尾花をばな)” の例文
にしきふちに、きりけて尾花をばなへりとる、毛氈まうせんいた築島つきしまのやうなやまに、ものめづらしく一叢ひとむらみどり樹立こだち眞黄色まつきいろ公孫樹いてふ一本ひともと
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もやなかを、の三にんとほりすがつたときながいのとみじかいのと、野墓のばかちた塔婆たふばが二ほん根本ねもとにすがれた尾花をばなしろすがらせたまゝ、つちながら、こがらし餘波なごり
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其處そこ居合ゐあはせた禿頭とくとう白髯はくぜんの、らない老紳士らうしんしわたしこゑふるへれば、老紳士らうしんしくちびるいろも、尾花をばななかに、たとへば、なめくぢのごと土氣色つちけいろかはつてた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くもくらし、くもくらし、曠野あらの徜徉さまよかり公子こうしが、けものてら炬火たいまつは、末枯うらがれ尾花をばな落葉おちばべにゆるにこそ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みちすがらも、神祕しんぴ幽玄いうげんはなは、尾花をばなはやしなかやまけた巖角いはかどに、かろあゐつたり、おもあをつたり、わざ淺黄あさぎだつたり、いろうごきつつある風情ふぜい
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
へやらぬまでむは、かぜをぎ尾花をばなのきひさしわたそれならで、あししろの、ちら/\と、あこがれまよゆめて、まくらかよ寢覺ねざめなり。よしそれとても風情ふぜいかな。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その尾花をばな嫁菜よめな水引草みづひきさう雁來紅ばげいとうをそのまゝ、一結ひとむすびして、處々ところ/″\にその屋根やねいた店小屋みせごやに、おきなも、うばも、ふとればわかむすめも、あちこちに線香せんかうつてゐた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その夥多おびたゞしい石塔せきたふを、ひとひとつうなづくいしごとしたがへて、のほり、のほりと、巨佛おほぼとけ濡佛ぬれぼとけ錫杖しやくぢやうかたをもたせ、はちすかさにうつき、圓光ゑんくわうあふいで、尾花をばななかに、鷄頭けいとううへ
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれあわたゞしくまどひらいて、呼吸いきのありたけをくちから吐出はきだすがごとくにつきあふぐ、と澄切すみきつたやまこしに、一幅ひとはゞのむら尾花をばなのこして、室内しつないけむりく。それがいは浸込しみこんで次第しだいえる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……つてゐるのは、あきまたふゆのはじめだが、二度にど三度さんどわたしとほつたかずよりも、さつとむらさめ數多かずおほく、くもひとよりもしげ往來ゆききした。尾花をばななゝめそよぎ、はかさなつてちた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
紺青こんじやううみ千仭せんじんそこよりしてにじたてつてげると、たまはしおとてて、くるまに、みちに、さら/\とくれなゐけての、ひとつ/\のまゝにうみかげうつして、尾花をばな枯萩かれはぎあをい。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)