つゝ)” の例文
夜具などの入つてゐる長持に腰かけて、窓の方を向いた孝一は、紺がすりのつゝつぽの袂をピンとはねて、可憐な眉をひそめた。
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
拾得じつとく食器しよくきあらひますときのこつてゐるめしさいたけつゝれてつてきますと、寒山かんざんはそれをもらひにまゐるのでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
『いろ/\くわしいことうけたまはりたいが、最早もはやるゝにもちかく、此邊このへん猛獸まうじう巣窟さうくつともいふところですから、一先ひとま住家すみかへ。』とじうつゝもたげた。
鮏入らんとすれば口ひろがるやうにいかにもたくみに作りたるもの也。これをつゞといふはつゝといふべきをにごなまれるならん。
不思議ふしぎおもつて近寄ちかよつて、そっとつてると、そのつたつゝなかたか三寸さんずんばかりのうつくしいをんながゐました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
そこへ追つて来たおくまは岩に片足をかけてねらひさだめてきがねを引くとズドーンとこだましてつゝをはなれた弾丸たま旅人たびゞとかみをかすつてむかうの岩角いはかどにポーンとあたりました。
そのたのし爐邊ろばたには、ながたけつゝとおさかなかたなはとで出來できすゝけた自在鍵じざいかぎるしてありまして、おほきなおなべもの塲所ばしよでもあり家中うちぢうあつまつて御飯ごはんべる塲所ばしよでもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
薄板うすいた組合くみあはせて名かた暗箱あんはこをこしらへる。内すみる。から十五錢ばかりでしかるべき焦點距離せうてんきよりを持つ虫鏡をつて來て竹つゝにはめんだのを、一方のめんにとりつける。
にあるもの二言にごんい。よろこいさんで、煙管きせるつゝにしまふやら、前垂まへだれはたくやら。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「風呂場の障子が開けつ放しになつて居ると、此垣の根からでも流しに立つて居る人間へ吹矢が屆かないことはないでせう、——吹矢を飛ばした上で、つゝを向うへ放り出すと——丁度あの邊」
れも空虚からつてはくた/\としてちからのないかはつゝにはつぶれたまゝ煙管きせるしてた。かれしばらくさうしてたがどうかしてはわすれてくせづけられた手先てさき不用ふよう煙草入たばこいれさぐらせるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おもふにはゝがつゝをもてといひしゆゑ、母の片足かたあしを雪の山かげにくらひゐたるおほかみをうちおとして母のかたきはとりたれど、二疋をもらししはいかに口惜くちをしかりけん。
何時いつまでも木綿もめんつゝツぽでは可笑をかしいから、これを着て下さいとつて、黒羽二重くろはぶたへの着物を出したところが、こんな物を着るやうで、商人あきんど身代しんだいあがるものかとつて
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
英二もみよ子も、今日の祝ひにわざ/\加賀から取り寄せられた『森八』の紅い蒸菓子むしぐわしをつまんだが、孝一だけはつゝつぽの肩をそびやかし、唇を結んだまゝ、頑として手を出そうとしない。
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
いまはたいたまゝで、元二げんじが、財布さいふ出入だしいれをするうち縁側えんがははしいた煙管きせるつて、兩提りやうさげつゝ突込つゝこまうとするとき縁臺えんだいしたから、のそ/\と前脚まへあしくろした一ぴき黒猫くろねこがある。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもふにはゝがつゝをもてといひしゆゑ、母の片足かたあしを雪の山かげにくらひゐたるおほかみをうちおとして母のかたきはとりたれど、二疋をもらししはいかに口惜くちをしかりけん。
ひとゝせ二月のはじめ、用ありて二里ばかりの所へいたらんとす、みな山道やまみちなり。母いはく、山なかなれば用心なり、つゝをもてといふ、にもとて鉄炮てつはうをもちゆきけり。
ひとゝせ二月のはじめ、用ありて二里ばかりの所へいたらんとす、みな山道やまみちなり。母いはく、山なかなれば用心なり、つゝをもてといふ、にもとて鉄炮てつはうをもちゆきけり。
此夜は山中さんちゆうに一宿の心なれば心用のためつゝをももたせしに、たれの上手しかも若ものなりしが光りをまとにうたんとするを、老人ありてやれまてとおしとゞめ、あなもつたいなし