トップ
>
襖
>
ふすま
ふりがな文庫
“
襖
(
ふすま
)” の例文
私は、その家の中に、竹の芽が思ふまゝに伸びて、戸障子や
襖
(
ふすま
)
のゆがんでゐる有様を思ひ浮べて、こそ/\その家の前を通り過ぎた。
五月雨
(新字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
寝床の敷いてある六畳の方になると、東側に六尺の
袋戸棚
(
ふくろとだな
)
があって、その
傍
(
わき
)
が
芭蕉布
(
ばしょうふ
)
の
襖
(
ふすま
)
ですぐ隣へ
往来
(
ゆきかよい
)
ができるようになっている。
変な音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
母はあまり手ごたえのないのを物足らなく思うくらいであった。この時長女のいちは、
襖
(
ふすま
)
の陰に立って、おばあ様の話を聞いていた。
最後の一句
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だツて
紳士程
(
しんしほど
)
金満家
(
きんまんか
)
にもせよ、
実
(
じつ
)
は
弁天
(
べんてん
)
も
男子
(
だんし
)
に
見立
(
みたて
)
たいのさ。と
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ると
背後
(
うしろ
)
の
襖
(
ふすま
)
を
開
(
あ
)
けて。浅「
僕
(
ぼく
)
が
弁天
(
べんてん
)
です、
僕
(
ぼく
)
が
弁天
(
べんてん
)
さ。 ...
七福神詣
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
表具師
(
ひょうぐし
)
の使う言葉にも「
蓑貼
(
みのばり
)
」というのがある。
襖
(
ふすま
)
や
屏風
(
びょうぶ
)
の裏打などに蓑の如く紙を重ねて貼るをいう。また「蓑
抑
(
おさえ
)
」などともいう。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
▼ もっと見る
小姓が
襖
(
ふすま
)
を静かに引くと、
白髪
(
しらが
)
交
(
まじ
)
りの安井の頭と、
月代
(
さかやき
)
に赤黒いしみが
斑
(
ぶち
)
になっている藤井又左衛門の頭とが、並んで平伏していた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
捨身の庖丁に
強
(
したた
)
か胸を刺されて、一人がだあっと
襖
(
ふすま
)
もろ共倒れる。その脇から、残った一人が短刀を抜きざま正吉の
脾腹
(
ひばら
)
へひと突き
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いつの間にやら正面の
襖
(
ふすま
)
が開いて、園山家の百枝が、鶴松になりすました乙松を抱いて、これも涙にひたりながら見ているのでした。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
筒井自身はときどき
箒
(
ほうき
)
を持ったまま
襖
(
ふすま
)
に
対
(
むか
)
って、じっと、或る考えごとにとらわれ、はっとして仕事にかかることがたびたびだった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
でも座敷に入ると、
襖
(
ふすま
)
の蔭や階段の下に、警官が木像のように立っていた。そして検事の近づくのを見ると、一々鄭重な敬礼をした。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
開きの
襖
(
ふすま
)
があいていて、その部屋の入口に、セルの
単衣
(
ひとえ
)
を着て、頭の頂点で彼女なりに髪を束ねた葉子が、ちょこなんと坐っていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
隔ての
襖
(
ふすま
)
を八寸ばかり開いて、面を見せたその面は、ガスマスクをかぶったように繃帯で巻かれていましたから、神尾も少し驚いて
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こう云うと老師は立ち上がり不思議な機械を小脇に抱え、
襖
(
ふすま
)
をあけて廊下へ出た。そこで数馬も大小
手挟
(
たばさ
)
み後につづいて廊下に出た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
詩人文人の家、先生学者の家より都市の旅館、
僻地
(
へきち
)
の農家に至るまで、掛物、額、屏風、
襖
(
ふすま
)
の装飾は多く画を画かずして書を書く。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
襖
(
ふすま
)
一つ隔てた隣室に眠っていた大川氏はこの声に目をさましいきなり枕元においてあったピストルを携えて隣室に
躍
(
おど
)
りこんだのである。
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
詞藻
(
しそう
)
の豊富に対して驚くべき自信を持っていたなら、自分は余す処なく霊廟の柱や扉の彫刻と天井や
襖
(
ふすま
)
の絵画の一ツ一ツを
茲
(
ここ
)
に写生し
霊廟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そんなことを思いながら、またうとうとしているところへ、廊下を急ぐ足音にふと目を覚まされると、女中が
襖
(
ふすま
)
の外に
膝
(
ひざ
)
をついて
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
屏風
(
びょうぶ
)
や、
襖
(
ふすま
)
の絵模様など見るともなしにみています。悲しみにもなれた淋しい気持ちです。あなたの学業や仕事のよい実りを祈ります。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
見るなと
固
(
かた
)
く
制
(
せい
)
せしは如何なる
譯
(
わけ
)
かと
頻
(
しき
)
りに其奧の間の見ま
欲
(
ほし
)
くて
密
(
そつ
)
と
起上
(
おきあが
)
り忍び足して
彼座敷
(
かのざしき
)
の
襖
(
ふすま
)
を
押明
(
おしあけ
)
見れば此はそも如何に金銀を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
土間無く、天井無く、障子
襖
(
ふすま
)
無く、壁一重にて隣を分ち、大戸一枚道路を隔てる、戸に接してわづかに三畳
乃至
(
ないし
)
五六畳の一室あるのみ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
冬子が
注
(
つ
)
いで出す茶を一杯飲んで、忠一は
鉄縁
(
てつぶち
)
の眼鏡を掛け直しながら、今や本論に
入
(
い
)
ろうとする時、
彼
(
か
)
の七兵衛が
襖
(
ふすま
)
から顔を出した。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
襖
(
ふすま
)
が
静
(
しずか
)
に開いて現われたのが梅子である。紳士の顔も梅子の顔も
一時
(
いちじ
)
にさっと
紅
(
こう
)
をさした。梅子はわずかに会釈して内に入った。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
襖
(
ふすま
)
、柱、廊下、その他片っ端から汚い汚いと言いながら、歯がゆいくらい
几帳面
(
きちょうめん
)
に拭いたり
掃
(
は
)
いたり磨いたりして一日が暮れるのである。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
秀夫は婢に
跟
(
つ
)
いて狭い廊下をちょと往くと、
行詰
(
ゆきづまり
)
の左側に引立てになった
襖
(
ふすま
)
の
半開
(
はんびら
)
きになった
室
(
へや
)
があった。婢は秀夫をその中へ案内した。
牡蠣船
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
とうとう二階の押し入れの
襖
(
ふすま
)
を食い破って、来客用に備えてあるいちばんいい夜具に大きな穴をあけているのを発見したりした。
ねずみと猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
夏の留守番のあいだ母の希望によって私どもは隣り合いの部屋に
寐
(
ね
)
る習慣だったが、それでもまだ淋しがって母は境の
襖
(
ふすま
)
をあけて眠った。
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
私は
寝呆
(
ねぼ
)
けたように、その真ん中に坐ると、急に怒ったように、そこいらに散らばっていた花札を一つずつ
襖
(
ふすま
)
の方へ投げつけ出した。……
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
女中はもう葉子には
軽蔑
(
けいべつ
)
の色は見せなかった。そして
心得顔
(
こころえがお
)
に次の部屋との
間
(
あい
)
の
襖
(
ふすま
)
をあける
間
(
あいだ
)
に、葉子は手早く大きな銀貨を紙に包んで
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
起キタトタンニソノ辺ニアルスベテノ物象ガ、ストーブノ煙突、障子、
襖
(
ふすま
)
、
欄間
(
らんま
)
、柱等々ノ線ガ、カスカニ二重ニナッテ見エタ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
決して
鼠
(
ねずみ
)
なんかではない。ふと気がつくと、右手の押入れの
襖
(
ふすま
)
が、物音のたびごとに、かすかに揺れ動いていることがわかった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
輝国が絵——人物や背景を描くと、その人は、軒だとか窓だとか、縁側だとか、
襖
(
ふすま
)
とかいったものの、模様や線をひきにくる。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
閾
(
しきい
)
で仕切られているだけで、かつて
襖
(
ふすま
)
の立てられたことのない自分の居間で、短い
敷蒲団
(
しきぶとん
)
に足を縮めて横になって目を閉じた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
「誰が来るわ。あたしを隠して。ちょっとでいいの。」にっと笑って、背後の押入れの
襖
(
ふすま
)
をあけ、坐りながらするするからだを滑り込ませ
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
襖
(
ふすま
)
が開いて閉って、そこに
絢爛
(
けんらん
)
な一つくねの
絹布
(
きぬぎ
)
れがひれ伏した。紅紫と卵黄の色彩の
喰
(
は
)
み合いはまだ何の模様とも判らない。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と、挨拶すると、老人は、信祝が合図の
紐
(
ひも
)
を引いて、鈴を鳴らすのも待たないで、
襖
(
ふすま
)
をあけた。
一間
(
ひとま
)
へだたった所にいた侍が、
周章
(
あわて
)
て立つと
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
苔
(
こけ
)
むした古井戸のそばに立って、うちの様子をのぞいてみると、
襖
(
ふすま
)
がすこしあいている間から、灯火の光が風に吹きあおられてちらちらし
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
二間を仕切る二階の
部屋
(
へや
)
の
襖
(
ふすま
)
も取りはずしてあるころで、すべて吉左衛門が隠居時代の形見らしく、そっくり形も
崩
(
くず
)
さずに住みなしてある。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
奥殿
(
おくどの
)
の風雲
転
(
うた
)
た急なる時、
襖
(
ふすま
)
しとやかに外より開かれて、
島田髷
(
しまだまげ
)
の小間使
慇懃
(
いんぎん
)
に手をつかへ「旦那様、海軍の官房から電話で御座いまする」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
この二の丸は、主なる書院が、一の間、二の間、三の間となっていて、
襖
(
ふすま
)
やその他の張り付けが、金銀の箔を置いて立派な絵が描れていた。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
御免なされと
襖
(
ふすま
)
越しのやさしき声に胸ときめき、
為
(
し
)
かけた
欠伸
(
あくび
)
を半分
噛
(
か
)
みて何とも知れぬ返辞をすれば、
唐紙
(
からかみ
)
する/\と開き
丁寧
(
ていねい
)
に
辞義
(
じぎ
)
して
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ころあいをはかって、お高は、しとやかに
襖
(
ふすま
)
をすべらせた。色の白い、立派な男が、こっちを向いて、すわっていた。お高と、視線が合った。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
力いつぱいで寝返りを打つて、やつと腹這ふ事が出来たが、ふつと誰かがゆき子の
枕許
(
まくらもと
)
をまたいで
襖
(
ふすま
)
ぎはに行く気配がした。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
孫四郎の調子にはもうやゝ、
刺
(
とげ
)
があつた。その刺にさゝれて、隣りの四畳で針仕事をしてゐた細君はやぶれた
襖
(
ふすま
)
をあけた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
薬局といっても裏口の横の
納戸
(
なんど
)
みたいな四畳半の押入を利用したものに過ぎなかったが、そこの
襖
(
ふすま
)
が半開きになっている。
無系統虎列剌
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
犬は彼等が
床
(
とこ
)
へはいると、
古襖
(
ふるぶすま
)
一重
(
ひとえ
)
隔てた向うに、何度も悲しそうな声を立てた。のみならずしまいにはその
襖
(
ふすま
)
へ、がりがり前足の爪をかけた。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その周囲の建物には広々とした部屋があり、
襖
(
ふすま
)
はその時代の最も有名な芸術家によって装飾され、木彫も有名な木彫家の手になったものである。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
雨天体操場といっても、旧藩主の大きい邸宅の
襖
(
ふすま
)
をとりはずしただけのものであったから、中には柱が一杯立っていた。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
……
襖
(
ふすま
)
の向うから、あたしが挨拶しますとね、襖を明けてお入りッて言いますから、何の気もなく、襖を明けますと、どうしたというのでしょう。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と、どなりつけたりすると、自分で押入れの
襖
(
ふすま
)
をあけ、のこのこと先に入りこんでしまう。これではさすがの旦那も始末に困ってしまうのである。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
ふとかたわらの開放された
襖
(
ふすま
)
越しに、
畳敷
(
たたみじ
)
きのお居間の中へ目をやった私は、今度はへなへなとそのままその場へ崩れるように
屈
(
かが
)
んでしまいました。
幽霊妻
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
“襖”の解説
襖(ふすま)は、木などでできた骨組みの両面に紙や布を張ったものでそれに縁や引手を付けたもの。和室の仕切りに使うパネル状の建具の一つであり、一般に引き戸構造となっている。「襖障子」(ふすましょうじ)または「唐紙障子」(からかみしょうじ)と呼ばれることもある。単に「唐紙」と呼ばれることもある。
(出典:Wikipedia)
襖
漢検準1級
部首:⾐
18画
“襖”を含む語句
襖子
素襖
襖紙
襖側
襖越
銀襖
破襖
白襖
襖障子
襖一重
障子襖
襖際
小襖
襖絵
金襖
槍襖
古襖
絵襖
大襖
矢襖
...