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紙鳶
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たこ
ふりがな文庫
“
紙鳶
(
たこ
)” の例文
「ここにいるのはおかみさんの子供かえ、おとなしそうな児だ。小父さんが御歳暮に
紙鳶
(
たこ
)
を買ってやろうじゃねえか。ここへ来ねえ」
半七捕物帳:17 三河万歳
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
壁燈を
点
(
つ
)
けに行った刑事の一人が、何気なく窓の外を見ると、中空に浮んだ一枚の
紙鳶
(
たこ
)
が、暗夜の帆船のようにスウッと近づいて来る。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼等は
紙鳶
(
たこ
)
をあげ、
独楽
(
こま
)
を廻し、泥で菓子をつくり、小さな
襤褸
(
ぼろ
)
の人形をつくる。襤褸人形には、実に妙な格好をしたのがある。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
するとその男はちょっと首をかしげて見ましたが、まるで
紙鳶
(
たこ
)
の片尾がとれて木へ傾きかゝるように二人の方へ肩を先に寄せて来ました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
使いよい品なので、この町の特産として名を広めたのは当然であるといえましょう。紙を用いたものとしては
紙鳶
(
たこ
)
があります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
▼ もっと見る
なんだか
紙鳶
(
たこ
)
が木の枝へ引っかかっていながら、途中で揚がってるような気がしていけませんからと言った。重吉のことは自分も同感であった。
手紙
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蜻蛉
(
とんぼ
)
釣りに蜻蛉の
行衛
(
ゆくえ
)
をもとめたり、
紙鳶
(
たこ
)
上げに紙鳶のありかを探したりする
煩
(
わずらわ
)
しさに兄は耐えられなくなってしまった。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
すると、空には
紙鳶
(
たこ
)
がどっさり上がっていて、ぶんぶんうなったり、ぱたぱた音を立てたりしていました。ちょうど
紙鳶
(
たこ
)
の時節なものですから。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
第三図は童児二人
紙鳶
(
たこ
)
を上げつつ走り行く狭き橋の上より、船の
檣
(
ほばしら
)
茅葺
(
かやぶき
)
屋根の間に見ゆる佃島の眺望にして、
彼方
(
かなた
)
に
横
(
よこた
)
はる
永代橋
(
えいたいばし
)
には
人通
(
ひとどおり
)
賑
(
にぎや
)
かに
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
茶山は江戸に著いて、微恙のために阿部家の小川町の上屋敷に困臥し、
紙鳶
(
たこ
)
の上がるのを眺めてゐた。茶山の集に「江戸邸舎臥病」の二絶がある。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
毎日々々
(
まいにち/\
)
面白
(
おもしろ
)
く
可笑
(
をかし
)
く
遊
(
あそ
)
んで
居
(
を
)
る
内
(
うち
)
、
或
(
ある
)
日
(
ひ
)
の
事
(
こと
)
其
(
その
)
老爺
(
をやぢさん
)
が
作
(
こしら
)
へて
呉
(
く
)
れた
菱形
(
ひしがた
)
の
紙鳶
(
たこ
)
を
甲板
(
かんぱん
)
に
飛
(
と
)
ばさんとて、
頻
(
しきり
)
に
騷
(
さは
)
いで
居
(
を
)
つたが、
丁度
(
ちやうど
)
其時
(
そのとき
)
船橋
(
せんけう
)
の
上
(
うへ
)
で
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「我が
影
(
かげ
)
の我を
追
(
おひ
)
けり
冬
(
ふゆ
)
の
月
(
つき
)
」と人之を
疑
(
うたが
)
ふ時は
柳
(
やなぎ
)
の
掛
(
かゝ
)
り
紙鳶
(
たこ
)
も
幽靈
(
いうれい
)
かと
思
(
おもひ
)
石地藏
(
いしぢざう
)
も
追剥
(
おひはぎ
)
かと
驚
(
おどろ
)
くが
如
(
ごと
)
し然ば大橋文右衞門の女房お政は
夫
(
をつと
)
の身の上を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
あたかもかの夢想兵衛が
飄飄然
(
ひょうひょうぜん
)
として
紙鳶
(
たこ
)
にまたがり、天外万里
無何有
(
むかう
)
の郷に漂着したるの想いをなすならん。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
或る日、その町長さんは大きな
紙鳶
(
たこ
)
と綱の球をもつて、嵐の最中に、田舎へゆきました。二百人あまりの人達がひどく面白がつて町長さんについて行つた。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
何をさせても器用であって、彼の作った
紙鳶
(
たこ
)
は風の弱い時でも実によく揚りそうして強風にも安定であった。
重兵衛さんの一家
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鳩は一遍グルリと空に環を描き、今度はきゅうに南の方へ向って、糸の切れた
紙鳶
(
たこ
)
のように飛んで行った。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
ブラ下げた長い長い二本の
縄
(
なわ
)
の
脚
(
あし
)
を
軟
(
やわ
)
らかに空中に波うたして、
紙鳶
(
たこ
)
は
心
(
こころ
)
長閑
(
のどか
)
に
虚空
(
こくう
)
の海に
立泳
(
たちおよ
)
ぎをして居る。ブーンと云うウナリが、武蔵野一ぱいに響き渡る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一時の害の為めに敵となるものは、又た一時の利の為めに味方となるを易しとす。西風には東に飛び、東風には西に
揚
(
あ
)
がるは
紙鳶
(
たこ
)
なり、人の心も大方は斯くの如し。
哀詞序
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
また春が来ますと、大空にはいつの間にか
紙鳶
(
たこ
)
の揚がっているのが目につき同時に今まで
打棄
(
うっちゃ
)
ってあった野良の田畑にぽつぽつと百姓の姿を認めるようになります。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
外の方をさし
覘
(
のぞ
)
けば、大空は澄める瑠璃色の外、一片の雲も見えず、小児の
紙鳶
(
たこ
)
は可なり
飛颺
(
ひよう
)
して見ゆれども、庭の松竹椿などの梢は、眠れるかの如くに、
些
(
すこ
)
しも揺がず。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
幾度か塗り上げたような深い色の秩父連山が、劃然と画き出されたのをふと心付いて眺めた時には、未だ十一、二の少年であった自分も、
紙鳶
(
たこ
)
の糸を巻くことさえ忘れて
秩父の奥山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
風が、その
内部
(
なか
)
へ吹き込んだため、紙帳が一方へ傾き、ワングリと口を開けたのである。忽然、紙帳は、一間ほど舞い上がった。もうそれは蜘蛛ではなく、
紙鳶
(
たこ
)
であった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
辰刻
(
いつゝ
)
(八時)過ぎになると、江戸の下町ではもう、羽子の遠音も、
紙鳶
(
たこ
)
の唸りも聞えます。
銭形平次捕物控:248 屠蘇の杯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
路傍の
一里塚
(
いちりづか
)
も後になりて、年
経
(
ふ
)
りし松が枝も此方を見送り、柳の糸は旅衣を
牽
(
ひ
)
き、梅の花は裳に散り、
鶯
(
うぐいす
)
の声も後より慕えり、若菜摘める少女ら、
紙鳶
(
たこ
)
あげて遊べる童子ら
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
いつの
年
(
とし
)
でしたか
私
(
わたくし
)
の乗りました
車夫
(
くるまや
)
が
足元
(
あしもと
)
へ
搦
(
から
)
み
着
(
つ
)
へた
紙鳶
(
たこ
)
の
糸目
(
いとめ
)
を
丁寧
(
ていねい
)
に直して
遣
(
や
)
りましたから、お
前
(
まい
)
は
子持
(
こもち
)
だねと申しましたら
総領
(
そうりよう
)
が
七
(
なゝ
)
つで男の子が
二人
(
ふたり
)
あると申しました
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
◯子供は一円五十銭にて買い来りし
紙鳶
(
たこ
)
をあげてよろこびしが、遂に自作を始めたり。
海野十三敗戦日記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「お父さんが
長岡
(
ながをか
)
から、こんなでかい
紙鳶
(
たこ
)
を、買つて来てくれたから見に来なよ。」
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
蓮太郎は
其様
(
そん
)
なことゝも知らないで、さも/\
甘
(
うま
)
さうに乾いた
咽喉
(
のど
)
を
濡
(
うるほ
)
して、さて
種々
(
さま/″\
)
な
談話
(
はなし
)
に笑ひ興じた。
就中
(
わけても
)
、丑松がまだ
紙鳶
(
たこ
)
を揚げたり
独楽
(
こま
)
を廻したりして遊んだ頃の物語に。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
蟻を
列
(
なら
)
べた並木の筋に……蛙のごとき
青田
(
あおた
)
の上に……かなたこなた同じ雲の峰四つ五つ、近いのは城の
櫓
(
やぐら
)
、遠きは
狼煙
(
のろし
)
の
余波
(
なごり
)
に似て、ここにある身は
紙鳶
(
たこ
)
に乗って、雲の
桟
(
かけはし
)
渡る心地す。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
障子の破れが
紙鳶
(
たこ
)
の
呻
(
うな
)
りのように鳴って、膝の上のビラがかすかにあおられる。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
而れども是れが青年田口の作なりしことを思ひ、吾人が猶田舎に於て
紙鳶
(
たこ
)
を飛ばし、
独楽
(
こま
)
を
翫
(
もてあそ
)
びつゝありし時に於て作られし著述なることを思へば非難の情は愛翫の情に打勝れざるを得ず。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
「いか」は「いかのぼり」の略、
紙鳶
(
たこ
)
のことである。花の散った梢に紙鳶の尾の引かかっているのを発見した。多分花の咲く前からのものであろうが、花が散ってから今更のように目につく。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
紙鳶
(
たこ
)
が樹の枝に掛かり、風のために動かされていたことが知れたそうだ。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
明朝
(
あした
)
は
麗
(
うらら
)
かな、いい天気であった。空には
紙鳶
(
たこ
)
のうなりなどが聞かれた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お前はもうあの
紙鳶
(
たこ
)
を覚えて居る
わが児に
(新字新仮名)
/
加藤一夫
(著)
どこかで
紙鳶
(
たこ
)
のうなりがする
風は草木にささやいた:01 風は草木にささやいた
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
糸切れし
紙鳶
(
たこ
)
のごとくに
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私の少年時代の玩具といえば、春は
紙鳶
(
たこ
)
、これにも
菅糸
(
すがいと
)
で
揚
(
あ
)
げる
奴凧
(
やっこたこ
)
がありましたが、今は
廃
(
すた
)
れました。それから獅子、それから
黄螺
(
ばい
)
。
我楽多玩具
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この季節(一月)、東京中の人が皆
紙鳶
(
たこ
)
を持っている。そして風の具合がいいので、空は大きさ、形、色の異る紙鳶で、文字通り充満している。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
『おい、イリューシャ、おれたちもひとつ去年の
紙鳶
(
たこ
)
を上げようじゃないか。お父さんが繕ってやるよ。いったい、おまえ、どこにしまったんだえ?』
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
百鬼夜行
(
ひゃっきやこう
)
の図と
鳥羽絵
(
とばえ
)
の動物漫画とは、さまざまなる
寓意
(
ぐうい
)
の下に
描直
(
かきなお
)
され、また当時物価の高低は
富土講
(
ふじこう
)
の登山あるひは
紙鳶
(
たこ
)
の上下によりて巧に
描示
(
えがきしめ
)
されたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おもしろいことは、土佐で自分の子供の時代に、
紙鳶
(
たこ
)
の競揚をやる際に、敵の紙鳶糸を切る目的で、自分の糸の途中に木の枝へ剃刀の刃をつけたものを取り付ける。
言葉の不思議
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それから兇器は、裏門側の会堂から二十
米
(
メートル
)
程離れた所で、落ちていた
紙鳶
(
たこ
)
を突き破っていたのです。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
羽子板店に
紙鳶
(
たこ
)
店はもちろん、神棚の祭具を売る店、餅網、藁のお飯
櫃
(
ひつ
)
容れを売る店、
屠蘇
(
とそ
)
の銚子や箸袋を売る店、こういう正月向きの売店が
賑々
(
にぎにぎ
)
しく普通の売店に混り
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
左に曳いた尾根は二九四〇米の小凸起を
擡
(
もた
)
げた後、恐らく白峰山脈の二七一七米とある峰(笹山)と、すれすれに
紙鳶
(
たこ
)
の糸のような雪の線を残して、近い小仏峠の城山の真上迄来ると
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
紙鳶
(
たこ
)
すら自由に飛ばされず、
毬
(
まり
)
さえ思う様にはつけず、電車、自動車、馬車、人力車、自転車、
荷車
(
にぐるま
)
、馬と
怪俄
(
けが
)
させ器械の引切りなしにやって来る東京の町内に
育
(
そだ
)
つ子供は、本当に
惨
(
みじめ
)
なものだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
紙鳶
(
たこ
)
が木の枝に引っかかって中途から揚がっているようなありさまでおしてゆかれては間へはいった自分たちの責任としても、しまいには放っておかれなくなるのは明らかだから、今度の旅行を幸い
手紙
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
糸目の切れた
紙鳶
(
たこ
)
のように飛出すガラッ八。それを見送って
銭形平次捕物控:087 敵討果てて
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それはかの
柿
(
かき
)
の
木金助
(
ききんすけ
)
が
紙鳶
(
たこ
)
に乗って、名古屋の城の金の
鯱鉾
(
しゃちほこ
)
を盗むという事実を仕組んだもので、鬼太郎君は序幕と三幕目を書いた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
子供の時分に燈火をつけた
紙鳶
(
たこ
)
を夜の空に上げて田舎の村人を驚かし、一八九七年には箱形の紙鳶を上げ、糸を樹につないだまま一晩揚げ切りにしておいたこともあった。
レーリー卿(Lord Rayleigh)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“紙鳶(
凧
)”の解説
凧(たこ)とは、糸で牽引して揚力を起こし、空中に飛揚させる物。木や竹などの骨組みに紙、布、ビニールなどを張って、紐で反りや形を整えて作られる。世界各地にある。日本では正月の遊びとして知られ、古語あるいは地方名で紙鳶(しえん)、ハタ、いか(イカ)などとも言う。
(出典:Wikipedia)
紙
常用漢字
小2
部首:⽷
10画
鳶
漢検準1級
部首:⿃
14画
“紙鳶”で始まる語句
紙鳶絲
紙鳶堂
紙鳶糸