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竪
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たて
ふりがな文庫
“
竪
(
たて
)” の例文
彼は巨大な、横にも
竪
(
たて
)
にも大きな男で、黒の夜会服にすっかり身を包んでいた。白髪を、
独逸
(
ドイツ
)
人風に綺麗にうしろへ撫でつけていた。
秘密の庭
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
妻の七夕の止めるのも
聴
(
き
)
かず、そこに
生
(
な
)
っている瓜を食べようと思って、二つに
竪
(
たて
)
に瓜を割ったら、それがたちまち天の川になった。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一人は細い
杖
(
つえ
)
に
言訳
(
いいわけ
)
ほどに身をもたせて、
護謨
(
ゴム
)
びき靴の右の
爪先
(
つまさき
)
を、
竪
(
たて
)
に地に突いて、左足一本で細長いからだの中心を
支
(
ささ
)
えている。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
白地に星模様の
竪
(
たて
)
ネクタイ、
金剛石
(
ダイアモンド
)
の
針留
(
ピンどめ
)
の光っただけでも、
天窓
(
あたま
)
から
爪先
(
つまさき
)
まで、その日の
扮装
(
いでたち
)
想うべしで、髪から油が
溶
(
とろ
)
けそう。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
机の寸法は
竪
(
たて
)
三尺、横四尺、高さ一尺五寸位であらう。木の枯れてゐなかつたせゐか、今では板の合せ目などに多少の狂ひを生じてゐる。
身のまはり
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
そして
竪
(
たて
)
に長い中堂を見込んだ。日はもう入つてしまつて、色硝子の窓が鈍い、厭な色の染みになつて見えて、あたりはしんとしてゐる。
駆落
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
「あの、
笑靨
(
えくぼ
)
よりは、口の
端
(
はた
)
の処に、
竪
(
たて
)
にちょいとした
皺
(
しわ
)
が寄って、それが本当に可哀うございましたの」と、お金が云った。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「臼は矢つ張り
竪
(
たて
)
に伏せてあつたんですね、半歳前の跡だから間違ひはありません。その前に臼を横にした跡があつて、二本の繩の跡が——」
銭形平次捕物控:220 猿蟹合戦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、たちまち眼の前の、ぼーっとした
仄暗
(
ほのぐら
)
い空を切り裂いて、青光りのする稲妻が、
二条
(
ふたすじ
)
ほどのジグザグを、
竪
(
たて
)
にえがいた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
大
(
おほ
)
きな
藁草履
(
わらざうり
)
は
固
(
かた
)
めたやうに
霜解
(
しもどけ
)
の
泥
(
どろ
)
がくつゝいて、それがぼた/\と
足
(
あし
)
の
運
(
はこ
)
びを
更
(
さら
)
に
鈍
(
にぶ
)
くして
居
(
ゐ
)
る。
狹
(
せま
)
く
連
(
つらな
)
つて
居
(
ゐ
)
る
田
(
た
)
を
竪
(
たて
)
に
用水
(
ようすゐ
)
の
堀
(
ほり
)
がある。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
何分にも
竪
(
たて
)
六尺九寸、幅一丈にも余る大幅であるので、写真に縮小しては鮮明を欠くのでその一部分を掲げて描法の一端を示す事としたのである。
美の日本的源泉
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
※オロンの形と色とをしたカラビデエ、同じく
群青色
(
ぐんじやういろ
)
をして柏の葉を
竪
(
たて
)
に二枚重ねた如き擬態を有し、葉茎、葉脈等を
明
(
あきら
)
かに示せるピリイムシセ
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
それから急に一つ首を
竪
(
たて
)
に振ると一つの小さい
目盛盤
(
ダイヤル
)
をとりはずし、他のものと
綿密
(
めんみつ
)
に比較研究をしているようでした。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
... 太く拵えようと思えばカステラを厚く焼いて横に巻く所を
竪
(
たて
)
に巻いてもよし、好き自由に出来ます」小山「なるほど訳はありませんね、その次は」
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
会釈をするときに頬に微笑を湛えて脣の
角
(
かど
)
のところに一寸
竪
(
たて
)
の
皺
(
しわ
)
を寄せてもの言うのはモナ・リザを連想せしめた。
ドナウ源流行
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
お銀様はどうしたのか、急に眼の色が変って、いきなりそのお御籤の紙を
竪
(
たて
)
に二つにピリーと裂いてしまいました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それまで自分でもさんざん苦心したらしいのだが、肥りすぎてゐる上に、昔風の糊の堅い
竪
(
たて
)
カラーをしてゐるものだから、手先がうまく届かないのであらう。
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
豆ラムプの細い燈心には人の眼を
竪
(
たて
)
にしたやうな形の愛らしい
焔
(
ほのほ
)
がともつてゐて、その薄い光りが窓の前に伸びた
無花果
(
いちじゆく
)
と糸杉の葉を柔らかく照し出して居た。
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
いつも此話しの始まりし時は青筋出して
疊
(
たゝみ
)
をたゝくに、はて身知らずの男、醫者になるは芋大根つくりたてるとは
竪
(
たて
)
が違ふぞとて、作助は眞向より
強面
(
こわもて
)
の異見に
暗夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そして糸を其の枝にしつかりとくつつけて、降りて来る時に使つた
竪
(
たて
)
の糸を伝つて、橋まで昇つて行く。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
すると両の頬に一と筋ずつ、
竪
(
たて
)
に深い
皺
(
しわ
)
が刻まれ、眼がやわらかく細められて、どんな人間をもひきつけずにはおかないような、温かい、魅力のある表情になった。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ところ/″\にポツンと焼け残りの土蔵が盤面に将棋の駒を
竪
(
たて
)
に置いたやうに半壊の姿を
曝
(
さら
)
してゐ
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
お団子を半分にして、それを
拇指
(
おやゆび
)
でおしつけたように、押しつけたところがピタンとしている。大きな鼻の穴が、
竪
(
たて
)
に二つ
柿
(
かき
)
のたねをならべたように上をむいている。
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
例へば仮名の形を大小長短種々に変化する事、
竪
(
たて
)
に書かずして横に書く事、父音母音の区別を幾分か現す事等ならざるべからず。しかしこれにも種々の困難はあるなり。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
これ即ち日本現在の風俗に協応するものであって、現在生活の洋風化の実情をはっきりと具象しているものである。本箱本棚を考えても
竪
(
たて
)
に並べる洋式の方が普通である。
書籍の風俗
(新字新仮名)
/
恩地孝四郎
(著)
故に横に之を説くも
竪
(
たて
)
に之を論ずるも、如何なる攻撃に遇ふも、如何なる賞讃に遇ふも彼は動かざるを得るなり。白旗不
レ
動兵営静なりとは彼が論文を形容すべき好辞なり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
そのたびに自分は、その牛を捕えやりつつ擁護の任を兼ね、土を洗い去られて、石川といった、
竪
(
たて
)
川の河岸を練り歩いて来た。もうこれで終了すると思えば心にも余裕ができる。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
やっとのこと顔をあげて、若旦那と一緒に
土蔵
(
おくら
)
の方を見ましたが、やがて嬉しいのか悲しいのか解らぬような
風付
(
ふうつ
)
きで、水々しい島田の頭をチョットばかり
竪
(
たて
)
に振ったと思うと
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
坪二両に立退料三百両というところまで
競
(
せ
)
りあげたが、それでも頭を
竪
(
たて
)
には振らない。
顎十郎捕物帳:18 永代経
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
昼間は
螢
(
ほたる
)
の宿であらう小草のなかから、葉には白い
竪
(
たて
)
の
縞
(
しま
)
が
鮮
(
あざやか
)
に染め出された
蘆
(
あし
)
が、すらりと、十五六本もひとところに集つて、爽やかな長いそのうへ幅広な葉を風にそよがせて
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
これを直訳しますと、「人間の顔の眼は横につき鼻は
竪
(
たて
)
についている」というのです。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
郎女の
額
(
ぬか
)
の上の天井の光の
暈
(
かさ
)
が、ほのぼのと白んで来る。明りの
隈
(
くま
)
はあちこちに
偏倚
(
かたよ
)
って、光りを
竪
(
たて
)
にくぎって行く。と見る間に、ぱっと明るくなる。そこに大きな花。蒼白い
菫
(
すみれ
)
。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
「ええ。少し歩きましょう。お天気が好いと店へ行くのがいやになるわ。一日、日の目を見ずにいるんだから。」とぬぎ捨ててあった
竪
(
たて
)
しぼの一重羽織を引掛けて、窓の障子をしめた。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
七、八寸のいもを
竪
(
たて
)
に切って丁寧に皮をむき、一本並べにゴマをふって焼いたきびきびした代物。ここも例の
蒔絵
(
まきえ
)
の重箱へきちんと詰め、ノシをいれてお遣い物といった客が多かった。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
この女にこんなことを言っていて、よくも、口が
竪
(
たて
)
に裂けずにいるものじゃ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
竪
(
たて
)
一尺横一尺五寸の粗末な額縁の中にはあらゆる幼時の美しい幻が畳み込まれていて、折にふれては画面に浮出る。現世の故郷はうつり変っても画の中に写る二十年の昔はさながらに美しい。
森の絵
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
七回半にまといて
竪
(
たて
)
結びに結び付け、竹の中に
狐
(
きつね
)
、
天狗
(
てんぐ
)
、
狸
(
たぬき
)
と書きたる札を入れ、竹の口を火にてあたため、その上にまたあたためたる塗り盆をいただかせ、風呂敷にてこれを覆い、女児三人
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
此石数百万を
竪
(
たて
)
に
積重
(
つみかさ
)
ねて、此数十丈の
絶壁
(
ぜつへき
)
をなす也。
頂
(
いたゞき
)
は山につゞきて
老樹
(
らうじゆ
)
欝然
(
うつぜん
)
たり、是右の方の
竪御
(
たてお
)
がうなり。左りは此石の寸尺にたがはざる石を横に
積
(
つみ
)
かさねて数十丈をなす事右に同じ。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
〔譯〕
博聞強記
(
はくぶんきやうき
)
は、
聰明
(
そうめい
)
の
横
(
よこ
)
なり。
精義
(
せいぎ
)
神に入るは、
聰明
(
そうめい
)
の
竪
(
たて
)
なり。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
彼
(
あれ
)
は
慌
(
あわ
)
てると身体が
竪
(
たて
)
になるので沈みますので身体が横になると浮上るものです、心の
静
(
しずか
)
な人は川へ落ちても、あー落ちたなと少しも騒がないで腕を組んで下迄すーっと沈むと又ずっと浮いて来る
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
おくみは持つて行く新聞のはしを
竪
(
たて
)
に見ながら一人心にかう思つた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
吾ともなく興の起るのがすでに
嬉
(
うれ
)
しい、その興を
捉
(
とら
)
えて横に
咬
(
か
)
み
竪
(
たて
)
に
砕
(
くだ
)
いて、これを句なり詩なりに仕立上げる順序過程がまた嬉しい。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
洗い清めた白米を或る時間水に浸し、それが柔かくなったのを
見測
(
みはか
)
らって小さな臼に入れて、
手杵
(
てぎね
)
すなわち
竪
(
たて
)
の杵で
搗
(
つ
)
き砕くのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
夢の御告げでもないならともかく、娘は、観音様のお
思召
(
おぼしめ
)
し通りになるのだと思ったものでございますから、とうとう
首
(
かぶり
)
を
竪
(
たて
)
にふりました。
運
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
実は今朝
托鉢
(
たくはつ
)
に出ますと、
竪
(
たて
)
町の小さい古本屋に、
大智度論
(
たいちどろん
)
の立派な本が一山積み畳ねてあるのが、目に留まったのですな。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「十七八でせうか、
矢絣
(
やがすり
)
に
竪
(
たて
)
やの字の帶で、素顏に近い島田髷の、良い娘でした——あ、それから左の頬に可愛らしい愛嬌ぼくろがあつて——」
銭形平次捕物控:226 名画紛失
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
おつぎは
庭葢
(
にはぶた
)
の
上
(
うへ
)
に
筵
(
むしろ
)
を
敷
(
し
)
いて
暖
(
あたゝ
)
かい
日光
(
につくわう
)
に
浴
(
よく
)
しながら
切干
(
きりぼし
)
を
切
(
き
)
りはじめた。
大根
(
だいこ
)
を
横
(
よこ
)
に
幾
(
いく
)
つかに
切
(
き
)
つて、
更
(
さら
)
にそれを
竪
(
たて
)
に
割
(
わ
)
つて
短册形
(
たんざくがた
)
に
刻
(
きざ
)
む。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
箱の中ならば
籾
(
もみ
)
の中へ横に
埋
(
う
)
めておくのです。第二は決して
竪
(
たて
)
に置いてはいけません、必らず横にしておくのです。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
横に連なった二つの眼は、人間並みに物をかたよらずに見る眼、別に出来上った
竪
(
たて
)
の眼は何を意味する。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
おおかめさんの
風貌
(
ふうぼう
)
を、もすこし
委
(
くわ
)
しくいえば、体の大きさと眼との釣合は
鯨
(
くじら
)
を思えばよかった。鼻は、眼との均衡がよいほどだが、
竪
(
たて
)
に見えるほどの穴が実に大きい。
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
竪
漢検準1級
部首:⽴
13画
“竪”を含む語句
竪琴
竪町
竪薦
竪立
竪縞
竪川
竪坑
竪帷
竪帳
竪穴
弥竪
逆竪
竪皺
竪横
竪矢
竪大工町
竪板
竪御号
竪御
竪絽
...