与えないのであろう。
螽蟖の記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
実際どの
部屋
(
へや
)
も
湿
(
しめ
)
っぽくて寒いので、わたしは二階の火のある所へ行きたくなったのである。私たちは警戒のために座敷のドアに
錠
(
じょう
)
をおろして出た。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
それから二人の間に、コナコナした
湿
(
しめ
)
やかな話が始まった。新吉は長い間、絶えず
悪口
(
あっこう
)
を浴びせかけて来たことが、今さら気の毒なように思われた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何処
(
どこ
)
まで歩いて行つても道は
狭
(
せま
)
くて土が黒く
湿
(
しめ
)
つてゐて、
大方
(
おほかた
)
は
路地
(
ろぢ
)
のやうに
行
(
ゆ
)
き
止
(
どま
)
りかと
危
(
あやぶ
)
まれるほど
曲
(
まが
)
つてゐる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
常住
湿
(
しめ
)
り気の乾ききらないような黒土と混って、大小の丸石が歩む人の足を妨げるようにおびただしく
転
(
ころ
)
がっていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
耳には、そうだ! 彼女の快活な
湿
(
しめ
)
りのある声や、
機智
(
きち
)
に富んだ言葉などが、何時までも何時までも消えなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
されど空気は重く
湿
(
しめ
)
り、茂り合う葉桜の陰を忍びにかよう風の音は秋に異ならず、
木立
(
こだ
)
ちの
夕闇
(
ゆうやみ
)
は頭うなだれて影のごとく歩む人の
類
(
たぐい
)
を心まつさまなり。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
心なき
門附
(
かどづ
)
けの女の歌。それに興を催してか竜之助も、与兵衛が心づくしで贈られた
別笛
(
べつぶえ
)
の袋を抜く、
氏秀切
(
うじひでぎり
)
。
伽羅
(
きゃら
)
の
歌口
(
うたぐち
)
を
湿
(
しめ
)
して吹く「
虚鈴
(
きょれい
)
」の本手。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
けれどもこの句も前の句もその小さい事実を通して五月雨の降り続いている
湿
(
しめ
)
っぽい天気が十分に想像が出来る。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「こんなことはみんなくだらない話です」スヴィドリガイロフはタオルを
湿
(
しめ
)
して、それを頭へ当てながら言った。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
たしかに、物は乾けば縮み、
湿
(
しめ
)
れば延びる。だが、この場合、単にそうした物理的現象にすぎぬであろうか。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
馬車屋の前では、主婦が馬の口の傍で
粥
(
かゆ
)
の立食いをやっていた。二人は古いロココ風の馬車に乗ると、ぼってりと重く
湿
(
しめ
)
り出した夜の街の中を揺られていった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
朝から
驟雨性
(
しゅううせい
)
の雨がざあと降って来たり、
繊
(
ほそ
)
い雨が煙ったり、
蛞蝓
(
なめくじ
)
が縁に上り、井戸
縁
(
ぶち
)
に黄な
菌
(
きのこ
)
が
生
(
は
)
えて、畳の上に居ても腹の底まで
滲
(
し
)
み通りそうな
湿
(
しめ
)
っぽい日。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
藁
(
わら
)
くずなど、
踏
(
ふ
)
み散らしじくじく
湿
(
しめ
)
っていて、
年
(
ねん
)
じゅうぬかるみの絶えないような
低湿
(
ていしつ
)
な小路である。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
○豚饅頭を蒸す時
湿
(
しめ
)
りたる布巾を下に敷き別々に並べざれば互に粘着す。皮は真中を厚く端を薄くす。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
鹿が少くても五六
疋
(
ぴき
)
、
湿
(
しめ
)
っぽいはなづらをずうっと延ばして、しずかに歩いているらしいのでした。
鹿踊りのはじまり
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
だんだんその落葉の量が増して行って、私の
靴
(
くつ
)
がその中に気味悪いくらい深く入るようになり、
腐
(
くさ
)
った葉の
湿
(
しめ
)
り
気
(
け
)
がその靴のなかまで
滲
(
し
)
み込んで来そうに思えたので
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
お櫃の裏底が少しも
湿
(
しめ
)
りもせず、また湯気も立ちもしないのに、茶碗に水滴がたまるのが不思議だといつて、お雪伯母は恰もそれを神の行ふ奇蹟であるかの如く思ひ
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
そして
湿
(
しめ
)
やかな、
噛
(
か
)
みしめた味をよろこぶ追懐的情緒は、かなり急進論者のように見えるわたしを、また時代とは逆行させもするが、過激な生活は動的の美を欲求させ
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
米糠や麦糠を
湿
(
しめ
)
して蒸す。米麦の砕けがまじっているので、熱いうちに搗けば餅になるのである。
ボニン島物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「お前、いい子だから、ちょっと跳び上って、己に林檎を一つ取ってくれ。
咽
(
のど
)
を
湿
(
しめ
)
すんだから。」
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
部屋をやわらかく
湿
(
しめ
)
して、私の机も、火鉢も、インク瓶も、灰皿も、ひっそり休んでいて、私はそれらを、意地わるく冷淡に眺め渡して、へんに味気なく、煙草でも吸おうか
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「………」さて、これからがいよいよおれの世界だと思うと、虎の小説に得た
湿
(
しめ
)
ッぽい気分などはどこへやら行ってしまって、自分の芸の評判を虎以上にしてもらいたかった。
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
赤城の方から
雷鳴
(
かみなり
)
がゴロ/\
雷光
(
いなびかり
)
がピカ/\その降る中へ手拭でスットコ
冠
(
かむ
)
りをした奧木茂之助は、裏と表の目釘を
湿
(
しめ
)
して、
逆
(
のぼ
)
せ上って人を殺そうと思うので眼も
暗
(
くら
)
んで
居
(
お
)
る。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
湿
(
しめ
)
った厚い
葉
(
ローブ
)
lobe ——この言葉は特に肝臓や肺や脂肪の葉にあてはまるものである
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
虫の入った木のように、ポトポトと音のする
湿
(
しめ
)
っぽい
匂
(
にお
)
いのするものは悪いかつおぶし。
だしの取り方
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
一生涯が間身を放たで持ちたりける、五人
張
(
ばり
)
にせき
弦
(
づる
)
懸けて
噛
(
く
)
ひ
湿
(
しめ
)
し、三年竹の
節近
(
ふしぢか
)
なるを、十五束
二伏
(
ふたつぶせ
)
に
拵
(
こしら
)
へて、
鏃
(
やじり
)
の
中子
(
なかご
)
を
筈本
(
はずもと
)
まで打ち通しにしたる矢、たゞ三筋を
手挟
(
たばさ
)
みて
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
湿
常用漢字
中学
部首:⽔
12画
“湿”を含む語句
湿気
湿地
湿潤
湿地茸
生湿
卑湿
地湿
低湿
湿瘡
湿々
湿布
陰湿
湿疹
打湿
湿婆
湿度
湿虫
湿茸
湿草
湿臭
...