)” の例文
すなわち映画界で五年間の休業をしいられることは実際問題として生きながらぼしにされることと何らえらぶところはないのである。
映画界手近の問題 (新字新仮名) / 伊丹万作(著)
どれ、紙がないからダラにでも、ひとこと書いてあげようか。それを持って、わしの知ってるフィンランドの女のとこへ行くがいい。
みんな血走ちはしツてゐるか、困憊つかれきツた連中れんぢうばかりで、忍諸まご/″\してゐたらあご上がらうといふもんだから、各自てん/″\油斷ゆだんも何もありやしない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「筑前。そちが予へ見せようとするのは、茄子ではあるまい、の露でもあるまい。……そも、何を信長に味わえというのか」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泣き叫んでもむだなことを意識してか、それとも、恐怖と疲労のために、からびたのどが、もう声を出す力も持たなかったのか。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ここでいつまでも云い合っていても論はねえから、今はおとなしく帰してやって、あいつの家の近所へ行ってそっと訊いて見る方がいい。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「これこそ、ほんとに、爺さんの生涯の功徳くどくといふもんだ。わらも薪もから/\にてゐるから、さぞ、よう燃えさつしやるこつたらうてば。」
野の哄笑 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
それじゃいつまでたった所で、議論がないのは当り前だろう。そこで僕が思うには、この金貨を元手にして、君が僕たちと骨牌かるたをするのだ。
魔術 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その法は、そでの中へ生薑なましょうがを入れて歩くべし。ただちに治すること妙なり。薑のたるときは、また生なるに取り替えるべし。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
と蘆の中に池……というが、やがて十坪とつぼばかりの窪地くぼちがある。しおが上げて来た時ばかり、水を湛えて、真水にはしまう。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのときすでにそれは水嵩みずかさをはじめており、その水を浄めて今見るような色あいを帯び、地上における唯一のウォールデン池たること
そんでまたでもはたけでもかぶつたとこみづてからくさつてるもんだからくせえことがまたはなしにやなんねえや、作物さくもつばかしこまんだとおもつたら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その時は彼も一生懸命に母を呼ぼうとしたが、あいにく声が咽喉のどのところへからびついたようになって、どうしてもその「おっかさん」が出て来ない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
生活のまったく絶息してしまったようなこの古いひなびた小さな都会では、からびたような感じのする料理を食べたり、あまりにも自分の心胸と隔絶した
蒼白い月 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
簑虫自身は眠っているのか、あるいは死んでいるのか、ともかくもこのからびた簑を透して中に隠れた生命の断片を想像するのは困難なように思われた。
小さな出来事 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この兄神あにがみのようなうそつきは、このたけあおくなって、やがてしおれるように、あおくなって、しおれてしまえ。このしおからびるようにからびてしまえ。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
降るような真昼まひるの光線にあうと、両眼は脳心のほうにしゃにむに引きつけられてたまらない痛さを感じた。かわいた空気は息気いきをとめるほどのどからばした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
大川のの潮がひたひたと窓近く感じられる河沿いの家を、私の心はしきりに望んで来るのであった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
新「後生だから、お願いだから少しでも手拭にひたして持って来て呉んねえ咽喉がっ付きそうだから」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぬまてしまはないうちにあめはふりましたが、そのあめのふらないうちに雜魚ざこはみんな餓死がししました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
生前のコトエが使っていたのであろうか、浅い茶碗ちゃわんに茶色の水が半ばからびていた。それになみなみと水をそそぐそのわきで、大石先生は位牌いはいをとって胸にだいた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
このからびて血のこびりついた唇、このしゃがれた叫び声、この子供の泣き声に似たすすり泣き、この信頼の情に満ちた子供らしい、同時に絶望的な、保護を祈る哀願
アルキシーにはリーズの所へ行って、わたしの代わりにかの女にキッスをしてチョッキのかくしにはいっているからびたばらの花を送ってもらいたいという希望きぼうを書いた。
水のる時には淺瀬の石の上に並んで背中を乾かし、滿潮の中高にふくらむ水に漂つては、からだを擦りつけて泳ぎ廻つた。三田は朝晩、その二疋の龜の子を見るのを喜んだ。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
まず室の外に在る通路を見るに、泥々の洪水も全くいたものと見える。ただ濃い泥の海となって、深さが膝の辺まで来る、なお熱い事は熱いけれど火傷やけどするほどの熱湯では無い。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
しかし、そのながい沈黙は、私にとっては、何か心いちめんに張りつめていた薄氷うすらいがひとりでにわれるような、うすら寒い、なんとも云えず切ない気もちのするものだった。……
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
次郎はゆすぶられながら、からびた眼を据えて、一心にお民の顔を見つめていたが
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いもあふちはなりぬべしなみだいまだなくに 〔巻五・七九八〕 山上憶良
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
貧乏な子供のお人形さんそっくりだ。彼のからびた眼が、涙でいっぱいになる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
飢饉の上に、三日も吹雪いたら、この辺の百姓は、死んでしまうだ。
そのひどいお泣き方といったら、それこそ、青い山々の草木も、やかましい泣き声で泣きらされてしまい、川や海の水も、その火のつくような泣き声のために、すっかりあがったほどでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
からびた声でぼそぼそと、弁解じみた独りごとをいい出した。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
千尋ともいかでか知らん定めなく満ちる潮ののどけからぬに
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
君は空にさらば磯回いそわの潮とならむ月にて往ぬ道もあるべき
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
鉢うづむ藤の散花ちりばなからびて手に触るるほどは音に立つめり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いや、いや、濱風、むかひ風、涙なんぞはてしまふ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「おお、咽喉がかわいて、ついてしまうようじゃ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
水溜りの水も悉くて水草などは大概枯れた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ものやくにほひにむせび
てはまた滿つよ朝ゆふ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
くさやのものを五枚
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
くさやのものを五枚
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
下刻げこく(午前七時)に六波羅を出た二つの囚人輿めしゅうどごしは、まだ晩秋の木々や町屋の屋根の露もぬうち、はや蹴上けあげ近くにさしかかっていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あおざめた小男は、第二の石段の上へ出た。沼のたような、自然の丘をめぐらした、清らかな境内は、坂道の暗さに似ず、つらつらと濡れつつ薄明うすあかるい。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しな庭先にはさきくりかられた大根だいこ褐色かつしよくるのをた。おつぎも勘次かんじよこむしろいてまた大根だいこつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
のどはカラカラにからびて、舌が石のようにし固まり、心臓は咽のあたりまで飛び上がってくるかと感じられた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、何度見直しても、そのからびた唇には、確かに微笑らしいあかるみが、ただよっているのでございます。わたしはこの不思議な微笑に、永いあいだ見入って居りました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
中庭の籐椅子とういすに寝て夕ばえの空にかがやく向日葵ひまわりの花を見る。勢いよく咲き盛る花のかたわらにはもうしなびかかってまっ黒な大きなしんの周囲にからびた花弁をわずかにとどめたのがある。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
すると兄神あにがみはそのたたりで、それから八ねんあいだからびて、しおれて、つかれて、さんざんくるしい目にあいました。それですっかりよわりきって、きおかあさんの女神めがみにおわびをしました。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しまいにはのどからびるほど心配になってしまいました。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)