あが)” の例文
いまや意気のあがりぬいている軍勢であるから、その矢弾やだまといい、喊声かんせいといい、ほとんど、左馬介光春の率いる一千余の兵力の如きは
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さしも遣る方無くかなしめりし貫一は、その悲をたちどころに抜くべきすべを今覚れり。看々みるみる涙のほほかわけるあたりに、あやしあがれる気有きありて青く耀かがやきぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
紙が高くなつた! 紙が高くなつた! 紙が高くなつたからといつて定期刊行物の定価があがる。単行本の値段が高まる。
矢もたてもたまらずにねらいをつけた異性へと飛びついて行くのであったが、やがて生活が彼女の思いあがった慾望に添わないことが苦痛になるか、または
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
去年の十月に浦塩ウラジオ艦隊を破り、今又旅順を落して我が軍は意気大いにあがっているが、ロシヤでは、バルチック艦隊を東洋に回航させるという噂もあるし
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
世間も構わず傍若無人、と思わねばならないのに、俊吉は別にあやしまなかった。それは、懐しい、恋しい情があがって、路々の雪礫ゆきつぶてに目がくらんだ次第ではない。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其れが飄然ふはりとして如何いかにも容易たやすい。どの飛行機にも飛行家ピロツト以外に物好ものずき男女なんによの見物が乗つて居る。和田垣博士も僕も自然と気があがつて乗つて見たく成つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
意気あがって鼻いきが荒いのである。徳川の脇備わきぞなえ、本多平八郎、榊原小平太、直ちに勝頼の本陣に突懸った。
長篠合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一寸ちょっとしたウイスキイの酔は、すぐにも発散したし、湯上りのやや肌寒はだざむを感ずるところへ、明日はいよいよ樺太だと思うと、何か気もあがれば、引きしまっても来る。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
天下の公道をわがもの顔に横領して、意気すこぶあがる如きふうあるは、われら平民の甚だ不快とする処である。
と、ヒョイッと見ると向側の足袋屋たびやの露地の奥から、変なものが、ムクムクとあがる。アッ、けむだ。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
沙翁シェクスピアは女を評してもろきは汝が名なりと云った。脆きが中に我を通すあがれる恋は、かしぎたる飯の柔らかきに御影みかげの砂を振り敷いて、心を許す奥歯をがりがりと寒からしむ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼れ年少気鋭、頭熱し意あがる、時事の日になるを見て、身を挺して国難をすくわんとするの念、益々ますます縦横す。おもうにその方寸の胸間、万丈の焔炎、天をく大火山の如くあるべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
今日汽車の内なる彼女かれ苦悩くるしみは見るに忍びざりき、かく言いて二郎はまゆをひそめ、杯をわれにすすめぬ。泡立あわたつ杯は月の光に凝りて琥珀こはくたまのようなり。二郎もわれもすでに耳熱し気あがれり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
こうして一座が水を打ったようになり、歌う人の意気が、いよいよあがって
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一度ならよいが幾度も幾度も討ち死にをするのでどうしても頭があがらず
あがったとか、さがったとか言って、売ったり買ったりする取引場の喧囂けんごう——浮沈うきしずみする人々の変遷——狂人きちがいのような眼——激しくののしる声——そういう混雑の中で、正太は毎日のように刺激を受けた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あなたが仏蘭西フランスからお持ち帰りになつた陶器の一つに傷を附けた時、私の子はもとに戻せと云ふことを幾百たびあなたから求められたでせう。私は此処ここまで書いて来まして非常に気があがつて来ました。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
唯之をぶれば、心あがり、おもひ樂し。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
そのため兵気はみだれ、戦意はあがらず、ここ内紛をかもしておるようです。——今こそ、孫堅の首は、手につばしてるべしです
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時、美術、絵画の天地に、気あがり、意熱して、麦のごとく燃え、雲雀のごとくかけった、青雲社の同人は他にまた幾人か、すべておなじよそおいをしたのであった。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もし画家たりとせんか梅花ばいかを描きて一度ひとたび名を得んには終生唯梅花をのみ描くも更に飽かるるおそれなし。年老いて筆力つかるれば看るものかへつて俗を脱したりとなし声価いよいよあがるべし。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
友人としては私のいわゆる隣国の王と称する(それは童話国の王だからだ。)「赤い鳥」の鈴木すずき三重吉みえきちが、それこそ上機嫌でぴちぴちして、「ええのう、ええのう。」で意気があがったすえには
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
風「それは覚えてゐるとも。あれの峭然ぴん外眥めじりあがつた所が目標めじるしさ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
米のれいなくもあがりければ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
三間柄さんげんえの朱槍の林は、夕陽を背にして、東へと勢揃いして帰った。美濃衆の槍隊は、それに比して、みな短く、何となく気勢もあがらなかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「釣れる段か、こんな晩にゃあうなぎが船の上を渡り越すというくらいな川じゃ。」と船頭は意気すこぶあがる。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我が飛翔かけりこぞて見む郷人くにびとに心はあがむなしかりけり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
外眦まなじりあがれる三十前後の男なりけれ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今日けふ此頃このごろは気があがる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それあ、今となっては、そのほうが此方こっちも仕合せだ。主家没落のあの前後には、血もあがっていたし、世間の眼もあり、城を
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と言い棄てて、直ぐに歩を移して、少し肩のあがったのも、霜に堪え、雪を忍んだ、梅の樹振は潔い。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一方、魏の曹真は、その後、守るに専念して、とみに気勢もあがらずにいたが、折から、左将軍張郃ちょうこうが洛陽から一軍をひきいて来て味方の陣に参加した。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はなじろみながら眉のあがった、清葉の声はりんとした。……途中でお孝の三人づれに行逢ったをおやじは知るまい。が、言う清葉より聞く方が、ものをも言わず、鼻をすする。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、彼は、走り出した女を追いかけながら意気があがった。怖ろしい武器の消失を待ッていたのだ。女は無益な荷を捨てるように八弥へ短銃をほうりつけた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
館内には横浜風をよそおう日本の美婦人あり。けだし神州の臣民にして情を醜虜しゅうりょひさぐもの、俗に洋妾ラシャメンとなうるはこれなり。道をくにはずる色無く、人に遭えば、傲然ごうぜんとして意気すこぶあがる。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
然し、心の裡のいきどおりは、その顔つきを青じろく硬ばらしているし、あがっている肩先はふるえを抑えているのだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背後うしろからながめて意気いきあがつて、うでこまぬいて、虚空こくうにらんだ。こしには、暗夜あんやつて、たゞちに木像もくざう美女たをやめとすべき、一口ひとふり宝刀ほうたうびたるごとく、威力ゐりよくあしんで、むねらした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それに下を防ぐことのみに専念していた構えが、逆に頭上から敵をうけたので、ほとんど、戦意はあがらない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとり気があがると一所に、足をなぐように、腰をついて倒れました。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
という誇りを生じ、ひいては、仕事への熱中と没我から、自然、仕事そのものに魂も入り、おもしろさも湧き、彼ら独自の、職人的道義もあがって来るのである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と若い人は意気すこぶあがった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
終りに至って、内蔵助の語気は著しくあがらなかった。これはもとより光秀の命による布告で、彼としては何となく、自身の心にそぐわぬものがあったのではあるまいか。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南都の反念仏宗はんねんぶつしゅうのものが、こぞって法然を誹謗ひぼうし、吉水の瓦解を工作し、打倒念仏の呪詛じゅそが、一日ごとにあがっているという取り沙汰は、善信も旅のあいだに、眼にも見
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
焚火たきびのけむりを囲んでいる吉岡の門人は、遠方から数千人の見物の眼につつまれて、物々しげにかたまってはいるが、まだ清十郎の来ないせいか、なんとなく、気勢があがっていない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このところ魏軍江北の陣地は、士気すこぶるあがらなかった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三太夫の眉も話すうちにあがっていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いよいよ意気はあがった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)