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雁首
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がんくび
ふりがな文庫
“
雁首
(
がんくび
)” の例文
萬一小染が下手人でなかつたら、あんまり綺麗な細工ぢやねエが、たつた一つしかねエこの
雁首
(
がんくび
)
をやると言ふがいい。糞面白くもねエ
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
おまけに一人の
親仁
(
おやじ
)
なぞは、
媽々衆
(
かかしゅう
)
が
行水
(
ぎょうずい
)
の間、
引渡
(
ひきわた
)
されたものと見えて、
小児
(
こども
)
を一人
胡坐
(
あぐら
)
の上へ抱いて、
雁首
(
がんくび
)
を
俯向
(
うつむ
)
けに
銜
(
くわ
)
え
煙管
(
ぎせる
)
。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
禁厭
(
まじない
)
をいいながら、馬春堂の吹いてころがした
吸殻
(
すいがら
)
の火玉を、煙管の先で追いかけたが、
雁首
(
がんくび
)
でおさえるとジーッといったので
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卯平さん、あんた、なにしとるか、と彦太郎はもう草の上に坐りこんで腰から
鉈豆煙管
(
なたまめぎせる
)
を取り出し、
雁首
(
がんくび
)
にきざみをつめながら
訊
(
き
)
いた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
孫四郎は
邪慳
(
じゃけん
)
にこういい捨てて敷けばかえって冷たそうな板のように重い座ぶとんをドサリとわきへほうりなげ、
長煙管
(
ながぎせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
で
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
▼ もっと見る
平馬は、唇をゆがめるようにして、煙を吐くと、荒っぽく、ぽんと
雁首
(
がんくび
)
を灰吹きに叩きつけて、立ち上って、庭に下りようとする。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そうして、丸行燈だの
雁首
(
がんくび
)
などはすべて旧時代の遺物で我々青年にはまったく無用であると、このあいだのとおりわざわざ断わってある。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「おれの子はおれに似て皆
雁首
(
がんくび
)
が好くないようだ。学園には落第がなかったが、この節の学校は厳しいからね。宜しく頼むよ」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
玉木さんは煙草を
服
(
の
)
むことさえ不本意だが、退屈
凌
(
しの
)
ぎに少しはやるという顔付で、短い
雁首
(
がんくび
)
の
煙管
(
きせる
)
で一服吸付けながら答えた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
眇目
(
めつかち
)
の東川も、意地悪い興味を覚えた様な顔をして、黙つてそれを眺めた。秋野は煙管の
雁首
(
がんくび
)
を見ながら煙草を
喫
(
の
)
んでゐる。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
やがて
雁首
(
がんくび
)
を奇麗に
拭
(
ふ
)
いて一服すつてポンとはたき、又すいつけてお高に渡しながら気をつけておくれ店先で言はれると人聞きが悪いではないか
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
敲
(
たた
)
く真似をして見せ、
二重
(
にじゅう
)
へ上り、下手に向ひて戸棚の前にしやがみ、
雁首
(
がんくび
)
にてこちこちと錠をうちて明け「へえおつかさん、この
通
(
とおり
)
でござります」
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
普通のパイプは、煙草をつめる火皿、すなわち
雁首
(
がんくび
)
が一つである。ところがカビ博士が口にくわえるパイプには、五つの雁首が並んでいるのだった。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
婦人用の
烟管
(
きせる
)
の吸口と
雁首
(
がんくび
)
に附けた金具に、銀と
赤銅
(
しゃくどう
)
とを用いて、銀白色の帯青灰色との横縞を見せているのがある。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
真顔作れる母は
火鉢
(
ひばち
)
の
縁
(
ふち
)
に
丁
(
とん
)
と
煙管
(
きせる
)
を
撃
(
はた
)
けば、
他行持
(
よそゆきもち
)
の
暫
(
しばら
)
く
乾
(
から
)
されて
弛
(
ゆる
)
みし
雁首
(
がんくび
)
はほつくり脱けて灰の中に舞込みぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
がんりきの百蔵は、
空
(
そら
)
とぼけたような声をして聞き耳を立てながら、
草鞋
(
わらじ
)
の爪先で、ポンと
煙管
(
きせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
をたたく。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
上州
(
じょうしゅう
)
の
田舎
(
いなか
)
の話である。
某日
(
あるひ
)
の夕方、一人の農夫が畑から帰っていた。それは
柄
(
え
)
の長い
鍬
(
くわ
)
を肩にして、
雁首
(
がんくび
)
を
蛇腹
(
じゃばら
)
のように叩き
潰
(
つぶ
)
した
煙管
(
きせる
)
をくわえていた。
棄轎
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
伝七は拾い上げた煙管に、きざみを詰めることも忘れて考え込んだが、やがて
雁首
(
がんくび
)
で、長火鉢の縁を叩いた。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
煙管
(
きせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
でお
撲
(
う
)
ちになつた
傷痕
(
きずあと
)
が幾十と数へられぬ程あなた
方
(
がた
)
御兄弟の頭に残つて居ると云ふやうなことに比べて、寛容をお誇りになるあなたであつても
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
羅宇
(
らお
)
に蒔絵がほどこしてある、ずばぬけて巨大な一本の
煙管
(
きせる
)
が、その
雁首
(
がんくび
)
へ莨の火を持って、そこからもうもうと煙りを上げて、眼の前の空間にふらついている。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
はっしと火鉢をうちたる勢いに、煙管の
羅宇
(
らう
)
はぽっきと折れ、
雁首
(
がんくび
)
は空を飛んではたと
襖
(
ふすま
)
を破りぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
政治だのなんだのごたごたした話はやめようじゃねえか、酒が
不味
(
まず
)
くなっていけねえ、おウそこにいる青いの、おめえ一つ受けて呉んな、それにこう野郎ばっかり
雁首
(
がんくび
)
を
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
行って
左様
(
そう
)
おいい、いい加減にしろッて。喧嘩をしてる奴はみんなここへ
雁首
(
がんくび
)
を揃えて来いって。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
勘次
(
かんじ
)
が
草臥
(
くたび
)
れた
容子
(
ようす
)
をして
居
(
ゐ
)
るのが
態
(
わざ
)
とらしいやうに
見
(
み
)
えるので
卯平
(
うへい
)
は
苦
(
にが
)
い
顏
(
かほ
)
をして、
火
(
ひ
)
の
消
(
き
)
えた
煙管
(
きせる
)
をぎつと
噛
(
か
)
みしめては
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
したやうに
雁首
(
がんくび
)
を
火鉢
(
ひばち
)
へ
叩
(
たゝ
)
き
付
(
つ
)
けた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
伴「そうですねえ、
船舷
(
ふなべり
)
で
煙管
(
きせる
)
を叩くと
能
(
よ
)
く
雁首
(
がんくび
)
が川の中へ落っこちて困るもんですねえ」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
つと
癇
(
かん
)
走ったお藤、熱く焼けた
長煙管
(
ながぎせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
を、ちょいと伸ばして与吉の手の甲に当てて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
人差指に
雁首
(
がんくび
)
を引掛けてぶら下げておいてから指で空中に円を
画
(
えが
)
きながら煙管をプロペラのごとく廻転するという曲芸は遠心力の物理を教わらない前に実験だけは卒業していた。
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
河内山は、小声でこう云って、煙管の
雁首
(
がんくび
)
を、了哲の鼻の先へ、持って行った。
煙管
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「頭と言うんじゃねえ、」とガヴローシュは叫んだ、「
雁首
(
がんくび
)
と言うんだ。」
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しずかな部屋に、ぽんと
吐月峰
(
はいふき
)
の音が鳴った。そして老人が二服目の刻みを詰めて、
雁首
(
がんくび
)
の
臀
(
しり
)
で煙草盆の火をさぐっているあいだに、美佐子は黙って席を外して、二階の
梯子段
(
はしごだん
)
を上って行った。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
よくよく見るとそれなるキセルの
雁首
(
がんくび
)
のところには、さらになまめかしい
三味線
(
しゃみせん
)
の古糸がくるくると巻きつけてあったものでしたから、すでに右門は、その逐電先までも見通しがついたごとくに
右門捕物帖:10 耳のない浪人
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
煙管
(
きせる
)
取り上げて、花吉の横顔、熱き
雁首
(
がんくび
)
にて突ツつきぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
喞
(
くは
)
えたパイプの
雁首
(
がんくび
)
をぽんとはたく。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
万一小染が下手人でなかったら、あんまり綺麗な細工じゃねエが、たった一つしかねエこの
雁首
(
がんくび
)
をやると言うがいい。
糞
(
くそ
)
面白くもねエ
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
この妙に落ちつき払って古風な
煙草入
(
たばこいれ
)
から
刻
(
きざ
)
みを
撮
(
つま
)
み出しては
雁首
(
がんくび
)
へ詰める男の誤解は、正解と同じような不安を
敬太郎
(
けいたろう
)
に与えたのである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
雑所は前のめりに
俯向
(
うつむ
)
いて、一服吸った後を、口でふっふっと吹落して、
雁首
(
がんくび
)
を取って返して、吸殻を丁寧に灰に
突込
(
つっこ
)
み
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて
雁首
(
がんくび
)
を
奇麗
(
きれい
)
に
拭
(
ふ
)
いて一
服
(
ぷく
)
すつてポンとはたき、
又
(
また
)
すいつけてお
高
(
たか
)
に
渡
(
わた
)
しながら
氣
(
き
)
をつけてお
呉
(
く
)
れ
店先
(
みせさき
)
で
言
(
い
)
はれると
人聞
(
ひとぎ
)
きか
惡
(
わる
)
いではないか
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
持っていた、延べのきせる——それをのべて、
雁首
(
がんくび
)
で、
蔽
(
おお
)
いを、少しかかげるようにしたと、思うと、ギョッとしたように、目をみはった、三斎隠居——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この
雁首
(
がんくび
)
をそろえて行けば、たいがい泥を吐いてしまうだろう。それに向うは御用
商人
(
あきんど
)
、こっちは蜂須賀家のお名前をかざして、あくまで
脅
(
おど
)
しの
詮議
(
せんぎ
)
と出る。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
長煙管
(
ながぎせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
で、鉄に銀の
象嵌
(
ざうがん
)
をした朝鮮の煙草箱を引き寄せ乍らその長い膝をグツと突き出して坐つた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
「それは有難い。課長あなたの河童の煙管の
雁首
(
がんくび
)
のあたりまでがもう僕の所有物にかわったですよ」
四次元漂流
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そうして
忽
(
たちま
)
ちの間に南条力は第一の馬の馬子となり、五十嵐甲子雄は第二の馬の馬子となり、以前の二人の馬子は、
雁首
(
がんくび
)
の変った南条、五十嵐になってしまいました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
蒲留仙は
雁首
(
がんくび
)
の大きな煙管に淡巴菰を詰めかえながら相手にならないので、村の男は歩きだした。
涼亭:――序に代へて――
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
頼む。
雁首
(
がんくび
)
も好くないんだが、実は家庭教師も好くないんで困っている。君と僕とは昔からの親友だ。まさかお互に見殺しは出来まい。何うだい? 僕の子供の面倒を見てくれるか?
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「どこかで見た面だたあ感ずりましたが、言われてみりゃあまさにしかり、なるほどあいつの
雁首
(
がんくび
)
はあっしと瓜二つだった。して、旦那、昨夜あの家にお手入れでもありましたのかえ。」
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
書記は
煙管
(
なたまめ
)
の
雁首
(
がんくび
)
で虫を押えたかと思うと、炉の灰の中へ生埋めにしました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それが年の始めのいちばんだいじな元旦の朝となると、きまってきげんが悪くなって、どうかすると
煙草盆
(
たばこぼん
)
の灰吹きを
煙管
(
きせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
で、いつもよりは耳だって強くたたくこともしばしばあった。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
へえーいえもうやきもちを
焼
(
や
)
かれる
雁首
(
がんくび
)
でもありませんが、
人情
(
にんじやう
)
でございますから、まるつきり見ず知らずで
御厄介
(
ごやくかい
)
になります。女「お休みなさいまし。○「それでは
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さい。
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
行
(
ゆ
)
く。 ...
鰍沢雪の夜噺(小室山の御封、玉子酒、熊の膏薬)
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お近は手にしていた
煙管
(
きせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
で、なま新らしい二分金を、
手許
(
てもと
)
へ
掻
(
か
)
きよせたが、多少気味の悪さを感じたのであろう。手には取らないでそのまま金と歌麿の顔とを、四分六分にじっと見つめた。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「どきな、どきな、だんながおいでだよ。おらが自慢のむっつり右門のだんながお出ましなんだ。あけな、あけな、女の子は近寄ってもさしつかえねえが、ろくでもねえ野郎ども
雁首
(
がんくび
)
を引っこめな」
右門捕物帖:23 幽霊水
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
雁
漢検準1級
部首:⾫
12画
首
常用漢字
小2
部首:⾸
9画
“雁”で始まる語句
雁
雁来紅
雁字
雁木
雁皮紙
雁皮
雁行
雁金
雁鍋
雁坂