)” の例文
だから私は、自分の家で四方の雨戸を開け放って、真っ暗な中に蚊帳を吊ってころがっているのが涼をれる最上の法だと心得ている。
陰翳礼讃 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかしながらとにかく君が何ものもれ得ない心の中に、疲労という感じを覚えだして、これは困った事になったと思ったころだった
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
アクリシウスすなわち母子を木箱にれ、海に投げたが、セリフス島に漂到して、漁師ジクッスの網にかかり、救われ、ねんごろに養わる。
宇宙間の万象を一切讐敵あだとして、世にすねたる神仏の継子等ままッこら、白米一斗の美禄をれず、御使番を取拉とりひしぎてあらわに開戦を布告せり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この時に當りて、その御髮みかみぬかに結はせり。ここに小碓をうすの命、そのみをば倭比賣やまとひめの命御衣みそ御裳みもを給はり、たち御懷ふところれていでましき。
史に記す。道衍ばんに道余録を著し、すこぶる先儒をそしる、識者これをいやしむ。の故郷の長州ちょうしゅうに至るや、同産の姉をこうす、姉れず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大納言のつかさは「天下喉舌こうぜつノ官」ともいわれるきょくである。聖旨を下達し、下の善言もれる機関とあるのでそんなとなえもあったとみえる。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏期に登山する人人は、涼をれ暑を避ける目的の人もある。植物採集の人もある。地理の探険、気象の研究を志す人もある。
高きへ憧れる心 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
こうして、何事をも素直に受けれやすい少年は、いつとは知れず父の思想に感化され、父のような考え方にれさせられているのだった。
その母の姉妹には林有的はやしゆうてきの妻、佐竹永海さたけえいかいの妻などがある。佐竹は初め山内氏五百を娶らんとして成らず、遂に矢川氏をれた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
權「之れを寄せると又此方へ寄るだ、懐へこれをれると格好がいと、お千代が云いましたが、何にもへいっては居ません」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
金属の鋏という字が書いてあるが、普通の挟箱、即ち箱に棒を添え、衣服などをれて僕に担わせて行くものの意であろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
今になってそんな事を言うのは満の贔負ひいきばかりしてお代を見捨てるおつもりですか。東京の怪しい女をれさせて満の嫁にするつもりですか。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
或る晩、家中、店先の涼み台で、大河おおかわから吹く風をれて、種々無駄話をしていました折から、師匠東雲師は、私に向い
何か探そうとして机の抽斗ひきだしを開け、うちれてあッた年頃五十の上をゆく白髪たる老婦の写真にフト眼をめて、我にもなく熟々つらつらながめ入ッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それは巴里のサン・ミッシェルの並木街あたりを往来ゆききする人達の小脇こわきはさまれるような、書籍ほんや書類などをれるための実用向の手鞄であった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
髪は霜に打たれしよもぎの如く、衣は垢にまみれて臭気高し。われは爾時、晩食を喫了して戸外に出で、涼をれて散策す。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
なぜなら各人の感覚も理性も同一のものを同一にれはしないから。Aにとって美であるものがBにとって醜であることは常にありうることだ。
夕方になつて風外は風をれようと思つて、団扇を片手に木履ぼくりを穿いて使僧の休んでゐる室の前をぶらぶらしてゐた。
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
再び汽車に乗り、家に帰りしは、十時近にして、廊下に涼をれ居たる家族は、其の思いがけ無き早帰りを訝りぬ。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
「男子が鬼や狐をこわがってどうする、もしくれば僕には剣があるさ、それも女なら門を開けてれてやるがね」
蓮香 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二品は賄賂まいないの品物でござる。ところで、世上にはこう云う噂がござる。人形と称して生きた美女を献上箱の中へ入れ、好色の顕門へれるという噂が。……
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
和歌の指導の礼に作者に拵えて呉れた中庭の池の噴水を眺める縁側で食後の涼をれていたので、そこで取次ぎから詠草を受取って、池の水音を聴きなが
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あはれ匹夫の身は物の數ならず、願ふは尊靈の冥護を以て、世を昔に引き返し、御一門を再び都にれさせ給へ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
何分にも残暑がひどいので、向島の水神すいじんに出かけてりょうれていると、池の中で何かしきりに跳ねている。
地震なまず (新字新仮名) / 武者金吉(著)
年三十にして家に帰るや、爾来じらいここに十有余年、追歓索笑虚日あるなし。を家にるる事数次。自ら旗亭を営むこと両度。細君を追出してまた迎る事前後三人。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
明治二十年に小学の業を終え、直に府立の中学へ入校したのだが、この年に父は後妻として村山氏を家にれた。鶴見はここに継母を持つことになったのである。
一〇〇したしきをはかるべきのりにもたがひて、筆の跡だもれ給はぬ叡慮みこころこそ、今はひさしきあたなるかな。
まさに掖廷にれて、后宮の数につべしと。天皇ゆるす。……丹波の五女をして、掖廷に納る。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
旅行劵はベルナルドオに仔細を語りて、をぢなる議官セナトオレに求めさせしものに候、ベルナルドオは事のむづかしきを知りながら、我言をれて、強ひてをぢ君を説き動しゝ趣に候。
彼は古代の希臘ギリシャの風習を心のなかに思い出していた。死者をれる石棺せっかんのおもてへ、みだらな戯れをしている人の姿や、牝羊めひつじと交合している牧羊神を彫りつけたりした希臘ギリシャ人の風習を。
ある崖上の感情 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
最高楼から先刻通つて来た大椰子林やしりんを越えて市街、港内、対岸の島を眼下に収め、左右両翼をひらいた山の樹間このまに洋人のホテルや住宅の隠見いんけんするのを眺めながら、卓を囲んで涼をれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その頃、帝は美女を求めていたので、王はかの少女を献上し、且つその子細を申し立てると、帝はそれを宮中にれて才人さいじんの列に加えた。それから三日の後に、京兆の役人が奏上した。
窓をあけぱなして涼しい風をれながら、先生からいただいて来た漱石そうせき研究をひざの上にひろげて、読むでもなく読まぬでもない気持で、時々眼をあげると、瀬戸内海だったりしたこともあった。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
大臣の未亡人の願いをおれになり、故太政大臣のじょは新尚侍に任命された。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あの画は寛政の頃の良家の娘さんの風俗で夏の宵広い庭に降り立って涼をれて居ります時に「今夜は月蝕だわ……」とふと思い付いて最も見易いように鏡を持ち出して写し取っている所です。
寛政時代の娘納涼風俗 (新字新仮名) / 上村松園(著)
今の士相率きひて、媚を権門にれ、かんを要路に通ずるは、その求むるところ功名聞達ぶんたつよりも、むしろ先づ黄金を得んと欲するの心急なればなり。その境遇や憐れむべし。その志操や卑しむべし。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
いまおはなししたような石棺せきかんつかをさめるときには、ぢかにつちなかうづめたものもありますが、たいていは石棺せきかんまはりにあた場所ばしよに、まづ石圍いしかこひをして、そのなか石棺せきかんれ、うへふたをしたのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
れようというかたがあるなら、私はそのお仲間になります。
その蔵屋という方の床几しょうぎに、腰を懸けたのは島野紳士、ここに名物の吹上の水に対し、上衣コオトを取って涼をれながら、硝子盃コップを手にして
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いて見るとき麦粒が満ちいる。長者大悦して倉にれるとあふれ出す。因って親族始め誰彼に分って合国一切恩沢を蒙った。
同じ長屋に住むものが、あれでは体が続くまいと気づかって、酒を飲むことを勧めると、仲平は素直に聴きれて、毎日一合ずつ酒を買った。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
佛蘭西の旅に行く時、私は鞄の中に芭蕉全集をれて持つて行つた。異郷の客舍にある間もよく取出して讀んで見た。
芭蕉 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、輿入こしいれしてから一二箇月過ぎた或る夏のゆうぐれのこと、松雪院が腰元たちと縁先で涼をれていると、そこへ河内介がふらりと這入って来て
勿論もちろん、真面目な談話と云ッたところで、金利公債の話、家屋敷の売買うりかいうわさ、さもなくば、借家人が更らに家賃たなちんれぬ苦情——皆つまらぬ事ばかり。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
孵化後の雛も一両日間は肛門の内に黄身をれあるなり。これ雛が自由に食物を摂取し得るまでの兵糧ひょうろうと知るべし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
老人もついには若い男の説をれて解剖刀を捨て、二人ともひざまずいて少女の死屍に祈祷きとうを捧げたという光景を叙して
新婦人協会の請願運動 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
出来上がれば是非御覧に入れます、その時御意ぎょいに入ったら御取り置き下さい。とにかく、御約束を無にしたのは私が悪いのですと若井氏へ申しれました。
多「そんなら此の戸袋の下へれて置きやす、犬が小便をかけると焚いて臭いから、戸を立掛けて置きやんす」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
和歌の指導の礼に作者にこしらえてくれた中庭の池の噴水を眺める縁側で食後の涼をれていたので、そこで取次ぎから詠草を受取って、池の水音を聴きながら
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)