ゆは)” の例文
伯父をぢさんはもうこまつてしまつて、とうさんのめておび手拭てぬぐひゆはひつけ、その手拭てぬぐひとうさんをいてくやうにしてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それから、糸巻の糸をほどいて、その端を枯草の根へゆはひつけました。さうして、糸をひきのばしながら、洞の中へ入らうといふのです。
時男さんのこと (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
かさ/\とかわいて、うづつて、ごと眞中まんなかあなのあいた、こゝを一寸ちよつとたばにしてゆはへてある……瓦煎餅かはらせんべいけたやうなものである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
嚴重にゆはへたやうでも、引窓の綱にはかなりのゆるみがあり、上からコジられる毎に、隙間は少しづつ大きくなつて行きました。
前は右足だったが、今度は左脚にゆはひつけられて、それに紐の色が赤いんだ。けれどもたゞひとついゝことは、みんな大抵寝てしまったんだ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
母の手から貰つて横に糸でゆはへ附けてある鍵で箱の中をあけやうとするのであつたが、金具は通つて来た海路かいろの風の塩分で腐蝕して鍵が何方どつちへも廻らない。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
太鼓や三味の音色ばかり聞きなれてゐた彼女の耳には、人間以外の声がひどく恐しいもののやうに、神経をおびやかした。高い垣根をゆはへた農家がしばらく続いた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかしバーンズは、直ぐに教室を出て、本をしまつてある小さい奧の室に入ると、一方の端がゆはへつけてある一たばの小枝を持つて半分もたないうちに戻つて來た。
のみならず、途中で氣がついたのであるが、下り坂になると左の後足を石にぶつつけるのでどうしたのかと思つたら、その足だけに大きな草鞋がゆはひつけてあつた。
湖水めぐり (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
欣之介のゐる離家はなれの横手にある灰汁柴あくしばの枝々の先端さきへ小さな粒々の白い花が咲き出した頃の或る日暮方、革紐かはひもで堅くゆはへた白いズックのかばんが一つ、その灰汁柴の藪蔭やぶかげに置いてあつた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
「大丈夫か、腰の所を何かでゆはへようか」
木枯紀行 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
死裝束しにしやうぞくの晴着に換へて、白布で膝をゆはへ、香まで焚いて、何處から持出したか、女持の懷劍、左乳の下を一とゑぐり、武士も及ばぬ見事な最期だつたのです。
……ようけむりけなんだ、白雪しらゆきでてふつくりした、それは、それは、綺麗きれいはだめて、うす淺葱あさぎひもゆはへた、したする/\すべるやうな長襦袢ながじゆばん
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それを部屋の真中にひつくりかへして、早速舟を漕ぐ真似を始めた。麻の夏蒲団は蓆筵ござの代りに成つた。小さな畳の上の船頭は団扇掛うちはかけに長い尺度ものさしゆはひ着けて、それでの形を造つた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私は彼女に一シルリング遣つた。彼女はそれをポケットから取り出した古い靴下の底に入れた。そしてそれをくる/\捲いてゆはへると、手を差し出すようにと云つた。私はその通りにした。
と、眞中まんなかゆはへたつゝみせる、とたびつて顏色かほいろかはよわいのを、やつこ附目つけめ
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「赤い紐で首をゆはへた徳利は、お父さんの召し上がるお酒でした、——私は變な氣がして、誰も見てゐない時、その赤い紐を解いて、別の徳利の首を結へてしまつたんです、——それだけです」
父親ちゝおや佛壇ぶつだん御明みあかしてんずるに、母親はゝおやは、財布さいふひもゆはへながら、けてこれ懷中ふところれさせる、女中ぢよちうがシヨオルをきせかける、となり女房にようばうが、いそいで腕車くるま仕立したてく、とかうするうち
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「こんなに物をゆはへるのは誰だらう、八」
また万金丹まんきんたん下廻したまはりには、御存ごぞんじのとほり、千筋せんすぢ単衣ひとへ小倉こくらおび当節たうせつ時計とけいはさんでます、脚絆きやはん股引もゝひきこれ勿論もちろん草鞋わらぢがけ、千草木綿ちくさもめん風呂敷包ふろしきづゝみかどばつたのをくびゆはへて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この水草みづくさはまたとしひさしく、ふねそこふなばたからいて、あたかいはほ苔蒸こけむしたかのやう、與吉よきちいへをしつかりとゆはへてはなしさうにもしないが、大川おほかはからしほがさしてれば、きししげつたやなぎえだみづくゞ
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すそみぢかでそでひぢよりすくない、糊気のりけのある、ちやん/\をて、むねのあたりでひもゆはへたが、一ツのものをたやうにばらふとじゝ太鼓たいこつたくらゐに、すべ/\とふくれてしか出臍でべそといふやつ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)