“昨夕:ゆうべ” の例文
“昨夕:ゆうべ”を含む作品の著者(上位)作品数
夏目漱石18
中里介山6
野村胡堂3
菊池寛3
薄田泣菫3
“昨夕:ゆうべ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.3%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
昨夕ゆうべ食ったたい焙烙蒸ほうろくむしにあてられたらしい」と云って、自分は不味まずそうな顔をして席を立った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨夕ゆうべあの宿へ自分を送りつけた後は、鳥沢とやらへ帰ってしまったものと思っていたら、まだあの宿に泊っていたものらしい。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ちっとも出したくはありません。仕方がないから——仕方がないんです。昨夕ゆうべも今日も散々苛責いじめられました」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なるべく熟睡したいと心掛けてまぶたを合せたが、生憎あやにく眼がえて昨夕ゆうべよりは却って寐苦しかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうですとも、大いに妙です。神崎工学士、君は昨夕ゆうべ酔払って春子さんをつかまえてお得意の講義をしていたが忘れたか。」
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
昨夕ゆうべからこはれかけの眼覚時計に螺旋ねぢを巻いて、今朝はいつもにない夙起はやおきをして来てゐるのだ。
烏の聲に目を醒ますと、うららかな日が照つてゐて昨夕ゆうべの俄雨は夢であつたやうに、衣服も濡れてはゐなかつた。
(旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「また寝ていらっしゃるか、昨夕ゆうべは御迷惑で御座んしたろう。何返なんべんも御邪魔をして、ほほほほ」と笑う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は面倒になって昨夕ゆうべはそのままにしておいた金の工面くめんをどうかしなければならない位地いちにあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「今顔を洗っています、昨夕ゆうべ中央会堂の慈善音楽会とかに行って遅く帰ったものですから、つい寝坊をしましてね」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さようさ。今の様子が死後十時間乃至ないし十四、五時間という所ですから、死んだのは昨夕ゆうべの八時から十二時の間でしょうか」
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
いや、野墓、——野三昧のざんまい、火葬のあと……悚然ぞっとすると同時に、昨夕ゆうべの白い踊子を思い出した。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「辰夫と俺とは昨夕ゆうべの篠原の鰻に中毒あたつたらしい。薬を飲まして寝かしてやれ。俺も寝る。」と父が答へた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
「青木さんよう」と、呼び止める。人並よりよほど広い額に頭痛膏をべたべたと貼りふさいでいる。昨夕ゆうべの干潟の烏のようである。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
東京を立ったのは昨夕ゆうべの九時頃で、夜通しむちゃくちゃに北の方へ歩いて来たら草臥くたびれて眠くなった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「誰を」と云った彼女は少しあきれたようにお延の顔を見た。「昨夕ゆうべお目にかかったあのかたの事?」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それもそうだが、全躰その位なら昨夕ゆうべうちに、実はこれこれで御免になりましたと一言しとこと位言ッたッてよさそうなもんだ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その研屋五兵衞が、昨夕ゆうべ酉刻半むつはん過ぎ入谷の寮で、直刄すぐはの短刀で左首筋をつらぬき、紅に染んで死んでゐたのです。
その五日目の昨夕ゆうべ! 驚くうちはたのしみがある! 女は仕合せなものだ! あざけりれいはいまだに耳の底に鳴っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
翌朝あくるあさ楊枝ようじくわえながら、いっしょに内風呂に浸った時、兄さんは「昨夕ゆうべも寝られないで困った」と云いました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「図書室へ行くのなんかおよしなさいね。昨夕ゆうべは出なかったから、今日は散歩に出ようじゃありませんか。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「図書室へ行くのなんかおよしなさいね。昨夕ゆうべは出なかつたから、今日は散歩に出ようぢやありませんか。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
自分の頭が、その位のぼんやりさ加減であったら、昨夕ゆうべの会談にも、もう少し感激して、都合のいい効果を収める事が出来たかも知れない。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宗助は昨夕ゆうべから今朝へかけての出来事を一通りつまんで話した上、文庫のほかに何か取られたものがあるかないかを尋ねて見た。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
墓地を拔けると、一歩々々眼界が擴がつて、冴えた朝日は滑かな海を明るく照らしてゐたが、昨夕ゆうべの不快な記憶が彼れの頭から消えなかつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
ただ一人が、昨夕ゆうべ四条の人込の中で、安井によく似た浴衣ゆかたがけの男を見たと答えた事があった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
無残々々むざむざと人に話すには、惜いような昨夕ゆうべであったが、いっそ長田に話して了って、岡嫉きの気持をやわらがした方が可い。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
昨夕ゆうべ浅井がおそく帰ったときも、出迎えたお増は、玄関に両手をついておとなしやかに挨拶をした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「じゃ昨夕ゆうべの風呂場も、全く御親切からなんですね」ときわどいところでようやく立て直す。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いよいよ東京へ行くと見える。昨夕ゆうべ京都の停車場ステーションでは逢わなかったようだね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眼を開けた時余は昨夕ゆうべの騒ぎを(たとい忘れないまでも)ただ過去の夢のごとく遠くに眺めた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これほどに切りつめられた世界に住む事すら、昨夕ゆうべは許されそうに見えなかったのにと、はたのものは心のうちで余のために観じてくれたろう。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
船宿の亭主が答えたように、駒井甚三郎が、昨夕ゆうべ宿を出てまだ帰らないことは事実であります。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あなたが昨夕ゆうべ、どこへも行かずに、おとなしく帰って下すったから、そのお礼心なのですよ」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
僕は静かに、昨夕ゆうべ OPÉRA に行つてから、今朝までの自分の感情を追つて考へて見た。
珈琲店より (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
三重吉は用意周到な男で、昨夕ゆうべ叮嚀ていねいをやる時の心得を説明して行った。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白い歯を出して笑いながら「源ちゃん昨夕ゆうべは——つい忙がしかったもんだから」と云った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は昨夕ゆうべの失望をかえすのがいやさに、わざと彼の名を呼ばなかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
後に残つた葦原醜男は、まだ微笑を浮べながら、須世理姫の姿を見送つた。と、彼女の寝てゐた所には、昨夕ゆうべ彼が貰つたやうな、領巾ひれがもう一枚落ちてゐた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その内に素戔嗚は、昨夕ゆうべ寝なかつた疲れが出て、我知らずにうとうと眠にはひつた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
翌日朝飯を食いに下りると、昨夕ゆうべの親子のほかに、また一人家族がえている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四時頃うちへ帰って見ると、昨夕ゆうべの額は仰向あおむけに机の上に乗せてある。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何です今頃楊枝ようじなぞをくわえ込んで、冗談じょうだんじゃない。そう云やあ昨夕ゆうべあなたの部屋に電気がいていないようでしたね」と云った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は昨夕ゆうべの事について、ついに一言ひとことも細君に口を利く機会を得なかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さては花漬売はなづけうりが心づかず落しゆきしかと手に取るとたん、其人そのひとゆかしく、昨夕ゆうべの亭主が物語今更のように、思い出されて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「いや、僕の方でも大変失礼した。」と、市郎も尋常の挨拶をして、「時に今日来たのは他でもないが、うちの親父が昨夕ゆうべから行方知れずになったので……。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「八、昨夕ゆうべから暁方あけがたへかけて、出て行った船がなかったか、訊いてくれ」
しかし翌朝よくあさになって、昨夕ゆうべの事を考えてみると、何だか不思議でした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明くる朝も笹村は早く目がさめた。舌にいらいらする昨夕ゆうべの酒に、顔の皮膚がまだ厚ぽったくほてっていて、縁側に差し込む朝日が目にみるようであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「お鮨なんですよ、昨夕ゆうべ大使夫人にお招きにあづかりましてね、その折戴いた御馳走なの、貴方に上げたいと思つて、態々わざ/\持つて、帰つたのですわ。」
それが、三日、四日と経つうちに、数が多くなり、ことに昨夕ゆうべかゆさのためによく眠れなかったが、今朝見ると、白く膿を湛えているのが、いくつもできている。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ねえ鈴木様の御次男様、昨夕ゆうべの火事は、お驚きなすったでございましょうね」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昨夕ゆうべからんだ酒のにわかに頭にのぼる心地、切角せっかくこれまでり掛けながら、日頃の願の縁の糸が結ばれようか切れようか、死ぬるか生きるか
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「水はもういいです。隊は昨夕ゆうべ解散しました。ながながお世話になりました」
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その顔を、凝乎じっと見ると、種々いろんな苦労をするか、今朝はひどく面窶おもやつれがして、先刻洗って来た、昨夕ゆうべの白粉の痕が青く斑点ぶちになって見える。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
帰りに台所へ廻って、戸棚とだなを明けて、昨夕ゆうべ三重吉の買って来てくれた粟の袋を出して、餌壺の中へ餌を入れて、もう一つには水を一杯入れて、また書斎の縁側へ出た。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨夕ゆうべもこの服装なりですよ。夜だからわからなかったんでしょう」
手紙 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨夕ゆうべ飯を済まして煙草たばこんでいると急に広間の方で、オルガンをく音がしたが、あの女がやったんじゃないかと聞くと、いいえ昨夕のは宅の下女ですと云う。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時節は五月雨さみだれのまだ思切おもいきり悪く昨夕ゆうべより小止おやみなく降りて、欞子れんじもとに四足踏伸ばしたるねこものうくしてたんともせず
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
とデカデカに初号活字をつかった表題で、昨夕ゆうべの怪事件を報道しているところを見ても、敏感な新聞記者たちは早くもこれが近頃珍らしい大々事件だということを見破ったものらしい。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昨夕ゆうべわたしが見た夢の、さても不思議さ恐ろしさ。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
これで昨夕ゆうべ始めて新橋に着いた田舎者とは誰にも見えない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
昨夕ゆうべも近所の湯にいつたら電車の噂で持ち切りであつた。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
鍋の中には昨夕ゆうべのうちにしかけておいた米があります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして出来るだけしかつべらしい顔をしながら、腹のうちでは細君のあかい唇や、昨夕ゆうべ食つた西洋菓子の事などを思ひ浮べながら、肝腎の五千円の用談は少しも考へてゐなかつた。
昨夕ゆうべの雨が土をふやかし抜いたところへ、今朝からの馬や車や人通りで、踏み返したり蹴上けあげたりした泥のあとを、二人はいとうような軽蔑けいべつするような様子で歩いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
パシエンカも昨夕ゆうべは大分遅くなつて床に這入つた。
衣服を着替へて椅子に腰を掛けると、昨夕ゆうべヴアヰオリンの音を戀しがつたことを思ひ出して、壁の方へ目を向けたが、感興は何時の間にか消えてゐて、そんな物を手に執るのさへものうかつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
忠 早いにもなんにも、昨夕ゆうべから歩き通しだ。
私はもう一度外出の支度したくをととのえました。井関さんの所へ押しかけようというのです。私は彼に、私がどんなに平気でいるかということを見せつけて、昨夕ゆうべの仕返しをしなければなりません。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「だって、昨夕ゆうべ約束したじゃアないか。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昨夕ゆうべこの坂の中程で転んだお角が、れったがって歯咬はがみをしながら、鼻緒の切れたその下駄をポンと仕置場のやぶの中へ投げ込んだ時に、米友は怪訝けげんかおをして見ていました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
行手を急ぎながらも、心にかかるのは今宵の宿です。昨夕ゆうべは板橋の宿にホッと仮寝の息を休めたけれども、今宵の宿が覚束おぼつかない。どこまで行って、どこへこの女を泊めていいか、それが心にかかる。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「アノー昨夕ゆうべは貴君どうなすったの」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
昨夕ゆうべのは孝助は少しも悪くはない、し孝助に遺恨があるならばなぜ飯島に届けん、供先ともさきを妨げしからん事だ、相助の暇に成るは当然あたりまえだ、あれは暇を出すのがよろしい
一条ひとすぢ山径やまみち草深くして、昨夕ゆうべの露なほ葉上はのうへにのこり、かゝぐるもすそ湿れがちに、峡々はざま/\を越えて行けば、昔遊むかしあそびの跡歴々として尋ぬべし。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「一体昨夕ゆうべの事は事実だらうか。今にあの父親が来るだらう。そしたら娘が何もかも話すだらう。あいつは悪魔だ。まあ、己は何をしたのだらう。あそこには斧がある。己のいつかの時指を切つたのが、あの斧だ」。
「馬場様、——八五郎と子供は後で存分に叱っておきましょう。それはまアそれとして、旦那は昨夕ゆうべから今朝の夜明けまで、どこになすったか、それを聴かして頂きさえすれば、私には何の疑念もございません」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「あ、よろしくッてね。あまり寒いからどうかしらッてひどく心配していなさるの、時候が時候だから、少しいい方だッたら逗子ずしにでも転地療養しなすったらッてね、昨夕ゆうべおっかさんとそう話したのですよ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
口惜しや腹立ちや。聴水ともいはれし古狐が、黒衣ごとき山猿に、阿容々々おめおめ欺かれし悔しさよ。かかることもあらんかと、覚束なく思へばこそ、昨夕ゆうべ他がを訪づれて、首尾怎麼いかなりしと尋ねしなれ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
昨夕ゆうべはまた手伝いに来てくれたそのお婆さんに連れられて久しぶりで明るい町を歩いて見た、その人が帰ってしまってからも母と二人で遅くまで話したが、種々な思いで胸が一ぱいに成ってよく寝られなかったと書いてよこした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ドッコイあなたの行末にも良様よいよう昨夕ゆうべしかと考えて見たが、どうでも詰らぬ恋を商買しょうばい道具の一刀にきっすて、横道入らずに奈良へでも西洋へでもゆかれた方が良い、婚礼なぞ勧めたは爺が一生の誤り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
昨夕ゆうべ宿直とまりでね。なに自分の分だけなら月に三度か四度よどで済むんだけれども、ひとに頼まれるもんだからね。それに一晩でも余計泊りさえすればやっぱりいくらかになるだろう、それでついひとの分まで引受ける気にもなるのさ。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
死んだときいたら、嫌だったことはさらりと消えてしまって、ほんとに好い感情を持つことが出来た。何だかこう、昨夕ゆうべまで濁っていた沼のおもが、今朝けさ起きて見ると、すっかりと澄みわたっているので、夢ではないかと思うような気がする。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それがいい。それはそうとともかく、挑戦状はたしじょうをたたきつけなくては話にならない。僕は昨夕ゆうべ一晩かかって、新聞広告の原稿を作っておいたからちょっと見てください。よかったらすぐ、夕刊『馬耳塞マルセーユ人』へ廻すつもりだから。
家来や小者はもうみんなが母様におべっかッてるんだから、誰一人執成とりなしてくれようと云うものはなし、しかたがないので、そっとね、姉様がむじつの罪をせられて——昨夕ゆうべ話したッけ——冤というのは何にも知らない罪を塗りつけられたの。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「私ね、昨夕ゆうべ行って来たんだけれどね……あなたどう思う? 私せっかく観るのにてんでんばらばら一人一人見てそれっきりにしておくの惜しいと思うんです。きっと会社にも芝居ずきはいるんだから、誘いあって観て、あと座談会でもしたら、さぞ愉快だと思うんだけれど……」
舗道 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
昨夕ゆうべの君の行先を当たのは、この郷表うんぬんの文句からだ。六三とあるのは番地としか考えられないから、上の郷表に相当する町名は、東京中に中之郷O町のほかにない。僕は早速あすこへ行って見た。そして、訳なく中村ぐうと表札の出た小さな門のある家を発見した。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かわせきはらいがびたというので、年雄としおくんと二人ふたりで、むらはし散歩さんぽすると、昨夕ゆうべはいったはたけのとうもろこしがだいぶたおれて、あたまうえにひろがった、あおそらきゅうあきらしくかんじられたのです。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)