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をばな
雲暗し、
雲暗し、
曠野を
徜徉ふ
狩の
公子が、
獸を
照す
炬火は、
末枯の
尾花に
落葉の
紅の
燃ゆるにこそ。
途すがらも、
此の
神祕な
幽玄な
花は、
尾花の
根、
林の
中、
山の
裂けた
巖角に、
輕く
藍に
成つたり、
重く
青く
成つたり、
故と
淺黄だつたり、
色が
動きつつある
風情に
堪へやらぬまで
身に
沁むは、
吹く
風の
荻、
尾花、
軒、
廂を
渡る
其ならで、
蘆の
白き
穗の、ちら/\と、あこがれ
迷ふ
夢に
似て、
枕に
通ふ
寢覺なり。よし
其とても
風情かな。