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衣
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きぬ
ふりがな文庫
“
衣
(
きぬ
)” の例文
然し一時間前の
倦怠
(
けんたい
)
ではもうありませんでした。私はその
衣
(
きぬ
)
ずれのようなまた小人国の汽車のような可愛いリズムに聴き入りました。
橡の花
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
はらはらとその壇の
許
(
もと
)
に、振袖、詰袖、揃って手をつく。階子の上より、まず水色の
衣
(
きぬ
)
の
褄
(
つま
)
、
裳
(
もすそ
)
を引く。すぐに
蓑
(
みの
)
を
被
(
かつ
)
ぎたる姿見ゆ。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かしこに
謙遜
(
へりくだ
)
れる聖歌の作者
衣
(
きぬ
)
ひき
褰
(
かゝ
)
げて亂れ舞ひつゝ
恩惠
(
めぐみ
)
の
器
(
うつは
)
にさきだちゐたり、この時彼は
王者
(
わうじや
)
に餘りて足らざりき 六四—六六
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
さやかな
衣
(
きぬ
)
ずれの音と共に、豊熟な女の匂いが部屋いッぱいにひろがって、さし俯向いている金吾の胸にも悩ましそうでありました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうしてとうとうしまいには、その女のそうしているときの息づかいや、やさしい
衣
(
きぬ
)
ずれの音までがまざまざと
蘇
(
よみがえ
)
るようになり出した。
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
こちらへさやさやとつつましやかに
衣
(
きぬ
)
ずれの音を立てながら、大役に
脅
(
おび
)
えおののいているのに違いない菊路が導かれて来た
気配
(
けはい
)
でした。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
文麻呂 そうか……若竹がすくすくと成長して行く音だったんだな? ひそやかな生成の儀式のかすかな
衣
(
きぬ
)
ずれの音だったんだな?
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
忽
(
たちま
)
ち恐ろしく
嵩高
(
かさだか
)
な、色彩のゆたかなものを肩にかけながら物々しい
衣
(
きぬ
)
ずれの音をひゞかして出て来たのに、又驚きを新たにした。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
したがって第三に、わたしはいさぎよく自首なさいと、真正面から歯を
衣
(
きぬ
)
きせずおすすめしようと思って、ここまでやって来たのです。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
たちまちに黒い
衣
(
きぬ
)
をきた者三人、いずれも身のたけ八尺ぐらいで、大きい口をあいて向かって来たので、猟師はその場に
仆
(
たお
)
れてしまった。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
衣
(
きぬ
)
を商う家、革をひさぐ家、魚をならべる店、わけて
薄男
(
すすきお
)
がよく訪れた
香
(
こう
)
さばく家、それらの店にすわる男らの顔にみな見覚えがあった。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
一人は
舳
(
へさき
)
に
櫂
(
かい
)
をあやつる少女、一人は
艫
(
とも
)
にギタを抱く少年、少女は全身に純白の羽毛の
衣
(
きぬ
)
を纒い、少年は真紅の羽毛の衣に包まれている。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
部屋のなかでは、忠相が
威儀
(
いぎ
)
をただして、小高い膝頭をそろえたまま庭のほうへ向けたらしい。すわりなおす
衣
(
きぬ
)
ずれの音がして、やがて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
公子二人は美服しているのに、温は独り汚れ
垢
(
あか
)
ついた
衣
(
きぬ
)
を着ていて、
兎角
(
とかく
)
公子等に
頤使
(
いし
)
せられるので、妓等は初め
僮僕
(
どうぼく
)
ではないかと思った。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
殺された内儀の妹、——お清には叔母に當る筈のお山は、姉が死ぬともう、齒に
衣
(
きぬ
)
を着せずに斯んな事をツケ/\言ふのです。
銭形平次捕物控:296 旅に病む女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
女は、白地にうす紫の模様のある
衣
(
きぬ
)
を着て、
市女笠
(
いちめがさ
)
に
被衣
(
かずき
)
をかけているが、声と言い、物ごしと言い、紛れもない
沙金
(
しゃきん
)
である。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今度は歯に
衣
(
きぬ
)
着せず言ってやる決心の大谷夫人は機会を待つこと数日にして、丸尾夫人の履物を橋本さんの玄関先に見つけた。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
厚き
蓐
(
しとね
)
の積れる雪と真白き上に、
乱畳
(
みだれたた
)
める
幾重
(
いくへ
)
の
衣
(
きぬ
)
の
彩
(
いろどり
)
を争ひつつ、
妖
(
あで
)
なる姿を
意
(
こころ
)
も
介
(
お
)
かず
横
(
よこた
)
はれるを、窓の日の
帷
(
カアテン
)
を
透
(
とほ
)
して
隠々
(
ほのぼの
)
照したる
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
顔の茜も、まばゆげなる、
背後
(
うしろ
)
の方に、さらさらと、思ひ掛なき
衣
(
きぬ
)
の音『たいそう御しんみりでございますねえ』と、鹿子のつつと入来るに。
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
夫人は今宵空色の
衣
(
きぬ
)
を着たるが、いと善く似合ひたり。我等は若し此人をして少し痩せしめば、第一流の美人たるべきものをとさゝやきたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
二三分も経たない
裡
(
うち
)
に、
衣
(
きぬ
)
ずれの音が、廊下にしたかと思うと、瑠璃子は少女のようにいそいそと快活に、
馳
(
か
)
け込んで来た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それらの人びとは少しの音もさせずに自分たちの席につきましたが、その動いている時、
鋪石
(
しきいし
)
の上に靴の音もなければ
衣
(
きぬ
)
ずれの音もないのです。
世界怪談名作集:11 聖餐祭
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
彼女は白い
衣
(
きぬ
)
の上に
鞣
(
なめ
)
された仔鹿の皮帯を金の釦金でしめていた、
衣
(
きぬ
)
はひろがって暖かい風が胸を吹くのにまかせていた。
精
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
衣
(
きぬ
)
の白地の紅に染む事無理ならず、美登利の眼の中に男といふ者さつても怕からず恐ろしからず、女郎といふ者さのみ賤しき勤めとも思はねば
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
路
(
みち
)
に迷いて
御堂
(
みどう
)
にしばし
憩
(
いこ
)
わんと入れば、銀に
鏤
(
ちり
)
ばむ祭壇の前に、空色の
衣
(
きぬ
)
を肩より流して、
黄金
(
こがね
)
の髪に雲を起せるは
誰
(
た
)
ぞ
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
深山ニ入テ仙法ヲ学ビ松ノ葉ヲ食シカツ
薜茘
(
へいれい
)
ヲ服セリ、一旦
空
(
くう
)
ニ
騰
(
のぼ
)
ツテ
故里
(
ふるさと
)
ヲ飛過グルトテ、タマタマ婦人ノ足ヲ以テ
衣
(
きぬ
)
ヲ踏洗フヲ見タリシニ
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
所が、その時
衣
(
きぬ
)
摺れのような音が——たしか天井の、それも簀子の方へ行く、階段の口あたりでしたと思われたのです。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
崩れた土塀に沿うて歩いて行くと、
天平人
(
てんぴょうびと
)
たちの亡霊がふいに現われて来そうに思う。彼らの衣の香り、
衣
(
きぬ
)
ずれの音までがふと聞えてくるようだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
倉地の胸から触れ慣れた
衣
(
きぬ
)
ざわりと、強烈な膚のにおいとが、葉子の病的に
嵩
(
こう
)
じた感覚を乱酔さすほどに伝わって来た。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その光で見ると、白麻の
衣
(
きぬ
)
に
黒絽
(
くろろ
)
の
腰法衣
(
こしごろも
)
。年の頃四十一二の
比丘尼
(
びくに
)
一人。肉ゆたかに
艶々
(
つやつや
)
しい顔の色。それが眼の光を
険
(
けわ
)
しくしているのであった。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
ふらふらと歩く姿は、夢遊病患者のようで、やさしい肩から垂れた
懸
(
か
)
け
衣
(
きぬ
)
が、空の光で透き通るほど白く見えました。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
襖
(
ふすま
)
手荒らに開かれて現はれたる一丈天、其の
衣
(
きぬ
)
の身に合はず見ゆるは、
大洞
(
おほほら
)
のをや仮り着せるならん、既に
稍々
(
やゝ
)
酒気を帯びたる
面
(
かほ
)
を
燈火
(
ともしび
)
に照らしつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
西洋人でも今少しは歯に
衣
(
きぬ
)
をかけた言い方をするであろう。日本人は一時心も形も全部西洋風となったのであった。
戦争史大観
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
ザビーネが店の入口に現われない前から、その
衣
(
きぬ
)
ずれの音を聞き分けた。彼女が出て来ると、彼は眼をそらして、いっそう元気な声で母に話しかけた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その後奥山に山姥が
久良支
(
くらき
)
山から出て来て、このかたわらに住んで神様の
衣
(
きぬ
)
を織り、それを献納していったから、この名になったのだというそうです。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その
衣
(
きぬ
)
ざはりのかすかな響とを、傍に聞くことが出來たから、不安は、羞恥と
淡
(
あは
)
い恐れとになつて、彼女は、
上氣
(
じやうき
)
したやうに、頬を赤くそめてうつむいた。
幸福への道
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
全然事実とは違うその卑俗な偏見によって昏倒する迄彼を殴りつけた周囲の人々の独善的な小市民気質に対する歯に
衣
(
きぬ
)
きせぬ反撥が語られているのである。
マクシム・ゴーリキイの伝記:幼年時代・少年時代・青年時代
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
闇
(
あん
)
に知ッていたので、いわゆる虫が知ッていたので,——その
飄
(
ひるが
)
えるふりの
袂
(
たもと
)
、その
蹴返
(
けかえ
)
す
衣
(
きぬ
)
の
褄
(
つま
)
、そのたおやかな姿、その美しい貌、そのやさしい声が
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
右のコブナグサであれば、歌の「わがやどに生ふる」にも都合がよく、また「
衣
(
きぬ
)
にすらゆな」にも都合がよい。
植物一日一題
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
このごろあたしの書いた小説の揷繪にも、肩から
衣
(
きぬ
)
のぬげおちようとしてゐるところ——これは湯上りといへないが——
濛々
(
もう/\
)
たる湯氣の中に立つた姿もある。
春
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
世に栄え富める人々は初霜月の
更衣
(
うつりかえ
)
も何の
苦慮
(
くるしみ
)
なく、
紬
(
つむぎ
)
に糸織に
自己
(
おの
)
が好き好きの
衣
(
きぬ
)
着て寒さに向う貧者の心配も知らず、やれ炉開きじゃ、やれ口切りじゃ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
車は
滑
(
なめらか
)
に、音も立てず、道路の人を左右によけつつすべるやうに走る。愛子が身じろぐごとにさやさやと
衣
(
きぬ
)
ずれがして、香料の薫りが快く俺の官能をそそる。
畜生道
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
この深い暗さは、
何時
(
いつ
)
までも長続きするものではないが、燈火を消した部屋の中は、あらゆる旅行者の、旅のなごりが、
衣
(
きぬ
)
ずれのやうに闇の中に動いてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
かれ
匍匐
(
はひ
)
進起
(
しじま
)
ひて、庭中に跪ける時に、
水潦
(
にはたづみ
)
二五
腰に至りき。その臣、
紅
(
あか
)
き
紐
(
ひも
)
著けたる
青摺
(
あをずり
)
の
衣
(
きぬ
)
二六
を
服
(
き
)
たりければ、水潦紅き紐に觸りて、青みな
紅
(
あけ
)
になりぬ。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
こんな考察にふけっているとき、彼はふと
衣
(
きぬ
)
ずれの音を聞いた。ふりかえって見ると、それはベアトリーチェが、彫刻した入り口の下から現われ出たのであった。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
雪之丞の胸は、暗くなり、気弱ささえ出て来たが、そのとき、廊下で、足音がして、
衣
(
きぬ
)
ずれが近づいた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
しかしいわゆる歯に
衣
(
きぬ
)
を着せず、体裁を飾るための嘘をつかず見たままの有様を率直に、明白に表現せんとするに当たっては、私のような不調法者はなんとしても
現代茶人批判
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
来る夜も来る夜も彼女は書棚の中から、
壁炉
(
カミン
)
の中から、部屋の片隅から、じっと彼を見つめていて、彼にはその息づかいや、優しい
衣
(
きぬ
)
ずれの音が聞こえるのだった。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
立派な県庁、陰気な師範学校、石割桜で名高い裁判所の前を過ぎて、四辻へ出る。と、雪白の
衣
(
きぬ
)
を着た一巨人が、地の底から抜け出でた様にヌツと立つて居る。——
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
女は年のころ十七、八で
翠袖
(
すいしゅう
)
紅裙
(
こうくん
)
の
衣
(
きぬ
)
を着て、いかにも
柔婉
(
しなやか
)
な姿で、西をさして
徐
(
しず
)
かに過ぎ去った。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
瞿佑
(著)
“衣”の意味
《名詞: ja》
(ころも)
(出典:Wiktionary)
“衣”の解説
料理において衣(ころも)とは揚げ物や和え物などで食材の周りに付けるものである。
(出典:Wikipedia)
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
“衣”を含む語句
衣服
上衣
衣裳
襯衣
白衣
胴衣
寛衣
被衣
衣類
御衣
法衣
白襯衣
単衣
浴衣
衣嚢
更衣
衣装
短衣
胸衣
寝衣
...