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頸筋
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くびすじ
ふりがな文庫
“
頸筋
(
くびすじ
)” の例文
と船長が
嗄
(
しゃが
)
れた声でプッスリと云った。同時に
眉
(
まゆ
)
の間と
頬
(
ほっ
)
ペタの
頸筋
(
くびすじ
)
近くに、新しい皴が二三本ギューと寄った。冷笑しているのだ。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ガラッ八は
頸筋
(
くびすじ
)
を掻いたり、顔中をブルンブルンと
撫
(
な
)
で廻したり、仕方たくさんに探索の容易ならぬことを呑込ませようとするのです。
銭形平次捕物控:107 梅吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「どうして?」「わしのはこうじゃ」と語り出そうとする時、
蚊遣火
(
かやりび
)
が消えて、暗きに
潜
(
ひそ
)
めるがつと出でて
頸筋
(
くびすじ
)
にあたりをちくと刺す。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「帰るとこ、よう忘れんかったこっちゃな」そう言って蝶子は
頸筋
(
くびすじ
)
を掴んで突き倒し、肩をたたく時の要領で、頭をこつこつたたいた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
それがちょうど二人の座席から二列前の
椅子
(
いす
)
で、ちょうどこっちからその
頸筋
(
くびすじ
)
と、耳と
片頬
(
かたほお
)
と
顎
(
あご
)
が
斜
(
はす
)
かいに見えるような位置にあった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
そういうふうであるから、ちょっと紙切れのようなものが
頸筋
(
くびすじ
)
にはいっても、虫がはいったと感じたら、じっとしていられない。
触覚について
(新字新仮名)
/
宮城道雄
(著)
現に、ステイフェンの『
証拠蒐集綱領
(
ゼ・ダイジェスト・オヴ・クリミナル・エヴィデンス
)
』を見ても、たいていの場合
頸筋
(
くびすじ
)
の結節は、紐が長くて、縊死者が廻転した場合に起るものなんだ。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
虎は月光に
頸筋
(
くびすじ
)
の毛を
震
(
ふる
)
わせて、人もなげに
哄笑
(
こうしょう
)
した。
母屋
(
おもや
)
の家人に聞こえはしないかと、神谷の方がかえってヒヤヒヤするほどであった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして泳ぐような手つきで
繁
(
しげ
)
りあった秋草をかきわけ、しろじろとみえる
頸筋
(
くびすじ
)
や手くびのあたりに
蝗
(
いなご
)
みたいに飛びつく夜露
小品四つ
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
頸筋
(
くびすじ
)
、背、
太腿
(
ふともも
)
も
露
(
あらわ
)
に、真っ白なからだに二人とも水着を着けて、その水着がズップリ
濡
(
ぬ
)
れてからだ中キラキラ
陽
(
ひ
)
に輝いて
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その
頸筋
(
くびすじ
)
から肩にかけての
鮪
(
まぐろ
)
の背のように盛り上った肉を、腹のほうから押し上げて、ぽてりと二つ、憎いまで張り切った乳房のふてぶてしさ。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
もしこの森にいるとかうわさのある狂犬であっておれの後ろからいきなり
頸筋
(
くびすじ
)
へ食らいつくなら着いてもいいではないか。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
この病院の医長の療法にしたがって
頸筋
(
くびすじ
)
に
発泡膏
(
はっぽうこう
)
を
塗布
(
とふ
)
するためであったが、部屋の様子を一目みると、彼は恐怖と
忿怒
(
ふんぬ
)
に取っ
憑
(
つ
)
かれてしまった。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
顔はほとんど全面紫色に腫れあがり、その腫れは、
頸筋
(
くびすじ
)
にまで及んでいた。頭髪はもう大分うすくなり、眉毛も遠くからは見えがたいほどである。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
玉の
腕
(
かいな
)
は温く我
頸筋
(
くびすじ
)
にからまりて、雲の
鬢
(
びん
)
の毛
匂
(
にお
)
やかに
頬
(
ほほ
)
を
摩
(
なで
)
るをハット驚き、
急
(
せわ
)
しく見れば、
有
(
あり
)
し昔に
其儘
(
そのまま
)
の。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
頸筋
(
くびすじ
)
の皺がみんな集まって、ただ一つの
円座
(
えんざ
)
をつくり、皮でできた太い
環
(
わ
)
の上に、頭が
斜
(
はす
)
かいに
載
(
の
)
っているのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
よし、よし、と赤児でもあやす気持ちで
頸筋
(
くびすじ
)
を
撫
(
な
)
でてやると、驢馬は鼻をびくつかせながら口をもってきた。水っ
洟
(
ぱな
)
が顔に散った。許生員は馬
煩悩
(
ぼんのう
)
だった。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
妖怪はそのときすでに鯉を平げてしまい、なお
貪婪
(
どんらん
)
そうな眼つきを悟浄のうなだれた
頸筋
(
くびすじ
)
に
注
(
そそ
)
いでおったが、急に、その眼が光り、
咽喉
(
のど
)
がゴクリと鳴った。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
いま深くうなだれている
頸筋
(
くびすじ
)
から、肩へかけてのなだらかな柔らかい肉付は、かつて見たことのないほど女らしく感じられた。銕太郎は妻を見、つるを見た。
薊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
気がついてみると、じっとりと
頸筋
(
くびすじ
)
のまわりに汗を掻いて、自分ながら顔色の
蒼醒
(
あおざ
)
めているのがよく分った。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「承知しましたッ」運転手は巧みに
把手
(
ハンドル
)
を
操
(
あやつ
)
った。彼の
頸筋
(
くびすじ
)
には、
脂汗
(
あぶらあせ
)
が浮んで
軈
(
やが
)
てタラタラ流れ出した。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
いよいよの時になって、私は奴を一
歩
(
あし
)
先へあるかせ、うしろから右の
頸筋
(
くびすじ
)
を、短刀でぐさと突きました。
按摩
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
へらへらした生地の、安物の着物の
衣紋
(
えもん
)
を思い切り抜いて、その
頸筋
(
くびすじ
)
から肩にかけて白粉を真白に塗りたくっていたが、その顔は齢をごまかす厚化粧ではなかった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
市郎が驚いて叫ぶ間もありや無しや、お杉の兇器は
其
(
そ
)
の
頸筋
(
くびすじ
)
へ閃いて来た。が、
咄嗟
(
とっさ
)
の
間
(
あいだ
)
に少しく
体
(
たい
)
を
躱
(
かわ
)
したので、鋭い
切尖
(
きっさき
)
は
僅
(
わずか
)
に
其
(
そ
)
の肩先を
掠
(
かす
)
ったのみであった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
おちゃらが
頸筋
(
くびすじ
)
を長く延べて据わった姿や、腰から下の長襦袢を見せて立った形がちらちら浮んだり消えたりして、とうとう便所の前での出来事が思い出されたとき
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お涌はそういう気持ちで喚く時、脊筋を通る徹底した甘酸い気持ちに襲われ
頸筋
(
くびすじ
)
を小慄いさせた。
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「ぽたりと落ちて、毛虫が
頸筋
(
くびすじ
)
へ入ったとすると、叔母さん、どっちが厭な心持だと思います。」
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
肩が凝りきった時のように、
頸筋
(
くびすじ
)
から背中がこわばって、血のめぐりが鈍く重く五体の奥の方だけを動くようで、それが胸のところを下の方から気味悪るく衝き上げた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と、人が来て柳の
頸筋
(
くびすじ
)
をつかんで
曳
(
ひ
)
き立てようとした。柳はひどく酔っているので持ちあがらなかった。そこで手を放すとそのまままたぐったりとなって眠ってしまった。
織成
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
もう骨のない
頸筋
(
くびすじ
)
の持主みたいに「ついつい、つまらぬ
戯
(
ざ
)
れ
言
(
ごと
)
を口にしますので、村人からも、あれは半気狂いじゃ、ほら吹きよと、とかく嫌われておりまする私なので」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
肩と
頸筋
(
くびすじ
)
とはかえってその時分より弱々しく、しなやかに見えながら、開けた浴衣の胸から坐った
腿
(
もも
)
のあたりの肉づきはあくまで
豊艶
(
ゆたか
)
になって、全身の姿の何処ということなく
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ひやりと
頸筋
(
くびすじ
)
に触れたものがある、また来たかとゾーッとしながら、夢中に手で払ってみると、
果
(
はた
)
せるかな、その蝶だ、もう私も
堪
(
た
)
え
兼
(
か
)
ねたので、三
町
(
ちょう
)
ばかり、
向
(
むこ
)
う
見
(
み
)
ずに
馳
(
か
)
け出して
白い蝶
(新字新仮名)
/
岡田三郎助
(著)
電車の窓越しに人の
頸筋
(
くびすじ
)
を
撫
(
な
)
でる小春の日光のようにうららかであったのである。
変った話
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼はまた、女の細っそりした
繊弱
(
かよわ
)
そうな
頸筋
(
くびすじ
)
や、美しい灰色の眼を思い浮かべた。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そして肩には、幅の広い白い絹網の縁飾がついている。それが深く
刳
(
く
)
ってあるので、軟らかい、しなやかな
頸筋
(
くびすじ
)
があらわれている。帽子は結んだままの
紐
(
ひも
)
で、片方の腕にかかっている。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
透間風
(
すきまかぜ
)
が、おかっぱのまんなかにあけた、ちいさな
中剃
(
なかず
)
りや、じじっ毛のある
頸筋
(
くびすじ
)
に冷たくあたったので振りかえると、つくなんでいた男が、手のついた青い
籠
(
かご
)
の上へ、
手拭
(
てぬぐい
)
袋包をのせ
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
冬など蒼白いほど白い顔の色が一層さびしく沈んで、いつも
銀杏
(
いちょう
)
がえしに結った房々とした鬢の毛が細おもての
両頬
(
りょうほお
)
をおおうて、長く取った
髱
(
たぼ
)
が
鶴
(
つる
)
のような
頸筋
(
くびすじ
)
から
半襟
(
はんえり
)
に
被
(
おお
)
いかぶさっていた。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
頸筋
(
くびすじ
)
の上に
束
(
つか
)
ねてる
房々
(
ふさふさ
)
とした金髪、日焼けのした顔色をもっていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
久兵衛は
頸筋
(
くびすじ
)
を掻いております。奥の方からはチラリと人影、たぶん女房のお夏が、二人の話に気をもんで立聴きしているのでしょう。
銭形平次捕物控:044 お民の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかるに近来吾輩の
毛中
(
もうちゅう
)
にのみと号する一種の寄生虫が繁殖したので
滅多
(
めった
)
に寄り添うと、必ず
頸筋
(
くびすじ
)
を持って向うへ
抛
(
ほう
)
り出される。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして、
頸筋
(
くびすじ
)
の
靱帯
(
じんたい
)
を鞭繩のようにくねらせながら、まるで彫像のよう、あらぬ方を
瞶
(
みつ
)
めているのだった。それが、実に長い沈黙だった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
僕は、
象牙
(
ぞうげ
)
のように真白な夫人の
頸筋
(
くびすじ
)
に、
可憐
(
かれん
)
な
生毛
(
うぶげ
)
の
震
(
ふる
)
えているのを、何とはなしに見守りながら、この
厄介者
(
やっかいもの
)
から、どうして巧くのがれたものかと
思案
(
しあん
)
した。
人造人間殺害事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
午
(
ひる
)
に近い日光が乾いた道をぎらぎら照りつけていた。少しの風もないので、笠を冠っていながら
頸筋
(
くびすじ
)
まで流れるような汗だ。仕方がないから脱いで汗を拭き拭きする。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お涌はさういふ気持ちで喚く時、
脊筋
(
せすじ
)
を通る徹底した
甘酸
(
あまずっぱ
)
い気持ちに襲はれ
頸筋
(
くびすじ
)
を
小慄
(
こぶる
)
ひさせた。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
ぬか袋を使うのかと
訊
(
き
)
かれた。水を浴びてすくっと立っている眼の覚めるような鮮かな肢態に
固唾
(
かたず
)
を呑むような
嫉妬
(
しっと
)
を感じていた長屋の女が、ある時、お君の
頸筋
(
くびすじ
)
を見て
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
終
(
つい
)
に肩のあたり
頸筋
(
くびすじ
)
のあたり、梅も桜も
此
(
この
)
君の
肉付
(
にくづき
)
の美しきを
蔽
(
おお
)
いて誇るべき程の美しさあるべきやと
截
(
た
)
ち
落
(
おと
)
し切り落し、むっちりとして愛らしき乳首、
是
(
これ
)
を隠す菊の花
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
武運
拙
(
つたな
)
く戦場に
斃
(
たお
)
れた
顛末
(
てんまつ
)
から、死後、
虚空
(
こくう
)
の大霊に
頸筋
(
くびすじ
)
を
掴
(
つか
)
まれ無限の
闇黒
(
あんこく
)
の
彼方
(
かなた
)
へ投げやられる次第を
哀
(
かな
)
しげに語るのは、
明
(
あき
)
らかに弟デックその人と、
誰
(
だれ
)
もが
合点
(
がてん
)
した。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そして幾たびも
手拭
(
てぬぐい
)
をしぼってわたす。それをうけとって
丁寧
(
ていねい
)
に顔や
頸筋
(
くびすじ
)
、耳のなかなどに残った夜の粘りをとったのち最後に両手を、指を一本ずつ克明にふいて手拭をかえす。
胆石
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
他人の
縺
(
もつ
)
れ毛も気になるか、一つ座敷の年下など、小蔭で撫着けてやる外には、客はもとより、
身体
(
からだ
)
に手なんぞ、触った事の無い清葉が、この時は、しかと
頸筋
(
くびすじ
)
でも抱きたそうに
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
背中一面、点々とむしり取ったようになって、
頸筋
(
くびすじ
)
の一とえぐりが致命傷らしく見えた。決して
噛
(
か
)
みつかれたのではない。何かしらするどい
爪
(
つめ
)
のようなものでひっ
掻
(
か
)
かれた
傷痕
(
きずあと
)
だ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“頸筋”の意味
《名詞》
頸部(首)にある筋肉の総称。
(出典:Wiktionary)
頸
漢検準1級
部首:⾴
16画
筋
常用漢字
小6
部首:⽵
12画
“頸筋”で始まる語句
頸筋元