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嗅
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か
ふりがな文庫
“
嗅
(
か
)” の例文
彼らの本能的な
嗅覚
(
きゅうかく
)
は、常に
好餌
(
こうじ
)
のある場所を
嗅
(
か
)
ぎ当てる。好餌を発見すると、得たりとばかりごっそり移動し、食欲を満足させる。
鰻の話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「これは名を嗅げと言って、どんな遠い所の事でも
嗅
(
か
)
ぎ出して来る利口な犬だ。では、一生
己
(
おれ
)
の代りに、大事に飼ってやってくれ。」
犬と笛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼等はどうして我々の
謀計
(
はかりごと
)
を
嗅
(
か
)
ぎ出したろう。どうして私の成功した事を知ったのだろう。そして一体私はどうしたら好いのだろう。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
さて妻が子に食を与え隣家へ
舂
(
うす
)
つきに往くとて、子を伴れ行くを忘れた。子の口が
酥酪
(
そらく
)
で
香
(
にお
)
うを
嗅
(
か
)
ぎ付けて、毒蛇来り殺しに掛かる。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「当てつけではない」と去定が云った、「きさまの腐った根性で、この部屋は
反吐
(
へど
)
の出るほど臭い、その躯を自分でよく
嗅
(
か
)
いでみろ」
赤ひげ診療譚:08 氷の下の芽
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
僕が畜生とまで
嗅
(
か
)
ぎつけた女にそんな優しみがあるのかと、
上手下手
(
じょうずへた
)
を見分ける余裕もなく、僕はただぼんやり
見惚
(
みと
)
れているうちに
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
「何も驚くことはありやしない。此の臭を
嗅
(
か
)
ぎ
馴
(
な
)
れて
平氣
(
へいき
)
になツて了はなけア、自分で自分の
存在
(
そんざい
)
を
保證
(
ほよう
)
することが出來ないんだ。」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「
否
(
いや
)
だ。
否
(
いや
)
だ。イケナイイケナイ。私から先だ私から先だ。私は
美
(
い
)
い
香気
(
におい
)
が
嗅
(
か
)
ぎたい。花だの香木だのの
芳香
(
におい
)
が嗅ぎたい。早く早く」
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
蓮太郎も一つ受取つて、秋の
果実
(
このみ
)
のにほひを
嗅
(
か
)
いで
見乍
(
みなが
)
ら、さて
種々
(
さま/″\
)
な赤倉温泉の物語をした。越後の海岸まで旅したことを話した。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
あるいは道傍に糞があると、すぐにそれを
嗅
(
か
)
いで見る。それがために犬の病気は直ちに他に伝染するのぢやさうな。(明治三十五年)
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
三日目の
日盛
(
ひざかり
)
に、彼は書斎の
中
(
なか
)
から、ぎら/\する
空
(
そら
)
の
色
(
いろ
)
を
見詰
(
みつ
)
めて、
上
(
うへ
)
から
吐
(
は
)
き
下
(
おろ
)
す
焔
(
ほのほ
)
の
息
(
いき
)
を
嗅
(
か
)
いだ時に、非常に恐ろしくなつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
殊に今日は梅の老木に花が匂い出したのを見て、心の中でその風趣をいたわりながら、いつまでもその余香を
嗅
(
か
)
いでいるのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
呼び寄せたらいいんだのに、金は幾らでもあるんだから。そのうち
嗅
(
か
)
ぎつけたら、やって来るだろうよ。だが、ここの寺には何もない。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ころげ落ちた清盛の
古烏帽子
(
ふるえぼし
)
を拾いあげて、その人の手に返しながら、木工助はなお、
嗅
(
か
)
ぎ
撫
(
な
)
でるように、かれのすがたを見まわした。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うまいうまい、と白髪を垂らした吉村長吉が、赤い鼻の頭をぽりぽり掻きながら、
金蠅
(
きんばえ
)
まで話を
嗅
(
か
)
ぎつけやって来たぞ、と云った。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
それに防毒面が一つあるから誰か時々これをかぶって外に出て、ちょっと防毒面と頭の間に指で隙間をつくり、
嗅
(
か
)
いでみればよい。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それをお皿の上に
逆
(
さか
)
さにして笠の裏を出して砂糖を少し振りかけておくと蠅がその匂いを
嗅
(
か
)
ぎつけて沢山
聚
(
あつま
)
って来てその
液
(
つゆ
)
を
嘗
(
な
)
めます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
女房らの不思議がっていたかおりを自身も
嗅
(
か
)
いで、薫ののぞいていることを悟ったためによけいなことは何も言わなかったものらしい。
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
豈図
(
あにはか
)
らんや
嗅
(
か
)
ぎつけていたばかりでなく、道楽者の名を博しているSの
口吻
(
こうふん
)
から察すると、奴等は私たちを夫婦であるとは信じないで
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「だが待ちたまえ。むろん君もあいつに麻酔剤を
嗅
(
か
)
がされたんだろう。でなければ、あいつがそんな油断をするはずはないからね」
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし、
擲弾
(
てきだん
)
の距離はしだいに近づいて、すでに法水は、相手の心動を聴き、樹皮のように中性的な体臭を
嗅
(
か
)
ぐまでに迫っていたのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
川ふちを、一匹黒い犬が
嗅
(
か
)
ぎ嗅ぎやって来た。防波堤の下に並んで日向ぼっこをしながら、篤介がその犬に向って口笛を吹いた。
明るい海浜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
罪人にならねば罪人の心持が解らぬようでは文学者も詰らぬ物になりましょう。沙漠の中の犬は二里先の人の臭いを
嗅
(
か
)
ぎ知ると申します。
産屋物語
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
甘美な
疼痛
(
とうつう
)
がこの指をも見舞つた。いつそこの指を火にくべて、われとわが生命の焼ける臭ひを
嗅
(
か
)
いだらどれほどこころゆくことだらう。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
それじゃあ何処からか
嗅
(
か
)
ぎつけて、伝蔵は遠州屋へたずねて来るかも知れねえ。善八と相談して、その近所を見張っていろ。だが、伝蔵を
半七捕物帳:61 吉良の脇指
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
風呂
(
ふろ
)
を
焚
(
た
)
いてゐましてね、
何
(
なに
)
か、
嗅
(
か
)
ぐと
矢
(
や
)
つ
張
(
ぱ
)
り
石炭
(
せきたん
)
でしたが、
何
(
なん
)
か、よくきくと、たきつけに
古新聞
(
ふるしんぶん
)
と
塵埃
(
ごみ
)
を
燃
(
も
)
したさうです。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
野路を
辿
(
たど
)
りて、我れ草花の香を
嗅
(
か
)
げば、この帽子も
亦
(
また
)
、共にその香に酔ひたる日もありき。価安かりけれど、よく風流を解したる奴なり。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
素敵に
美味
(
うま
)
い上に、素敵に
臭味
(
くさみ
)
をもつてゐる果物で、一度でもあの臭味を
嗅
(
か
)
いだが最期、一生懸つたつて、それが忘れられる物ではない。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
小売店で、高野山一覧を買ひ、直接に
鯖
(
さば
)
を焼くにほひを
嗅
(
か
)
ぎながら、裏通にまはつて、山下といふ小料理店にも
這入
(
はひ
)
つて見た。
仏法僧鳥
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
あの地震を体験し下谷の方から吹上げて来る
土埃
(
つちほこ
)
りの臭を
嗅
(
か
)
いで大火を予想し東照宮の石燈籠のあの象棋倒しを眼前に見ても
震災日記より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
小鳥は又、花の香りを
嗅
(
か
)
ごうとするように、やけに鼻先を突き付けて、さては
蕾
(
つぼみ
)
を
啄
(
ついば
)
んだり、花を踏みこぼしたりするのです。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
由良松に取っては、内儀が死んだことよりも、明神下の銭形平次が早くも
嗅
(
か
)
ぎつけて、此処へ現われたのが不思議でたまらなかったのです。
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
男の時々の心持は鋭敏に
嗅
(
か
)
ぎつけることも出来た。気象もきびきびした方で、不断調子のよい時は、よく
駄洒落
(
だじゃれ
)
などを言って人を笑わせた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
正三は社説の裏に何か真相のにおいを
嗅
(
か
)
ぎとろうとした。しかし、どうかすると、二日も三日も新聞が読めないことがあった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
その作家の人間を、弱さを、
嗅
(
か
)
ぎつけなければ承知できない。作品を、作家から離れた署名なしの一個の生き物として独立させては
呉
(
く
)
れない。
一歩前進二歩退却
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
人に
嗅
(
か
)
がせて、得意になつてましたよ。白粉みたいなもんも作るんださうです。君なんか、知らずにつけてるんぢやないかな
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
そしてとうとう手拭のひと足こっちまで行って、あらんかぎり首を延ばしてふんふん
嗅
(
か
)
いでいましたが、俄かにはねあがって遁げてきました。
鹿踊りのはじまり
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「
馬鹿
(
ばか
)
をいわッし。おいらが
何
(
な
)
んで、
牛
(
うし
)
の
皮
(
かわ
)
に
用
(
よう
)
があるんだ。もっともこの
薬罐
(
やかん
)
の
傍
(
そば
)
へ
鼻
(
はな
)
を
押
(
お
)
ッつけて、よく
嗅
(
か
)
いで見ねえ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
群集は血の
匂
(
にお
)
いを
嗅
(
か
)
いでしまった。たちまちのうちに群集は
獰猛
(
どうもう
)
な暴徒と化した。四方から鉄砲が発射された。人家の窓には赤旗が現われた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
小屋
(
こや
)
で
卯平
(
うへい
)
が
鹽鮭
(
しほざけ
)
を
燒
(
や
)
く
臭
(
にほひ
)
を
嗅
(
か
)
いでは一
種
(
しゆ
)
の
刺戟
(
しげき
)
を
感
(
かん
)
ずると
共
(
とも
)
に
卯平
(
うへい
)
を
嫉
(
にく
)
むやうな
不快
(
ふくわい
)
の
念
(
ねん
)
がどうかすると
遂
(
つひ
)
起
(
おこ
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ねこは、また、ねこで、だんだん
横着
(
おうちゃく
)
になってきました。
鰹節
(
かつぶし
)
をたくさんかけなければ、ただ
香
(
にお
)
いを
嗅
(
か
)
いだばかりで
食
(
た
)
べようともいたしません。
小ねこはなにを知ったか
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
隠密
(
おんみつ
)
をやって
相模
(
さがみ
)
から紀州へ、紀州から江戸へ出て
暫
(
しばら
)
く休息し、やがて又相模へ主水の妻子の隠れ家を
嗅
(
か
)
ぎ出しに行った。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
今又、里の娘に変装して、本陣内に忍び込み、
宿直
(
とのい
)
その他の者に眠り薬を
嗅
(
か
)
がして、高田殿の側まで接近したのであった。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
そうした日の、ある夕ぐれ、青葉の匂いを
嗅
(
か
)
いで、そぞろ歩きをしようと、当然帰途は美妙斎におくってもらうつもりで
訪
(
たず
)
ねると、留守だった。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
花に香があるというけれど、それは
畢竟
(
ひっきょう
)
鼻で
嗅
(
か
)
ぐからのことだ、匂いは鼻にあるのだという理屈が表面の意味であります。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
すなわち眼に見、耳に聞き、鼻に
嗅
(
か
)
ぎ、舌に味わい、身に触れることのできる一切の客観の世界は、ことごとくこの「色」の中に
摂
(
おさ
)
まるのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
大気はソヨとも動かず、その中に、
嗅
(
か
)
いだこともない、恍惚とするような不思議な香気がムッと重苦しく立ち
罩
(
こ
)
めていた。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「いき」な空間に漂う光は「たそや行灯」の淡い色たるを要する。そうして魂の底に沈んで、ほのかに「たが袖」の
薫
(
かおり
)
を
嗅
(
か
)
がせなければならぬ。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
「兎に角、瀬戸君の落伍問題でも分る。吉川君の方が先に知っている。君は今頃
嗅
(
か
)
ぎつけて、鬼の首でも取ったように報告するんだから心細い」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私は何度も何度もその果実を鼻に持っていっては
嗅
(
か
)
いでみた。それの産地だというカリフォルニヤが想像に上って来る。
檸檬
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
嗅
常用漢字
中学
部首:⼝
13画
“嗅”を含む語句
嗅覚
嗅煙草
嗅付
嗅出
嗅塩
嗅附
嗅煙草入
酒嗅
見目嗅鼻
嗅𢌞
嗅覚類似
嗅神経葉
嗅煙艸
嗅気
嗅放
嗅感
嗅官
嗅合
嗅分