“可愛(かはゆ)” の例文
ロミオ あゝ、彼等(かれら)十人(にん)、二十人(にん)の劍(けん)よりも、それ、その卿(そもじ)の眼(まなこ)にこそ人(ひと)を殺(ころ)す力(ちから)はあれ。唯(たゞ)もう可愛(かはゆ)い目(め)をして下(くだ)され、彼等(かれら)に憎(にく)まれうと何(なん)の厭(いと)はう。
男の僕でさへ、お前が在れば富山の財産などを可羨(うらやまし)いとは更に思はんのに、宮さん、お前はどうしたのだ! 僕を忘れたのかい、僕を可愛(かはゆ)くは思はんのかい
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と可愛(かはゆ)き妻(つま)が姉(あね)の事(こと)なれば、優(やさ)しき許(ゆる)しの願(ねが)はずして出(で)るに、飛立(とびた)つほど嬉(うれ)しいを此方(こなた)は態(わざ)と色(いろ)にも見(み)せす、では行(ゆ)きませうかと不勝々々(ふしよう/″\)に箪笥(たんす)へ手(て)を懸(かく)れば
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
若いものに對する好奇心やら可愛(かはゆ)みやらでまた自分の胸も若返りの樂しみに一杯になつただらう。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
然(さ)るにても其(そ)の餘(あま)りの美(うつく)しさに、ひととなりて後(のち)國(くに)を傾(かたむ)くる憂(うれひ)もやとて、當時(たうじ)國中(こくちう)に聞(きこ)えたる、道人(だうじん)何某(なにがし)を召出(めしいだ)して、近(ちか)う、近(ちか)う、爾(なんぢ)よく此(こ)の可愛(かはゆ)きものを想(さう)せよ、と仰(おほ)せらる。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
前髮(まへがみ)を切(き)り下(さげ)て可愛(かはゆ)く之(これ)も人形(じんぎやう)のやうに順(おとな)しくして居(ゐ)る廣庭(ひろには)では六十以上(いじやう)の而(しか)も何(いづ)れも達者(たつしや)らしい婆(ばあ)さんが三人立(にんたつ)て居(ゐ)て其(その)一人(ひとり)の赤兒(あかんぼ)を脊負(おぶつ)て腰(こし)を曲(ま)げ居(を)るのが何事(なにごと)か婆(ばあ)さん聲(ごゑ)を
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
とはいふものの、また可愛(かはゆ)くもある椈(ぶな)の木、不思議の木、わたしの悲しい心の悦(よろこび)。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
年紀(とし)かい、二十五だと聞いたが、さう、漸(やうや)う二三とよりは見えんね。あれで可愛(かはゆ)い細い声をして物柔(ものやはらか)に、口数(くちかず)が寡(すくな)くつて巧い言(こと)をいふこと、恐るべきものだよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
女子(をなご)の太息(といき)に胸(むね)の雲(くも)を消(け)して、月(つき)もる窓(まど)を引(ひき)たつれば、音(おと)に目(め)ざめて泣出(なきい)づる稚兒(をさなご)を、あはれ可愛(かはゆ)しいかなる夢(ゆめ)を見(み)つる乳(ちゝ)まゐらせんと懷(ふところ)あくれば笑(ゑ)みてさぐるも憎(にく)からず
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヂュリ お前(まへ)を小鳥(ことり)にしたいなア! したが、餘(あんま)り可愛(かはゆ)がって、つい殺(ころ)してはならぬゆゑ、もうこれで、さよなら! さよなら! あゝ、別(わか)れといふものは悲(かな)し懷(なつか)しいものぢゃ。
見つゝ思はず悚然(ぞつ)として、いしくも咲いたり、可愛(かはゆ)き花、薊(あざみ)、鬼百合(おにゆり)の猛(たけ)くんば、我が言(ことば)に憤りもせめ、姿形のしをらしさにつけ、汝優しき心より、百年(もゝとせ)の齢(よはひ)を捧げて、一朝の盛を見するならずや
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それだから、阿父さんだつて、私だつて、ああされて見ると決して可愛(かはゆ)くはないのだからね、今更此方(こつち)から捜出して、とやかう言ふほどの事はありはしないよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
勿躰(もつたい)なや此(こ)の子(こ)といふ可愛(かはゆ)きもあり、此子(これ)が爲(ため)我(わ)が爲(ため)不自由(ふじいう)あらせじ憂(う)き事(こと)のなかれ、少(すこ)しは餘裕(よゆう)もあれかしとて朝(あさ)は人(ひと)より早(はや)く起(お)き、夜(よ)は此通(このとほ)り更(ふ)けての霜(しも)に寒(さむ)さを堪(こら)へて
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヂュリ (獨語的に)類無(たぐひな)いわが戀(こひ)が、類(たぐひ)ないわが憎怨(にくしみ)から生(うま)れるとは! とも知(し)らで早(はや)う見知(みし)り、然(さ)うと知(し)った時(とき)はもう晩蒔(おそまき)! あさましい因果(いんぐわ)な戀(こひ)、憎(にく)い敵(かたき)をば可愛(かはゆ)いと思(おも)はにゃならぬ。
十月(がつ)中(なか)の五日(か)、與(よ)四郎(らう)が退出(たいしゆつ)間近(まぢか)に安(やす)らかに女(をんな)の子(こ)生(うま)れぬ、男(おとこ)と願(ねが)ひし夫(そ)れには違(ちが)へども、可愛(かはゆ)さは何處(いづこ)に變(かは)りのあるべき、やれお歸(かへ)りかと母親(はゝおや)出(で)むかふて、流石(さすが)に初孫(ういまご)の嬉(うれ)しきは
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
傍(そば)には可愛(かはゆ)き兒(ちご)の寐姿(ねすがた)みゆ、膝(ひざ)の上(うへ)には無情(むじやう)の君(きみ)よ我(わ)れを打捨(うちす)て給(たま)ふかと、殿(との)の御聲(おんこゑ)あり/\聞(きこ)えて、外面(そとも)には良人(をつと)や戻(もど)らん更(ふ)けたる月(つき)に霜(しも)さむし、たとへば我(わ)が良人(をつと)今(いま)此處(こゝ)に戻(もど)らせ給(たま)ふとも
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)