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すこ
ふりがな文庫
“
些
(
すこ
)” の例文
お勢
母子
(
ぼし
)
の者の出向いた
後
(
のち
)
、文三は
漸
(
ようや
)
く
些
(
すこ
)
し
沈着
(
おちつい
)
て、
徒然
(
つくねん
)
と机の
辺
(
ほとり
)
に
蹲踞
(
うずくま
)
ッたまま腕を
拱
(
く
)
み
顋
(
あご
)
を
襟
(
えり
)
に埋めて
懊悩
(
おうのう
)
たる物思いに沈んだ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
母子しての稼ぎに暮し向こそ以前に変はらね、
些
(
すこ
)
しながら貯へも出来しを、かねて贔負に思ひくれたる差配の太助どの殊勝がり。
葛のうら葉
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
夫人は
良人
(
おっと
)
の手を振り離そうともしないで、じっとしていた。その蒼ざめた顔には
些
(
すこ
)
しも恐怖の
陰影
(
かげ
)
がない。彼女はしゃんと顔をあげて
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
私自身が
些
(
すこ
)
しでも気持好く書き分けられ、美しいものが作り上げられたら、それでよいという考えをもはや捨てることをしなかったのだ。
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
大騒ぎになったものだそうで……死因は谷川に墜ちた際に、岩角で後頭部を砕いたためで、外には
些
(
すこ
)
しも異状を認められなかったそうです。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
「あのねえ松本さん、ちょっと座をはずしてくれない? わたしうちに帰ろうと思うんだけど、
些
(
すこ
)
し話したいことがあるの」
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
が、辰男はこんな話に
些
(
すこ
)
しも心を
唆
(
そそ
)
られないで、例の通り默々としてゐたが、只
竊
(
ひそ
)
かにイルミネーシヨンといふ洋語の綴りや譯語を考へ込んだ。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
併
(
しか
)
し
些
(
すこ
)
しの米を京都に
輸
(
おく
)
ることをも
拒
(
こば
)
んで、
細民
(
さいみん
)
が大阪へ
小買
(
こがひ
)
に出ると、
捕縛
(
ほばく
)
するのは何事だ。
己
(
おれ
)
は王道の大体を学んで、功利の末技を知らぬ。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ねつい・しつこい芝居金太郎の心は、外の社会に対しては、
些
(
すこ
)
しも示されたことのない、妥協のゆとりをつけるのです。
芝居に出た名残星月夜
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
民間説話の採集は、今から十数年前、
些
(
すこ
)
しく
緒
(
ちょ
)
についたかと思った際に、ちょうど我々の国では最悪の
障碍
(
しょうがい
)
に
逢着
(
ほうちゃく
)
した。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「腕は切り離しても単独に何の用も
些
(
すこ
)
しの生命も持ちませんが胎児は生命を持ち得ると云ふ相違丈けはあります」
獄中の女より男に
(新字旧仮名)
/
原田皐月
(著)
曳出
(
ひきだ
)
された
飛脚
(
ひきやく
)
は、
人間
(
にんげん
)
が
恁
(
か
)
うして、こんな
場合
(
ばあひ
)
に
擡
(
もた
)
げると
些
(
すこ
)
しも
異
(
かは
)
らぬ
面
(
つら
)
を
擡
(
もた
)
げて、ト
牛頭
(
ごづ
)
と
顏
(
かほ
)
を
見合
(
みあ
)
はせた。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
此時
(
このとき
)
迄
(
まで
)
に、
全
(
まつた
)
く
公爵夫人
(
こうしやくふじん
)
を
忘
(
わす
)
れて
了
(
しま
)
つてゐたので、
耳元
(
みゝもと
)
で
夫人
(
ふじん
)
の
聲
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いた
時
(
とき
)
には
些
(
すこ
)
しく
驚
(
おどろ
)
きました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
ソレから其年靜岡に行くまでには馬鹿な危險の目にも
自
(
おのづ
)
から出遇ツたし、今考へて見るとお話しをするにも困る程の始末だが、たゞ其頃は
些
(
すこ
)
しも
山氣
(
やまぎ
)
なし
兵馬倥偬の人
(旧字旧仮名)
/
塚原渋柿園
、
塚原蓼洲
(著)
其
(
それ
)
に
續
(
つゞ
)
いては
小體
(
こがら
)
な、
元氣
(
げんき
)
な、
※鬚
(
あごひげ
)
の
尖
(
とが
)
つた、
髮
(
かみ
)
の
黒
(
くろ
)
いネグル
人
(
じん
)
のやうに
縮
(
ちゞ
)
れた、
些
(
すこ
)
しも
落着
(
おちつ
)
かぬ
老人
(
らうじん
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
防ぐ早速の覚悟、しかと見届けた。源平宇治川の合戦に、
佐々木四郎
(
ささきしろう
)
一番乗の例もある、この試合に法を用いて勝つこと
些
(
すこ
)
しも曲事ならず、あっぱれなり団兵衛!
だだら団兵衛
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
些
(
すこ
)
しの騒がしさなど混じっていないところに、その真価も特色もあるのですが、それでいて、その底には、張りきった生き生きとした活気が蔵されているものです。
謡曲仕舞など:――文展に出品する仕舞図について――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
それで、私は
何
(
ど
)
れに居たかと云えば、此の正則の方であったから、英語は
些
(
すこ
)
しも習わなかったのである。英語を
修
(
おさ
)
めていぬから、当時の予備門に入ることが
六
(
むず
)
カ
敷
(
し
)
い。
私の経過した学生時代
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すみませんねこんな御心配をなすつては、あなたお
酒
(
さけ
)
は
上
(
あが
)
りますか。○「
些
(
すこ
)
し
位
(
ぐらゐ
)
はいたゞきます。 ...
鰍沢雪の夜噺(小室山の御封、玉子酒、熊の膏薬)
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
外の方をさし
覘
(
のぞ
)
けば、大空は澄める瑠璃色の外、一片の雲も見えず、小児の
紙鳶
(
たこ
)
は可なり
飛颺
(
ひよう
)
して見ゆれども、庭の松竹椿などの梢は、眠れるかの如くに、
些
(
すこ
)
しも揺がず。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
些
(
すこ
)
しは無理をしても一度の遅刻も早引もない皆勤をつづけてゐたのを、母親が急死したりして、はじめて欠席してからは、もう理由もないずる休みも平気になつて了つた。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
馬鹿の言ふことには
些
(
すこ
)
しの嘘があらうとも思はれません。それにお袖を締めた紐の結び目が、この男の仕業を證明して居りますが、お今と、お三輪の場合は全く違ひます。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
僕は悪魔主義者でもなければ神主義者でもない、一種の自然快楽主義者です。そしてその事に
些
(
すこ
)
しも良心の苛責を感じてはゐません。実際の処僕はもう宗教には冷淡です。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
奈何
(
どう
)
だらうな、重兵衛さん。三国屋に居ると何の彼ので日に十五銭宛
貪
(
と
)
られるがな。そすると月に積つて四円五十銭で、
私
(
わし
)
は五十銭しか小遣が残らなくなるでな。
些
(
すこ
)
し困るのぢや。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
夜
(
よる
)
は
夜
(
よる
)
で、
又
(
また
)
神様
(
かみさま
)
に
御礼
(
おれい
)
を
申上
(
もうしあ
)
げます。『
今日
(
きょう
)
一
日
(
にち
)
の
仕事
(
しごと
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
勤
(
つと
)
めさせて
戴
(
いただ
)
きまして、まことに
難有
(
ありがと
)
うございました……。』その
気持
(
きもち
)
は
別
(
べつ
)
に
現世
(
げんせ
)
の
時
(
とき
)
と
些
(
すこ
)
しも
異
(
かわ
)
りはしませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
春も三月と言えば、
些
(
すこ
)
しは、ポカついて来ても好いのに、此二三日の
寒気
(
さむさ
)
は如何だ。
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
我は
自
(
みづか
)
ら面の
灼
(
や
)
くが如く目の血走りたるを覺えて、
巾
(
きれ
)
を
鹹水
(
しほみづ
)
に
漬
(
ひた
)
して額の上に加へ、又水を
渡
(
わた
)
り來る
汐風
(
しほかぜ
)
の
些
(
すこ
)
しをも失はじと、衣の
鈕
(
ボタン
)
を
鬆開
(
しようかい
)
せり。されど到る處皆火なるを
奈何
(
いかに
)
せん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
毎年同じことを同じやうにして、そして
些
(
すこ
)
しも退屈を感じない心の形が不思議だ。
解脱非解脱
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
夏子と秀子を全く別の人だなどと、まさかに最う、
些
(
すこ
)
しの疑う余地もありますまい
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「いゝえ、
些
(
すこ
)
しも。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼女はこうした
折檻
(
せっかん
)
によって一種の兇暴な、そして神聖な歓びを感ずるのであった。が、猫はそれに対して
些
(
すこ
)
しも反抗する気色がなかった。
老嬢と猫
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
貴美子さんはソコイラに居ないし、帰り道は知らないし、妾、どうしていいかわからなくなっちゃって、モウ
些
(
すこ
)
しで泣出すところだったのよ
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
些
(
すこ
)
しも手前勝手とは考えておらぬのみか、むしろ手前には何の用も無いことを、人だけに説いて聴かせようとする職業を軽蔑しているのであります。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
生物・無生物が、
些
(
すこ
)
しの好意もなしに、人居を廻つて居る事を、絶えず意識に持つた祖先の生活を考へて見ればよい。
古代生活の研究:常世の国
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
高笑いの声がする内は何をしている位は大抵想像が附たからまず宜かッたが、こう
静
(
しずま
)
ッて見るとサア容子が解らない。文三
些
(
すこ
)
し不安心に成ッて来た。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私に期待していたものをはなはだ
些
(
すこ
)
ししか私のうちに見出し得なかったに相違ないという私の不安と、これである。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
仰げば節穴かと思う
明
(
あかり
)
もなく、その上、座敷から、
射
(
さ
)
し入るような、
透間
(
すきま
)
は
些
(
すこ
)
しもないのであるから、驚いて、ハタと夫人の
賜物
(
たまもの
)
を落して、その手でじっと
眼
(
まなこ
)
を
蔽
(
おお
)
うた。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
電話の
悪戯
(
いたずら
)
が彼であるなら、必ず顔つきに出ている筈である。しかし橋本の様子には
些
(
すこ
)
しも変ったところがなく、
訊
(
き
)
いてみても電話などかけはしないということであった。
劇団「笑う妖魔」
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それから後御厄介になり、今でも何一つ不足はないが、暑いにつけ寒いにつけ朝夕共にお前の事を
些
(
すこ
)
しも私は忘れた事はありません、本当にマア幼な顔を見覚えているよ
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
音次郎の言うことには
些
(
すこ
)
しの嘘があろうとも思われません。それにお袖を絞めた紐の結び目が、この男の仕業を証明しておりますが、お今と、お三輪の場合は全く違います。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
小さい
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しを
結
(
い
)
って、
黒繻子
(
くろじゅす
)
の帯を締めている
中婆
(
ちゅうば
)
あさんである。相手にとは云っても、客が芸者を相手にしている積りでいるだけで、芸者は
些
(
すこ
)
しもこの客を相手にしてはいない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
それについて
徳義
(
とくぎ
)
が
何
(
ど
)
うの
斯
(
か
)
うのとは
言
(
い
)
はない、
些
(
すこ
)
しは
知
(
し
)
つてるけれども
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
我に馴れたる小鳥ありて、その情はいと
濃
(
こまや
)
かなれど、この頃は
些
(
すこ
)
し濃かなるに過ぎて厭はしくなりぬ。思ふに汝には氣に入るべし。こよひ我と共に來よ。親友の間には隱すべきことなし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
現
(
げん
)
にあの
岩屋
(
いわや
)
にしても、
最初
(
さいしょ
)
は
何
(
なに
)
やら
薄暗
(
うすぐら
)
い
陰鬱
(
いんうつ
)
な
処
(
ところ
)
のように
感
(
かん
)
ぜられましたが、それがいつとはなしにだんだん
明
(
あか
)
るくなって、
最後
(
しまい
)
には
全然
(
ぜんぜん
)
普通
(
ふつう
)
の
明
(
あか
)
るさ、
些
(
すこ
)
しも
穴
(
あな
)
の
内部
(
なか
)
という
感
(
かん
)
じがしなくなり
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「低いなりにもな。ハ、ハ。わしは之丈けの絵商人さ。何と云つたつて。併しおぬしなぞは生れから云つてもわしなぞとは仕事の訳がちがはなけれやならん。それにまだ若いし——あせる事はないさ。
些
(
すこ
)
しも。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
彼も
煽
(
おだ
)
てられすぎて、
些
(
すこ
)
してれてゐたのだ。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
しかし同時に鼻が
些
(
すこ
)
しでも鼻以外の表現能力の補助を受けると、直ちに驚くべき表現力を発揮し得る事は、事実が証明しているのであります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お勢もまた昇が「御結構が有ッた」と聞くと等しく吃驚した
顔色
(
かおつき
)
をして
些
(
すこ
)
し顔を
※
(
あか
)
らめた。
咄々
(
とつとつ
)
怪事もあるもので。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
岸に立ちもしくは
些
(
すこ
)
しばかり沖に出て、ただちに望み得る隣の島でもないかぎり、人が目標も無しに渡航を計画したということは、有り得ない話である。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と
呻
(
うな
)
っているけれど、声があまりにかぼそいもんだから、街の物音にかき消されて
些
(
すこ
)
しも人の注意をひかない。
幻想
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
些
漢検準1級
部首:⼆
7画
“些”を含む語句
些少
些々
些事
些細
些末
些子
些程
些中
些細事
露些
一些事
今些
些額
些許
些計
些箇
些末事
些末主義
些技
些小
...