)” の例文
織娘の中で心掛けの善いおくのと云うが有りまして、親父おやじ鑑識めがねでこれを茂之助に添わせると、いことにはたちまち子供が出産できました。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
貸す気がないなら貸さんでもいい、無理に借りようとはいわない。何も同情呼ばわりして逆さに蟇口を振って見せなくてもかろう
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「何が無くとも、熱い雑炊でも進ぜよう。ず先ず炉端へくつろがれるがい、夜が明けたら、早速麓の村まで送り届けて進ぜよう」
きことにしてかねやらんせうになれ行々ゆく/\つまにもせんと口惜くちをしきことかぎくにつけてもきみさまのことがなつかしくにまぎれてくに
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
むっくりと延びた形のい鼻が、丸顔の筋肉や皮膚の皺を程よく調節して、小さく結んだ唇にはまだ若い女の様な、艶を持って居た。
かやの生立 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
呵責と折檻とから放されたような彼にとって、思いしずんでいる主人を時にはこころいまで復讐的な気分でながめていたのである。
お小姓児太郎 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
……し……俺は嬢次少年を見事に取って押えてくれよう。そうして事実、俺を愚弄したものであるかどうかを白状さしてくれよう。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
酒精アルコールを五二ないし七五の割合に交ぜたものたい、そして脳の大きいほど水を少なく酒精の方を割合に多くするがよいという事である。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「そりゃわたくしに対して何も構って頂かなくってもござんす。構ってくれったって、どうせ構って下さる方じゃないんだから、……」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
希望を持つことはやがて失望することである、だから失望の苦しみを味いたくない者は初めから希望を持たないのがい、といわれる。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
そんなに毎晩かしてろくもしないじゃないか。何の事だ。風邪かぜでも引くとくない。勉強にも程のあったものだとやかましく云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お母さん、実は先頃伯父さんからお話のあった時、充分申上げて置くとかったんですが、お父さんの御病気でつい差控えていました。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかし將來このさきこれをさいはひであつたとときいへども、たしかに不幸ふかうであるとかんずるにちがいない。ぼくらないでい、かんじたくないものだ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
金銀用度も皆兄まかせにて我が所有ものといふものもなく、ただることと食ふこととに不足なさざるばかりなれば奴隷といふてもかるべし
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
真実ほんとに、何とも申上げようが御座いません……小泉さんは、まだそれでも男だからう御座んすが、こちらの叔母さんが可哀そうです」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで私が今日議論をする問題は、まず「世界に於ける日本の地位」という演題にしてもいかと思う。しかしこれではあまり大き過ぎる。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
処が秋作、豊後之助の贔屓なのは分つて居るが、若菜姫がくツてならない、甚だ怪しからん、これは悪党の方だから、と思つて居たんです。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「何をヘザモザ言うのやい。浅七が見たのなら、何もお前に読んで呉れと言わんない‼ あっさり読めばいのじゃないか。」
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
箇月かげつらずの短時日たんじじつおいかくごとまへ好結果かうけつくわあらはしたとふことをかんがへると、國民自體こくみんじたい非常ひじやうよろこんでいことであらうとかんがへる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
飲んじゃあ仏戒にも背くし第一自分の身体を害するがどうしたらかろうかと暫く考えて居りましたがじきに案が浮びました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
殺したる事は存ぜねども去年霜月しもつき十七日博奕よりおそく歸りし時如何なる故か面色かほいろからず衣類に血が付居つきをりし故樣子を尋ね候に途中とちうにて喧嘩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
読んでお夏が「我もむろで育ちし故、母方が悪いの、傾城けいせいの風があるのとて、何処の嫁にも嫌はるゝ、これぞい事幸ひと、なほ女郎の風を似せ」
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
そうすると彼女は斯う云うのだ『可哀そうなダンチョン、可哀そうなお方』いかダンチョン、ね、ダンチョン、君は彼女に憐れまれている。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
余「妻になる成らぬは構いませぬ、唯貴女に愛せられて居るとさえ思えば——」秀子「ではそうお思いに成っていのです」
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
お膳立をしてあの戸棚とだなへ入れときましたから、どうぞ……お嬢さま、もうすぐうござんすか? それじゃア行ってまいります
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
貴方からそんなにきらはれてゐるのですから、私もさう何時まで好いはぢを掻かずとも、早く立派に断念して了へばいのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「現金一万円を出せばし、さもなければどんなに警戒しても駄目だと書いてあります。今日までに五通も受取うけとりました」
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ほとんど目を据えていると言ってもい。熱病めいた異常なものまでが、その眼の光の中に漂っているようである。少々気味が悪くなって来た。
せめて死骸になったら一滴の涙位は持ってもいではないか。それにあの執念な追窮しざまはどうだ。死骸の引取り、会葬者の数にも干渉する。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そこで私は『それもかろう、君らは学校から俸給を貰っていて学生の世話が出来ないというのであれば、君らの希望通り、明日から学生の世話を ...
「お前は海軍の方へ這入り、海の上の大工になろうというのでもソレはいかぬ。大工をやるはいが、海上へ行ってはいかぬ、陸上の大工に限る」
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私の物はとられましてもうございますが、その中に代官所へ納める年貢ねんぐかね、三貫目といふものを盗み取られました、常が常でございますから
くわふるに春枝夫人はるえふじん日出雄少年ひでをせうねん部室へやわたくし部室へやとは隣合となりあつてつたので萬事ばんじいて都合つがうからうとおもはるゝ。
是故にわれ先見をもて身をかたむるをしとす、さらばたとひ最愛の地を奪はるともその他の地をばわが歌の爲に失ふことなからむ 一〇九—一一一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そこの引戸に手をかけていた役人は、そんなことはどうでもいのだ、というように、横眼で押えてがらりと開けた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ゆえにヨブは最後の物的幸福に入ることなくして、充分幸福であったのである。従ってこれはなくもかったのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
爺さんも婆アさんも大層喜んで今年は早く夏が来ればいがと思つて、蚊の出るころを待つてゐましたが、ブーン、ブーンとうなつて一ぴき二疋蚊が出て来ると
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
『神妙にしろッ……武器を棄てろッ、云う事を聞かないと容赦はないぞッ、しか、そら一ツ……二ツ……』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「その熱情の百分ノ一でもが俺なんてに恵まれてゐたらかつたらうがな。池部さん、僕は、これは秘密なんだけれど、今年もまた落第しちやつたんですよ。」
夜の奇蹟 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
それまでは、「あてですか。あてはどうでもろしおます」と口癖に言っていた。お君は働きものであった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
「こんなに集っては、仕様がありませんね。会費をウンと高くして、十円位にすればかった…………」
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
今一日滞在して充分に用意をしたらかろうということで、結局雨のために一日滞在することになった、午後になって雨はようやんで五時頃から晴天となったので
利尻山とその植物 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
『千早先生も又、甚麽どんな御事情だかも知れねえども、今急にお罷めアねえくともうごあんべアすか?』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それは雪の降る日に歌った新体詩しんたいしでしたが、それを何処かへ世話して呉れと頼まれていたんです。「僕は君の原稿を預かって居るが、あれは何時いつ出したらかろうか」
『あら、ミセスを呼ぶんなら、水を暫らくそのままにしといて見せてやったほうがかなくって?』
地勢東北は神社の森かげとなりまづ西南向にあい見え候間古家建直しの折西日さへよけるようにすれば風通しもかるべくまさか田福でんぷくが「わが宿は下手へたのたてたるあつさかな」
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今夜にもと時雄の言出したのを、だって、もう十二時だ、明日にした方がかろうとの姉の注意。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「持病とあれば左程さほど案じることもなかろう、なおるまで逗留とうりゅうして、それから出発せらるるがい」
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
厳島合戦は戦国時代の多くの戦争の中で圧倒的な大勝であるが、其間に僥倖の部分は非常に少く、元就の善謀と麾下きかの団結と、武力との当然の成果と云ってい位である。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
川原の上で結構かっただに、月が明るすぎるだで着物を脱ぎに水車小屋へ這入はいったさ。ふしぎなこともあればあるものじゃが、そこで図らずも成書房の娘に出会しただよ。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)