トップ
>
簷
>
のき
ふりがな文庫
“
簷
(
のき
)” の例文
老朽
(
おいく
)
ちてジグザグになつた
板廂
(
いたびさし
)
からは雨水がしどろに流れ落ちる、見ると
簷
(
のき
)
の端に生えて居る
瓦葦
(
しのぶぐさ
)
が雨にたゝかれて、あやまつた
観画談
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
やがて黒羽町に
入込
(
いりこ
)
むと、なるほど、遊廓と背中合せに、木賃宿に毛の生えたような宿屋が一軒、
簷
(
のき
)
先には△△屋と記してある。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
簷
(
のき
)
の傾いた荒寺が草の中に立っていた。夜叉の
喘
(
あえ
)
ぐ
呼吸
(
いき
)
づかいがすぐ
背後
(
うしろ
)
で聞えた。大異はそのまま荒寺の中へ入って往った。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
例年
簷
(
のき
)
に
葺
(
ふ
)
く端午の
菖蒲
(
しょうぶ
)
も
摘
(
つ
)
まず、ましてや
初幟
(
はつのぼり
)
の祝をする子のある家も、その子の生まれたことを忘れたようにして、静まり返っている。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
相向へる二列の家は、
簷
(
のき
)
と簷と殆ど相觸れんとし、
市店
(
いちみせ
)
の
燈
(
ともしび
)
を張ること多きが爲めに、火光は到らぬ隈もなく、士女の往來織るが如くなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
昼の間は
動
(
やや
)
もすれば二階の
簷
(
のき
)
を飛び超えて家根に上り、それより幾時間となく海を眺め外船の阿那の点にあるを見守りたることもこれ有り候。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「ございます、ちょうど、雨だれの
簷
(
のき
)
を落ちる時のような同じ形が揃って、
鍔
(
つば
)
の下から切尖まで、ずっと並んで、いかにもみごとでございます」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
家を出でゝ程久しきに、母も弟も還ること遅し、鴉は
杜
(
もり
)
に急げども、帰らぬ人の影は破れし
簷
(
のき
)
の
夕陽
(
ゆふひ
)
の
照光
(
ひかり
)
にうつらず。
鬼心非鬼心:(実聞)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
もといた堺町の家の
簷
(
のき
)
にも一本夏みかんの木があって年々花をつけては塀外へこぼれるのを毎朝起きて掃くのがたのしみで二、三句出来た事がある。
朱欒の花のさく頃
(新字新仮名)
/
杉田久女
(著)
室
(
しつ
)
に、
玉鳳
(
ぎよくほう
)
は
鈴
(
すゞ
)
を
啣
(
ふく
)
み、
金龍
(
きんりう
)
は
香
(
かう
)
を
吐
(
は
)
けり。
窓
(
まど
)
に
挂
(
か
)
くるもの
列錢
(
れつせん
)
の
青瑣
(
せいさ
)
なり。
素
(
しろき
)
柰
(
からなし
)
、
朱
(
あかき
)
李
(
すもゝ
)
、
枝
(
えだ
)
撓
(
たわゝ
)
にして
簷
(
のき
)
に
入
(
い
)
り、
妓妾
(
ぎせふ
)
白碧
(
はくへき
)
、
花
(
はな
)
を
飾
(
かざ
)
つて
樓上
(
ろうじやう
)
に
坐
(
ざ
)
す。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
簷
(
のき
)
には夕陽が残っていた。竇は起きて目をつむってじっと考えた。王宮へいったことがありありと目に見えて来た。
蓮花公主
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
落葉の雨に混って
簷
(
のき
)
を打つ頃となり、いつとなく村は黄色く霜枯れて、冬が来て、また雪の降り出す頃となった。
凍える女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
屋根と表口の上とに、
簷
(
のき
)
と庇とが出てゐるが、その広さが丁度家全体の広さ程ある。小さい、奥深い窓が細い格子で
為切
(
しき
)
つてあつて、中には締め切つてあるのも見える。
十三時
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
簷
(
のき
)
の上には、思いきり大きな看板が二階をすっかり目隠しするように据っていたが、その簷のところには四角形の大きな門灯もあり、それから、静三が立っている脇にも
昔の店
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
表
間口
(
まくち
)
九間の
屋根
(
やね
)
の
簷
(
のき
)
に初春の頃の
氷柱
(
つらゝ
)
幾条
(
いくすぢ
)
もならびさがりたる、その
長短
(
ちやうたん
)
はひとしからねども、長きは六七尺もさがりたるが
根
(
ね
)
の
太
(
ふと
)
さは二尺めぐりにひらみたるもあり
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
近づいてみれば、酒旗には「
潯陽江正庫
(
じんようこうほんてん
)
」とみえ、また
墻門
(
かき
)
の
簷
(
のき
)
には、
蘇東坡
(
そとうば
)
の書の
板額
(
いたがく
)
に
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは彼の
足
(
あし
)
を止めたところが
郊外
(
かうぐわい
)
にあつたからで、そこは平野神社から銀閣寺へ
行
(
い
)
く
途中
(
とちう
)
に
見
(
み
)
える衣笠山の
夷
(
なだら
)
かな姿が
直
(
す
)
ぐ
簷
(
のき
)
の下から望まれるやうな場所にある、
貧
(
まづ
)
しい家であつた。
閾
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
が、
昨
(
さく
)
の非を
悔
(
く
)
い今の
是
(
ぜ
)
を
悟
(
さと
)
つてゐる上から云へば、予も亦同じ
帰去来
(
ききよらい
)
の人である。春風は既に予が草堂の
簷
(
のき
)
を吹いた。これから予も
軽燕
(
けいえん
)
と共に、そろそろ征途へ
上
(
のぼ
)
らうと思つてゐる。
入社の辞
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、
昨
(
さく
)
の非を悔い今の
是
(
ぜ
)
を悟っている上から云えば、予も亦同じ
帰去来
(
ききょらい
)
の人である。春風は既に予が草堂の
簷
(
のき
)
を吹いた。これから予も軽燕と共に、そろそろ
征途
(
せいと
)
へ上ろうと思っている。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
宿泊人
(
とまりゅうど
)
の
鼾
(
いびき
)
がぐう/\、往来も
大分
(
だいぶ
)
静かになりますと、ボンボーン、ばら/\/\と
簷
(
のき
)
へ当るのは
霙
(
みぞれ
)
でも降って来たように寒くなり、襟元から風が入りますので、
仰臥
(
あおむけ
)
に寝て居りますと
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
屋根も
簷
(
のき
)
も焼け落ちて真黒に焼けた柱ばかりが立ってる洋物小売部の店(当時の丸善の仮営業所は鍵の手になっていて、表通りと横町とに二個処の出入口があった。横町の店が洋物小売部であった。)
灰燼十万巻:(丸善炎上の記)
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
老朽
(
おいく
)
ちてジグザグになった
板廂
(
いたびさし
)
からは雨水がしどろに流れ落ちる、見ると
簷
(
のき
)
の端に生えている
瓦葦
(
しのぶぐさ
)
が雨にたたかれて、あやまった
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「どうか
簷
(
のき
)
の下で宜しゅうございますから、今晩だけお泊めなさってくださいますまいか」と、女はきまり悪そうに云った。
花の咲く比
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
半腹に鳳山亭と匾したる
四阿屋
(
あずまや
)
の
簷
(
のき
)
傾きたるあり、長野辺まで望見るべし。遠山の頂には雪を
戴
(
いただ
)
きたるもあり。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そこで暫く休むつもりで旅館へ入ったが、雨はますます強くざあざあと降りだして夜になってもやまなかった。
簷
(
のき
)
を見ると縄のような雨だれがかかっている。
王成
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
景をポジリツポに取りて、わざと其名をば擧げざりき。
簷
(
のき
)
傾き廊朽ちて、今や漁父の
栖家
(
すみか
)
となりぬ。聖像を燒き附けたる窓の下に床ありて、一童子臥したり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「これは
迚
(
とて
)
もいかん。
寧
(
むし
)
ろ廃殿の中で眠った方が得策だ」と早速天幕を疊み、一同はまたもやゾロゾロと、
簷
(
のき
)
は傾き、壁板は倒れ、床は朽ちて
陥込
(
おちこ
)
んでいる廃殿に
上
(
のぼ
)
り
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
又
家峯
(
やね
)
の谷になりたる所を
俚言
(
りげん
)
にだぎといふ、だぎは春解するやねの雪のしたゝりみなこゝにつたふゆゑ、つらゝは
簷
(
のき
)
よりも大也、下にさはりなき所は二丈もさがる事あり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
ちょうどこの時、村の或る一軒の家で、娘が大病に
罹
(
かか
)
っていた。命がとても助らないと知って親類の人々がこの家に集っていた。一室の
裡
(
うち
)
は
簷
(
のき
)
に垂れかかった青葉の蔭で薄暗かった。
薔薇と巫女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
積薪
(
せきしん
)
に
夕餉
(
ゆふげ
)
を
調
(
とゝの
)
へ
畢
(
をは
)
りて
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
りぬ。
一間
(
ひとま
)
なる
處
(
ところ
)
に
臥
(
ふ
)
さしめ、
姑
(
しうと
)
と
婦
(
よめ
)
は、
二人
(
ふたり
)
戸
(
と
)
を
閉
(
と
)
ぢて
別
(
べつ
)
に
籠
(
こも
)
りて
寢
(
い
)
ねぬ。
馴
(
な
)
れぬ
山家
(
やまが
)
の
旅
(
たび
)
の
宿
(
やど
)
りに
積薪
(
せきしん
)
夜更
(
よふ
)
けて
寢
(
い
)
ね
難
(
がた
)
く、
起
(
た
)
つて
簷
(
のき
)
に
出
(
い
)
づ。
時
(
とき
)
恰
(
あたか
)
も
良夜
(
りやうや
)
。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それは
至正庚子
(
しせいこうし
)
の歳に当る上元の夜のことであった。家々の
簷
(
のき
)
に掲げた燈籠に明るい月が射して、その燈は微赤く滲んだようにぼんやりとなって見えた。
牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
丘の半腹なる酒店の前に車を停めて見るに、穹窿の火の美しさ、前に見つるとはまた趣を殊にして、正面の
簷
(
のき
)
こそは隱れたれ、星を
聯
(
つら
)
ねたる火輪の光の海に
漂
(
たゞよ
)
へるかとおもはる。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
と、間もなくして
簷
(
のき
)
先から不意に鳥の堕ちて来るようにおりて来た者があった。それは一人の立派な服装をした少年であったが、万を見るなり身をそらして逃げていった。万は追っていった。
五通
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
大きな家ではあるが、門の柱も
朽
(
く
)
ち、
簷
(
のき
)
の
瓦
(
かわら
)
も砕けて、人の住んでいるような所ではなかった。豊雄は驚いた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
簷
(
のき
)
の下に二組の
几
(
つくえ
)
と腰掛を設けて、その一方の几には一人の秀才が腰をかけていた。そこで宋公もその一方の几にいって秀才と肩を並べて腰をかけた。几の上にはそれぞれ筆と紙とが置いてあった。
考城隍
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
それは
至正庚子
(
しせいこうし
)
の
歳
(
とし
)
に当る上元の夜のことであった。家家の
簷
(
のき
)
に掲げた燈籠に明るい月が
射
(
さ
)
して、その
燈
(
ひ
)
は
微紅
(
うすあか
)
くにじんだようにぼんやりとなって見えた。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
扉はなくなり
簷
(
のき
)
は傾き、
磚
(
しきがわら
)
の間からは草が生え茂って庭内はひどく荒れていて、二三日前に見た家屋の色彩はすこしもなかった。許宣は驚くばかりであった。
雷峯塔物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
街の両側にはバラック建の高低の一定しない
簷
(
のき
)
が続いて、それにぼつぼつ小さな
微暗
(
うすぐら
)
い軒燈が
点
(
つ
)
いていた。
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
真澄は
盃
(
さかずき
)
を持ったなりにまたおもい出したように、
斜
(
ななめ
)
に見えている
母屋
(
おもや
)
の二階の
簷
(
のき
)
に眼をやった。そこには叔母の好みで夏から
点
(
つ
)
けている
岐阜提燈
(
ぎふちょうちん
)
の
燈
(
ひ
)
があった。
岐阜提灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「送ってあげましょう、私も猟にきて帰れないので、しかたなしにここに寝ておりますものの、ゆっくり睡れないのですから、貴女の家の
簷
(
のき
)
の下でも拝借しましょう」
狼の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
電車線路のこっちに一幅の耕地を持って高まった丘は、電車が開通するとともに文化住宅地になって、昼間電車の中から見ると丘の樹木の間から
碧瓦
(
あおがわら
)
や
赭瓦
(
あかがわら
)
の
簷
(
のき
)
が見えた。
白っぽい洋服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
焦生は其処の
風陰
(
かざかげ
)
を野宿の場処にしようと思った。彼は
脚下
(
あしもと
)
に注意しながら岩のはなを廻って往った。眼の前に火の光が見えてきた。その火の焔のはしに家の
簷
(
のき
)
が見えた。
虎媛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
曲欄
(
きょくらん
)
を幾まがりか折れて往くとまた別の庭があって、枝を垂れた数十株の楊柳が高だかと朱の
簷
(
のき
)
を撫でていた。そして名も知れぬ山鳥が一鳴きすると
花片
(
はなびら
)
が一斉に散った。
西湖主
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
路次の中へ路次が通じて
迷図
(
めいず
)
のように紛糾した処には、一二年前まで私娼のいた
竹格子
(
たけごうし
)
の附いた
小家
(
こいえ
)
が雑然と
簷
(
のき
)
を並べていたが、今は皆禁止せられて、
僅
(
わず
)
かに残った家は
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
古廟は柱が傾き、
簷
(
のき
)
が破れ、落葉の積んだ廻廊には、獣の足跡らしい物が乱雑に
著
(
つ
)
いていた。
申陽洞記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
火はもうめらめらと堂の
簷
(
のき
)
に燃えついた。その火の傍で六郎の狂気のように笑う声が聞えた。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
水仙廟の後ろと思われる山の麓に楼閣が
簷
(
のき
)
を並べていた。女を尋ねて毎日水仙廟のあたりから孤山の頂にかけて歩いていた彭は、そんな楼閣を見たことがなかったので驚いた。
荷花公主
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その向うには墓地の続きになった所に建った大きな建物の
簷
(
のき
)
が僅かに見えていた。
変災序記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼は
黄昏
(
ゆうぐれ
)
の涼しい風に酒にほてった頬を吹かれて家いえの
簷
(
のき
)
の下を歩いていた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
捕卒は家の前に立って
手筈
(
てはず
)
を定め、門を開いて入って往った。扉は無くなり
簷
(
のき
)
は傾き、
磚
(
しきがわら
)
の間からは草が生え茂って庭内は荒涼としていて、二三日前に見た家屋の色彩はすこしもなかった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
簷
漢検1級
部首:⽵
19画
“簷”を含む語句
簷端
簷外
簷下
飛簷垂木
屋簷
東簷
簷先
簷口
簷外風光分外薪
簷曝雑記
簷瓦
簷角
簷頭
簷馬
飛簷