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捻
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ひね
ふりがな文庫
“
捻
(
ひね
)” の例文
首を
捻
(
ひね
)
った、「つまりもっとも肝心なもの、竜の眼、要するに点ずべき
睛
(
ひとみ
)
といったふうなものが、この辺になくてはならないと思う」
扇野
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その二階もなか/\に
捻
(
ひね
)
つて居り、その頃町家に珍らしく、
孟宗竹
(
まうさうだけ
)
の太い柱をつけた置床に、怪し氣な山水の小幅が掛けてあります。
銭形平次捕物控:286 美男番附
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
捻
(
ひね
)
くる拍子に簪を海へ落してしまった。蒔蔵はその時たいして惜しいとも思わなかった。まわりの景色だけに何故かよく気がついた。
百喩経
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
人目を避けて、
蹲
(
うずくま
)
って、
虱
(
しらみ
)
を
捻
(
ひね
)
るか、
瘡
(
かさ
)
を
掻
(
か
)
くか、弁当を使うとも、
掃溜
(
はきだめ
)
を探した
干魚
(
ほしうお
)
の骨を
舐
(
しゃぶ
)
るに過ぎまい。乞食のように薄汚い。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あゝ臭い。」と、お駒は長い袂で其の煙を拂ひながら、定吉の新らしい煙草入を引き寄せて、緒締めの赤い玉なぞを
捻
(
ひね
)
くつてゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
▼ もっと見る
鍬
(
くわ
)
を肩に掛けて行く男もあり、
肥桶
(
こえたご
)
を担いで腰を
捻
(
ひね
)
って行く男もあり、
爺
(
おやじ
)
の煙草入を腰にぶらさげながら
随
(
つ
)
いて行く児もありました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「叔父の手前何と云ッて出たものだろう?」と改めて首を
捻
(
ひね
)
ッて見たが、もウ何となく馬鹿気ていて、
真面目
(
まじめ
)
になって考えられない。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
さて、三つの
開閉器
(
スイッチ
)
が
捻
(
ひね
)
られて、この一帯が暗黒になると、その時、何故に、テレーズの像が現われなければならなかったのでしょう
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
両側の家から、紙に
捻
(
ひね
)
ったお賽銭を投げるのが、誰を
目的
(
めあて
)
であろうはずはない、みんな米友の身体をめがけて投げられるのだから
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「殺さねえように捕まえる。それで、相手が刃物を持っていると、こっちも刃物で
抗
(
むか
)
って行かにゃならねえ」と、考え考え首を
捻
(
ひね
)
って
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
考えても見ろ! 何百人という人間を髭を
捻
(
ひね
)
り稔り
顎
(
あご
)
で使って来てる
大請負師
(
おおうけおいし
)
だぞ。何は無くっても
家柄
(
いえがら
)
ってものだけは残っているんだ。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
詩人ウイレムは
華奢
(
きゃしゃ
)
な脚を組み合わせ、肱をつき、指を
口髭
(
くちひげ
)
にあて、やがて、のべつにそれを
捻
(
ひね
)
るのである。顔を影に向けて眼をつぶる。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
『
此
(
この
)
畜類
(
ちくるゐ
)
、まだ
往生
(
わうじやう
)
しないか。』と、
手頃
(
てごろ
)
の
鎗
(
やり
)
を
捻
(
ひね
)
つて
其
(
その
)
心臟
(
しんぞう
)
を
貫
(
つらぬ
)
くと、
流石
(
さすが
)
の
猛獸
(
まうじう
)
も
堪
(
たま
)
らない、
雷
(
いかづち
)
の
如
(
ごと
)
く
唸
(
うな
)
つて、
背部
(
うしろ
)
へドツと
倒
(
たを
)
れた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「多勢子供も
有
(
も
)
ってみたが、こんな
意地張
(
いじっぱり
)
は一人もありゃしない」母親はお島を
捻
(
ひね
)
りもつぶしたいような調子で父親と争った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
実際テオドラ夫人の手料理は
美味
(
うま
)
かつた。尾崎氏は
肉汁
(
スープ
)
で汚れた
胡麻白
(
ごまじろ
)
の口髯を
捻
(
ひね
)
りながら、料理について色々な事を話した。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「なるほどそうだね」と圭さん、首を
捻
(
ひね
)
る。圭さんは時々妙な事に感心する。しばらくして、
捻
(
ひ
)
ねった首を
真直
(
まっすぐ
)
にして、圭さんがこう云った。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思いきってその時計の横のスイッチを
捻
(
ひね
)
って、白い文字板の二時十分を指している長針と短針をチラリと見ると直ぐにまた、消してしまった。
継子
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
森君はそう云って、犬の脚を離そうとしたが、その時にオヤと云って首を
捻
(
ひね
)
った。見ると、脚の裏に何だか赤黒いものがベットリついている。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
赤ん坊の手を
捻
(
ひね
)
るのは、造作もねえこった。お前は一人前の大人だ。な、おまけに高利で貸した血の出るような金で、食い肥った立派な人だ。
牢獄の半日
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
この時、これまでずっと法廷の天井を眺めていた例の
仮髪
(
かつら
)
の紳士が、小さな紙片に一二語書いて、それを
捻
(
ひね
)
って、その弁護士に投げてやった。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
まだ冬枯れのままの延び放題な、そして風に
捻
(
ひね
)
られ
揉
(
も
)
みたてられたまま茫々として、いかにも荒れた感じだ。そのあたりでは風がまだ相当強い。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
それまで、どこを転々として、何をしてゐたかと、
朦朧
(
もうろう
)
として頭を
捻
(
ひね
)
つて跡を辿ると、恥づべき所業だけしか手繰り得ないのもいつもの通りだ。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
何
(
ど
)
れほどの
物好
(
ものず
)
きなれば
手出
(
てだ
)
しを
仕樣
(
しやう
)
ぞ、
邪推
(
じやすゐ
)
も
大底
(
たいてい
)
にして
置
(
お
)
いて
呉
(
く
)
れ、あの
事
(
こと
)
ならば
清淨
(
しようじよう
)
無垢
(
むく
)
、
潔白
(
けつぱく
)
な
者
(
もの
)
だと
微笑
(
びよう
)
を
含
(
ふく
)
んで
口髭
(
くちひげ
)
を
捻
(
ひね
)
らせ
給
(
たま
)
ふ。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
八雲は、二人の武士に、左右の手をうしろへ
捻
(
ひね
)
り気味に取られて、烈々と燃える
篝火
(
かがりび
)
の前にひきすえられているのである。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人の手だ! 私は枕元のスイッチを
捻
(
ひね
)
った。鉄色の大きな手が、カーテンの外に引っこんで行くところである。妙に体がガチガチふるえてくる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
飛ぶがごとく駈け寄った要太の
一
(
ひ
)
と
捻
(
ひね
)
りに、この小さな生命はもう超四次元の世界の彼方に消えてしまったのであった。
鴫突き
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
道節も宝刀を
捻
(
ひね
)
くり廻して
居合抜
(
いあいぬき
)
の口上のような駄弁を
弄
(
ろう
)
して定正に近づこうとするよりもズドンと一発ブッ放した方が余程早手廻しだったろう。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
『あ、もう十二時が
遂
(
とう
)
に過ぎて居る。』と云ツて、少し頭を
捻
(
ひね
)
ツて居たが、『
怎
(
どう
)
だ君、今夜少し飮まうぢやないか。』
漂泊
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
首を
捻
(
ひね
)
って一つ奇抜な名を付けてみようなどと、考えている余裕はないのが常であった。人が評定をして多数決できめたということも想像しがたい。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼は暗闇の中で幾度も体を
捻
(
ひね
)
った。それから、そっと手を伸ばしてあたりを探ってみた。すると、その手に
擦
(
す
)
れて、絹夜具がばりばりと音を立てた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
電力を通ずるスイッチのようなものを
捻
(
ひね
)
ったと思うと、回転式溶鉱炉ともいうべきものが響きを立て運転を始めた。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
「
先生
(
せんせい
)
さん、わたしや
此
(
こ
)
れでもどうしたものでがせうね」お
品
(
しな
)
は
突然
(
とつぜん
)
に
聞
(
き
)
いた。
醫者
(
いしや
)
は
只
(
たゞ
)
口髭
(
くちひげ
)
を
捻
(
ひね
)
つて
默
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
うっかり舁夫が
向川岸
(
むこうがし
)
を見る隙を
覘
(
ねら
)
いすまし、腰を居合に
捻
(
ひね
)
って不意に舁夫の胴腹へ深く斬りかけ、アッと声を立てる間もなくドンと
足下
(
そっか
)
にかけたから
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
このマアガレット・ロフティの変死事件が新聞に
載
(
の
)
ると、二人の人が英国内で地方を異にして同時に首を
捻
(
ひね
)
った。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
廊下から掛った鍵を
捻
(
ひね
)
って三階の表部屋をあけると、緑色のドレスを着けた娘が手足を
縛
(
ばく
)
されて椅子に
括
(
くく
)
りつけられたまゝ、部屋の隅に小さくなっている。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
「人の耳に入ってまこと悪くば、聴いた
其奴
(
そやつ
)
を
捻
(
ひね
)
りつぶそうまで。臙脂屋、其方が耳を持ったが気の毒、今此の
俺
(
わし
)
に捻り殺されるか知れぬぞ。ワッハハハ」
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
なかんずく天明ぶりの本町側が盛んで、十七年に『狂歌共楽集』を始め絵入りの『月並集』を出版、少し気のある連中はこうなると己れも一つと頭を
捻
(
ひね
)
る。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
『
米国
(
アメリカ
)
まで来て、
此様
(
こんな
)
御馳走になれやうとは、実に意外ですな。』と髯を
捻
(
ひね
)
つて
厳
(
いか
)
めしく礼を云ふもあれば
一月一日
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
とそのころは誰もがザラに懐中してゐた日本紙にお
捻
(
ひね
)
りを包んで、一ばん先にポーンと高座へ投げて呉れた。
落語家温泉録
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
何か日本の特産品で彼方の人に喜ばれそうな物はと頭を
捻
(
ひね
)
った末、ふと
服部
(
はっとり
)
の地下室で
螺鈿
(
らでん
)
の
手筥
(
てばこ
)
を見付けたので、それを幸子からの進物とすることにきめ
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
僕は眼鏡と聴音器の連結された奇妙なマスクを頭から
被
(
かぶ
)
せられる。彼は函の
側
(
そば
)
にあるスイッチを静かに
捻
(
ひね
)
る。……突然、原爆直前の広島市の全景が見えて来た。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
宮地君はこの色彩の配列を考えるのに殆ど一週間の間も食事も忘れるほど頭を
捻
(
ひね
)
っていました。彼がひどい神経衰弱に罹ったのは、この氷柱を作った頃からです
凍るアラベスク
(新字新仮名)
/
妹尾アキ夫
(著)
「……れいの馬内侍の辞世だが、あれには俺もかんがえた。……いや、どうも、だいぶ頭を
捻
(
ひね
)
ったよ。……ひょろ松、あの辞世には、やはりわけがあったんだ」
顎十郎捕物帳:03 都鳥
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
とそれから東屋氏は、そばの椅子へしずかに腰を下ろし、
両膝
(
りょうひざ
)
に
両肘
(
りょうひじ
)
をのせて指を前に組み合せ、ためらうように首を
捻
(
ひね
)
りながら、ボツリボツリと切り出した。
灯台鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
そして鼻ひげを
捻
(
ひね
)
りあげてじろッと阿賀妻の顔を見た。短かい
顎
(
あご
)
でこちらを示し、傍らの下役にたずねた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「わたし
扱帯
(
しご
)
が一つ
欲
(
ほ
)
しいの。あなた買ってくれる?」お宮は
眩
(
まぶ
)
しいばかりに飾った
半襟屋
(
はんえりや
)
の
店頭
(
みせさき
)
に立ちどまってそこに
懸
(
か
)
けつらねた細くけを
捻
(
ひね
)
りながらいった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
これは彫刻なら立体的に物の形が現われて都合が好いと考えたからであります。それで
牛込
(
うしごめ
)
辺の鋳物師の工場で、蝋作りを習って、蝋を
捻
(
ひね
)
って馬をこしらえました。
幕末維新懐古談:69 馬専門の彫刻家のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「やあ、
何時
(
いつ
)
帰った、ブルジョアはちがったものだね、ちょっと俳句を
捻
(
ひね
)
ると云っても、あんな処まで出かけて往くのだから、どうだ、好い女でも見つかったかい」
草藪の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と、武兵衛はそれを見ると、体を一方へ
捻
(
ひね
)
ったが、片脚を上げて猪の腹を砕けよとばかり蹴り上げた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かう云ふ彼の言葉を聞き流しながら、葦原醜男はその白髪を分けて、見つけ次第虱を
捻
(
ひね
)
らうとした。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
捻
常用漢字
中学
部首:⼿
11画
“捻”を含む語句
紙捻
一捻
捻上
逆捻
捻向
捻込
捻廻
捻切
捻倒
捻伏
観世捻
捻紙
引捻
捻取
捻返
豆捻
捻合
捻鉄
爪捻
捻釘
...