)” の例文
贄櫃モンストランチアの前には、ちごあまた提香爐ひさげかうろを振り動かして歩めり。これに續きたるは、こゝらあたりの美しき少女をり出でて、花の環を取らせたるなり。
あの女をもらう気はないのか。好いじゃないか貰ったって。そうり好みをする程女房に重きを置くと、何だか元禄時代の色男の様で可笑しいな。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
卑弥呼は薄桃色の染衣しめごろもに身を包んで、やがて彼女の良人おっととなるべき卑狗ひこ大兄おおえと向い合いながら、鹿の毛皮の上で管玉くだだまと勾玉とをけていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
憲作は平気な顔で又ダイヤをり初めた。最も光りの強い新型に磨いたダイヤ入りの指環をり出して徳市に見せた。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
島崎氏の用ゐられた言葉は决してり好みをした珍奇の言葉ではなかつたので、一々に拾ひ上げて見ればむしろその尋常なるに驚かるゝばかりであるが
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
結城ゆうき孫三郎あやつりの常小屋の真向うの中村座は、江戸随一、りすぐりの名優を座付にして、不断の大入りを誇っていたのが、物の盛衰は理外の理
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
一人ひとりおんなが、ながいはしのようなもので、ごみをかきかえして、ちているや、新聞紙しんぶんしのようなものをうえへひろげて、けていました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
料理法に一番大切な事は原料を択ぶのです。同じ直段ねだんの物を買ってもらび方によって大層な違いがあります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さりながら三歳といふより手しほに懸け給へば、我れを見ること真実まことの子の如く、蝶花の愛おやといふともこれには過ぎまじく、七歳よりぞ手習ひ学問の師をらみて
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
藥草類やくさうるゐってをったが、かほ痩枯やせがれ、眉毛まゆげおほかぶさり、するどひんけづられて、のこったはほねかは
この三百余種類から天気の模様や水流の具合に鑑みて一番鮎の御機嫌に叶いそうなのをり当てるかどうかゞ上手と下手の分れるところです。鉤が合えばパクリときます。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ところで、私の考えでは、この百観音の中に、すぐれたものが五、六体ある。それをり出そう。
「だが、女のために大儀をあやまる」と、勘平はまたごろりと横になりながら言った。「考えてみると、気の毒なものじゃね。こうしてだんだんもみぬかとがり分けられるんだよ」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
無理にも納得なつとくさせねばならぬと、の通りの御意気込み、其れに旦那様だんなさまも、梅も余りらひして居る中に、年を取り過ぎる様なことがあつてはと云ふ御心配で御座いましてネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
断って置くが、己が最初に実業家たらんとこゝろざしたのは、もと/\自らり好んだ訳ではないのである。自分が将来、従事し得る多くの職業のうちから、特に実業家を選択したのではなかったのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
富豪かねもちや会社の重役やが、数多い店員や社員の志望者をり分けるには、ちやうど女学校出の若夫人の八百屋の店先で、卵や甘藍キヤベツを見立てるのと同じに、人によつてそれ/″\ちがつた標準めあてがあるらしい。
義母はしげしげとそれを眺めながら骨をり分けた。彼もぼんやり側にかがんで拾いとっていたが、骨壺こつつぼはすぐに一杯になってしまった。風呂敷に包んだ骨壺を抱えて、彼は植込の径を歩いて行った。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
かたへより、みて静かにかたみなる木の実りつつ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
自分の好きなものを一ツ一ツり出す毎に、男が青くなったり赤くなったりするのを見るのは、二重の意味で云うに云われぬ面白さと愉快さだそうな。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
一体うなんだ。あの女を貰ふ気はないのか。いぢやないかもらつたつて。さうごのみをする程女房に重きを置くと、何だか元禄げんろく時代の色男の様で可笑しいな。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
りにりて虫喰栗むしくひぐりにはおほかり、くずにうづもるゝ美玉びぎよくまたなからずや、あわれこのねが許容きよようありて、彼女かれ素性すじやうさだたまはりたし、まがりし刀尺さしすぐなるものはかりがた
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あれは、かみや、かなくずや、こわれたびんのようなものをけているのさ。」
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
納骨のために墓の石も取除かれたが、彼の持っている骨壺は大きすぎて、その墓の奥に納まらなかった。骨は改めて、別の小さな壺に移されることになった。改めて彼は再び妻の骨をはしりわけた。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
と南さんは戸棚の中から夥多したたかり出して来て
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しみじみとる手のさばき
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ドン底に近付いてはトロの後押し、土方の手伝い、ヨイトマケ、紙屑り、工女、掃除女に到るまで、数えて来ると随分ある。これ等はみんな職業婦人に相違ない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
過去の痛恨をあらたにすべく、普通の人が滅多めったに出逢わないこの偶然に出逢うために、千百人のうちからり出されなければならないほどの人物であったかと思うと、宗助は苦しかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
子爵ししやく寵愛ちようあいよりもふかく、兩親おやなきいもと大切たいせつかぎりなければ、きがうへにもきをらみて、何某家なにがしけ奧方おくがたともをつけぬ十六の春風はるかぜ無慘むざん玉簾たますだれふきとほして此初櫻このはつざくらちりかヽりしそで
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あねたちの難義なんぎゆるやうなれば、いましばらくまりてと、母君はヽぎみものやはらかにのたまひたれど、おゆるしのいでしに甲斐かひなく、夫々それ/\支度したくして老實まめやか侍女つきらみ、出立しゆつたつ何日々々いつ/\内々ない/\とりきめけるを
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
過去くわこ痛恨つうこんあらたにすべく、普通ふつうひと滅多めつた出逢であはないこの偶然ぐうぜん出逢であふために、千百にんのうちからされなければならないほど人物じんぶつであつたかとおもふと、宗助そうすけくるしかつた。また腹立はらだゝしかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)