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被
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おお
ふりがな文庫
“
被
(
おお
)” の例文
粗末な箱型をしたものに、
幌
(
ほろ
)
とはほんの名ばかりの、継ぎはぎだらけの
鼠
(
ねずみ
)
いろの布を
被
(
おお
)
っただけのものである。
馭者台
(
ぎょしゃだい
)
なんぞもない。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
ジサ女、年中何の月にも属せず、太陽天に
停
(
とど
)
まって動かぬと信ぜらるる日を
択
(
えら
)
び、身に
罟
(
あみ
)
を
被
(
おお
)
ったのみ故、裸とも著衣とも言えぬ。
十二支考:06 羊に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そうして、奥深い一室の
布被
(
ぬのぶすま
)
を引きあけると、そこには、白い羽毛の
蒲団
(
ふとん
)
に
被
(
おお
)
われた卑弥呼が、卑狗の大兄の腕の中で眠っていた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
何のためらいなく、
被
(
おお
)
われている物をズルズルと引っ張りだしてみると、その夕べ、弦之丞が
面
(
おもて
)
をくるんでいた紫紺色の頭巾の
布
(
きれ
)
……。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただその
大部分
(
だいぶぶん
)
がその上に
積
(
つも
)
った
洪積
(
こうせき
)
の
赤砂利
(
あかじゃり
)
や
壚※
(
ローム
)
、それから
沖積
(
ちゅうせき
)
の
砂
(
すな
)
や
粘土
(
ねんど
)
や何かに
被
(
おお
)
われて見えないだけのはなしでした。
イギリス海岸
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
事件の表面を
被
(
おお
)
うている不可思議な悪夢から呼醒まされて、更に又、今一度、一層恐ろしい悪夢の中に突落されたような気がしたという。
S岬西洋婦人絞殺事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
此度
(
このたび
)
権現様小笠原与八郎を先手に
被
(
おお
)
せ付けられ
候
(
そうろう
)
。与八郎下心に挾む所ありと
雖
(
いえど
)
も、辞退に及ばずして、姉川にて先手致し勝利を得申し候。
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
南は
常夏
(
とこなつ
)
の国とて、緑の色に濃く
被
(
おお
)
われ、目も鮮かな花が咲き乱れ、岸辺には紫や青や黄色の魚が
游
(
およ
)
ぐのを見られるでしょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
昭和五年の二月二十日、京都の宿で、紋服を着て紫ちりめんの
定紋
(
じょうもん
)
のついた風呂敷で顔を
被
(
おお
)
って、二階の
梁
(
はり
)
に首を
吊
(
つ
)
っていた。
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
スミレ、タンポポ、ツクシ、アザミの類は地面いちめんを
被
(
おお
)
っているから、スミレのあのかわいい花を踏みつぶさないでは小径もあるけない。
山の春
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
地球
(
ちきゅう
)
の
上
(
うえ
)
は、やわらかな
風
(
かぜ
)
と
緑
(
みどり
)
の
葉
(
は
)
に
被
(
おお
)
われています。うぐいすは
林
(
はやし
)
に
鳴
(
な
)
いて、がけの
上
(
うえ
)
には、らんの
花
(
はな
)
が
香
(
かお
)
っていました。
谷にうたう女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
覆面と変装とに
被
(
おお
)
われていたとはいえ、あの
姿形
(
すがた
)
は、どうしても春子さんに相違なかったのです。私はなぜもっと疑って見なかったのでしょう。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
舞台には、このとき
聖壇
(
せいだん
)
が設けられた。白い布で
被
(
おお
)
い、うしろには
衝立
(
ついたて
)
がおかれ、それには奇怪なる
刺繍絵
(
ししゅうえ
)
がかけられた。
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
歴史を読みながら、ことに種々の記録や材料のうちに歴史を調べながら、マリユスの目からナポレオンを隠していた
被
(
おお
)
いはしだいに取れてきた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
十ほどあるその窓のあるものは明るくあるものは暗く
閉
(
と
)
ざされている。
漏斗型
(
じょうごがた
)
に電燈の
被
(
おお
)
いが部屋のなかの明暗を区切っているような窓もあった。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
食物は足附きの大きな台に幾つでも並べて、
被
(
おお
)
いなどはしないで、それを男が頭の上に乗せ、柄の長い提灯で
足許
(
あしもと
)
を照しながら、さっさと歩きます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
そうにするには棺も外部を石造か金属性で
被
(
おお
)
わなければならないかもしれないし、棺の中にも何か防腐用剤を詰めて置く必要が出来るかもしれないが
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
食人肉人種の子孫 さてその死骸を
被
(
おお
)
うて行ったところの
片布
(
きれ
)
その他の物は
御坊
(
おんぼう
)
が貰います。その
御坊
(
おんぼう
)
は俗人であってその仕事を僧侶が手伝うのです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
水車は
川向
(
かわむこう
)
にあってその古めかしい処、
木立
(
こだち
)
の
繁
(
しげ
)
みに半ば
被
(
おお
)
われている
案排
(
あんばい
)
、
蔦葛
(
つたかずら
)
が
這
(
は
)
い
纏
(
まと
)
うている具合、
少年心
(
こどもごころ
)
にも面白い画題と心得ていたのである。
画の悲み
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
また代表的な縉紳を見出すことが至って困難であって見れば、一人の生活を叙して、それでもって縉紳階級の全部を
被
(
おお
)
わんとするの無理なることは明白だ。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
ただその人の抱いている夢を妹に語ったのが、その妹の夢となり、夢は大きく波紋を描いてこの女子高校の全級にひろがり
被
(
おお
)
っていただけのことであった。
愉快な教室
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
私は二、三歩動き出しながら、黒ずんだ葉に
被
(
おお
)
われているその
梢
(
こずえ
)
を見て、来たるべき秋の花と香を
想
(
おも
)
い浮べた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夫人 何、鷹をそらした、その越度、その罪過、ああ人間というものは不思議な
咎
(
とが
)
を
被
(
おお
)
せるものだね。その鷹は貴方が勝手に鳥に合せたのではありますまい。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雪の来たあとの道路は
泥濘
(
でいねい
)
が連日
乾
(
かわ
)
かず、高い
足駄
(
あしだ
)
もどうかすると埋まって取られてしまうことなどもある。乗合馬車は屋根の
被
(
おお
)
いまではねを上げて通った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
客は五十前後の顔の
赧
(
あか
)
黒く
脂
(
あぶら
)
やけにやけた、金縁の
眼鏡
(
めがね
)
をかけた男で、ずんぐりした体を
被
(
おお
)
うた
焦茶
(
こげちゃ
)
のマントの下から地味な
縦縞
(
たてじま
)
の大島のそろいを
覗
(
のぞ
)
かしていた。
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
云わば、地表がまったく少しの隙間もなく穀物と野菜と果樹とで
被
(
おお
)
われていると云っても良いのである。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
言うまでも無く
吾
(
わ
)
が光を以て天下を
被
(
おお
)
おう、天下をして吾が光を仰がせよう、と
熱
(
いき
)
り立って居るのだ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
でももし彼がだまっていたなら、おそらくすべての事を
被
(
おお
)
ってしまうことが出来たに相違なかった。
グロリア・スコット号
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
正造の声は、攻撃というより警醒のひびきで議場を
被
(
おお
)
い、咳の声がもれるばかりであった。
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
柱にかける
幡
(
ばん
)
なども特別にお選びになった
支那錦
(
しなにしき
)
で作られてあった。紫夫人の手もとで調製された
花机
(
かき
)
の
被
(
おお
)
いは
鹿
(
か
)
の
子
(
こ
)
染めを用いたものであるが、色も図柄も雅味に富んでいた。
源氏物語:38 鈴虫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
門者
(
かどもり
)
に秘書官相沢が
室
(
へや
)
の番号を問いて、久しく踏み慣れぬ大理石の
階
(
きざはし
)
を登り、中央の柱に「プリュッシュ」を
被
(
おお
)
える「ゾファ」を
据
(
す
)
えつけ、正面には鏡を立てたる前房に入りぬ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その場所は小さな白い斑点だけに
被
(
おお
)
われていて、その斑点が何であるのか判断を下すことはできなかった。そこで、一本の脚でその場所にさわろうとしたが、すぐに脚を引っこめた。
変身
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
まるで引ッ
掻
(
か
)
いたように毛が
生
(
は
)
えているという心持だけを肉の上へ持って行って現わすのであるが、西洋の絵は、毛は毛で、皮膚の上へムックリとして
被
(
おお
)
いかぶさり、長い処、短い処
幕末維新懐古談:35 実物写生ということのはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
かれは
白衣
(
はくい
)
をつけた美女で、
袂
(
たもと
)
をもって口を
被
(
おお
)
いながら泣き叫んでいるのである。
中国怪奇小説集:06 宣室志(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その奥底を彼女は見まいとして、取り除くことを許さない
被
(
おお
)
いを上に投げかけた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は前にも申あげる通りに、自分が何時でも負けてはその度びに一皮づゝ自分の上に
被
(
かぶ
)
せて行きました。此度こそはこの
被
(
おお
)
ひを一思ひにと思ひますがその度びに反対にかぶつて行きました。
遺書の一部より
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
もとは兵営だったその建物も今は占領軍の宿舎になっているとかで、ぬり替えられた白い壁にくっきりと窓々のブルーの
被
(
おお
)
いが、晴れた夏空に、いかにも暑さを静めるかのように並んでいる。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
姉は皆の顔を見ると、「あれも子供達に食べさせたいばっかしに、自分は弁当を持って行かず、雑炊食堂を歩いて
昼餉
(
ひるげ
)
をすませていたのです」と泣いた。義兄は次の間に白布で
被
(
おお
)
われていた。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
冬など蒼白いほど白い顔の色が一層さびしく沈んで、いつも
銀杏
(
いちょう
)
がえしに結った房々とした鬢の毛が細おもての
両頬
(
りょうほお
)
をおおうて、長く取った
髱
(
たぼ
)
が
鶴
(
つる
)
のような
頸筋
(
くびすじ
)
から
半襟
(
はんえり
)
に
被
(
おお
)
いかぶさっていた。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
詩と恋の情熱とはその婦人の純潔なる美の面前に紅葉する顔を
被
(
おお
)
ふてしまふ。青年は自己の自然の声を黙殺して方正な態度をとる。彼女もまたいつもキチヨウメンで、理性的で、品行方正である。
婦人解放の悲劇
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
セエラはしばらくの間、小さい黒髪の頭を、赤いショオルで
被
(
おお
)
われたアアミンガアドの肩にじっと乗せていました。アアミンガアドが、身を引こうとすると、セエラはひどく寂しい気がしました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
いっそ
宅
(
うち
)
へ帰って、
旧
(
もと
)
の屋敷へ奉公した方が気楽だなぞと考えることもあった。その時分から、お作はよく鏡に向った。
四下
(
あたり
)
に人の影が見えぬと、そっと鏡の
被
(
おお
)
いを取って、自分の姿を映して見た。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ただ一つ言って置きたいのは、ここではその静寂が死相を
被
(
おお
)
った静寂ではないということである。殉死をすぐ前に置いて、長十郎と共に午睡しているのでもない。その静寂はいつでも目を覚している。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
佃は、伸子を自分の心で
被
(
おお
)
いかぶせるように云った。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
花田と青島、黒布に
被
(
おお
)
われたる寝棺をかつぎこむ。
ドモ又の死
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しかも何事であろう? 七、八人の足軽が白布で
被
(
おお
)
った板の上へ一人の武士を仰向けに寝せて、静々と運んで通るのであった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雪の降る時は好んで
棕櫚
(
しゅろ
)
で編んだ、まるで
兜
(
かぶと
)
のような笠を
被
(
かぶ
)
ります。深い形で頭のみならず
襟
(
えり
)
まで
総々
(
ふさふさ
)
した棕櫚毛で
被
(
おお
)
うように作られてあります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ここいらにはざらにある
脆
(
もろ
)
い焼石、——顔も鼻のあたりが欠け、
天衣
(
てんね
)
などもすっかり磨滅し、そのうえ苔がほとんど半身を
被
(
おお
)
ってしまっているのだ。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
来年、この
北国
(
ほっこく
)
の山や野が若々しい緑で
被
(
おお
)
われて、早咲の山桜の花が散って、遠野に白い
烟
(
けむり
)
が
棚曳
(
たなびい
)
て、桃の花が咲く時分にならなければ帰って来ない。
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
午前は雪に
被
(
おお
)
われ陽に輝いた姿が丹沢山の上に見えていた。夕方になって陽がかなたへ傾くと、富士も丹沢山も一様の影絵を、
茜
(
あかね
)
の空に写すのであった。
路上
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
被
常用漢字
中学
部首:⾐
10画
“被”を含む語句
被仰
頬被
引被
被衣
被布
上被
被居
法被
被入
被物
頭被
被来
被下
蔽被
面被
外被
押被
被遊
打被
被存候
...