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最早
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もは
ふりがな文庫
“
最早
(
もは
)” の例文
しかしてこの新しき仏蘭西の美術の
漸
(
ようや
)
く転じて日本現代の画界を襲ふの時、北斎の本国においては
最早
(
もは
)
や
一人
(
いちにん
)
の北斎を
顧
(
かえりみ
)
るものなし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
喃
(
のう
)
、瀧口殿、
最早
(
もは
)
や世に浮ぶ瀬もなき此身、今更
惜
(
を
)
しむべき譽もなければ、誰れに恥づべき名もあらず、重景が一
期
(
ご
)
の
懺悔
(
ざんげ
)
聞き給へ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
犯人はもちろん、奇怪なことには、被害者さえも、実ははっきりとは分っていないのであります。警察では、
最早
(
もは
)
や
匙
(
さじ
)
を投げています。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
が、今年もお
揃
(
そろ
)
ひの派手な縮み
浴衣
(
ゆかた
)
を着は着ても、
最早
(
もは
)
やその
裾
(
すそ
)
から玉のやうな
踵
(
かかと
)
をこぼして
蛍狩
(
ほたるがり
)
や庭の
涼
(
すず
)
みには歩かなかつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
あの
漂白
(
さすらい
)
の芸人は、
鯉魚
(
りぎょ
)
の神秘を
視
(
み
)
た紫玉の身には、
最早
(
もは
)
や、うみ
汁
(
しる
)
の如く、
唾
(
つば
)
、
涎
(
よだれ
)
の
臭
(
くさ
)
い乞食坊主のみではなかつたのである。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
例えば彼の在留中、
小野
(
おの
)
も立腹したと見え、私に
向
(
むかっ
)
て、
最早
(
もは
)
や御用も済みたればお前は今から
先
(
さ
)
きに帰国するが
宜
(
よろ
)
しいと
云
(
い
)
うと、私が不服だ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
彼女は見ないやうにしてゐた事実をまざ/\と鼻先へ突き付けられて、
最早
(
もは
)
や己惚れの存する余地がなくなつてしまつた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
最早
(
もは
)
や一図に俳句にたずさわるよりほか、仕方がないとあきらめをつけ、そうでなくっても根柢からこの短い詩の研究に深い注意を払っていたのが
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「拙者が
直々
(
じきじき
)
に参るのは、まことに異なものでござるが、今となっては
最早
(
もは
)
や
怨
(
うらみ
)
も憎しみも無いお互いでござる——」
奇談クラブ〔戦後版〕:04 枕の妖異
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今
(
いま
)
は
支那海
(
シナかい
)
の
波濤
(
はたう
)
を
蹴
(
け
)
つて
進航
(
しんかう
)
して
居
(
を
)
るから、よし
此後
(
このゝち
)
浪
(
なみ
)
高
(
たか
)
くとも、
風
(
かぜ
)
荒
(
あら
)
くとも、二
船
(
せん
)
が
諸君
(
しよくん
)
の
面前
(
めんぜん
)
に
現
(
あら
)
はれるのは
最早
(
もは
)
や
遠
(
とほ
)
い
事
(
こと
)
ではあるまいと
思
(
おも
)
ふ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
釣銭はいらないよといった心が横わり出すと
最早
(
もは
)
や到底私の力でも先生の力でも親の力においてさえも、この横わりたるこの心は、動いてはくれないのだ。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
最早
(
もは
)
や酔の廻った好色の一人の宿禰は、再び座についた王の後で、侍女の乳房の重みを計りながら笑っていた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかし、
最早
(
もは
)
や御近所へ
披露
(
ひろう
)
してしまった後だから泣寝入りである。後略のまま
頓首
(
とんしゅ
)
。大事にしたまえ。萱野君、旅行から帰って来た由。早川俊二。津島君。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
家庭の歓楽と云ふ如き問題は、
最早
(
もは
)
や篠田さんのお心には無いのです、
勿論
(
もちろん
)
彼
(
あ
)
の様なる荘厳の御精神に感動せざる
女性
(
をんな
)
の心が、
何処
(
どこ
)
にありませう、けれど剛さん
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
今日では世の変遷につれて
最早
(
もは
)
やその人種はそこに居なくても、またその住所跡は全く湮滅して今は全く見られなくとも、その梅は依然として爾来悠久な星霜の間
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
おしかさんも
最早
(
もは
)
や古参株で、それらの老女の一、二人を除くと、動かせない中老どころだ。廿五年勤続の祝いも五、六年前に済んで、もうやがて五十路にも近かろう。
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
殊に其形はコロップの裏の創にシックリ合えり、生田の罪は
最早
(
もは
)
や
秋毫
(
しゅうごう
)
の疑い無し。
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
最早
(
もは
)
や二歳の児がある程の永い結婚生活は、水々しかった妻の白い肉体から
総
(
すべ
)
ての秘密を曝露し尽して了いまして、妻以外の女の幻影が私の淫らな神経を四六時中刺戟して居りまして
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
母「さア/\早く
行
(
ゆ
)
かぬか、かれこれ
最早
(
もは
)
や九ツになります」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
最早
(
もは
)
や
身動
(
みうご
)
きするのもいやになつた。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
最早
(
もは
)
や、今日では……
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
波越警部は、犯人の
傍若無人
(
ぼうじゃくぶじん
)
なやり口に、重ね重ねの大侮辱を蒙り、鬼刑事の名にかけて、
最早
(
もは
)
やじっとしていることは出来なかった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いつか婚期を失ってしまったお蘭は自分自身を諦め切っている気持に伴って、
最早
(
もは
)
や四郎を生ける人としては期待しなくなった。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
当時はあからさまに言ひがたき事なきに
非
(
あら
)
ざりしかど十年
一昔
(
ひとむかし
)
の今となりては、いかに慎みなきわが筆とて
最早
(
もは
)
や
累
(
わざわい
)
を人に及さざるべし。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼女は見ないようにしていた事実をまざまざと鼻先へ突き付けられて、
最早
(
もは
)
や己惚れの存する余地がなくなってしまった。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
父の左近太夫は中風で生ける屍も同様、やかましやの老臣朝倉忠左衛門は火事の時死んで、高力の江戸屋敷に
最早
(
もは
)
や若殿忠弘を押える者はありません。
奇談クラブ〔戦後版〕:12 乞食志願
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そればかりでなく、
最早
(
もは
)
や彼を助ける一人残った祭司の
宿禰
(
すくね
)
にさえも、彼は言葉を交えようとしなかった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
然
(
さ
)
れば、
然
(
さ
)
う
言
(
い
)
はれると
私
(
わし
)
も
弱
(
よわ
)
る。
天守
(
てんしゆ
)
からは、よく
捌
(
さば
)
け、
最早
(
もは
)
や
婦
(
をんな
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
るやう
少
(
わか
)
い
人
(
ひと
)
を
悟
(
さと
)
せとある……
御身達
(
おみたち
)
は
生命
(
いのち
)
に
代
(
か
)
へても
取戻
(
とりもど
)
したいと
断
(
た
)
つて
言
(
い
)
ふ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お引立てを
蒙
(
こうむ
)
る、御愛顧を願う、という文句は米屋か
仕立屋
(
したてや
)
の広告文では
最早
(
もは
)
やないのである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
奥平家の大奥に
芳蓮院
(
ほうれんいん
)
様と云う女隠居がある、この貴婦人は
一橋
(
ひとつばし
)
家から奥平家に
下
(
くだっ
)
て来た由緒ある身分で、
最早
(
もは
)
や余程の老年でもあり、一家無上の
御方様
(
おんかたさま
)
と
崇
(
あが
)
められて居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
只だ
偏
(
ひとへ
)
に主義の為めに御尽くしなさるのを知りましたものですから、私は心中に理想の良人と
奉仕
(
かしづ
)
いて、此身は
最早
(
もは
)
や彼人の前に献げましたと云ふことを
慥
(
たしか
)
に神様に誓つたのですよ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
左りの手にて
書
(
かこ
)
う筈なし余は
最早
(
もは
)
や我が心を
抑
(
おさゆ
)
る
能
(
あた
)
わず、我が言葉をも吐く
能
(
あた
)
わず、身体に
満々
(
みち/\
)
たる驚きに、余は其外の事を思う能わず、
宛
(
あたか
)
も物に襲われし人の如く一
声
(
せい
)
高く叫びし
儘
(
まゝ
)
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
或いは
最早
(
もは
)
や温泉行きの
手筈
(
てはず
)
もついていることかと思います。温泉に引越したら御様子願い上げます。北沢君なんかといっしょに訪ね、小生もその附近の宿にしばらく
逗留
(
とうりゅう
)
してみたいと思います。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しかし今から
最早
(
もは
)
や二十年程前に医者に萎縮腎だといわれましたが、小便検査にも一向蛋白が出ず、あるいは時々山に登りあるいは相当に体を劇動させても爾後何の異条もなく今日に及んでいます。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
川手氏は
最早
(
もは
)
や見るに忍びなかった。今二人の男女が殺されようとしているのだ。目を
閉
(
ふさ
)
いでも、断末魔の悲痛なうめき声が聞えて来る。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は喉元で自分を
叱
(
しか
)
つた。宗右衛門にとつては
最早
(
もは
)
や
此頃
(
このごろ
)
の二人の娘は妄鬼であつた。離れ家はまさしく妄者の
棲家
(
すみか
)
であつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
何故
(
なぜ
)
というに慶三は
最早
(
もは
)
や着物を着たり帯をしめたりしているお千代の姿を見る
暇
(
いとま
)
がなくなったからである。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
最早
(
もは
)
やあのいたづらな仔猫の眼ではなくなつて、たつた今の瞬間に、何とも云へない
媚
(
こ
)
びと、
色気
(
いろけ
)
と、哀愁とを湛へた、一人前の雌の眼になつてゐたのであつた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「卑弥呼、我は
最早
(
もは
)
や月を見た。我はひとりで帰るであろう。」大兄は彼女を睥んでいった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
所謂
(
いわゆる
)
文明
駸々乎
(
しんしんこ
)
として進歩するの世の中になったこそ実に
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
い
仕合
(
しあわ
)
せで、実に不思議な事で、
云
(
い
)
わば私の大願も成就したようなものだから、
最早
(
もは
)
や一点の不平は云われない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
貴嬢は私を御存知ありますまいが、私は
能
(
よ
)
く貴嬢を存じて居ります——私は前年先妻を
亡
(
うし
)
なつた時、
最早
(
もは
)
や終生独身と覚悟致しました、——梅子さん、仮にも帝国軍人たるものが
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
親兄弟もある人物、出来る限り、手を尽くして捜したが、皆目
跡形
(
あとかた
)
が分らんから、われわれ友だちの間にも、
最早
(
もは
)
や世にない、死んだものと
断念
(
あきら
)
めて、都を出た日を命日にする始末。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
是
(
これ
)
にて判事は
猶
(
な
)
お警察長に向い先刻死骸検査の
為
(
た
)
め
迎
(
むかえ
)
に
遣
(
や
)
りたる医官等も
最早
(
もは
)
や
来
(
きた
)
るに間も有るまじければ
夫
(
それ
)
まで
茲
(
こゝ
)
に
留
(
とゞま
)
られよと頼み置き其身は書記及び報告に来し
件
(
くだん
)
の巡査と共に此家より引上げたり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
最早
(
もは
)
や手のほどこし様がない。短剣はどうして盗み出したのか、書斎に置いてあった侯爵秘蔵のスペイン製のものであった。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは再び商売女の雛妓に
還
(
かえ
)
ったように見えたけれども、わたくしは
最早
(
もは
)
やかの女の心底を疑うようなことはしなかった。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかし慶三は
最早
(
もは
)
や最初ほどには驚きもせずまたどういう訳かそれ程に女の不貞を
憤
(
いきどお
)
る気も起らなかった。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
最早
(
もは
)
やあのいたずらな仔猫の眼ではなくなって、たった今の瞬間に、何とも云えない
媚
(
こ
)
びと、
色気
(
いろけ
)
と、哀愁とを
湛
(
たた
)
えた、一人前の雌の眼になっていたのであった。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と
最早
(
もは
)
や
頷
(
えり
)
のあたりがむづ/\して
来
(
き
)
た、
平手
(
ひらて
)
で
扱
(
こい
)
て
見
(
み
)
ると
横撫
(
よこなで
)
に
蛭
(
ひる
)
の
背
(
せな
)
をぬる/\とすべるといふ、やあ、
乳
(
ちゝ
)
の
下
(
した
)
へ
潜
(
ひそ
)
んで
帯
(
おび
)
の
間
(
あひだ
)
にも一
疋
(
ぴき
)
、
蒼
(
あを
)
くなつてそツと
見
(
み
)
ると
肩
(
かた
)
の
上
(
うへ
)
にも一
筋
(
すぢ
)
。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
大人の柾木が大人の文子を眺める目は、
最早
(
もは
)
や昔の様に聖なるものではなかった。彼は心に恥じながらも、知らず
識
(
し
)
らず舞台の文子を
汚
(
けが
)
していた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
こんな具合で彼は二十歳をあまり過ぎなくて
最早
(
もは
)
や出入りの諸大名の用人達に彼の非凡な商才と勤勉とを認められた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
“最早”の意味
《名詞》
時期・時刻が一番早い。
(出典:Wiktionary)
最
常用漢字
小4
部首:⽈
12画
早
常用漢字
小1
部首:⽇
6画
“最早”で始まる語句
最早直
最早々々