はなし)” の例文
今一つ出雲に行わるる譚とてきびの色赤き訳を説きたるは、天保元年喜多村信節きたむらのぶよ撰『嬉遊笑覧』九に載せた瓜姫うりひめはなしの異態と見える。
あの山国兵部のはかりごとで、奇兵に回ったものですから、ようやく打ち破りはしたものの、ずいぶん難戦いたしたようなはなしを承りました。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
食通の多い世の中にも、この家の主人のように料理に情熱を有つ人は少かろう。鮹にちなんでの主人のはなしがまた一段と面白かった。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
磯のかみの中納言が燕の子安貝をとろうとした失敗譚や、帝が武士に命じて竹取の家を囲ませたはなしなどは、おかしみのためである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
きゝ成程なるほど何時いつ迄當院の厄介やくかいなつても居られず何分にも宜しくと頼みければ感應院も承知なして早速さつそくかの片町の醫師方へゆきみぎはなし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
病気のためにも病床の慰みにもまた死後のはかりごとの足しにもならないこういう高価の大辞典を瀕死の間際まぎわに買うというは世間に余り聞かないはなし
顔をればいがみ合う事にしていた母子ゆえ、折合が付いてみれば、はなしも無く、文三の影口も今は道尽いいつくす、——家内が何時いつからと無く湿ッて来た。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
されば竹にさへづ舌切雀したきりすゞめ、月に住むうさぎ手柄てがらいづれかはなしもれざらむ、力をも入れずしておとがひのかけがねをはづさせ、高き華魁おいらんの顔をやはらぐるもこれなり。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
何があつても素人のやうには立騒がずともすむはなしなり。万事さばけて呑込み早かるべきはずなり。亭主の癇癪かんしゃくたくみにそらして気嫌を直さすべきはずなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何にも知らぬ二僧は、すっかり悦んで箸を取りながら主人や女中を相手に四方山よもやまはなしの末、法眼が言いました。
茶屋知らず物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ある時、平山孝蔵という先生へも行って、いつもいつも和漢の英雄のはなしを聞いては、みんなをしこなしていた。
こと/″\く打ち消すほどの勢いであったと、かえって悪太郎原の間に、興あるはなしの一つとして伝えられた。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
... かえりみず文さし上候あげそうろうこなた心少しは御汲分おんくみわけ………」とか「ひとかたならぬ御事のみ仰下おおせくだされなんぼうかうれしくぞんじ色々はずかしき身の上までもおはなし申上げ………」
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
此はここだけのはなしだよ、と言って話したのが、次第に広まって、家持の耳までも聞えて来た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
帰って一杯呑みながらのはなしも船頭の悪口が多かったように覚えている。母親が
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
服「なに少しも行き届きません」とはなしの内はやまた曲のはじまりたれば。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
同人も兼而かねて御申越ニてよろしき人物とてよろこび候所、色〻はなし聞候所何もをもわくのなき人ニて、国家の御為命すてるにくろふ苦労ハせぬ位なものニて、当時私ハ諸生五十人ばかりハつれており候得ども
はなしというのはうだ。何でも当時その男が転居をした家の出来事だ。
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
戦国時代以降の御伽衆おとぎしゅうはなし(桑田忠親著『大名と御伽衆』参照)に似かよった性格のもので、もとより成人おとな相手の咄であり、「キンデル・メールヒェン」となって始めて子ども向きのお伽噺とぎばなしとなり
『グリム童話集』序 (新字新仮名) / 金田鬼一(著)
それは何時いつぞやもおはなししたとおり、あの方はおとしも若いし、美しい御顔でもあるし私が行ったりするのは、はばからなけりゃなるまいと思っています。幾度交際を断とうと思ったかも知れはしません。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
二人はおいしい/\と言つて食べた——といふはなしをして、それとこれとは凡そ意味が違ふけれど、他人の振舞ふ蕎麥を喰ひ殘すやうな不謙遜の人間に、どうしてどうして、藝術など出來るものですか
足相撲 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
案内者のはなしを聞いてから登攀して見たくなったと附説された、自分はますますこの山に登りたく思っていたが、その翌年はふとしたことから登山時期を海外に過ごしてしまった、昨大正三年六月には
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
自分の京都きょうと時代にあったはなしをしよう。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
前のはなしに薄の葉で鋸き殺すとあるに似た例、『西域記』十に竜猛菩薩憍薩羅国こさらこくの引正王に敬われ長寿の薬を与えたので王数百歳経ても死なず
自分の過失そさうを棚へ上げて狂犬呼ばゝりは怪しからぬはなしだ。加之しかも大切な生命いのちを軽卒にるとは飛んでもない万物の霊だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
免職の事を吹聴ふいちょうしたくも言出すしおがないので、文三は余儀なく聴きたくもないはなしを聞てむなしく時刻を移す内、説話はなしは漸くに清元きよもと長唄ながうたの優劣論に移る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
たすかり給ひしとはなしければ隱居は今迄面白く聞居きゝゐたりしが彦兵衞がはなしを耳にもいれず勝手へたつて何やらん外の用事をして居るゆゑ彦兵衞もほんやめ煙草たばこのんで色々咄を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
別れてよりたがいにいろいろの目に逢ったはなしをして、その日は一所に松原に寝たり、乞食の交りは別なものだ。それから二人言い合って、またまた伊勢へ行った。
うもいやなまなお客だもんだから旦那だんなへんにお思ひなすつたかも知れないが、ナニかたの事ならあとでおはなしをしてもわかるんだから、決しておまへ失策しくじるやうな事はない
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
三人思い思いに横になって見ると、薄暗いところでもはなしは見える。それに、余分親しみもある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、取留とりとめた格別なはなしもそれほどの用事もないのにどうしてこう頻繁ひんぱんに来るのか実は解らなかったが、一と月ばかり経ってからやっと用事が解った。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
人の事を浮気者うわきもんだなンぞッてののしッて置きながら、三日も経たないうちに、人の部屋へつかつか入ッて来て……人の袂なンぞつかまえて、はなしが有るだの、何だの
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
段々とはなして娘を賣て十八年以前なる傍輩はうばいの恩金を返さんと思ふよしくはしくはなしければ利兵衞も其の志ざしを深くかんさつそく承知なし即ち判人はんにんとなりて新藤の娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
熊楠おもうに、ルーマニア人も支那人と同じく蜻蜓の形を竜に似た者と見しより右様のはなしも出来たので、林子平が日本橋下の水が英海峡の水と通うと言ったごとく
石川があいたいの後で、乞食をしたはなしを隠さずしろと言ったから、初めからのことを言ったら、よく修業した、いまに番入りをさせてやるから、しんぼうをしろと言われた。
向島むかうじま武蔵屋むさしや落語らくごくわい権三ごんざますと、四方よも大人うしふでにみしらせ、おのれ焉馬えんば判者はんじやになれよと、狂歌きやうかの友どち一ぴやく余人よにん戯作げさくの口を開けば、遠からん者は長崎ながさきから強飯こはめしはなし、近くば
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
大きな造り酒屋の見世先みせさきにすわりながら酒の一番火入れなどするわが子のために覚え書きをつづり、桝田屋一代目存生中のはなしのあらましから、分家以前の先祖代々より困窮な百姓であったこと
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まるでおはなしにならんサ。外債募集だの鉄道国有だのと一つの問題を五年も六年も担ぎ廻る先生の揃つてる経済界だもの。
青年実業家 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
今も職掌により猴のはなしを聞いてもその日休業する者多し。予の知れる料理屋の小女夙慧なるが、小学読本をさらえるとては必ず得手えてかにという風に猴の字を得手と読み居る。
ソレカラハ講中ガ残ラズ出テ馳走ヲスルカラ、アトデハ決シテ右ノはなしハシテクレルナトイウカラ、オレガ云ウニハ、残ラズ承知シタガ、外ノ者ヘヨクヨク口留メヲシナサイ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
隱居のはなしにはよくそのことが出た。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今日も魔子は遊びに来るかも知れないが、「魔子ちゃんが来ても魔子ちゃんのパパさんのはなしをしてはイケナイよ、」
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
螣蛇とうだ足なくして飛ぶとは誠に飛んだはなしだが、飛ぶ蛇というにも種々ありて、バルボサ(十六世紀)の『航海記』に、マラバル辺の山に翼ある蛇、樹から樹へ飛ぶと言ったは
カネテソノはなしモ聞イテ居タ故ニ、一向カマワズ、ソノ日ノ七ツ時分ニナッタカラ、虎ヘ云ウニハ、今日ハ始メテ参ッタカラ何ゾ土産ニテモ持ッテト存ジタガ、御好キナ物モ知レヌ故ニ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
勇気に富みながら平生は沈着おちついて鷹揚おうようであるはなしをして、一匹仔犬を世話をしようかというと、苦々しい顔をして
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
犬に宗教の信念あったはなし諸国に多い。『隋書』に文帝の時、四月八日魏州に舎利塔を立つ。
或時ニ林町ノ兄ガ三男ノ正之助ガ来テイロイロ兄ノはなしヲシタカラ、揚代滞リニシテ六両金ヲ出シテ、カリ宅ヘ林町ノ用人ヲ連レテ行ッテ、方ヲカイテヤッタラ、兄ガオコッテ、ヤカマシクイウカラ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この緑雨の死亡自家広告と旅順りょじゅんの軍神広瀬ひろせ中佐の海軍葬広告と相隣りしていたというはその後聞いたはなしであるが、これこそ真に何たる偶然の皮肉であろう。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
人真似は猴の通性で、『雑譬喩経』に猴が僧の坐禅の真似して樹から落ちて死んだはなしあり。
されば大恩だいおん教主けうしゆ阿含あごん説法せつぱう志道軒しだうけん隆々りゆう/\木陰ぼくいん揮回ふりまはす、皆之みなこれこ〻の呼吸こきふ呑込のみこんでのうへはなしなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)