湖水めぐりこすいめぐり
大正八年八月四日。 青楓君と大月に下りたのは午前九時三十三分だつた。停車場の前に並んでゐる小さい低い赤と青で塗つた平たい馬車と宿屋の前に吊してある無數の雜色の手拭みたいな講中のビラがまづ目についた。次の汽車で來る二人の同行者を待つために、私 …