まず)” の例文
どういう訳か分らぬがなんでも怪しいからとって押えんければならぬが、それにはまず第一富五郎をどうかして押えなければならぬと心得
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此頃ハ天下無二の軍学者勝麟太郎という大先生に門人となり、ことの外かはいがられ候て、まずきやくぶんのよふなものになり申候。
まず下々しもじもの者が御挨拶ごあいさつを申上ると、一々しとやかにおうけをなさる、その柔和でどこか悲しそうな眼付めつきは夏の夜の星とでもいいそうで
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
だから余程史料の取捨をつつしまないと、思いもよらない誤謬を犯すような事になる。君も第一にまず、そこへ気をつけた方がいでしょう。
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
でもまず差当さしあたり牛込と浅草とを目差して先ず牛込へ行き夫々それ/″\探りを入て置てすぐまた車で浅草へ引返しました、何うも汗水垢あせみずくに成て働きましたぜ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
『枕山詩鈔』に「観蓮ノ節前二日梁川星巌翁ヲ招キ、宮沢竹堂、比志島文軒、嶺田みねた士徳ト同ジク小西湖ノ分香亭ニ飲ム。星巌翁詩まず成ル。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まずすぐれたるびなん(美男)は知らず、よき程の人も、ひためん(直面)の申楽さるがくは、年よりては見えぬ物なり。さるほどにこの一方は欠けたり。
彼はあわてず騒がず悠々と芝生を歩んで、甕の傍に立つ。まず眼鏡めがねをとって、ドウダンの枝にのせる。次ぎにしたおびをとって、春モミジの枝にかける。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「受送達者支倉喜平を市ヶ谷刑務所につき取調べたるに別紙符箋之通り死亡せし旨田辺看守長より申出につき送達不能、依って一まず及返還候なり
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
もっともその奥には玉江嬢のために婿君むこぎみの候補者を捜し出そうという特別の意味もあるがまず大主意は食物研究のため家族的の交際会を開くのだ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その時に当ッてよく心を養うものは何かというと、まず耶蘇教ヤソきょうの人ならばバイブル、耶蘇教でない人ならば、これは卒業なさる方々に言うのであるが
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
本人身の上に別状なきことは武士の誓言せいごん相違あるまじく候、菊園一家の者に心配無用と御伝え被下度くだされたく、貴殿にも御探索御見合せ被下度候、まずは右申入度、早々。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何とぞ、以後は又八どのの事、御わすれくだされたくまずように迄、一筆しめし参らせもうしそろ。かしこ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また私のここにいわゆる文芸は文学である、日本における文学といえばまず小説戯曲ぎきょくであると思います。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
過日御示おしめし被下くだされそうろう貴著瘠我慢中やせがまんちゅう事実じじつ相違之廉そういのかどならぴ小生之しょうせいの所見しょけんもあらば云々との御意ぎょい致拝承はいしょういたしそうろう。昨今別而べっして多忙たぼうつきいずれ其中そのうち愚見ぐけん可申述もうしのぶべくそうろうまず不取敢とりあえず回音かいおん如此かくのごとくに候也。
老人は、何をおいてもまず、慾を知らなければ一生の損だということをお島にくどくど言聴いいきかした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
尚々なおなお明日にも御入洛ごじゅらく待上候。まずそれまでは現状を維持被成候様なされそうろうよう、此儀くれぐれも御願申上候。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まずは大身の家柄の、御曹司である品位は落とさず、浪之助には慕わしくてならなかった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まず第一に何を可愛かわゆがってたれしたうのやら、調べて見ると余程おかしな者、爺のかんがえでは恐らく女におぼれる男も男にくらむ女もなし、皆々手製の影法師にほれるらしい、普通なみなみの人の恋の初幕しょまく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まずは天下ひらける前祝い、雁の汁に鶴の刺身、長臣五名をよんで酒宴をひらく。
織田信長 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
尊大人そんたいじん様、大孺人じゅじん様を初め御満堂よろしく御超歳ちょうさい大賀たてまつり候。獄中も一夜明け候えば春めき申し候。別紙二、書初かきぞめ、蕪詞、御笑正ねがい奉り候。まず新禧しんき拝賀のためかくの如くに御坐候。恐惶きょうこう謹言。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
さ候はゞ及ばずながら奈何様いかようにも都合宜敷様可致候いたすべくそろまずは右申入もうしいれ候。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まあ/\、これは急ぐこともない。今度の日曜までに策を考えて置く。その折チョコレートを一箱御携帯を頼む。矢張り十円で宜しい。矢張り不二家がお互の負担にならなくて宜しい。まずは右まで。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そして人が来るのを知れば、熊の方でまず逃げてくれるのです。
(新字新仮名) / 久米正雄(著)
福子へも宜敷よろしく御伝え下されたく候。まずは、あらあら。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
月にまず名をさきだつる今宵かな 同
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いい夜まず 幾つかの命ゆがめられ
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
すしくっまずおちつくや祭顔 蒙野
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
そしてまず二階へ戻った。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「とまず言ッてくさ。」
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へえ……まず此方こちらへお上りなさいまし、一切親類付合で、今ちょいとお酒が始まった処で、これから美代ちゃんのおあにいさまになるお方で
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は博文館で懲り懲りしていますから早速弁護士を頼んで掛合って貰いまず今日までのところでは別に損害は受けていません。
出版屋惣まくり (新字新仮名) / 永井荷風(著)
外に何の道具もないという片田舎でも出来ます。メリケン粉もない焼粉やきこもない玉子廻しもないという処でも出来ます。まず七、八寸の玉子焼鍋が一つあるとしましょう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「いや、解りました。よく解りました。」と、塚田巡査がまず第一に降伏した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まず書物を読む力があれば、世の中の事は大概間に合ッて行く。
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
談合のうえ、とりあえずまずは飛札かくの如くにござ候
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まずふるは雪女もや北のかた 重頼しげより
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
まずは右まで草々頓首。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「いや、まずないな」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兎に角自分のうちには羅紗緬類似の女は一人も居ません(荻)イヤサ家に居無くとも外へかこって有れば同じ事では無いか(大)イエ外へ囲って有れば決して此通りの犯罪は出来ません何故というまず外妾かこいものならば其密夫みっぷと何所で逢います(荻)何所とも極らぬけれどそう
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
手「こゝは……其の節置わすれそろ懐中物此のものへおん渡し被下度候くだされたくそろ、此の品粗まつなれどさし上候あげそろまずは用事のみあら/\※」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
名作なれば一首にても宜しく候得共古今の駄作困り果て候。まずハ右の段まで早々不備。六月十七日。梅痴。枕山雅伯。□□細君へ宜しく御伝言。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まず二百五十目位な雛鶏ひなどりを骨付のまま五分位にブツブツに切ってお米五しゃく水五合とともに塩胡椒を加えて弱い火で気長に二時間ほど煮ます。ちょうど鶏を入れたおかゆのようなものです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
まずの綱をいて市郎を抱えおこすと、彼も所々しょしょに負傷して、脈は既にとまっていた。が、これはたしか血温けつおんが有る。巡査は少しく安堵の眉を開いて、取敢とりあえの綱を強くくと、上ではすぐにおうと答えた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
端折はしょりを高く取って袈裟を掛けさせ、又袈裟文庫を頭陀袋ずだぶくろの様にしてくびに掛けさせ、まずこれで宜いと云うので、にわかにお比丘尼様が一人出来ました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
江戸演劇は戯曲よりもまず俳優を主とし、俳優の美貌びぼう風采ふうさいによりて常に観客の好劇心と密接の関係をたもたしむるものなれば
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
中川はまずクスリと笑い
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
丈「返しても宜しいけれどもそんなに慌てゝ急がんでもいじゃないか、まず其の内千円も持って行ったらかろう」
兄エドモン・ド・ゴンクウルは弟ジュウルの歿後ぼつごそのよわいようやく六十に達せんとするの時、あらたに日本美術の研究に従事しまず歌麿うたまろ北斎ほくさい二家の詳伝を編纂へんさんせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
朶雲拝誦だうんはいしょう。老兄忽然こつぜんノ御出府、意外驚異つかまつり候。まず以テ御壮健ニ御座ナサレ賀シ奉候。折悪おりあシク昨年来房州ヘ遊歴留守中早速ニ拝眉はいびヲ得ズ、消魂ニ堪ヘズ候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)