トップ
>
納
>
い
ふりがな文庫
“
納
(
い
)” の例文
だから私は、自分の家で四方の雨戸を開け放って、真っ暗な中に蚊帳を吊ってころがっているのが涼を
納
(
い
)
れる最上の法だと心得ている。
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかしながらとにかく君が何ものも
納
(
い
)
れ得ない心の中に、疲労という感じを覚えだして、これは困った事になったと思ったころだった
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
アクリシウスすなわち母子を木箱に
納
(
い
)
れ、海に投げたが、セリフス島に漂到して、漁師ジクッスの網に
罹
(
かか
)
り、救われ、
懇
(
ねんごろ
)
に養わる。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
宇宙間の万象を一切
讐敵
(
あだ
)
として、世にすねたる神仏の
継子等
(
ままッこら
)
、白米一斗の美禄を
納
(
い
)
れず、御使番を
取拉
(
とりひし
)
ぎて
表
(
あらわ
)
に開戦を布告せり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この時に當りて、その
御髮
(
みかみ
)
を
額
(
ぬか
)
に結はせり
六
。ここに
小碓
(
をうす
)
の命、その
姨
(
みをば
)
倭比賣
(
やまとひめ
)
の命
七
の
御衣
(
みそ
)
御裳
(
みも
)
を給はり、
劒
(
たち
)
を
御懷
(
ふところ
)
に
納
(
い
)
れていでましき。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
▼ もっと見る
史に記す。道衍
晩
(
ばん
)
に道余録を著し、
頗
(
すこぶ
)
る先儒を
毀
(
そし
)
る、識者これを
鄙
(
いや
)
しむ。
其
(
そ
)
の故郷の
長州
(
ちょうしゅう
)
に至るや、同産の姉を
候
(
こう
)
す、姉
納
(
い
)
れず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
大納言のつかさは「天下
喉舌
(
こうぜつ
)
ノ官」ともいわれる
局
(
きょく
)
である。聖旨を下達し、下の善言も
納
(
い
)
れる機関とあるのでそんな
称
(
となえ
)
もあったとみえる。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夏期に登山する人人は、涼を
納
(
い
)
れ暑を避ける目的の人もある。植物採集の人もある。地理の探険、気象の研究を志す人もある。
高きへ憧れる心
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
こうして、何事をも素直に受け
納
(
い
)
れやすい少年は、いつとは知れず父の思想に感化され、父のような考え方に
馴
(
な
)
れさせられているのだった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
その母の姉妹には
林有的
(
はやしゆうてき
)
の妻、
佐竹永海
(
さたけえいかい
)
の妻などがある。佐竹は初め山内氏五百を娶らんとして成らず、遂に矢川氏を
納
(
い
)
れた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
權「之れを寄せると又此方へ寄るだ、懐へこれを
納
(
い
)
れると格好が
宜
(
い
)
いと、お千代が云いましたが、何にも
入
(
へい
)
っては居ません」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
金属の鋏という字が書いてあるが、普通の挟箱、即ち箱に棒を添え、衣服などを
納
(
い
)
れて僕に担わせて行くものの意であろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
今になってそんな事を言うのは満の
贔負
(
ひいき
)
ばかりしてお代を見捨てるおつもりですか。東京の怪しい女を
納
(
い
)
れさせて満の嫁にするつもりですか。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
或る晩、家中、店先の涼み台で、
大河
(
おおかわ
)
から吹く風を
納
(
い
)
れて、種々無駄話をしていました折から、師匠東雲師は、私に向い
幕末維新懐古談:20 遊芸には縁のなかったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
何か探そうとして机の
抽斗
(
ひきだし
)
を開け、
中
(
うち
)
に
納
(
い
)
れてあッた年頃五十の上をゆく白髪たる老婦の写真にフト眼を
注
(
と
)
めて、我にもなく
熟々
(
つらつら
)
と
眺
(
なが
)
め入ッた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それは巴里のサン・ミッシェルの並木街あたりを
往来
(
ゆきき
)
する人達の
小脇
(
こわき
)
に
挾
(
はさ
)
まれるような、
書籍
(
ほん
)
や書類などを
納
(
い
)
れるための実用向の手鞄であった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
髪は霜に打たれし
蓬
(
よもぎ
)
の如く、衣は垢に
塗
(
まみ
)
れて臭気高し。われは爾時、晩食を喫了して戸外に出で、涼を
納
(
い
)
れて散策す。
客居偶録
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
なぜなら各人の感覚も理性も同一のものを同一に
受
(
う
)
け
納
(
い
)
れはしないから。Aにとって美であるものがBにとって醜であることは常にありうることだ。
意慾的創作文章の形式と方法
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
夕方になつて風外は風を
納
(
い
)
れようと思つて、団扇を片手に
木履
(
ぼくり
)
を穿いて使僧の休んでゐる室の前をぶらぶらしてゐた。
茶話:12 初出未詳
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
再び汽車に乗り、家に帰りしは、十時近にして、廊下に涼を
納
(
い
)
れ居たる家族は、其の思いがけ無き早帰りを訝りぬ。
大利根の大物釣
(新字新仮名)
/
石井研堂
(著)
「男子が鬼や狐をこわがってどうする、もしくれば僕には剣があるさ、それも女なら門を開けて
納
(
い
)
れてやるがね」
蓮香
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
二品は
賄賂
(
まいない
)
の品物でござる。ところで、世上にはこう云う噂がござる。人形と称して生きた美女を献上箱の中へ入れ、好色の顕門へ
納
(
い
)
れるという噂が。……
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
和歌の指導の礼に作者に拵えて呉れた中庭の池の噴水を眺める縁側で食後の涼を
納
(
い
)
れていたので、そこで取次ぎから詠草を受取って、池の水音を聴き
乍
(
なが
)
ら
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あはれ匹夫の身は物の數ならず、願ふは尊靈の冥護を以て、世を昔に引き返し、御一門を再び都に
納
(
い
)
れさせ給へ
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
何分にも残暑がひどいので、向島の
水神
(
すいじん
)
に出かけて
凉
(
りょう
)
を
納
(
い
)
れていると、池の中で何かしきりに跳ねている。
地震なまず
(新字新仮名)
/
武者金吉
(著)
年三十にして家に帰るや、
爾来
(
じらい
)
ここに十有余年、追歓索笑虚日あるなし。
妓
(
ぎ
)
を家に
納
(
い
)
るる事数次。自ら旗亭を営むこと両度。細君を追出してまた迎る事前後三人。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
明治二十年に小学の業を終え、直に府立の中学へ入校したのだが、この年に父は後妻として村山氏を家に
納
(
い
)
れた。鶴見はここに継母を持つことになったのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
一〇〇
親
(
した
)
しきを
議
(
はか
)
るべき
令
(
のり
)
にもたがひて、筆の跡だも
納
(
い
)
れ給はぬ
叡慮
(
みこころ
)
こそ、今は
旧
(
ひさ
)
しき
讐
(
あた
)
なるかな。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
当
(
まさ
)
に掖廷に
納
(
い
)
れて、后宮の数に
盈
(
ア
)
つべしと。天皇
聴
(
ゆる
)
す。……丹波の五女を
喚
(
メ
)
して、掖廷に納る。
水の女
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
旅行劵はベルナルドオに仔細を語りて、をぢなる
議官
(
セナトオレ
)
に求めさせしものに候、ベルナルドオは事のむづかしきを知りながら、我言を
納
(
い
)
れて、強ひてをぢ君を説き動しゝ趣に候。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
彼は古代の
希臘
(
ギリシャ
)
の風習を心のなかに思い出していた。死者を
納
(
い
)
れる
石棺
(
せっかん
)
のおもてへ、
淫
(
みだ
)
らな戯れをしている人の姿や、
牝羊
(
めひつじ
)
と交合している牧羊神を彫りつけたりした
希臘
(
ギリシャ
)
人の風習を。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
最高楼から先刻通つて来た大
椰子林
(
やしりん
)
を越えて市街、港内、対岸の島を眼下に収め、左右両翼を
披
(
ひら
)
いた山の
樹間
(
このま
)
に洋人のホテルや住宅の
隠見
(
いんけん
)
するのを眺め
乍
(
なが
)
ら、卓を囲んで涼を
納
(
い
)
れた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
その頃、帝は美女を求めていたので、王はかの少女を献上し、且つその子細を申し立てると、帝はそれを宮中に
納
(
い
)
れて
才人
(
さいじん
)
の列に加えた。それから三日の後に、京兆の役人が奏上した。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
窓を
明
(
あけ
)
っ
放
(
ぱな
)
して涼しい風を
納
(
い
)
れながら、先生から
戴
(
いただ
)
いて来た
漱石
(
そうせき
)
研究を
膝
(
ひざ
)
の上にひろげて、読むでもなく読まぬでもない気持で、時々眼をあげると、瀬戸内海だったりしたこともあった。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
大臣の未亡人の願いをお
納
(
い
)
れになり、故太政大臣の
女
(
じょ
)
は新尚侍に任命された。
源氏物語:46 竹河
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
あの画は寛政の頃の良家の娘さんの風俗で夏の宵広い庭に降り立って涼を
納
(
い
)
れて居ります時に「今夜は月蝕だわ……」とふと思い付いて最も見易いように鏡を持ち出して写し取っている所です。
寛政時代の娘納涼風俗
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
今の士相率きひて、媚を権門に
納
(
い
)
れ、
欵
(
かん
)
を要路に通ずるは、その求むるところ功名
聞達
(
ぶんたつ
)
よりも、むしろ先づ黄金を得んと欲するの心急なればなり。その境遇や憐れむべし。その志操や卑しむべし。
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
いまお
話
(
はなし
)
したような
石棺
(
せきかん
)
を
塚
(
つか
)
に
藏
(
をさ
)
めるときには、ぢかに
土
(
つち
)
の
中
(
なか
)
に
埋
(
うづ
)
めたものもありますが、たいていは
石棺
(
せきかん
)
の
周
(
まは
)
りに
當
(
あた
)
る
場所
(
ばしよ
)
に、まづ
石圍
(
いしかこ
)
ひをして、その
中
(
なか
)
に
石棺
(
せきかん
)
を
納
(
い
)
れ、
上
(
うへ
)
に
蓋
(
ふた
)
をしたのであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
納
(
い
)
れようというかたがあるなら、私はそのお仲間になります。
小フリイデマン氏
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
その蔵屋という方の
床几
(
しょうぎ
)
に、腰を懸けたのは島野紳士、ここに名物の吹上の水に対し、
上衣
(
コオト
)
を取って涼を
納
(
い
)
れながら、
硝子盃
(
コップ
)
を手にして
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
剖
(
さ
)
いて見ると
好
(
よ
)
き麦粒が満ちいる。長者大悦して倉に
納
(
い
)
れると
溢
(
あふ
)
れ出す。因って親族始め誰彼に分って合国一切恩沢を蒙った。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
同じ長屋に住むものが、あれでは体が続くまいと気づかって、酒を飲むことを勧めると、仲平は素直に聴き
納
(
い
)
れて、毎日一合ずつ酒を買った。
安井夫人
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
佛蘭西の旅に行く時、私は鞄の中に芭蕉全集を
納
(
い
)
れて持つて行つた。異郷の客舍にある間もよく取出して讀んで見た。
芭蕉
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
が、
輿入
(
こしい
)
れしてから一二箇月過ぎた或る夏のゆうぐれのこと、松雪院が腰元たちと縁先で涼を
納
(
い
)
れていると、そこへ河内介がふらりと這入って来て
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
勿論
(
もちろん
)
、真面目な談話と云ッたところで、金利公債の話、家屋敷の
売買
(
うりかい
)
の
噂
(
うわさ
)
、さもなくば、借家人が更らに
家賃
(
たなちん
)
を
納
(
い
)
れぬ苦情——皆つまらぬ事ばかり。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
孵化後の雛も一両日間は肛門の内に黄身を
納
(
い
)
れあるなり。これ雛が自由に食物を摂取し得るまでの
兵糧
(
ひょうろう
)
と知るべし。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
老人も
終
(
つい
)
には若い男の説を
納
(
い
)
れて解剖刀を捨て、二人とも
跪
(
ひざまず
)
いて少女の死屍に
祈祷
(
きとう
)
を捧げたという光景を叙して
新婦人協会の請願運動
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
出来上がれば是非御覧に入れます、その時
御意
(
ぎょい
)
に入ったら御取り置き下さい。とにかく、御約束を無にしたのは私が悪いのですと若井氏へ申し
納
(
い
)
れました。
幕末維新懐古談:58 矮鶏の製作に取り掛かったこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
多「そんなら此の戸袋の下へ
納
(
い
)
れて置きやす、犬が小便をかけると焚いて臭いから、戸を立掛けて置きやんす」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
和歌の指導の礼に作者に
拵
(
こしら
)
えてくれた中庭の池の噴水を眺める縁側で食後の涼を
納
(
い
)
れていたので、そこで取次ぎから詠草を受取って、池の水音を聴きながら
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
納
常用漢字
小6
部首:⽷
10画
“納”を含む語句
維納
結納
嘉納
受納
納所
納涼
出納
維也納
納受
納屋
納豆
見納
中納言
帰納的
納経
御結納
納物
取納
納戸
納得
...