利益りやく)” の例文
食物を献ずればかくかくの福徳利益りやくがある、金銭を差し上ぐれば天国に至ることができるなどの迷信は、すこぶる盛んなものである。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「術、術でありますよ。術というものは、恐しい利益りやくのあるもんでなあ。ほれね、出ますだろう? なかなかふんだんに出ますわなあ」
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
阿難は、仏のおことばを聞くと、これは彼を救わなければならないと、その利益りやくを胸にもって、ふたたび王子のもとへ訪れました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうかれると、かれは、おいなりさまの、いろいろのご利益りやくいて、自分じぶんもしあわせにしてもらいたいためだといいました。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
腫物はれもの一切いっさいにご利益りやくがあると近所の人に聴いた生駒いこまの石切まで一代の腰巻こしまきを持って行き、特等の祈祷きとうをしてもらった足で、南無なむ石切大明神様
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「ハハハハハハハ、神さまでなくって、この岩屋島に住んでいる鬼のご利益りやくかもしれない。なんにしても首領の運のつよいのにはおどろくよ。」
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三宝の利益りやく、四方の大慶。太夫様にお祝儀を申上げ、われらとても心祝いに、この鯉魚こいさかなに、祝うて一献、心ばかりの粗酒を差上げとう存じまする。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
己は人間に種々の利益りやくを授けて遣つたやうだが、あんな事をするよりは、難有く思はせようなどと思はずに、水でも一杯人に飲ませた方が増しだつた。
すぐれた智慧をもっている菩薩ひとは、いまし生死をつくすに至るまで、つねに衆生の利益りやくをなして、しかも涅槃におもむかず」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
ここに、菩薩の利益りやくを頼まずば、いかで嶮難の路を歩まん。権現の徳を仰がずんば、何ぞ幽遠の境にましまさん。
つう仕込じこみおん作者さくしや様方さまがた尊崇そんすうし其利益りやくのいやちこなるを欽仰きんぎやうし、其職分しよくぶんをもておもだいなりとなすは俗物ぞくぶつをし俗物ぞくぶつ渇仰かつがうせらるゝがゆゑなり
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
帳面ヲ出シテ、金五両置イテ、此後ハ加入ノ人々ガ来ルト云ッテ帰ッタ故、全ク妙見ノ利益りやくト思ッテ、ソレカラ直グニ刀ノ売買ヲシタラ、ソノ月ノ末ニハ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この家にとりの声は聞こえないで、現世利益りやく御岳教みたけきょうの信心なのか、老人らしい声で、ったりすわったりして、とても忙しく苦しそうにして祈る声が聞かれた。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
陀羅尼だらにの一遍も回向えこうしないのは邪慳と云うものだ、その上佛の利益りやくにも背き、亡者の恨みもあるであろう、これは帰った方がよいと悟って、戻って来て見ましたら
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
寂照は「あな、とうと」と云いて端然たんねんり、自他平等利益りやく讃偈さんげを唱えて、しずかに其処を去った。戒波羅密や精進波羅密、寂照は愈々いよいよ道に励むのみであった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
康頼は何でもがんさえかければ、天神地神てんじんちじん諸仏菩薩しょぶつぼさつ、ことごとくあの男の云うなり次第に、利益りやくを垂れると思うている。つまり康頼の考えでは、神仏も商人と同じなのじゃ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
国銅を尽して象をとかし、大山を削りて以て堂を構へ、広く法界ほつかいに及ぼして朕が智識ちしきとなす、つひに同じく利益りやくかうむりて共に菩提ぼだいを致さしめん、れ天下の富をつ者は朕なり
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
御本堂への御つとめ許し賜はらば格別の御利益りやくたるべしと、念珠、殊勝爪繰つまぐりて頼み入りしにの寺男、わが面体めんていの爛れたるをつく/″\見て、まことの非人とや思ひけむ
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
思ひがけなき雪の夜に御封ごふう祖師そし利益りやくにて、不思議といのちたすかりしは、妙法蓮華経めうほふれんげきやうの七字より、一おとかまふちる水より鉄砲てつぱうの肩をこすつてドツサリと、岩間いはまひゞ強薬つよぐすり
寒念仏寒大神まゐりの苦行くぎやうあらましくだんのごとくなれば、他国はしらず、江戸の寒念仏はだかまゐりにたぐふればはなはだこと也。かゝる苦行くぎやうをなすゆゑにや、その利益りやく灼然いちじるき事を次にしるしつ。
お賽銭のたかも多かろうが、私の方の守本尊、孕石様のご利益りやくと来たら、ずいぶん昔から云いはやされ、試しの尽くされたあげくゆえ、今では一向信者もなく、自然お賽銭も上がらぬ始末に
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「野淵君は漫然と英雄のご利益りやくをといたが、いかなるものがこれ英雄であるかをかない、正しき英雄とよこしまなる英雄とを一括いっかつして概念的にその不可を論ずるは論拠においてすでに薄弱である」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
霊験れいげんあらたかな熊野権現くまのごんげん利益りやくによって——
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
贖罪の利益りやく
それからというもの、どんなひでりつづきで、ほかの井戸いどが、かれても、このいえ井戸いどは、ご利益りやくで、みずのつきることは、なかったといいます。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三宝さんぽう利益りやく四方しほう大慶たいけい。太夫様にお祝儀を申上げ、われらとても心祝こころいわひに、此の鯉魚こいさかなに、祝うて一こん、心ばかりの粗酒そしゅ差上さしあげたう存じまする。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
よしや一の「モルヒ子」になぬためしありとも月夜つきよかまかれぬ工風くふうめぐらしべしとも、当世たうせい小説せうせつ功徳くどくさづかりすこしも其利益りやくかうむらぬ事かつるべしや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
で、般若の真言も、そのわけは知らなくてもよい、ただそのまま唱えていれば功徳があるのだ、利益りやくがあるのだ、といった所でなかなか人間は承知しないのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「念仏いうひまに、縄でもなえば、寝酒の銭ぐらいはたまる。そのほうが、ご利益りやくがあらたかだて」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見廻しけるに首はおちず何事も無健全まめ息災そくさいなり依て我が家へ立歸りしぞと物語ものがたりしかば娘はうれしく是全く金毘羅樣こんぴらさまの御利益りやくならんと早々うが手水てうずにて身をきよめて金毘羅の掛物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
な天民の作の観音と薬師如来の利益りやくであろうと、親子三人夢に夢を見たような心地こゝちで、其の悦び一方ひとかたならず、おいさを表向おもてむきに重二郎の嫁に致し、江戸屋の清次とは親類のえんを結ぶため
弥陀みだ利益りやくをさぐるべし
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これまでは罰や、罪業に対する一応の訓戒いましめじゃ。そこを助ける、生きながら畜生道に落ちる処を救いたまわる、現当利益りやく、罰利生りしょう、弘法様はあらたかやぞ。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだかみのご利益りやくがあるものとしんじて、むら知人ちじんをたよってかえりましたが、もはやだれもふりむくものはなかったので、そのうにこまり、星晴ほしばれのしたある
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
三十三番の札を打納めさえすれば、大願成就すると云う事はかねて聞いて居ますし、観音様の利益りやくで無理な事も叶うと云う事でございますから、目差す敵は討てようと思って居ますけれども
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
悪業あくごう衆生しゅじょうどう利益りやく
弥陀みだ利益りやく
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
混雑の中だからどんな怪我がないものでもない、さすれば却って不孝になりますよ、神仏かみほとけと云うものはうちにいて拝んでも利益りやくのあるものだから、夜中に来てお百度を踏むのは止したほうがよろしい
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)